組織の捕喰者 作:(◯|v|)<Howdy!)
ジンに呼び出された。
起きたら連絡しろというメールに従ったら、今すぐ来いと端的な一言を告げられたのち切られた。もう慣れてしまったので今更だが、説明位はして欲しいと切に願う。
呼び出された部屋に向かえば、ジンの他に見知らぬ三人がソファに一列に並んで座っていた。
ラスティネイルから見て右側に座るのは金髪に褐色の肌をした青年。ともすればティーンにすら見える青年は、髪を染めてもいなければ日焼けしているわけでもなく、完全な自前の色なのだとか。それでいて名前は安室透、つまり純日本人。日本人要素が名前と童顔しか無いってどういう事だ。
中央に座るのは、人好きのしそうな笑みを浮かべた青年。こちらも相当な童顔で、顎髭で何とか誤魔化そうとしているのだろうが、悉く失敗している。名前は緋色光。
左端に座る最後の一人はニット帽に長髪、おまけに目の下に巣食っている濃い隈が特徴的な男。三人衆の中で唯一年相応な外見年齢をしていて、なのに並ぶと老けて見えるのは何故なのだろうか。さっきその辺で何人か殺って来ましたと言われても違和感のない風貌で、穏やかな第一印象を受ける他二人と並んでいるせいで一際異彩を放っている。男は諸星大と名乗った。
「こいつら三人をお前に任せる」
胡乱げな視線をジンに向けたラスティネイルを、一体誰が責められようか。自己紹介の中に混ざっていた話によれば、安室は情報収集、緋色と諸星は狙撃が得意ときた。実力を十全に発揮する為には単独行動が大前提であるラスティネイルに、喰種としての側面を知らない他人を付ける意味がわからない。身一つでカチコミをかける戦法上、別段指導できることもない。
その視線を受け、ジンが口元をにやりと歪めた。非常に愉しそうな顔だった。
「手始めに、ラスティネイルの任務を見学してこい」
ああ、とラスティネイルは納得した。篩に掛けてるのか。
この組織には鬼門があると言われている、らしい。らしい、というのは、その鬼門がラスティネイルを発端としているためだ。というのも、ラスティネイルの仕事場の片付けが凄惨に過ぎて吐くのだとか。実働系の幹部であるラスティネイルは基本的に暴れるだけで終わるが、その後の片付けは下っ端の仕事である。そこで吐くのが下っ端の間では一種の洗礼と化しているらしい。
狙撃手と情報屋なら経験していなくても無理はない。それを見せつけて耐性を付けさせると同時に、反応を見ておけ、ということなのだろう。NOCなら大抵の場合怒りに染まった目をするか、嬲っていれば止めようとしてくる。ジンの視線から察するに、少なくとも安室と諸星は疑われている。特に諸星。根拠はジンお得意の勘だろう。これがまたよく当たるから困るのだが。ただ、今回は個人的な嫌悪が含まれている気がしないでもない。
面倒な事になった、とラスティネイルは溜息を吐いた。
ラスティネイル。組織幹部の一人で、ジンをして戦闘になったら詰みとまで言わしめた異色の幹部。素肌を一つも晒さない上に声まで変えている幹部────今は上司となった人物の姿をバックミラー越しに眺め、安室透は溜息を吐いた。
顔を見せないのは組織のナンバーツーであるラムの命令のようで、身元特定に繋がる情報は残念ながら得られそうもない。公安警察の一員としての顔を見抜かれないように気を付けながら、組織の同期二人と上司を乗せて車を走らせる。
車を停めたのは、公安の方でもマークしていた犯罪組織の拠点付近だった。車を降り、安室を含めた三人を少し後ろに下がらせたラスティネイルの背を見つめる。道中に説明された情報によれば、ここは組織との取引を反故にした犯罪組織のようで、今回は他組織への見せしめも兼ねた報復行動なのだとか。
お手並み拝見、と胸中で呟き、ラスティネイルの指示通りに物陰に隠れて様子を窺う。ラスティネイル本人は隠れもせずに、真正面から堂々と進んでいく。定石どころか常識を真っ向から無視した行動に、安室の口から間抜けな声が漏れた。銃を構える音が複数聞こえ、その音と同じだけの人影が現れる。ゆるゆると進んでいたラスティネイルの姿が、人影を見咎めた瞬間に搔き消えた。
「……は?」
呆然と呟いたのは誰だったか。気付いた時には人影は一つ残らず倒れ伏していて、ラスティネイルの手には人影と同じ数の頭部が握られていた。
「何呆けてるのさ。ほら、行くよ」
三人の困惑を一蹴し、ラスティネイルが頭部を放り捨てて手招きする。
それに応じて足を動かしながらも、安室の頭の中は混乱一色だった。ちらりと見かけた切断面が異様に滑らかだった事も混乱を助長する。斃した?あの距離を一瞬で詰め、あまつさえ全員の首を獲って?素手だったにも関わらずどうやって?
ラスティネイルは歩を進める。三人の混乱など一顧だにもしない。固く閉じられた扉を蹴りで吹き飛ばし、目についた敵を捕まえては振り回し、時々戯れに捩じ切ってみたりしている。回し蹴りで人体をミンチにするとかありえない。安室は我が目を疑った。警察学校の同期に散々ゴリラだの何だの言われた安室ではあるが、自分がゴリラならあれは一体何なのだろう。怪物、そんな言葉が脳裏をよぎる。
銃器ごと手を握り潰し、壁ごと体を蹴り砕きながら返り血を浴びるラスティネイルの姿を見て、ああ、と安室は何かを悟った。
ラスティネイル。その名の通り、
現世こそ地獄、なんて言葉もある。それを考えれば、ある意味正しいのかもしれない。それでも全身を赤錆色に染め上げた怪物が“