ーカオスー
ラズリルにてタル君達を迎えて面倒を見る傍ら、騎士団を何とかしようとグレン君達と立ち回る中、
「エドガーが死んだ!? ブランドが行方を眩ました…だと!!?」
俺の下に信じがたい情報が入ってくる。友人であるエドガーの死、そして行方を眩ましたブランド。あの二人に限って…と思うのだが、海賊にとって危険な場所であるラズリルまで知らせに来てくれたハーヴェイを考えると…。こちらも今…大変な状況にあるが、エドガーの件を含めてキカのことが心配だ。あの娘は…、泣いちゃいないだろうか?
…右手が熱い、『
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シエラとグレン君宛に置き手紙を書く、そして知らせに来てくれたハーヴェイの案内で船へ乗り込み海賊島を目指す。そこにキカがいて、ハーヴェイ以外の生き残りが数名いるらしい。…一体何が起きたというんだ、それにキカは大丈夫か? 最愛の人と頼りがいのある兄貴分、二人を同時に失ったのだから。
…俺も少なからず動揺をしているようで、…さっきから同じことばかり考えてしまう。
海賊島へと辿り着いてみれば、活気がなくて静寂が場を支配している。大将達を失ったのだから仕方がないのかもしれない、それほどに大切な者達であったということなのだろう。荒くれ者達の心中を察しながら、キカの部屋へと案内される。ハーヴェイに促されてノックをし、微かに聞こえた返事を聞いてから部屋の中へと入った。…そこで見たのは男勝りなキカではなく、憔悴し切ったただの女性…にしか見えないキカの姿であった。
俺の姿を見たキカは涙を溢す、…俺を見て共に過ごした日々を思い出したのだろう。そんな彼女を見た俺は近付き、エドガーがキカを慰めていた姿を思い出しながら傍にいてやる。今は泣くだけ泣いた方がいい、その方がスッキリとして落ち着けるからな。
暫くして落ち着いたキカは、目を赤くしながらも俺に礼を言って事の顛末を話し始める。本当であれば生き残った者達が話すべきだが、俺を迎えにきたハーヴェイ以外…全て亡くなってしまったようだ。故にそれぞれから話を聞いたキカが話す、…そういうことらしい。
…キカから聞かされた話を纏めると、…こういうことらしい。
ある日ウォルターと名乗る者達の一行が現れ、海賊スティールの情報があると取引を提案してきた。スティールとの決着を考えていたエドガーは取引に応じ、入手した情報を頼りに彼等を連れてスティール討伐へ動いた。キカは万が一の為に居残り組、今にして思えば良い判断であったと言える。…因みにこの情報の入手先はウォルター曰くミドルポートとのこと、…現在一番怪しい場所からの提供か。
ある海域にてスティールを捕捉、ウォルター一行と協力して追い詰めることに成功。しかし何処からともなく現れた謎の艦隊による砲撃で場は混乱、更に追い詰められたスティールは古めかしい『紋章砲』を使用。それにより複数の子分達とウォルターが化物に変化し、突如として見境なく暴れ始める。それでも、何とかスティールを討伐しようと攻め込み……。
スティールが何かしらの紋章を使用。その力の前にエドガーは敗れ、スティールはその反動で消滅した。その時に現れた光がブランドに取り憑き、そしてブランドは可愛がっていた子分であるペックを連れて、この場を去っていったらしい。その時に…、
「…俺はもう帰れねぇ、…エドガーをキカの下へ。…すまねぇ、…すまねぇと伝えてくれ。…キカに、…カオスとシエラにすまねぇと。」
…と、震える声でこの言葉を残していったそうだ。
エドガーの遺体と共に、満身創痍で撤退してきたそうで。この島に戻ってきた生き残りは、怪我をしているのに報告と謝罪を真っ先にしてきた。そして後悔と無念を滲ませながらも、安心したかのように亡くなっていったそうだ。エドガーの遺体と愛すべき仲間達の死、そしてブランドが行方を眩ます。たった数日間で事態が急転、キカ自身も何が起きたのか分からないままに悲しみだけが押し寄せてきた…とのこと。
話し終えたら少しは安心したのだろう、キカは俺にもたれ掛かって寝息をたてる。起こさぬようベッドへ運び、その寝顔を見守る。
…………寂しいな、……やはり友を失うってことはなかなかに堪える。寿命であるのなら仕方がない、事故であるのなら仕方がない、互いの誇りを懸けた上であるのなら仕方がない。……だがキナ臭い、キナ臭くて不快だ。誰かの思惑が見え隠れしている、………故に俺は調べる。
次回、閑話。