ーカオスー
キカから話を聞いた俺はこの件を調べることにした、…特に謎の船団というヤツが気になる。…調べると決めたからには早急に行動すべきだろう、今回の件で動いた奴が証拠を隠蔽しようとする筈だし。…俺の想像する、いや…あの男が主導で計画をしたならそうする筈だ。自身の私腹を肥やす為なら何でもする男、奴であれば必ずな…。
俺はベッドで眠るキカを見る。今は安心して眠っているけれど、先程までは泣いていた。エドガーの恋人で俺の友人、…そんな彼女の為に俺は動こう。今は亡きエドガーの為に、行方知れずになったブランドの為に、…そして俺自身の為に。俺は絶対に事の真相に辿り着いてみせる、…目星も付いているしな。だから待っていてくれよキカ、…お前がこの海で生きていけるようにしておくからな。お前に危害を加えられぬよう、…奴の動きを封じておく。
キカの部屋から出た俺は、真っ先に船の下へ。そこにはハーヴェイがいて項垂れていた、…無理もないな。件の戦いの生き残りは自分を残して全員亡くなった、キカと同じようにハーヴェイにも辛い現実となったわけだ。そんなハーヴェイに声を掛けて調査に誘えば乗ってきた、何やらやる気があって良い感じ。気を紛らわしたいのもあるが、それ以上に皆の仇となる謎の船団に思うことがあるようだ。
勝手に連れ出すわけにはいかないので、理由を話して連れ出すことを近くにいた海賊に伝えておく。キカにも伝えておいてくれと言えば、快く了承してくれた。それだけではなく、頑張ってくれと激励された。ハーヴェイと同じように仇討ちと思っているのだろう、…まぁ間違ってはいないが。
海へ出航した俺達は航路をミドルポートに向けた、…最も怪しく俺が今回の件の黒幕と読んでいる男が治めている島故に。…ラインバッハ2世、ミドルポートを良く治めているがそれは偽りの姿。奴の本当の姿は私利私欲の為に海を荒らす悪徳領主、自らの船団…艦隊の一部を海賊行為にて使っているのだから。
ラズリルとミドルポートは海を挟んで互いに近く、そもそもミドルポートは元ガイエン公国領であったらしい。それが今では独立して大いに発展し、現在では群島諸国で一番の裕福な島である。紋章砲発祥の地でもあるし、話題に事欠かない島なのだ。
ミドルポートの艦隊に対して、俺達ガイエン海上騎士団はなるべく不干渉であるように努めた。彼等が裏でやっていることには気付いている、…が騒ぎ立てれば外交問題に発展する為、泣く泣く気付かぬふりをしているのが現状。
しかしエドガー達にはそういうしがらみがない、…故に堂々と海賊行為を働いている艦隊を攻撃する。エドガー達も海賊ではあるが、弱気を守る義賊の類い。そんなエドガー達を忌々しく思っていた筈なのだ、…ラインバッハ2世という男は。
そういう背景があるからこそ、俺はミドルポートに目を付けた。その後押しをしたのがウォルター一行、彼等が入手した情報の出所がミドルポートとのことだからな。彼等のことも目障りであっただろう、何せ『紋章砲』を探っていたのだから。
そして海賊スティール、奴もまた邪魔な者。ミドルポート所属の商船を襲撃したりしていたからな、どうにかして討ち取りたいと考えていた筈だ。
…姑息で謀略好きのラインバッハ2世のことだ、ウォルターへ何かを吹き込んだに違いない。それと同時に海賊スティールとエドガー達の動向を調べ、その上でウォルターを海賊島へと送ったのだろう。より良いタイミングを見計らっての策、…本当にタイミングが良すぎる。海は気まぐれなもの、…海の表情を読んでのこの策には多くの人手が必要であると考える。
ミドルポートの人手だけでこれ程の策が実行出来るのか? …そう考えた時、考えたくもないことを考えてしまった。…あの
……もしそうであったとしたら、…新たなる地を開拓せねばならない。…マジで、…シエラ達には苦労を掛けてしまうな。