第1話 ~ラズリルにて…
ーカオスー
シエラと仲良く寄り添いながら海を航行し、辿り着いたのがラズリルという島。ガイエン公国に属するこの島には、ガイエン海上騎士団というものがある。俺達の目的はその騎士団、どんなものかと興味があってね。一般人の見学って出来るのかね?
…結果的に見学は出来た、手練れの騎士から見習いの騎士まで訓練に汗しているな。見た感じ普通の騎士に見えるけど、注意深く見てみれば重心の掛け方が違う。海上での、船上での戦闘を想定して鍛練をしているようだ。…何とも興味深い、海上での戦い方を教えてはくれないだろうか?
騎士団長のおっさんに聞いてみたら快く了承、その代わり地上での戦い方を教えてくれと頼まれた。俺の技は全て我流なのだが大丈夫だろうか? と聞いてみれば、ならば先ずは見せてくれとのことで一騎討ちをすることになった。相手は副団長のグレン君、騎士団一の剣術使いだとか。…なら俺も剣で戦うかな?
相手方の攻勢、そして俺は防戦一方。はたから見れば俺が不利であると思うだろう、…しかしそれは違うんだな。分かる人には分かるだろうけど、…俺は汗の一つも掻いていない。しかし相手方のグレン君は汗だらっだら、有効打の一つも俺には与えられていない。…別に遊んでいるわけではないよ? ただ、相手の剣術を見たいが為。俺の我流剣術が防戦に向いていると見せたいが為、それだけなのだよ。きちんと俺の剣術を見てもらわないと、…何せ教えることになるのだから。
…う~ん、防戦はこれぐらいでいいかな。これ以上粘ったら、グレン君が疲れて一騎討ちが流れてしまう。それだけは駄目だ、攻めの一手ぐらいは見せないと。そう思った俺は、グレン君の一撃を紙一重で避けてからの一歩。…そう、一歩踏み込んだだけで勝負が決まった。…俺の剣はグレン君の喉元、王手ってなわけです。
一騎討ちが終わって、相手のグレン君が尊敬の眼差しで見てきた。…で開口一番、
「カオス殿、私に貴方の我流剣術をお教え願いたい!!」
弟子入りを志願してきました。何とも熱い男だね、…気に入った! このグレン君に剣術を教える代わりに、ガイエン海上騎士団の剣術を教えて貰おう。互いに教えたり教えられたり、それで良い感じになったら騎士団全体に教えるのが良いと思う。人様に教えるってーのは滅多にしなかったからね、いきなり大人数は厳しいと思うんだ。教えることに慣れさせてくれ!
やはりそのことを団長のおっさんに言えば了承、よろしくと改めて言われた。…そういうわけで、数年…長くて十数年になるかもしれないからこのラズリルに居を構えるか。勝手に予定を決めてしまったが大丈夫かとシエラに聞いてみれば、
「初めて自分達の居を構えて共に過ごしますね? …その、…とても楽しみです。」
と花が咲くような微笑みで返してきました。あまりの可憐さ…可愛さにテンションが上がり、騎士の皆さんが見ている前で抱き締めてしまいましたよ。
…なんだね? グレン君。え…? 俺達の関係? 見て分からないかな、俺とシエラは夫婦だよ。彼女は俺の奥さん、………何故に驚くのかね?
…とのことで、俺とシエラはこのラズリルに住みます。永住ではないけれど、たぶん十数年は住み続けるかと。住まいも団長のおっさんが見付けてくれた、金は腐る程あるから一括払い。不動産屋は俺を上客と見た模様、…色々と便宜を図ってくれよ?
俺はガイエン海上騎士団の戦闘指南役に、先ずはグレン君をしっかりと鍛えます。シエラも俺と同じく指南役として雇われた、魔法指南役としてね。シエラは紋章魔法が得意だからね、指南役としては十分過ぎる程の人材だよ。
そういうことなんで夫婦共々、このラズリルにて世話になるよ。