美竹親子はいいぞ!!

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文章力はお察し。


ツンデレ親子に挟まれて胃が死にそうですけど私は元気です(大嘘)

「姉さん、今日のお稽古は……」

「ごめん、バンドあるから」

 

 そう言って、姉さんは歩いていった。恐らく校門かどこかで、いつもの人達と待ち合わせでもしているのだろう。

 姉さんの後ろ姿が見えなくなってから、私は一人でため息をつく。

 

 

 私の姉さん―――美竹蘭は、頑固で、縛られるのが嫌いで、こういっては悪い気もするが実に面倒くさい人間だ。

 悪い人ではない。しかし無愛想で、自分の意志を押し通そうとするその姿は見る人が見れば苦い顔をするだろう。かく言う私も、その姿に関してはそこまでいい感情は抱いてない。

 

##########

 

 百年の歴史を持つ華道の名家に生まれた姉さんは、家に恥じない生き方をするためにと現当主であるお父さんから厳しい教育を受けてきた。

 しかし生来の性格があれだからだろう、幼い頃から不満そうな顔をして稽古に励んでいた姉さんは中学の頃に限界を迎えてしまった。授業のさぼりが目立つようになってきたのだ。

 まぁそれに関しては比較的速やかに事態は収束するのだが……本題はここからだった。

 

 姉さんがバンドを始めた。

 

 そこまでバンドに悪感情を抱いてる訳では無いが……姉さんがバンドを始めることを聞いた時に私は驚いてしまった。単純な疑問が頭をよぎったからだ。

 

『バンドの練習をしている時間があるのか』

 

 姉さんは美竹家の長女だ。当然、大人になったら当主の座を継ぐことになっている。

 だからこそ、その稽古は私のよりも厳しいものであるし、到底バンドの練習に割いてる時間なんてないだろう。

 

 では、どうやって、その時間を作り出すか?

 姉さんがバンドを始めた数日後に辿り着いたその答えは、実に簡単で単純なものだった。

 

『姉さんが華道の稽古に顔を出さなくなった』

 

##########

 

「ただいま帰りました」

 

 あれから姉さんを連れ戻すこともなく、私はそのまま家に帰ってきた。当主になることは無いが、私自身も華道の稽古をつけてもらっているからだ。

 

「お帰り」

 

 穏やかな、しかし厳格さがある声が帰ってきた。

 私のお父さんだ。和服姿でリビングの椅子に座っている。

 

「学校はどうだった」

「特にこれといったことは……あ、今度懇談会があると先生から連絡がありました」

「ふむ。書類はあるか?予定を開けておこう」

 

 バッグからプリントを取り出して渡す。父さんは眼鏡をかけてそれを読み始めた。

 

 厳しい人ではあるが、どこまで行っても父親であり私の家族だ。平時ではこのように、普通の親子として接している。

 まぁそもそも次期当主ではない私は、姉さんよりも"親子である"という感覚が強い気がしなくはないが。

 

「それで、父さん。華道のお稽古のことなんですが……」

「あぁ、いつも通りの時間から始める。お前も用意をしておきなさい」

「いえ、そうではなく……姉さんのことです。」

 

 瞬間、少し空気が重くなるのを感じた。

 

「……蘭か」

「……はい。今日のお稽古も、用事があるとのことで……恐らく来れないかと」

「……まったく……わかった。お前は早く支度をしてきなさい」

「……わかりました」

 

 失礼しますと、一言言ってリビングを出る。

 向かう先は自分の部屋。荷物を置きにいかないといけないし、華道の稽古のための用意もそこに置いてあるからだ。

 

 少し早歩きで目的地へ向かう。

 

 階段を登りきり、ドアを開け、辿り着いたそこで、私はカバンを投げ捨てた。

 そして何も言わずベッドにダイブする。

 

 枕を掴み、顔をうずめて、心に溜まった感情をを思いっきり叫んだ。

 

 

 

 

「………あーーーーもう本っ当に面倒くさい……!」

 

 

 

 

 

 声は抑える。だが本音だ。実に面倒くさい。

 

 

 

 姉さんは頑固で意地っ張りで自由奔放。父さんはそれにいい顔をしていない。

 そりゃそうだ、次期当主が完全に稽古そっちのけで趣味に走ってたら誰だってそうなる。

 

 

 

 しかし、私はそこに関して憤ってるのではない。

 

 

 

―――私は知っているのだ

 

 

 

 実は、父さんはバンド活動そのものに反対はしていない。

 彼は一言も『バンドをやめろ』『バンドをやるな』とはいってないのだ。

 私が疑問に思っていた『時間』に関しても、特に問題はなかったのである。

 ただ、あまりにも姉さんが華道を疎かにしているから顔を顰めているだけで。

 

 

(多分姉さん気づいてないんだろうなー……いや、理由が理由だし意固地になってるのか……?)

 

 姉さんが何故ここまでバンド活動に打ち込んでいるのか。

 何故次期当主である彼女が、稽古そっちのけでギターを弾いて歌を歌っているのか。

 

 その理由は実に単純、

 

『縛られたくないから』だ。

 

 姉さんも華道が嫌いなのではない。

 ただあまりにも今までが制限され過ぎていたから、それに反発しているだけなのだ。

 バンド活動が好きだというのもあるだろうが、そこに逃避の感情が1ミリも介在してないかといえば嘘になるだろう。

 

 彼女は自由が欲しいのだ。

 時間が欲しいのだ。

 好きなことがしたいのだ。

 

 父さんのことは嫌いではない。華道も嫌いではない。

 

 ただ、彼女は何かが彼女を縛るということが嫌いなのだ。

 父さんと華道は彼女を縛っているから、だから嫌いだと言っているのだろう。

 

 

 父さんは姉さんのバンド活動への肯定の姿勢を明確にせず、姉さんは父さんが『バンド活動を反対し、華道で縛ろうとしている』と思っているからこそ反発する。

 

 姉さんが華道もバンドもきちんと両立させる意思を見せたのならば、父さんは明確に肯定の意思を示すだろう。

 姉さんはやると言ったらやる人だ。頑固な性格は、状況が変われば『折れない心』という強い武器になる。そこは父さんも認めているに違いない。

 

 姉さんがハッキリと父さんの思いに気づき、理解したのならば彼女は華道の稽古にも顔を出すようになるだろう。

 

 

 

 問題はどちらも一向にその本心を示そうとしないことだ。

 

 

 

 まぁ長々と説明したが、要するに

 

(姉さんも父さんも、親子揃って不器用かっ!!!!!)

 

 互いが互いに不器用なせいで、親子ですれ違いが起こっているだけなのだ。

 そしてそのすれ違いから発生する空気の重さで私の胃がダメージを受ける。理不尽。

 

(胃がキリキリする……)

 

 ベッドから立ち上がり、よろよろと歩き出す。目指す先は胃薬がストックしてある私の机の引き出しだ。彼とはもう長い付き合いになる。

 

(……早く仲良くなってくれないかな本当に)

 

―――1番の親友が胃薬とか、笑い話にもならないよ!!!

 

 心の中でそう叫んだ私を、誰か助けて欲しい。畜生。

 

##########

 

―――この物語は

 

―――とある華道の名家に生まれた一人の少女が

 

―――不器用でツンデレな姉と父親に振り回される

 

―――それだけのお話




美竹親子『自分、不器用ですから』
主「」

続き?そんなもの、ウチにはないよ……
終わり!閉廷!

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