比企谷八幡は誰よりも青春している。   作:赤茶犬

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プライベートブラウザモードで10個くらいの小説並行して読んでたらタブが何故か全消しされて何を読んでたか正確に思い出せない悲しみのまま別に投稿する予定のなかった小説を投稿。
続くかはわからない。



プロローグ

 

世界は残酷で理不尽で、そしてとても醜い。

中学3年の頃に俺はそれを悟った。

 

きっかけは去年にまで遡る。

 

俺はとある女子に告白した。

好きです。と。

少女は困ったような笑みを浮かべつつ、それを断った。

まあ、こちらの一目惚れのようなものだったし、しょうがないのだろう。

 

でも当時の俺はその子にひどく惹かれていたので落ち込んだ。

 

その日は金曜日だったので、丸2日たっぷり寝込んで妹に慰めてもらったあと、学校に行った。

 

そして見た。

 

教室の黒板には、デカデカと文字が書かれていて、ご丁寧に装飾までされていたそれには、

 

『比企谷、●●に告る!』

 

見て頭が真っ白になった。

 

どうして知ってる。

 

誰かに見られたのだろうか。

 

それとも──。

 

その時、彼女がやって来た。

 

彼女は黒板を見ると、顔を真っ赤にして……怒った。

 

それはもうカンカンに。

 

理解が追いついていない俺をおいてこれをやった当事者たちを集めて、説教して。先生がやって来て止めるまでそれは続いた。

 

俺は一瞬でもよぎってしまった恥知らずな感情を捨て去ると、嬉しい気持ちのまま、自分の席に着いた。

 

昼休みになって、彼女が話しかけて来た。

 

『ごめんね〜比企谷くん。なんかアタシの友達が変なことしちゃってさ。いまあの子たちと喧嘩しちゃって、居場所ないの。ね、ご飯一緒に食べよ?』

 

俺はその言葉に驚いた。

俺が頷くと彼女は俺の机でそのまま弁当を広げて食べ始めた。

俺も慌てて弁当を広げて食べ始める。

 

彼女との会話は楽しかった。

 

最初はお互いに告白後ということで気まずく、気を遣いあってはいたが、2年生が終わる頃にはすっかり仲良くなって、俺は初めての親友(ほんもの)といってもいいものを手に入れた。

 

しかし、それはすぐに手放さなければならなかった。

 

他でもない、俺自身の手で。

 

 

中学3年になって、俺と彼女はクラスが離れてしまった。

少し寂しさを感じたが彼女はそれでも、少し疎遠になっていた幼馴染と一緒なんだ、と自慢していた。

 

『疎遠になってるのに自慢になるのか?』

 

『うーん……●●●とは、長い付き合いだからさ、いつか仲直りしたいんだ!』

 

あはは、と笑う彼女を見て俺の頬も緩む。

 

『……うん、そいつとまた、仲良くなれたらいいな』

 

『それより、八幡もアタシ以外の友達作りなよ!おしゃべりの練習する?』

 

『余計なお世話だっての』

 

それが彼女と交わした最後の会話だった。

 

 

3年生になって、俺は自分が誰と仲良くしていたか嫌でも気付かされた。

 

それは彼女も気づいていない彼女が生み出してしまった闇。

 

容姿が整っており、細やかな気遣いに明るい性格。

学園のアイドルじみていた彼女と学園の村人Hくらいの俺が仲良くなっていたのが、奴らの気に障ったのだろう。

 

俺はいじめを受けていた。

 

はじめは小さなものだったが、それはだんだん大きなものとなっていった。

 

その時、俺が感じたのは真っ先に、“焦燥”だった。

俺にこれ以上彼女が関われば、最悪彼女が壊されてしまう。

 

初めて手にした、何よりも大切な親友(ほんもの)を。

 

だから俺は彼女から距離をとった。

 

はじめは彼女も戸惑っていたようだったが、1ヶ月もすれば俺たちはまた他人に近い存在に戻っていた。

 

それは、とても悲しいことではあったのだが。

 

 

そうしているうちに俺は居場所がなくなっていた。

唯一の居場所を手放せば、当然ではあったが、今までのようにはいかない。一度表に出てしまえば再び影に戻ることは難しい。

 

俺はだから逃げたんだ。

 

 

ここまでは、俺が封印した記憶。

 

 

そして、あいつらに出会った。

 

 

俺はいつもどおり、いじめから逃れるためにクラスを抜け出した。

 

あくまでこのいじめが表に出ないのは、いじりのように見えるから、だろう。

 

クラスをあげて、俺を使って笑いを取る。

傍目から見れば俺はいじられキャラなのだろう。先生たちもその意識は変わっていないように見える。

裏では俺は蔑まれ、殴られ蹴られ、持ち物を捨てられ。

 

そんな日々が続いていた。

 

だから俺はなんとなく具合が悪くなったといって保健室に入り浸りになるようになった。

 

そのうち仲良くなった保健室の先生に、このことは内緒だよと前置きされてからあることを教えてもらった。

 

『気分が優れないようなら、屋上に行ったらどうかな?あそこの景色はいいよ。私もストレス溜まったらよく行くんだ』

 

教師がサボりを勧めてどうする。ジト目で問いかけるが先生はけらけら笑うとなんでもないように言った。

 

『こうでもしないと、あなた、壊れちゃうわよ?』

 

……。

 

先生には、見抜かれていたようだ。

 

『助けてはくれないんですか?』

 

『私は求められればいつでもあなたを助けるわ。でも、あなたはこのことが表面化するのを恐れてる。……きっと、あなた自身より大切なものがあるのでしょう?』

 

好きな女の子とか!

と、最後に茶化して終わる先生に、俺は素直に頭を下げて感謝を伝えた。

 

『──うん。でも、辛くなったらいつでも言っていいんだよ?私は、あなたの味方だからね』

 

 

屋上に行くと、先客がいた。

 

『あれー?どちら様ー?』

 

『こっちのセリフだ。誰だ、お前ら』

 

『ちょ、モカ。多分この人うちの学年の人じゃないよ』

 

『はぁ……なんだ、お前らも居場所ないのか?』

 

『私よりこの蘭ちゃんがねー。おにーさんも、そんな感じー?』

 

そいつのそんな喋り方が面白くて、頬を緩ませながら俺も言った。

 

『ああ。ちょっと、ふわふわした問題抱えててな。居場所ねえんだわ。よければ友達なってくんない?完全にぼっちでさ』

 

 

……ああ、今思えば何ほざきやがったんだろうな、俺と思うよほんと。

 

 

そこまで見て、俺の意識は覚醒した。

目を開け、起き上がると満面の笑みを浮かべる妹、小町の姿があった。

 

 

「おっはよー!お兄ちゃん、朝だよー!朝からお兄ちゃんを起こす妹って、小町的にポイント高い⁉︎」

 

「はいはい、高い高い」

 

バカなことを言う小町を軽くあしらいつつ、俺──比企谷八幡は身だしなみを整えると制服に着替え、リビングに降りた。

 

「あ、そうだ今日も蝶ヶ島さんたち来るの?」

 

朝ごはんを食べているとふと小町が俺に話を振ってくる。

 

「あ?あー、来るんじゃないか?今日はあのクズ留学から帰ってきてから最初のバンド練あるし」

 

その言葉に小町は目を輝かせる。

 

「お兄ちゃんすっごく変わったよね!なんていうか、青春真っ只中って感じ‼︎」

 

その言葉に目を瞬かせつつもそのあとに苦笑いして席を立つ。

 

「……はっ、なんだそれ。俺は学校ではぼっちだぞ?なんなら総武高校で影がうすいランキングトップに立つまである」

 

食べ終わった食器を水につけ、弁当とドラムスティックを学校のカバンに詰める。

 

「………そーいうとこはまだゴミぃちゃんだよね」

 

「なんだその造語」

 

「まぁいいや。お兄ちゃん、送ってってよ!」

 

「ああ?……まぁ、構わないぞ。40秒で準備しな」

 

 

比企谷八幡は、誰よりも青春している。

 

 





何 番 煎 じ ?

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