響が可愛いと思ったから勢いだけで思わず書いちゃったような艦これ二次   作:水代

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艦これイベント始まったね。
水代は現在E-2で苦戦中だよ。
ようやく攻略の目処が立って、明日が勝負ってとこだよー。


До свидания. (ダ スヴィダーニャ)

 夢を見ている。

 夢の中にいて、自身はそれを自覚する。

 暗い暗い闇の中、自分は一人そこに立っている。

 辺りには何も無い、ただただ闇が広がっており、けれど自身の姿だけは不思議と見えた。

 手を伸ばす。意味は無い、ただそうしなければいけない気がした。所詮夢の話だ、理屈などは無い。

 そして、伸ばした手を誰かが握る。顔を上げるとそこにいたのは……………………。

 

(あかつき)

 

 彼女の名を呼ぶ。けれど彼女は自身の手を握ったまま、寂しそうに笑い…………そして繋いだ手を離し、振り返って歩いていく。

「待って、暁!」

 歩き出した彼女を追いかけようと、自身の足を踏み出…………せなかった。

 どうしてか、自身の足はまるで鉛にでもなったかのようにピクリとも動かなかった。

 やがて暗闇の中へと消えていく彼女の背を見つめながら、ギリリ、と奥歯を噛み締める。

 そして硬く握った拳、をけれど包み込む手のひら。

 振り返れば、そこに彼女がいた。

 

(いかずち)

 

 いつも笑顔だった彼女の表情は、けれどいつもと違ってとても寂しそうで。

 自身の手を包み込んでいた両手を解くと、彼女もまた自身に背を向け去っていく。

「待って、雷!」

 追いかけたい…………だと言うのに、この足は一歩たりとも前へと進んではくれない。

 やがて、彼女も闇の中へと消えていき、また自身だけが取り残される。

「待って…………待って…………」

 自身の声だけが辺りへ響き、そして誰も戻ってはこない。

「…………………………っ」

 震える。全身が………………得も知れぬ感情が自身の心を抉る。

 歯をかみ締め、唇を固く結び、嗚咽を漏らさないように必死に堪える。

 

 そして…………………………。

 

(ひびき)

 

 呼ばれる、自身の名。途端に自由になる自身の体。

 すぐさま振り返る、そこにいたのは…………。

 

(いなづま)

 

 半ば予想していた彼女だった。

 けれどそんな彼女に、一体自身はなんと声をかければいいのか分からず、戸惑う。

 そして自身がそんな風に戸惑っていると、彼女が寂しそうに笑い、告げる。

 

「さようなら、です」

 

 目を見開く。自身に背を向け、歩き出す彼女へ向かって走りだす。

「行かないで、電。私を、一人にしないで!!」

 けれど、その手が彼女へと届く直前…………彼女の姿は闇へと飲み込まれ、自身の手は空を切る。

「う…………あ………………あああああ…………」

 限界だった。堪え、耐え、溜め込んできたものが一気に決壊しそうになり…………。

 

「ヴェル」

 

 呼ばれたその名に、感情が噴出しそうになるのがピタリと止まる。

 彼女たちと違って、姿は見えない。

 だが、その声を間違えるはずも無い。

 

「ヴェル」

 

 不思議と心が安らいだ。

 先ほどまでまるで時化(しけ)のように荒れ狂っていた感情が。

 彼の声を聞いただけで、まるで凪のようにピタリと収まる。

 

「ヴェル」

 

 三度目の声。

 ああ、そうだ…………いい加減、起きないといけない。

 だから、そう、言葉にしよう。

 

 過去に別れてしまった彼女たちに。

 

 過去に捕らわれ続けていた自分に。

 

До() свидания(スヴィダーニャ)(さようなら)」

 

 

 * * *

 

 

「ヴェル、起きろ、ヴェル」

 目を閉じ、瞑想する彼女の肩を揺らすとやがて、その閉じられていた目がゆっくりと開き、アイスブルーの綺麗な瞳がこちらを見つめる。

「…………おはよう、司令官」

「ああ、おはよう。リンクはできたか?」

Да(ダー)…………肯定だよ」

 呟きつつ、半分ずれた白い帽子を抑えながら、ヴェールヌイが立ち上がる。

 その背や脇に取り付けられた武装、先ほどまでは無かったそれを見て、思わずため息を吐く。

「相変わらずの様子だな、同調は…………だが慣れてくれ、こればっかりは」

「仕方ないさ…………装備がなければ戦えない。けれど艦娘の存在意義は戦いなんだから」

 自嘲気味に呟き、けれどどこか憂鬱そうにため息を吐く。

 

 艦娘とはそれ単体で深海棲艦と戦える…………のではない。艦娘にはそれぞれ、自分のためだけの装備と言うものがあり、それを装備することで初めて擬人化した艦隊と呼ばれるその強さを発揮できる。海に浮かぶ能力も、敵艦隊を轟沈させる攻撃力も、敵の砲撃から身を守る力も、全てその装備がなければ発揮できない。けれど非戦闘時にまでいつもいつも装備を着けているわけではなく、出撃前にそれを装着してからいざ進撃…………と言う形を取っているところが主だ。まあ一部、前線の戦闘の激しい地域はいついかなる状況でも出撃できるよう常に装備を着けたまま、と言うことが往々にしてあるらしいが。

 

 問題は、その装備を装着して数秒程度だが、艦娘は夢のようなものを見るらしい。それは、装備と艦娘自身が同調している証拠であり、艦娘がその真価を発揮できるようになった、と言う合図のようなものでもある。

 それは記憶のフラッシュバックであり、当時の艦隊である自身に焼け付いた思いであり、何よりも忘れてはならないことである。だから、ヴェルの場合、それは悪夢だった。

 駆逐艦響ではなく、駆逐艦ヴェールヌイであること、それは何よりも守りたかった大切な仲間たちを守れなかった後悔と、そしてもう一度機会を与えられた時に、今度こそ守りぬくと決めた誓いである…………とヴェルは言っていた。

 

 戦いなんて、しないにこしたことは無い。

 昔、響がそう言っていた。そして、だからこそ彼女はここに送られてきたのだろう。

 だが戦わなければならない…………それは彼女たちに定められたものであるから。

 だからこそ、ヴェルは今日もまた出撃していくのだろう…………。

 

「ほら、元気出してけ…………これから出撃なんだからな。そんなんじゃ、またやられて帰ってくることになるぞ」

 だとすれば、提督としての自身の仕事は、そんな彼女のモチベーションを戻してやることだろう。

「む…………それは嫌だね、負けたらまた司令官に特訓させられるし、何より、負けるのは好きじゃない」

 多少やる気を取り戻したのか、ヴェルが少しだけ気合を入れて、深呼吸する。

 

「準備はいいな?」

「ああ、いつでも行けるよ」

 港出口の海の上に浮かぶヴェルの言葉に、自身は腕時計を見つめる。

「現在午前一○○○(ヒトマルマルマル)。作戦は鎮守府近辺の海域に紛れ込んだ深海棲艦の撃破。もし一二○○(ヒトフタマルマル)までに見つからなかった場合、一度戻って来い、以上だ、質問は?」

「いや、無いよ」

「そうか…………なら、駆逐艦ヴェールヌイ、出撃だ」

Верный(ヴェールヌイ)、出るよ」

 ヴェルが呟き、その足に力を込めた…………と、同時に初速30キロ毎時ほどの速度で海を滑り始める。

 そうして、速度がぐんぐんと上がっていき、あっと言う間に見えなくなる。

「速い速い……………………さて、ではヴェルの無事を祈りつつ、俺は何をしようか」

 

 そうだな…………まずは、疲れて帰ってくるであろう、あいつのために、昼飯でも作っておくか。

 

 

 * * *

 

 

 高速で海面を滑る。

 風を切り、波を避け、水面を揺らしながら進んでいく。

 現在時刻一一二○(ヒトヒトフタマル)、すでに出撃から一時間以上もの時が経っている。

 この海域に紛れ込んだ深海棲艦とやらの姿はまだ見えない。

 時間的に見えても、この区域にいなければ一旦帰ったほうが懸命かもしれない。

 状況を冷静に判断する、それを誤れば待つのは死だけだ。

 周囲を警戒する。遠くに見える敵の艦影を見逃さないように。

 そうしてしばらく目を凝らしていると、遠くに何かが動くのが見える。

「………………нашёл(ナーシォル)(見つけた)」

 やがてはっきりと見えてきたそれは、巨大な砲をいくつも下げた人型。

 人型であって人ではないソレ、ソレに気づいた瞬間、思わず呟く。

「…………戦艦ル級」

 否、ただのル級ではない。赤く光るあの目、あれは…………。

 

「戦艦ル級elite…………」

 

 単艦でいるところを見ると、どうやら取り巻きは倒されたらしく、一人さ迷ってきた…………否、こちらに誘導されたのだろう。

 戦艦は砲撃戦の主力として作られた艦だ。その船体も、砲身も、操行も、自身などとは比べ物にならないほどに大きい。

 こちらの12.7cm連装砲の砲撃が百発当たっても戦艦の装甲を貫ける気などしないが、戦艦ル級の16inch三連装砲に一撃でも当たれば自身の薄っぺらな装甲などいとも容易く貫かれ、大破することは簡単に予想できた。

 駆逐艦対戦艦。それが一対一と言う条件である以上、誰が見たって絶望的としか言い様が無い。

 

 それが、艦隊同士の戦いなら…………だが。

 

shturm(シュトゥールム)(突撃)」

 

 それは号令。自身のスイッチを切り替えるための。

 ココロは熱く、アタマは冷たく。

 自身の出せる最高速度で戦艦へと突進していく。接敵まであと三十秒。

 高速艦である自身は、その最高速度は戦艦とは比べ物にならない。

 最速として有名な艦船と言えば駆逐艦島風だろうが、けれど勘違いをしている提督も多い。

 島風は最速ではあるが、それは長い目で見た話である。人間と同じだ、艦船だって全力疾走を続ければすぐにバテて動けなくなってしまう。速度と維持と燃費、それら全てを兼ね備えているからこそ島風は最速であり、さらにはそこに攻撃性能までもをも両立してしまっているからこそ、島風は駆逐艦の最高峰なのだ。

 つまり、何が言いたいか、と言うと。

 

 後々のことを考えないのなら、ヴェールヌイにだって超高速は出せる。

 自身が航海していくための命綱である燃料が目減りしていくのを感じ取りながらも、さらに速度を上げる。

 その速度に波が派手に巻き上がり、さすがの戦艦ル級も気づいたらしい。

 その砲身がこちらに向けられ…………そして。

 

『艦隊なんて言っても所詮は人型。戦艦なんて言って敵も人型、だったらいくらでもやりようはあるだろ?』

 

「まずは、意図を外せ…………だよね」

 急制動をかけながら、体を半回転させる巻き上がった波が一時的に自身の姿を隠し、砲撃を撃とうとした戦艦の手が止まる。

 それから次は…………。

「撃てっ」

 さらに急発進、波を突っ切り、一直線に戦艦へと向かう。

 そして、移動しながら12.7cm連装砲を戦艦へと向け、撃ちだす。

 射程にはまだ少し遠いが、戦艦ル級の手前辺りの海面を荒らし、このままでは当たる、とでも感じたのか、ル級が少し下がる。当たり前ではあるが、長距離射程砲を持つル級の攻撃は多少下がっても十分攻撃範囲内である。

 今度こそ目の前の相手を撃ち抜こうとル級が構え…………。

 

『目で物を見てるんだ、だったら目の動きで狙いは分かるだろ? しかもエリート以上は電探持ってて狙いが正確って言うなら逆に避けやすいだけじゃないか』

 

「簡単じゃ…………ないけどね!!!」

 16inch三連装砲が火を噴いた瞬間に進路を横にずらす。

 こちらを正確に狙っていた敵の砲撃が先ほどまで自身のいた場所を吹き飛ばす。

 だがこちらへの被害はゼロだ。せいぜい波で少し濡れた程度である。

 ル級が二撃目を装填しようとしているのが見える。だがもう遅い。自分はここまで近づいた。

 ここはすでに…………。

 

「私の射程だよ」

 

 相手へと狙いを定め、魚雷を発射する。

 袖口にある魚雷発射管から複数の魚雷が発射され、一直線に戦艦へと向かう。

 火砲を装填中で、しかも低速艦である戦艦にそれを避けるような俊敏な動きはできず…………。

 

 ドドドドドォォォォォォォ

 

 巨大な水柱が上がり、戦艦ル級が崩れ落ちる。

 魚雷は射程が短いものの、一撃で戦艦の船体に穴を空けることもある強力な武装だ。

 それを数本まとめて叩き込まれたのだ、さしものエリート戦艦であろうと耐久の限界に達していた。

 倒れこみ沈んでいく敵艦を複雑な表情で見つめる。

 やがてその姿も見えなくなったころ、一度目を閉じ、そして開く。

「…………帰ろうか」

 私たちの家へと。

 

 言葉にはしなかった、だがしなくても良いのだと思う。

 

 ぎゅっと、手を握り締める。

 生きている、それを実感する。

 ル級が沈んで言った場所へと振り返る。

 数秒それを見つめ、もう一度だけ目を閉じ。

 

До() свидания(スヴィダーニャ)(さようなら)」

 

 今度こそ振り返らなかった。

 

 




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