響が可愛いと思ったから勢いだけで思わず書いちゃったような艦これ二次   作:水代

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回線不調だったので、ウイルスチェックかけたら重過ぎて、執筆くらいしかできなかったので、書いてたら、なんかもう一話書き終わっちゃった不具合(

前回の話で、響のケッコン台詞を言わせることが出来た俺は勝ち(何に

そしてここに来て新キャラ登場(


今さらですが、二話連投です。前話見てない人はそっちを先にどうぞ。


Out, out, brief candle! Life’s but a walking shadow

 戦況は一言で言えば悪かった。

「正直言って、後何度戦えそうかな? 長門」

 自身が提督の問いに、戦艦長門が数秒思考し、答える。

「あと三度、四度が限界だな」

 ここにいたるまでに都合十度にも渡る深海棲艦との激突があった。

 当初の優勢はどこに行ったのか、現状を簡潔に言えば押されていた。

「一時押し返すことは可能だろう…………だが、やつらが動かない以上、そこまでだな。戦線を支えきれず、防衛ラインを後退させるしかないだろう」

 長門の言うやつらは、敵の主力艦隊のことだ。ことここに至って、まだ敵の主力は動かない。

 まるで何かを待っているかのように。

「………………………………………………………………」

 思案にふける自身の提督の思考を邪魔しないように戦艦長門は口を噤み、そして海を見る。

 現在自身たちが仮宿としているこの鎮守府から見える範囲に敵の姿は無い。

 だが少し海域を進めばすぐに敵の姿が見えてくる。

 連合が押し返され始めたのはいつからだっただろうか。

 最初は勝っていた…………否、()()()()()()()()()()

 けれどかつてのミッドウェイの時のように連戦連勝により油断するどころか、気が抜く暇すら無いのが現状だ。

 止まらないのだ、敵の増援が。

 最初に一週間で倒した敵の数は五十を超える。この時点がかなりの数ではあるが、水雷戦隊ばかりの軽量級の敵ばかりだったからか、たいした被害も無く当初は士気も上がって問題無かったと言える。

 一週間し、こちらの増援がやってきてからさらに百の敵を倒した。二つの艦隊が交互に出撃を繰り返し、敵勢力を削っていった結果だったのだが、そこでおかしなことに気づく。

 敵の数が一向に減った様子が無いのだ。倒しても、倒しても、敵が増えているような錯覚すら覚える。

 

 それが錯覚でないと気づいたのが今週に入ってから。

 

 明らかに敵が増えている。しかも軽空母や重巡洋艦なども混じり始めており、徐々にだがこちらの被害も増えてきていた。

 そして今日の戦いではついに敵に戦艦が混じった。それによりこちらの駆逐艦が一隻中破され、現在入渠中である。

 すでに倒した敵の数は三百を超えている。戦果で言えば、先の連合艦隊をもはるかに超えた結果と言える。

 だがそれでも…………下手をすれば海域から敵の姿が一掃されるほどの数を倒したのにも関わらず、敵の数は増え続けていた。

 それは長門の脳裏に先の連合の敗北の切欠となった出来事を思い起こさせ、長門が背筋を震わせる。

 このままで大丈夫なのか、とも思う一方でけれど、提督なら大丈夫、とも思う。

 その提督に再び視線をやった瞬間。

 

「よし」

 

 提督が口を開く。細めた目から伺える瞳は、強くギラついた光が感じられ。

 

「決戦だ」

 

 戦艦長門の口に笑みが浮かぶ。

 

 ああ、これだ。

 

「亡霊どもが…………この私を、舐めるなよ」

 

 この目が、いつも自身を惹きつけて止まないのだ、と。

 

 

 * * *

 

 

 ぎーこぎーこと、アームチェアが揺れる。

 電の部屋の改装の時についてに買ったものだが、存外気に入っている一品だ。

「ふぁ…………ねむっ」

 揺ら揺らと揺られていると、思わず欠伸が出る。

 昨夜はこの鎮守府に珍しく電話がかかってきており、その対応とその後の処理のせいで少しばかり寝不足だ。

 簡単に言えば、今日この鎮守府に人が尋ねてくる。

 そのために出向かえの準備をしようとしていたのだが、電話がかかってきた時刻がすでに十時を超えており、うちの艦娘たちは全員就寝していたのだ。

 現在暁、ヴェル、電の三人には応接室の掃除をやってもらっている。

 自身は昨晩の応対で遅くなってしまったので、今少しだけ休んでいた。

 あまり本格的に寝入るのも不味いかと思い、この間買ったばかりのアームチェアを引っ張り出してきたのだが、存外気持ち良く、正直寝入ってしまいそうだった。

「不味い…………本気で寝そう…………」

 起きないと。内心でそう思うも、睡魔に抗えず段々と意識が薄れて行き…………。

 

 

「しれーかーん、終わったわよー」

 扉を開けて暁が室内へと入る。だがいつもそこに座っている男の姿は無い。

「あら?」

 疑問に首を傾げ、傾げたまま視線を横に移すと、そこにアームチェアに座る男の姿。

「って、いるじゃない…………司令官、掃除終わったわ……よ?」

 声を上げながら近づく。そうして気づく、よく見れば男が寝ていた。

 近づく。顔を見れば目を閉じ、浅く呼吸している。

「寝てるわね…………」

 目をパチパチとさせながら、ふと鎌首をもたげたいたずら心で頬をつついてみる。

 ぷに…………と言う感触に「あ、思ったより柔らかい」なんて内心で思いながら、意外と癖にになりそうな感触に何度と無くぷにぷにとつつく。

「…………ん…………」

 さすがにつつきすぎたのか身じろぎする男に、暁が手を止めるが、起きる様子の無い自身の司令官に口元が吊上がる。

「ふふーん…………やわらかーい、なんか思ったより癖になりそうで怖いわ」

「何がだい?」

 と、瞬間、背後で聞こえた声に暁が飛び上がりそうになるほど驚き硬直する。

 バッと振り返り、そこにいた自身の妹に思わず脱力する。

「ひ、響…………いたの」

Да(ダー)…………終了の報告に行くと言ったままなかなか帰ってこないから様子を見に着たんだよ」

 と、そこで響が眠ったままの司令官に気づく。

「…………寝てるね」

「寝てるわね」

 じっと司令官を見ていた響が、ふっと手を伸ばし、その頬に触れて…………軽く引っ張る。

「…………柔らかいね」

「……………………そうね」

 やっぱこいつ私の妹だわ、目の前の言動で思わずそう思ってしまった自分は悪く無いと暁は考えた。

 

 

 * * *

 

 

「おねー…………まだつかないのー?」

 船に揺られながら、退屈そうに海を眺める少女が問う。年の頃十代後半と言ったところか、二十代と言うにはまだ少し幼さの残る顔つきと雰囲気である。長い黒髪を伸ばすがままにしており、腰の辺りまで伸びた黒髪が風に靡く。

「もう少しよ、もう少し、さっきも同じこと聞いたじゃない、もうちょっと堪え性を持ちなさい」

 それに答える(おねー)と呼ばれた少女は、操舵室の椅子に座ってタバコを咥えていた。外見は年のころ十代前半と妹よりも幼く見えるが、全身をだらしなく伸ばし、タバコを咥えながら面倒そうに天井を見つめるその姿は(いささ)か若さと言うものが欠けて見えた。また妹と同じ長い黒髪を一つ括りに、自分の前側に垂らしては指先で弄んでいる。

 どちらにも言えることだが非常に手持ち無沙汰と言った様子で、退屈そうにしている。

「って、さっきも聞いたけど、さっきももう少しって言ってたじゃん、ていうか場所分かってるの?」

 疑わしげな妹の問いに、姉はさも当然と言った様子で、妹とは違い平坦な胸を張りながら。

「お姉ちゃんに任せなさい」

 そう言う。一体どこからその自信が出てくるのは妹が呆れた表情で見つめながら、広大に続く海を眺める。

「…………もうすぐ会えるね、灯夜くん」

 楽しみだ、と言わんばかりに笑う妹の様子に、姉が苦笑する。

 と、その時。

司令(しれぇ)! 五時の方向、敵です!」

 もう一人、船に搭乗していた少女が海を指差しながら叫ぶ。

「あー? 面倒だし無視でいいよ、それとも()っときたい? 雪ちゃん」

「いやー正直もう時間が不味いですしぃ、無視でもいいんじゃないでしょーか?」

「じゃ、直進、直進、かっ飛ばしていこう」

「よーそろー!」

 ギアを上げ、唸りを上げるモーター。激しい水飛沫を撒き散らしながら、海上を一隻の船が爆走していく。

「おねー、そろそろ昼だよー」

「あいあいさーって私ゃ(わたしゃ)女だ!」

司令(しれぇ)? さっきから何を言ってるんですか?」

「なーんでもないよ、それ全速前進だ雪ちゃん!」

「はい!」

 

 

 * * *

 

 

 唸り声が聞こえたような気がして、思わず海を見る。

「…………今何か聞こえなかったかい?」

「何かって…………聞こえるわね」

 暁も気づいたのか、音の聞こえる方向…………海を見る。

 二人して顔を合わせ、頷く。

「行くわよ、響」

「分かってるよ、暁」

 部屋を飛び出し、波止場を目指して走る。

 そうして、さして広くも無い鎮守府だ、すぐに波止場へと出て…………。

 

 水平線の向こう側から猛然とした勢いで迫る一隻の船に目を丸くする。

 

「え、何あれ?」

 暁が思わず漏らした言葉は、まさしく自身の内心と全く同じものだった。

「司令官が今日は昼からお客さんが来るって言ってたけど…………もしかしてアレ?」

「どうだろう…………けど、ここに来る人なんて滅多にいないはずだから、多分そうなんじゃないかな」

 少なくとも、自身がここにいた数年の間に来た客など本当に数える程度でしかない。

 だからきっと、間違いは無いのだろうが…………正直間違いであって欲しい。

 そうこうしているうちに船は物凄い勢いのままどんどん近づいてきていて…………。

「ってあれ…………私の見間違いじゃなければ、全然減速してないように見えるんだけど」

「正直見間違いであって欲しかったけど、私にもそう見える」

 ここにいるのやばくない? と暁が目で訴えかけてくる。正直全く同意見だったので。

「「逃げよう」」

 さすが私の姉だ、ここであっさり見捨てる選択肢が出るあたり、と内心で思いつつ二人して波止場から退避する。

 そして二人して安全なところまで退避した直後。

 

「いやっふううううううううううううううううう!」

「おねえええええのばかあああああああああああああああ」

「あははははははははははははははは」

 

 絶対に関わりたく無い集団が船に乗って突っ込んできて…………。

 

「ドリフトォォォォ、スピィィィィィィ、アクセルゥゥゥゥ」

 

 なんか適当なことを叫びながらブレーキをかけながら舵を切る。

 車じゃないし、と言う内心のツッコミは当然届きはしないが、急な方向転換に船体が傾き、そして。

 

「あ」

「きゃあああああああああああああああああああ」

 

 デッキに腰掛けていた少女が船体から放り出される。

 

「雪ちゃん、ゴー!」

「了解です 司令(しれぇ)!」

 

 と、同時に別の少女が船体から飛び出し、空中で投げ出された少女をキャッチして、無事波止場に降り立つ。

 直後、見事傾いた船体を持ち直した船がその速度を緩め、波止場へと船体を付ける。

 そしてさらに別の少女が降りてきて…………。

「ってあれ、雪風じゃない」

「え?」

 その光景を見ていた姉がふと呟いた名前に驚く。

 駆逐艦雪風。自身と同じ、生き残った駆逐艦。そして、駆逐艦どころかほとんど全ての帝国海軍の艦船の中でも一種の伝説となった船。

 

 簡単に言えば、不沈艦の代名詞たる存在だ。

 

 

 * * *

 

 

 起きたら目の前に今日来る少女二人がいた。

「………………………………なんで居るんだ?」

「やだなー今日来るって言ったじゃん」

「全く灯夜くんは相変わらず抜けてるわけねえ」

 腕組みしながらうんうんと頷く姉妹に、頭が痛くなってくる。

 時計を見ると時刻は十二時。確かに時間的にはぴったりではあるのだが…………。

「なんでうちの艦娘二人があそこで疲れた顔してるんだ?」

「可愛かったから…………ついね」

 またこの人の悪い癖が出たのか、と即座に理解する。可愛いもの猫可愛がりして、可愛がりすぎた猫のように、相手にストレスを抱えさせるのがこの人だ。

「っと…………いい加減おふざけもここまでにしておこうか、狭火神少佐」

「ふざけてるのそっちだけだろって文句はどうせ聞かないんだろうな…………瑞樹葉少将」

「司令官、この人たちは?」

 っと、そこでようやく気力が回復したらしいヴェルがこちらへとやってくる。

「ああ、瑞樹葉(みずきば)(あゆむ)少将とその妹の瑞樹葉柚葉(ゆずは)だ」

 と俺の説明にヴェルが納得しかけたところで、当の本人から待ったがかかる。

「一つ訂正、柚葉は今年から少佐になったのよ」

「瑞樹葉柚葉少佐でーす、よろしくね」

 そう言って敬礼する少女に僅かに驚く。確か彼女は…………。

「柚葉はまだ十八だろ? いくらなんでも、そんな無茶な」

 正直、自身の年…………二十三で少佐と言うのですら早いといわれるくらいなのに。

 確かに昨今の海軍では深海棲艦と艦娘と言う存在によって既存の制度が一度ぶち壊されたせいで、仕官学院さえ出ていれば少佐の地位程度までならすぐにでもなれるが、それでも十八と言うのは早すぎる。

 そんな自身の問いに歩があっけからんとした表情で。

「ああ、それは私のコネね」

 なんの悪びれた様子も無くそう言われると、呆れるしかない。

「さすがにそれは不味いだろ」

 だがそんな自身の言葉に、ふふん、と鼻を鳴らして返す。

「灯夜くん、何か勘違いしてるわね…………別に、私だって妹可愛さでこんなことをした…………分も半分くらいはあるけど」

「半分もあるのかよ」

 ジト目で見ると、げふん、と咳払いをし。

「とにかく、ちゃんと能力も加味して選んでるわ。あなたが思ってるよりもこの娘は優秀なのよ」

「なのよー」

 姉に合わせて笑う目の前の少女にそんな雰囲気は無かったが、まあこの人がその辺りで嘘をつくとも思えないので、本当なのだろう。

 と、そんな自身たちのやり取りを見ていたヴェルが首を傾げつつ。

「なんだか、随分親しげだけど、知り合いなのかい?」

 そう尋ねる。まあそう思われても仕方ないか、と思いつつ。

「まあ、ちょっとした知り合いだよ」

 そう誤魔化した、直後。

 

「お姉ちゃんです!」

「妹でーす!」

 

 この姉妹は人の誤魔化しを嘲笑うかのように、あっさりと告げる。

 さしものヴェルも驚愕に目を見開き、こちらを見てくるので、頷く。

「まあ正確には、両親が居なくなって引き取られた先の家の姉妹だ。だから別に本当の姉と妹ってわけじゃない」

 それでも、家族として自身を扱ってくれたことには、感謝している。

 

 愛も恋も分からない、とヴェルが言っていた。

 

 確かに俺にとっても恋と言うのはよく分からない感情だが…………少なくとも愛は分かる。

 

 母さんと目の前の二人が、俺にくれたものだから。

 

 なんて、本人たちの前じゃ絶対に言えないけれど。

 

 後一つ。

 

 暁やヴェルたち(おまえら)も、俺の家族だなんて。

 

 そんなこと、思ってても絶対に、言わないけれど。

 

 




消えろ、消えろ、儚い灯火!人生は動き回る影に過ぎぬのだ。

Out, out, brief candle! Life’s but a walking shadow

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