響が可愛いと思ったから勢いだけで思わず書いちゃったような艦これ二次 作:水代
察しの良い人だったらもう気づいてたんじゃないだろうか、王道っちゃ王道展開だし。
というわけで、今回は電ちゃんの過去編。
けどどうしよう、なんか思ったよりヌルくなったなあ、もっと絶望マシマシにしないと詰まらん(
「了解なのです」
出撃命令を下した自身に対して、電は不安を感じさせない声音でそう言った。
本当に大丈夫なのだろうか、そんな疑問はある。
だがそれでも、もうヴェルも暁も限界が近い。あと二日、戦い抜ける余裕は無い。
暁の提案に、もう頷く以外の道は無いのだ。
「…………………………」
それでも、心苦しい。本当ならもっとゆっくりと、時間をかけて対応したかった。
けれど現状がそれを許さない。それに、医務室で眠ったままの中将殿のこともある。
中将殿はあの日から三日三晩眠り続けている。いつ目覚めるかは分からないが、一応傷の処置はしてあるが、少なくとも軽々しく移動させていい体ではない。
守らなければならない、場所も人も、時間も。
だから、これは仕方ないことなのだ。そう言い訳して、俺は電に命ずる。
戦え、と。
* * *
電の砲撃で、敵軽巡が大破する。すかさずヴェルがフォローへ入り、大破した軽巡にトドメを刺す。
魚雷発射、そして残りの敵軽巡も轟沈させる。その様子を遠巻きに見ていた俺は安堵の息を漏らす。
「…………どうやら、思ってたより問題なさそうだな」
順調に敵を倒していく二人の姿を見ながら、それでも一抹の不安は残したまま双眼鏡の視点をずらす。
そこに見える敵の中枢艦隊はまだ動かない、それでもいつ動くか分からない以上、見張りは続ける必要があるだろう。
もうすぐ日が暮れる。敵の攻勢の手も緩んできたし、一度二人を戻す必要もあるだろう。
「…………司令官」
と、その時、背後から聞こえた声。振り返ればそこにいたのは暁だった。
「暁、まだ寝ていて大丈夫だぞ?」
「ううん、もう十分寝たから大丈夫よ」
すでに艤装を装着し、いつでもいけると言う心持ちで立っていたことに僅かばかりの頼り甲斐を感じ、苦笑する。
「それで…………その…………電は、どう?」
その問いに、なるほど、と得心した。つまるところ、自分の意見で電を戦場に出すことになったのが気になって、おちおち寝ていられないと言うことなのだろう。
「思ったより問題ない、ヴェルと二人でよくやってるよ」
その答えに、暁が安心したようなため息を漏らす。そして安心したらまた眠気が出てきたのか、暁が欠伸を漏らす。
「眠いならもう少し寝ていていいぞ?」
「ん…………そうするわ」
と、艤装を一旦外し、自身の隣に座る。寝るんじゃないのか? とそう思った自身へと寄りかかり…………。
そのままぽすん、自身の膝の上に頭を乗せた。
「おやすみ、司令官」
そう言って目を瞑った少女に、仕方ないな、と苦笑して。
「ああ、おやすみ、暁」
そう呟いた。
異変が起きたのは、夜だった。
夜の海の警戒と言うのは想像以上に厳しいものがある。
何せ海上は闇に包まれ全く見えない上に、音だって波の音にかき消されるのだ。
慎重に、慎重に、神経を研ぎ澄ませ、どんな些細な変化も見逃さない。
そう言う神経をすり減らすような作業感がある。
だがそうは言っても、実際に戦うのは俺ではない、艦娘だ。
実際に命を賭けているわけでもない俺なのだ、この程度で泣き言は言っていられない。
そうして警戒を続けていたからこそ、すぐに気づく。
敵だ。
深海棲艦も積極的に夜戦を仕掛けてくるようなことは無い、だがたまに群れからはぐれたような敵がぽつりぽつりと機雷原を突破してこちらへやってくることがある。
「…………数は駆逐級が一隻か」
夜戦とは言え、この程度なら問題ないだろう。
暁は三日間の連戦の疲労がまだあるだろうし、電に行ってもらうことにする。
因みにヴェルは暁と交代で鎮守府の中で眠っている。
「電、頼めるか?」
「了解なのです…………電、出ます!」
すぐそばに待機していた電が海へと向かっていき、海上に立つ。
そうして夜闇の中へと消えて行った。
* * *
駆逐艦電は敵のすぐ傍までやってきていた。
夜戦と言うのはとにかく目視がし辛い。夜目に慣らせば、辛うじて何か見えるかもしれないが、それでも昼戦と同じ距離での正確な砲撃や雷撃など望めるはずも無い。
だから近づいて一撃のうちに敵を落とす。夜戦と言うのは必殺の一撃の叩きつけ合いであり、だからこそ、先手を取ると言うのは重要なことだ。
幸い相手は一隻、これが二隻も三隻もいるようなら、一隻を攻撃している間に他の敵から攻撃を受けると言う危険性もあったかもしれないが、一隻なら一撃で決めてしまえば問題ない。
「…………嫌な感じなのです」
電とて元が軍艦である以上、敵と戦うことは当然だと思っている。だがそれでも戦争は好きではない、命を奪うことは好きにはなれない、負けたいわけではない、だがそれでも助けることのできる命は助けたい。
だから戦うことは好きではない。否定はしない、だが肯定も出来ない。
かと言って、自分一人が何か言っても何が変わるのだ、と言う話ではあるが。
ああ、こんなことを考えたのもいつ以来だろうか。
ふと頭を捻る。一体自分は、いつからあの部屋に居続けたのだろう。
それは止まっていた電の時間が、動き出した証である、だが電にそんな自覚は無い。
いつから自分は、戦わなくなったのだろう。いつから自分は、あの部屋の外を忘れていたのだろう。
気づけば火野江司令官の鎮守府にある、自室にいるのが当たり前になっていた。
あの部屋に居る時の自分は、半分くらい眠ったような状態であり、ぼんやりとした頭で時間間隔など忘れてしまっていたから、どのくらいの間、あの部屋で過ごしていたのかは分からない。
というか、そもそも話。
どうして自分はあの部屋に篭っていたのだろう?
疑問を持った。持ってしまった。元々、違和感などいくらでもあった。それを全力で見ないようにしていただけで、疑問などいくらでもあったのだ。
外を見てしまった、海を見てしまった、あの部屋から出てしまった。薄い心の壁をけれどいとも容易く崩してしまった。
だから、思い出す、だから気づく、だから理解する。
「……………………ああ…………雷は、もう…………居ないんですね」
目の前に敵がいる。すでにこちらは砲を構えている。
後は引き金を引けば良い。不思議と心は冷めていた。助けたいとか、殺したくないとか、いつもならそんなことを思うのに。
心が鈍化していることに、その時はまだ気づかなかった。
あっさりと、引き金を引く。
砲口から吐き出された弾丸が敵を貫く。
瞬間。
『ア■ね…………い■■ま…………■■し■、コ■……■テ』
いつかの、どこかの“覚えの無い”光景がフラッシュバックする。
ぞくり、と体が震える。
それを“思い出してはいけない”と頭が拒絶する。
“忘れてはならない”と本能が絶叫する。
「あ、あああ…………ああああ…………う、あ、ああああ」
ぺらり、ぺらりと、薄皮を捲るように。
「あああああああ、ああああああああああああああああああ…………あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ、あああああああああああああああああ」
少しずつ、少しずつ、思い出す。
「ごめんなさい」
決定的に、徹底的に、絶対的に。
「ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
電が、壊れた瞬間を。
「ごめんなさい…………雷」
瞬間、電の意識が途切れた。
* * *
駆逐艦電にとって、姉である雷とは自身の自慢だった。
戦艦長門や五航戦翔鶴のいる第一艦隊で駆逐艦でありながら旗艦を勤めることもそうだったし、何よりいつも艦隊の中心にいて、みんなを盛り上げる明るく優しいムードメーカーだった。
みんな雷を頼りにしていた、司令官だって雷を信頼していた。時には戦いに負けることがあっても雷が次は頑張ろうと奮起してくれればみんな笑って次の戦いに備えることが出来た。
電は内気な性格で、あまりそうやってみなを鼓舞するような
だからこそ、それを自然体でやれてしまう姉が本当に自慢だった。
電から見た響と言う少女は、一言で言うならば、道に迷って泣きそうになった子供だった。
雷と同じ、暁型の姉妹ではあるが、その実、電は響のことをあまり姉だと意識したことが無い。
勿論姉妹だと思っている、別に妹だと思っているわけではない。
ただ、言うなれば、双子のように上下間の差と言うものを明確に意識したことが無い。
それはほぼ同じ時期に建造された艦だからなのかもしれない。
それでも、電にとって響は尊敬できる姉妹の一人で…………。
同時に、負い目のある相手の一人だった。
残してしまった最後の姉妹。
一番上の姉である暁も、一つ上の姉である雷もいなくなって、残されたのは電と響だけになって。
それでも、戦争は終わらなくて。だから最後まで一緒に戦って、生き抜いて、響を一人にしないって、そう決めたはずなのに。
再び会った響は、一人取り残され、どこに向かえばいいのか、どうやって生きればいいのか、それも分からず、膝を抱え、泣きそうになった子供のように見えた。
建造されたばかりで、まだおぼろげな意識の中で、自身より先に建造されていた響を見て、抱きしめた覚えがある。
『いきなりどうしたんだい、電?』
『なんでもないですよ…………会えて良かったです、響』
電は二人の姉が好きだった。何よりも大好きで、何よりも大切で、何よりも重要だった。
だから、雷が死んだ時、目の前が真っ暗になった。
目の前で沈んでいく雷を見て、頭が真っ白になった。
ごめんね、そう呟く彼女へと咄嗟に伸ばした手は、けれど空を切った。
鎮守府に戻ってからもずっと、部屋に篭って泣いていた。
二日、三日と立ち、数日が立って、ようやく心の整理がつく。否、つけなければならなかったのだ。
自身はまだ良い、だが目の前で、しかも自分を庇って雷を沈んだのを見てしまった響は…………。
一人にできない、そう思った。
だから、立ち上がらなくてはらない。苦しくても、辛くても、それでも、響を…………また、響を一人に出来ない、今度こそ、一緒にいてやるのだと。
そう決心した、その晩。
電は、ソレに出会った。
ぬらり、と海面に漂うソレに、電はふと気づく。
時刻は夜。すでに皆が寝静まっている時刻。
電の部屋の前にも、響の部屋の前にも鎮守府の仲間がしょっちゅう様子を見に来ていたので、誰にも邪魔されず響と二人だけで話す機会と言うのはこうして夜中に抜け出しでもしないと得られないと思ったのだ。
そうして廊下を移動するその最中、ふと窓の外に見えた海で動く影。
夜闇に紛れ、それが何なのかすぐには理解できなかった、けれど理解したと同時に目を見開き、走る。
深海棲艦。
自身たちが戦う敵の名前。すぐさま艤装を装着し、走りだす。
この時、仲間を呼ぶと言う選択肢が頭から抜けていたのは、幸運だったのか不運だったのか、後から考えてみても電には分からなかった。
走り出す、敵は先ほどの位置からは動いていない。
そうして外へと飛び出し、敵へと近づいていく。
ちゃぽん、と水音がする。ふと見やれば敵がこちらに気づいていた。
瞬間、主砲を向けて…………。
「いナ……ヅ……ま……」
引き金にかけた手がピクリと止まる。そして即座に隙を見せたと気づいた。
だが敵は攻撃してこない。それどころか、逃げ出そうとしていた。
「待つのです!」
それを追いかけて飛び出す。今考えれば無謀も良いところだが、その時はとにかく目の前のソレを追いかけるのに必死だった。
ずっと追いかけている間、ソレはこちらに攻撃の一つもしてこなかった。
何かおかしい、先ほどの声も空耳かと思ったけれど、違うのかもしれない。そんな疑心が浮かび上がってくる。
そうして追いかけ続けて、どこかの孤島でソレが止まった。
「…………………………」
「…………追いついたのです」
ソレへと砲を向けながら、油断無く待つ。
さっさと攻撃してしまわないのは、先ほどの声が気になっていたからなのか。
もしここで撃ってしまったらならば、きっと電は辛い過去を持ちながらも、それでも気丈に響を支え、戦っていただろう。
けれど、それはあり得ないIFだ。
「さっき、私の名前を呼んだあなたは、誰なのですか」
尋ねた、尋ねてしまった、だからそう、この先のことは必然なのだ。
「…………ワたし、ヨ…………イカ……づち」
紡がれた言葉に、電のピタリと止まる。
けれどそんな電を他所に、ソレは…………彼女は告げる。
「アノね…………いなヅま…………ワタしを、コろ……しテ」
君を夏の日に喩えようか
Shall I compare thee*1 to a summer's day?