響が可愛いと思ったから勢いだけで思わず書いちゃったような艦これ二次   作:水代

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本当はこの章で五日目終了してるはずだったんだぜ(

今回はちょっと無理やり感あるかなあ、と思わなくも無い。

つか電ちゃん、原作とキャラちょっと違うとな、と思うけど、こんだけいろいろな目にあってれば、そりゃ性格も多少変わるよな、と一人で納得した。


The miserable have no other medicine but only hope

 

 目を覚ました時、真っ先に視界に映ったのは、自身が雷と天秤に載せて傾けた少女だった。

「…………目を覚ましたかい?」

 安心したように呟く白い少女に、電はそっと手を伸ばす。

「……………………電?」

 差し伸ばし、頬に当てられた手に戸惑う響を見ていると、思わず涙腺が緩む。

 そんな自身の様子に慌てた様子の響に、苦笑いする。

「大丈夫、なのですよ、響」

「本当に大丈夫なのかい?」

「大丈夫なのです…………それより、私が倒れた後はどうなったんですか?」

 敵駆逐級を沈めたところまでは覚えている。だがその後、気を失って…………それからどうなったのだろうか。

「司令官が様子を見ていたからね、すぐに暁が出て電を引き上げたんだ…………二人とも慌ててたから、後でお礼を言っておいたほうが良いよ」

「はい、なのですよ」

 自身がそう答えると、すぐに響が次の言葉を紡ごうと口を開き…………そして閉じた。

「どうかしたのですか?」

 そう尋ねる自身に、けれど響はどこか言い難そうに言葉を濁す。けれどいつまでも黙ってはいられないと思ったのか、意を決したかのように口を開き…………。

「何があったのか、こちらも聞いていいかな?」

「何が、ってなんのことですか?」

 質問に質問を返すようで悪かったが、一体何を聞かれていたのか本気で理解できなかった。

 そうして響が、そう返す自身に、少しばかり表情を歪めならが慎重に尋ねる。

「軽く調べたけど、外傷は無かった、けど電は実際に気絶している…………何があったのか、覚えているかい?」

 恐る恐ると言ったその様子に、ああなるほど、と一人納得する。

 響と二人だけで会話していた頃の自分…………つまりあの部屋でずっと時が止まった生活をしていた頃の自分のことを考えれば、こういう反応も出るのかもしれない。

「…………何か、ですか…………少しだけ、嫌なことを思い出しただけなのですよ」

 本当は思い出したくも無かった、自分の手で姉を殺した記憶なんて。

 

 けれども。

 

「ねえ、響」

「何だい?」

「大丈夫なのですよ」

「えっと…………何がだい?」

 不思議そうな響の反応にくすりと笑う。そんな自身に、響がどこか驚いたような目で見てくるので首を傾げる。

 電は自分では気づいていなかったが、響はすぐに気づいていた。

 今しがた、電が浮かべた笑みが、かつての雷に良く似ていることに。

 そんなことには気づかないまま、電が続ける。

私は()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 紡いだ言葉に、響が目を見開く。その口が開き、何かを言葉にしようとして…………けれど何も言葉は出ない。

 

「“雷との最後の約束”ですから…………“もう二度と響を一人にしない”って」

 

 今度こそ、響が完全に硬直した。驚きすぎて、いつも被っている帽子が転げ落ちるが、それを拾う余裕すらない。

「……………………電、今…………雷のこと…………」

 うわ言のように呟く響の言葉に、苦笑を投げ返す。

 

 十秒、二十秒と沈黙が流れる。

 

 きっと昔の響では理解しきれなかっただろう。

 それでも今の響ならちゃんと飲み込めるのだろう。

 それはきっとあの司令官のお陰なのだろう。

 狭火神司令官。一人ぼっちになった響の司令官となった青年。

 この鎮守府で青年と響の間に何があったのかは知らない、けれど少なくとも今の響は孤独ではない。

 司令官と響の間には確かな絆がある、だから電の送った手紙で戻ってこれたのだろう。柔な絆なら繋がりが切れるのを恐れ、司令官に縋り付いて嫌がっただろうから…………それくらい当事の響の精神はボロボロだった。

 けれど、だとすれば火野江司令官は一体どうしたのだろう。それが分からない。

 今も司令官を続けているようだし、実際長門や島風と言った当時のメンバーもいる。なのに響と電だけがこちらの鎮守府に送られた。その意図が良く分からない。

 

 そうして、思考を張り巡らせていると。

 

「電…………一つ、聞いてもいいかな?」

 

 響が、自身も良く知るアイスブルーの瞳でこちらを見つめていた。

 

 

 * * *

 

 

 何を思い出したんだい?

 

 そんな自身の問いに、電は笑っているような、泣いているような、そんな曖昧な表情をする。

 ああやっぱり、とそう思う。電のその表情で、何を思い出したのか、検討がついてしまった。

「…………雷のこと、だね」

「…………そうなのですよ」

 あっさりと、電が頷く。先ほど言っていた、雷との約束、と言う言葉。電はもう雷がいないことを思い出したのだろう。

 そう考えれば、ふいに目元が熱くなる。

「………………響?」

「………………………………良かった」

 思わず漏れた言葉は、それだった。

「良かった…………電が、元気になって…………良かった…………」

 ずっと自分を責めていた。自分のせいで雷が沈んだあの日から、電の変わり果てた姿を見て、こうなったのは自分のせいなのだと。

 自分があの時、もっと周りを見ていれば、こんなことにはならなかったかもしれない。

 また自分だけみんなに置いて行かれるかもしれない、何よりもそれが怖かった。

「響は…………お姉さんなのに、甘えん坊なのですよ」

 そんな自身の内心を知ってか知らずか、電が苦笑する。そうしてぎゅっと自身を抱きしめるその姿は、やっぱりいつかの雷を思い起こさせる。

 みっともないくらいに、縋り付いて、泣きつきたかった。

 けれど、それはしなかった。決めたのだから、今度こそ守りきるのだと…………信頼の名に誓ったのだ。

 みっともないところは見せられない。何よりも、自分の妹にそんな姿見て欲しくない。

 

 だから、出てきたのは内心とは違う言葉だった。

 

「ねえ、電…………雷が沈んでから、一度だけ電が無断で出撃したこと、あったよね」

 

 こくり、と電が頷く。その瞳からは何の情報も読み取れない。ただこちらが何を言うのかそれによって反応を決める、そんな様子だ。

 

「あの日、何があったの?」

 

 それは、もしかしたら、の可能性。もし電が病んだ原因が、あの日にあるのなら、と言うただの可能性。

「……………………雷に会ったのですよ」

 だから、電の口から出た答えに、思考が止まった。

 

 

 電の口から語られた、あの日の出来事。

 正直、驚愕なんて言葉じゃ生温いくらいの衝撃を受けた。

「…………艦娘が、深海棲艦になる?」

 一瞬冗談かと思った、けれどそんな性質の悪い冗談を電が言うはずもない、だとすればそれは事実なのであり…………。

 だとすれば艦娘とは、深海棲艦とは…………。

 

「響」

 

 最悪の思考へと突入しかけた自身に、電が待ったの声をかける。

 顔を上げると、電が物悲しげな表情で首を振った。

 

「深海棲艦は…………もう生きてないのですよ」

 

 それは、電自身が一番割り切れていないのだろう。辛そうに、悲しそうに、痛そうに、けれどそれでもそれに耐えるようにそう告げる。

「…………うん、大丈夫だよ、もう、大丈夫」

 ぽんぽん、と電の背を軽く叩いてやると、自身を抱きしめる力が弱まる。

「ごめん、電…………」

 気づけば、謝罪の言葉が口から溢れていた。

「何がですか…………」

「私のせい、だね」

 雷が沈んだのもそうだし、電が雷を殺すことになったのも、火野江司令官がああなってしまったのも、結局は自身のせい。

 結局、自分は周りを不幸にしてばっかりだ。とんだ疫病神だ、なんて内心自嘲する。

「響のせいじゃないですよ」

 電が口にする慰めに、けれどそれを否定する。

「お願いだから」

 ああ、どうか、お願いだから。

「電だけは私を許さないでくれ」

 みんなみんな、優しすぎるから、だから…………だからどうか、姉妹であり、雷を一番大切にしていたキミだけは、許さないで欲しい。

 許されてしまったら、やるせないから。渦巻いた感情が行き場を失ってしまうから。

 だからどうか許さないで。

 

 だからどうか、お願いだから。

 

「キミの荷を、私にも背負せて欲しい」

 

 苦しまないで、全部全部私のせいだから。

 傷つかないで、全て私が悪いのだから。

 泣かないで、今度こそ守りぬくから。

 

 だから、だから、だから。

 

「笑ってくれ…………電、昔みたいに」

 

 私にはもう、それだけでいいから。

 

「………………響」

 

 電が、何か言おうとして、口を開きかけた…………。

 

 瞬間。

 

 バンッ、と音を立てて扉が開く。

 突然の事態に驚き、目をやると入り口に司令官が立っていた。どうやらかなり焦って来たらしい、息を荒げ、肩が揺れている。

 そして自身たちがいるのを確認すると――――――――

 

「敵主力が動き出した、今すぐ戦闘準備!」

 

 ――――――――最悪の知らせをもたらした。

 

 

 

 海上に揺らめく敵の姿。その中にあって、初日からずっと最奥にいた敵の主力たちがゆっくりと前進してきているのが見えた。

 時刻は午前四時。まだ朝日は顔を見せていないが、けれどすでに薄暗い程度の明るさを取り戻している海上の様子は、鎮守府からでも良く見えた。

 ついに敵の主力が動き出す、その事実に冷や汗が流れる。

 幸いと言うべきなのか、その前進速度は非常に緩やかで、部隊の一番奥にいただけあって、実際に交戦を開始するのはまだ先だろう。

 それでも今日中に昼戦を一戦、夜戦を一戦することは確定だろうし、五日目が終わったからと言って即座に戦闘が終わるわけでもない、実際何があるのか自身たちは知らないのだから。

 

「電、出れるか?」

 

 勝とうが負けようが、きっと今日が最後の戦いになるだろう、これが文字通りの決戦だとするなら、電も出ることになるのは必然であり、昨日倒れたばかりの電の体調を聞く司令官の問いは、自然なことだった。

「大丈夫なのですよ」

 笑んで、そう返す電に、そうかとだけ呟き司令官はまた海を見つめる。

 

「響」

 

 と、その時、自身の隣に電がやってくる。

 

「やっぱり、私は響を許してあげたいのですよ」

 

 それが先ほどの続きだとすぐに気づき、顔をしかめる。

 

「でも…………私は」

「だから」

 

 自身の言葉を、電が強引に遮って続ける。

 

「約束しましょ?」

 

 その言葉に、目を見開く。

 

『なら、約束だ』

 

 かつて、同じことを言われた記憶がフラッシュバックする。

 

「私はもう二度と響を一人にしないのです、ずっとずっと響と一緒にいます、だから」

 

『俺のちっぽけな命、お前にくれてやるよ』

 

 だから。

 

「守ってください、今度こそ」

『守ってみろよ、今度こそ」

 

 聞き覚えのある言葉。

 

 聞き覚えのある言い回し。

 

 だから答えも決まっている。

 

Да (ダー)(勿論さ)」

 

 それが、私と彼女の決着だった。

 

 

 * * *

 

 

 決戦の始まりはその日のヒトマルマルマル…………十時からだった。

 旗艦ヴェールヌイを先頭とした単縦陣のよる突撃。

 最も危険な先陣を旗艦が勤めていると言うこの危険な方法は、けれど彼女の司令官の提案だ。

 単純に駆逐艦三隻と言っても、その練度は大きく違っている。

 良い司令官の下で戦ってはいたが数年もの間出撃をしていなかった電は練度四十五。

 強行思考のあった司令官の下で、数年戦い、こちらの鎮守府に着てから何度か出撃している暁は練度五十五。

 数年もの間、この鎮守府に降って沸く敵との交戦を一手に引き受け続けて来たヴェルは、練度八十。

 練度の差とは実戦経験の差であり、生存率の差に近い。

 敵は戦艦レ級が三隻に軽巡ヘ級が一隻、駆逐イ級が二隻だ。レ級の内一体とイ級二体は目が赤い、上位級(エリート)の証であり、ヘ級は全身に黄色の炎のようなものを揺らめかせている、旗艦級(フラグシップ)の証である。初日の夜戦での奇襲により、レ級の上位級が中破、通常のレ級の一隻が大破しているようだったのは幸いと言えたかもしれない。

 戦艦レ級はたった一撃の砲撃の直撃で、こちらの艦隊が即座に死につながるかもしれない危険な相手だ。特にレ級の上位級はたった一隻で連合艦隊を敗北させたほどの力を秘めている。中破しているとは言え油断など全くできない強大過ぎる敵であることには間違いなかった。

 一応全員に応急修理要員を一つずつ装備させているが、どう足掻いても大破確定の状況で生き残り戻ってこれるとも思えないので、基本的に一撃が死に直結すると思ったほうが良いだろう。

 だからこそ、一番練度(レベル)の高いヴェールヌイを一番先頭に出す。

 先頭故に敵からの攻撃が集中するかもしれないが、他の二人よりも生存率が高いだろう、と期待してのことだ。

 実際、その作戦は功を奏したと言っていいだろう。

 次々と飛んでくる敵からの砲撃を、けれどヴェールヌイは、右に左に巧みに避けていく。

 

『目で物を見てるんだ、だったら目の動きで狙いは分かるだろ?』

 

 いつだったか彼女の司令官が言った言葉を思い出す、いつの間にか彼女には司令官との特訓により相手の意図と言うか狙いのようなものを敏感に察知する技能が身についていた。

 

『艦隊なんて言っても所詮は人型。戦艦なんて言って敵も人型、だったらいくらでもやりようはあるだろ?』

 

 魚雷を発射する。距離は遠く、とても当てれる距離ではない。

 だが、海中を進む魚雷へ向けて、主砲を撃つ。

 

 ダァァァァン、と音と共に水飛沫が派手に舞い上がり、互いに艦隊の視界を隠す。

 

 それも一瞬のこと。だがその一瞬の出来事に意表を突かれ、こちらの姿を見失った敵は、攻撃の手が一瞬止まる。

「撃てっ」

 そのチャンスを逃さないヴェールヌイの号令でヴェールヌイ、暁、電が主砲を掃射する。

 狙いは敵駆逐級二隻。視界が隠された状態で撃ったため半数以上の砲撃は外れたが、それでも何発かは駆逐級一隻に当たり、大破させる。残念ながらもう一隻のほうが小破止まりだ。

 お返しだとばかりに敵からの砲撃が飛んでくる。駆逐艦の小口径砲が届く距離だ、敵の長距離砲の命中が先ほどよりもあがっている。

 だがだからこそ…………その狙いが正確だからこそ、ヴェールヌイは避ける。

 だがそれも限界が近いのはヴェールヌイ自身分かっていた。

 いつもと違い、敵は一隻ではないのだ。視線から敵の狙いを読む技術はある程度の集中を必要とする、複数の敵から同時に狙われては片方しか外せない。

 

 いずれ限界は来る。だからせめてそれまえに一隻でも多く敵を倒し、夜戦まで持ち込む。

 

 それがヴェールヌイとその司令官の立てた作戦とも呼べない作戦だった。

 

「…………砲撃開始!」

 

 再度ヴェールヌイの号令で砲撃を放つ。

 

 戦いはまだ始まったばかりだった。

 

 




不幸を治す薬は希望より外にない。

The miserable have no other medicine but only hope
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