響が可愛いと思ったから勢いだけで思わず書いちゃったような艦これ二次 作:水代
モンハン楽しすぎるし(
* two day after *
意識が戻る、と同時に、僅かな頭の痛みを感じ、思わず頭に手を当てる。
気休め程度だったが、痛みが和らいだ気がして、ようやく周囲を見る余裕が出来る。
工廠だ。
この薄暗さと鉄と油の臭い。響き重低の機械音。間違いないだろう。
「……………………どこの工廠かしら」
ふと呟いてみるが、けれど答えは出ない。
体を起こしてみるが、特に異常は無い。先ほどまであった頭の痛みもすっかり消えている。
起き上がり、工廠から出ようと記憶を頼りに歩く。薄暗くどこに何があるのかおぼろげにしか見えないが、まあ
一度気を失っていたせいか、まだどこかフラフラとする体を引き摺りながら工廠の出口へと歩く。
どうやら記憶に遜色は無かったようで、無事工廠の出口らしき扉が見える。
取っ手に手をかけ、ゆっくりと引いて――――――――
「……………………えっ」
「あっ……………………」
扉の前に少女が立っていたことに驚き、そしてその少女の顔に、二度驚いた。
* one day A *
「ご苦労様」
自身がそう告げると、彼女が満足げに頷く。
手元の書類をとん、とんと整えて全て同じファイルに入れ、次のファイルからまた別の書類を取り出すと、彼女がそっと自身の手元を覗き込む。
「司令官、これも?」
「そうだね…………うん、とりあえず誤字がないかだけ確認お願いしていいかな?」
「もっちろん、もっと頼ってくれていいのよ?」
「仕事全部部下に投げ出してたらダメ人間だよ」
苦笑しながら書類の半分、まだ終わってないほうは手元に残し、加筆の終わったほうを彼女に渡す。
頼られる、と言う行為が嬉しいのか、彼女は良くもっと頼ってと言うが、実際のところ、彼女に頼りきりで申し訳ないと思ってしまう。
まあ彼女にとってそんな感情は不要なのだろうが、それでもあまりなんでもかんでも任せてしまうのも良くないとは思っている。
特Ⅲ型駆逐艦三番艦雷。それが自身が建造した彼女の名だ。
陽気で明るい性格であり、司令官である自身を信頼してくれているし、自身もまた彼女の信頼に応えれるように努力を重ねている。
良好と言っても良い関係。能力的にはともかく、性格的にはかなり当たりと言っても良い部類だろう。
一枚、二枚と書類に目を通し、サインをする。
そんな単調作業を繰り返していると少しばかり目が疲れてくるのだが。
「はい、司令官」
そう言って彼女が水で濡らしたタオルを持ってくる。
因みに自身は何も言っていない。本当に良く気が利く秘書艦である。
謝辞を述べながらタオルを受け取り、目に当てる。
すっと冷えたタオルの冷気が溜まった熱を吸い取っていくようで、パチパチと目を瞬かせると、先ほどまでとは違いスッキリとしていた。
「ありがとう、雷ちゃん」
タオルを返しながら、彼女にそう告げる。
そして彼女もまたにっこりと、太陽のような笑みを浮かべ。
「どういたしまして」
そう言って笑う。
そんな夢を見た。
* today *
「右旋回、ほら、遅い、何やってるの、速く速く速く!」
叫ばれた声に、すぐ様に体が反応し、動き出す。
けれど遅い、遅いと島風が叫ぶ。
「左舷、砲撃撃てぇ! 遅い! もっと速く狙いをつける」
付いて行くだけで精一杯。けれどそれが不可能な行動ではないことは、目の前で島風が実演して見せている。
つまり自分たちが遅いだけであり、自分たちが下手なだけなのだ。
圧倒的なまでの練度の違い、だから
けれどその無茶を望んだのは、自分たちであり、島風はその自分たちの無茶な願いを手助けしてくれているだけだ。
「砲撃終わりから三時方向進め、だからー、遅いって! そんなんじゃ相手からの反撃もらっちゃうわよ!」
足りない、足りない、足りない。力が足りない、強さが足りない。
敵を倒すことも、仲間を守ることも出来ない。そんな自分が嫌だったから。
だから、意地でも食らいつく、強くなる、そう決めたから。
もう目の前で妹が沈む姿は見たくないから。
電の前では決して見せなかったが、それでもショックを受けないわけが無いのだ。
最愛の妹の一人が、目の前で沈んでいくのに、何もできない、逃げることしか出来なかった無力感。
これで二度目だ…………二度も目の前で仲間が沈んでいく光景を見せられ、それでも逃げることしか出来なかった。
もう嫌なのだ。もう逃げたくない。もう誰も沈ませたくない。守りたい、守りたい、守りたい。
固く決めたなら、行動は迅速に。
前新垣司令官の言葉である。
だから暁は現狭火神司令官に頼み込んだ、強くなりたい、と。
そうして司令官が向かえと言われた場所がここ、火野江中将の鎮守府。
待っていたのは同じ駆逐艦、島風。
そして始まったのが島風、暁、電の三隻で鎮守府周辺の深海棲艦を倒して回り続けるという、島風曰くの特訓である。
「と言うか、どうしてこの周辺こんなに深海棲艦がいるのよ」
先にあった掃討戦でかなりの数が駆逐されたはずなのに、次から次へと沸いてくる深海棲艦に思わず辟易とする。
けれどそんな自身に、島風がなんでも無いように言う。
「何言ってるのよ、一つの海域を全滅させたって翌週にはもう復活してるようなやつらよ、一月も経てば完全に戻ってるに決まってるじゃない」
理不尽なまでに出鱈目な相手だとは分かっていたが、それでも実際こうして体感するとため息の一つも付きたくなる。
けれどそうしてため息をつく余裕があること自体、島風が手加減している証拠なのだろう。
実際先ほどから出てくる敵は駆逐艦が二、三隻で艦隊を組んでいたり、稀に軽巡洋艦、それも出てきても一隻だけだったり、随伴艦に駆逐艦を一隻だけだったり、さらに言うなら
仮にも練度五十以上はあるのだ、今更その程度の敵に遅れを取るはずも無く、つまり本当の本当に訓練なのだろう。やっていることは実戦でも。
実際問題、この訓練を始めてから一週間近くになるが、確かに以前より体が動くことを自覚している。
練度もすでに六十に差しかかろうとしている。たった一週間でそれだけ伸びる。
恐らく一人で同じように戦ってもダメなのだろう。
「後退急いで、敵魚雷発射確認、来るよ、回避! 急いで!」
悔しいけれども、島風の動きを見て、指示を聞いて、そうして動くことで、自分の動きとの違いを実感する。
そうして少しずつ自身の動きの中から余分を省いていく。
見て、真似て、実感して、そうして最適化していく。
自身の前を走る彼女は、文字通り自身よりもずっと先の領域にいるのだと思い知らされる。
同じ駆逐艦なのに、まるで別の艦種のような性能の違い。
島風と言えば、駆逐艦の最高峰と呼ばれるほどの性能を有している。だがそれでも駆逐艦の範疇だ。
同じだけのスペックを自身たちが発揮する、と言うのは難しくても、それでも同じようなことはできるはずなのだ。何より今目の前で見せられている動きは、性能でなく、技術だ。ならば同じことはできるはずなのだ。
けれど今自身の前を行く彼女の動きは、自身たちとはまるで別物であり、それはつまり今の彼女と自身たちの明確な差だった。
同時それは、自身たちの可能性でもある。駆逐艦と言うのは、基本的に弱い艦種だ。装甲も薄く、火力も低い。
必殺の魚雷を当てるためには、敵の砲火を潜り抜けて、敵へと近づく必要がある。
もう一度言う、駆逐艦と言うのは基本的には弱い艦種だ。
だが目の前の彼女を見て、弱いなどと言える者がどれほどいるだろう。
その圧倒的な強さを見て、弱いなどと誰が言えるだろうか。
それでも彼女は駆逐艦だ。
自身たちと同じ駆逐艦。
つまり、自身たちだってこれと同じようなことが出来るはずなのだ。
つまり、自身たちだって、もっともっと強くなれるはずなのだ。
「回避遅い、動作が大きいから次の行動に繋がらないじゃない、もっとコンパクトに、速く速く速く!」
だから、歯を食い縛って。
拳を握り締めて。
それでも食らいつくのだ。
もう二度と、姉妹を水底へ沈ませたりしないように。
今度こそ、大切な仲間を守れるように。
強く、強く、強く。
拳を握りしめた。
* * *
「賛成二、反対七…………よって、今議題は否決ということでよろしいかな?」
部屋の上座に座る男、元帥海軍大将である神代がそう告げると、その場の全員が頷く。否、全員ではない、先ほどの議題に対して賛成の意を示した二人の男の片方、海軍大将の山吹だけは射殺さんばかりの視線で周りの人間を見ている。
けれどいくら山吹がそうして周りに視線を寄越しても、何も変わらない。
すでに決まったことだから。
「全く…………時間の無駄だったな、同一間建造の制限解除など可決されるはずも無かろうて」
反対の意を示した七人の一人、元帥海軍大将常葉がそう呟き、自身の長くたくわえた白い
そんな挑発的な常葉の言葉に、山吹が強烈な視線を送るが、そよ風ほどにも気にした風も無く、視線を受け流す。
かくして議会が終了し、会議室からは人が退室していく。
「……………………………………」
入り口の扉を開き、扉が閉まらないように手で抑えた自身。
ふと顔を上げると、一瞬だが男がこちらを見ていた気がした。
一瞬のこと、それだけなら気のせい、とでも思うかもしれない。
けれどそれが、その人物が、先ほどの議会で最後の議題で賛成の意を示した二人のもう片方ならば、また話は別である。
海軍大将斑鳩。
狭火神元大将の親友だった男。けれど狭火神元大将の死後、中立派を抜けハト派に移った男。
狭火神元大将の部下をしていた時、実は自身も二度三度会ったことがある。気の良いやり手の青年と言った印象を当時は受けた。
その彼が何故今、ハト派へと加わっているのか、それは分からないが。
「…………見られていた?」
気のせいならそれでも良い、だがそうでないなら…………さて、その意図は一体どこにあるのやら。
「ご苦労だったな、火野江中将」
少しばかり思考に意識を裂いていると、声をかけられ意識を戻す。
振り向くとそこにいたのは五十代の男性。短く刈り上げられた黒髪の中に幾分か白髪の混じる男だ。
「そちらこそ、ご苦労様でした…………澪月大将」
澪月大将もまた、元を辿れば狭火神元大将からの縁であり、自身が名実共に狭火神大将の後継として認められたのは、彼がいたからと言っても過言ではない。
「しかし、これでようやく、と言ったところですか」
建造の許可も出た。これにより国有戦力は一気に増大する。特に、過去に撃沈された戦艦や空母を再び建造できるのは大きい。
「正直、なんとも言えない気分ではある。大和ともう一度会えると思うとね」
澪月大将は、過去、戦艦大和の指揮を取っていたこともある人物であり、大和に信頼され、大将もまた大和を信頼していたと言う。事情により一時提督業から退いていたが間に、大和が撃沈した時は大層嘆いていた。
「正直、あの時の大将を知っているからこそ、今こうして中立派のまとめ役をしていることが意外ですね」
あの時の大将は本当に
怒りと憎悪に滾っていた。だからこそ、タカ派でなく中立派にいることが意外でならない。
そんな自身の感想に、澪月大将が苦笑する。
「そういうキミこそ、雷が沈んだ時は、一度倒れるまで仕事に没頭していたそうじゃないか、憎くなかったのかい? やつらが。怒りは湧かなかったかい? やつらに」
試すようなそんな口調に、少しだけ考えて、そして首を振る。
「それどころじゃありませんでしたから」
響のこともそうだし、電のこともそう。それ以外にもあれもこれもどれもそうだ。
正直、雷の影響があまりにも大きすぎて、下手をすればあの日で鎮守府の機能が完全停止していてもおかしくはなかった。
ただ。
『みんなを守って』
たった一つ、約束したから。
だからあの日からずっと、自身は走り続けている。
立ち止まることなく、振り返ることも無く。
一心に、遮二無二に、走って、走って、走って。
その先に……………………何があるのだろう?