響が可愛いと思ったから勢いだけで思わず書いちゃったような艦これ二次 作:水代
けれどそれは本当に私なのか、それが分からない。
私は私、けれど私は私、だったら私は一体誰なのだろう。
* one day A *
「意外ねえ」
目を丸くし呟く雷の言葉に、心外だと言わんばかりに両手を広げる。
「私が料理ができることがそんなに意外かい?」
食堂の机の上に並べられた作りたての料理の数々を見せ付けるように、指差しながら尋ねる。
いただきます、と口々にしてどっさりと料理の盛られた皿へと手を伸ばす。
「あら、美味しい」
なんとも、意外、と言った風な雷に思わずジト目になるが、箸で摘んだ料理を一口、口へと放り込む。
うむ、美味しい。と自賛しながらさらに一口。
零細鎮守府である、自身の鎮守府では食堂はセルフサービスだ。上もわざわざこんな小さな鎮守府に間宮を回してくる余裕は無いだろう。
つまり飯が食べたいなら自分で作れ、と言うことであり。
「まあたまには良いじゃないか。いつも雷ちゃんが作ってくれるんだから、こうして私が作ったってさ」
「もう、もっと頼ってくれていいのに」
「だから、もう十分に頼ってるって」
常日ごろからせっせと甲斐甲斐しく人の世話を焼く彼女がいつもは料理しているのだが、今日は出撃の日だったので偶には、と自ら腕を振るってみたわけである。
「で、お味は?」
そんな自身の問いに、先ほどまでどこか不満げだった表情を一転させ、花が咲き誇ったような明るい笑みで雷は答える。
「美味しいわよ、司令官」
そんな、ある日の夢である。
* today *
この鎮守府が開かれておよそ三年以上経つが、今日この日ほど工廠が賑わったことも無いだろう。
工廠と言うのは、艦娘の建造、装備の開発などに使用する場所であり、どんな鎮守府であろうと必ずあるだろう施設である。うちの鎮守府も例に漏れず、手狭ながらも二本の建造ラインと専用の開発ドッグがあり、燃料や弾薬、鋼材、ボーキサイトと言った資源も、あまり出撃しない上に駆逐艦しかいないうちの鎮守府では支給されても使いきれず、結果的には潤沢に余っている。
いつでも建造ができる状況。
だが鎮守府の開港から三年、一度も建造が行われたことは無かった。
理由は簡単だ、建造施設がありながら、建造を禁止されているからだ。
その理由は過去の色々にあるのだが、とにかく、軍の規律で建造自体を禁止されているので、大型建造の出来ない型落ち気味な施設ながらも、それでもまだまだ現役で使えながら、ずっとお蔵入りしていたのだ。
だが、先日の海軍本部で行われた会議において、条件付の建造の許可が行われたらしい。
そのことを知ったのは、昨日晩にかかってきた、中将殿からの電話だった。
* * *
『至急建造に取り掛かれ』
突然かかってきた電話、そして受話器を耳に当てて、もしもし、の二つ目のも、を告げるより先に言葉が告げられた。
名乗りも無しのいきなりの口上だったが、声から察するに電話の主は中将殿だろうことはすぐに分かった。
「とりあえず、説明いただけますか。中将殿」
少しばかり首を傾げながら、丁寧な口調で問いかけると、少し落ち着いた様子の声で中将殿が続ける。
『ん、ああ、すまない、少々先走ったようだな。ただなるべく急いだほうがいいのも事実だ、手短に説明すると、先ほど本部で行われた会議で、先の議題…………建造についての許可が条件付きで出た。条件は、中立派の要望でもあった、同一艦の複製の禁止。もし現存している艦の同一艦が建造された場合、これを解体すること。と言うことになった』
なるほど、と思う。妥当なところだろう。建造と言うのはある程度の艦種を絞って作り出すことはできても、特定の一種類を狙って作ることはほぼ不可能なので、こういったやり方になるのは確かに納得である。
そして同時に、どうして中将殿が急かすのか、その理由も理解する。
つまり、単純な椅子取りゲームである。
同一艦の存在しない艦娘、つまり今回の建造で建造される対象となっている艦娘、と言うのはこれからどんどん増えていく建造ラッシュによって、次々と埋まっていくだろう。
『もう分かったとは思うが、周りから遅れを取るほど建造しても良い艦と言うのは減っていく。そしてこれが一番重要だが、
「……………………………………はい?」
受話器から聞こえてきたとんでもない一言に、目が点になる。
『いや、こちらとしても予想外なことではあるのだが、ハト派の連中からの提案でな』
驚天動地、と言うわけではないが、それでも馬鹿だろ、と言いたくなる。
個々鎮守府内での建造数の制限が内、それはつまり、場合によっては一つの鎮守府に複数の建造艦が偏ることになる。
たしかに、個々の鎮守府ごとに建造数を制限すれば割合的に言って、最も数の多い中立派の鎮守府が最も多くの艦を得ることになるだろう。
ああ、そう言う意味では一発逆転を狙うことの出来る手である、上手くやれば少数派鎮守府が一気に大きな力を持つことができるのだから。
だが、それでも、だ。はっきり言って無謀としか言い様が無い。
全ての鎮守府が一斉に建造を開始すれば、段々と建造しても良い艦は減っていく。
つまり狙いが絞られてくるのだが、建造自体にそれを絞る方法は
残りはどうやっても運の要素が絡んでくる。
そして運の要素、確率が絡む以上、数が最も多い中立派が最も優位であることは自明の理だ。
『と言っても、可能性は低くともハト派、タカ派が大きな力を持つことにもなりかねないし、何よりここで中立派がより多くの建造を成功させれば、一層ハト派、タカ派との勢力差も開けることができる、よって我々として一隻でも多くの艦を建造することを推奨している』
と言うのが中将殿の言。なるほど、たしかにそれは重要なのかもしれない。
少なくとも、中立派と言うのは最もマシな部類のものであることは否めない事実である。
「了解しました、と言っても、こちらも零細鎮守府ですので、あまり数は作れませんよ?」
冗談めかしてそう告げると、中将殿が電話の向こうで苦笑して返す。
『まあそう言わず、期待しているよ』
* * *
建造と言うのは意外と時間がかかる。
まず準備以前の問題で、建造計画を練らなければならない。
それを書面にまとめ、それに従って建造を進め、最終的にその書面を報告書と共に上司に…………この場合、中将殿に提出し、何の艦娘が出来上がったか、と言うのを知らせる必要がある。
その計画を練るのに三十分。長いように思えるかもしれないが、軽々しく出来ない上に今後の自身の戦力となる艦の製造なのだから
そこからさらに狙う艦種を建造するための資源配分を過去のデータから探す。
この資源配分…………レシピと呼ばれるものが非常に厄介なもので、建造は通常、燃料、弾薬、鋼材、ボーキサイトと開発資源を使って行われる。
その時、投入する燃料、弾薬、鋼材、ボーキサイトの割合、配分によって建造される艦種と言うのが変わる。
さらには、数量1単位での調整によって、さらにそこから出やすい艦と出にくい艦と言うのが決定されていったりするのだ。
最終的には全部運次第なのだが、それでも建造時間と言うのは意外と長い上に資源も大量に使うことになるので、早々頻繁には出来ないのだ。
特にうちの鎮守府のように、海軍からの配給のみに頼って、遠征も禄にしない鎮守府にとって建造と言うのは一大事なのだ。
そう言った諸々のことを処理していると、結局のところ、実際に建造が開始されたのが午前五時。
初めて稼動する建造ラインの駆動音は、少しばかり新鮮な印象を受けた。
普段、あまり仕事の無い工廠だったが、今日ばかりはみな慌てふためいている。
「作業時間240分…………建造完了予定時間四時間後か」
提示された作業終了時間を見て、一眠りするか考える。
何せ昨晩から徹夜なのだ、とりあえずの報告は終わったので、建造終了まで仮眠でも取ることにする。
作業終了は大よそ九時…………まあその頃には全員起きてきているだろうから、一度全員を集めて伝えるべきだろう。
なんて軽く寝かけた頭で考えながら自室へと廊下を歩いていると。
「司令官?」
前方にヴェルがいた。
ヴェルと自身の部屋は真反対にあるので、どうしてこんなところにいるのかは知らないが、すでに服はいつもの物に着替えが済んでおり、髪も梳かして身だしなみは整えてあった。
「早いな、こんな時間に」
「ちょっと早く目が覚めたから…………散歩でもと思って。司令官こそどうしたんだい、こんな朝早くに」
時刻五時。まあ確かに早いだろう。
窓から差し込む朝日が目に眩しい。徹夜明けだからか思わず欠伸を一つ。
そんな自身の姿を見て、ヴェルを首を傾げる。
「司令官、もしかして徹夜かい? 昨日は早くに仕事は終わったと思うのだけれど」
「夜に中将殿から電話がかかってきてな、急な仕事だ」
後から言おうかと思っていたが、先にヴェルにだけは話を通しておいたほうが良いかもしれない。
ヴェルはこの艦隊の旗艦、建造される艦はヴェルが率いることになるのだから。
「今のうちに言っておくか…………昨晩、建造の許可が全国の鎮守府に出された」
そう告げる自身の言葉に、無表情だったヴェルの表情が僅かに驚いた様子に変わった。
この鎮守府が開港して、一番最初にやってきた艦娘がヴェルだ。自身がここで提督をやっている期間とヴェルがここで過ごしてきた期間はほぼイコールで結ばれている。
それだけにこれまで一度も行ったことの無い建造に驚いたのだろうし、興味が惹かれたのだろう。
「うちの鎮守府でも先ほど建造を開始してきた、マルキュウマルマルぐらいには終了予定だ。第一艦隊に組み込むことになると思うからマルキュウサンマル時になったら全員集めて執務室に集合してくれ」
「
軽い命令、それに敬礼を返してくるヴェルを微笑ましく思いながら、自室へと向かって再び歩き出す。
と、一歩、足を踏み出した瞬間、体が崩れる。
「あ、お…………え…………?」
「司令官っ!?」
ふらり、と世界が回り、平衡感覚が無くなる。
とすん、と尻持ちをつく。驚いて目を丸くしながら起き上がろうとするが上手くいかない。
すぐ様駆け寄ってきたヴェル。自身の脇に手を差し込み、崩れかけた自身の状態を起こすと、そのまま壁に寄りかける。
すっと伸ばした小さな手を自身の額に当てると、顔を歪めた。
「熱がある…………風邪かな、司令官。とにかく医務室…………より司令官の部屋のほうが近いね、そっち良いかい?」
「…………っつ、悪いな」
「問題無い、このまま連れて行くけど、歩けるかい?」
頷く自身に肩を貸しながら、壁伝いにゆっくりと歩く。
幸いと言うべきか、俺の部屋までそう距離は無い。すぐに部屋へとたどり着き、そのままベッドに横になる。
先ほどまで気づかなかったが、自身が不調であると気づいた途端、体中が重くなってくる。
思わずため息の一つも吐きたくなるが、口から漏れる吐息は熱く、荒い。
「大丈夫かい? 司令官」
ベッドの脇に椅子を持ってきて座るヴェルがそのアイスブルーの瞳で自身の目を覗き込みながらそう呟く。
あんま大丈夫じゃないけどな、と軽口を叩きながら、こっちに来いと手で合図してやるとヴェルが近づいてくる。
「移ると不味いからな、先に必要事項だけ伝えるぞ…………一つ、マルキュウマルマル時に工廠に行って建造結果を見てきてくれ。二つ、それを電話で中将殿に伝えて欲しい。三つ、万が一建造結果が不可だと中将殿に言われたなら建造のやり直しを工廠へ伝えてくれ、四つ、もし許可が出たら先ほども言ったが建造された艦娘を他の二人に顔を通しておいてくれ」
「一つ、マルキュウマルマル時に工廠で建造結果を見てくる。二つ、それを火野江中将に伝える。三つ、それが不可だった場合、建造のやり直しを工廠へ伝える。四つ、もし許可が出たら他の二人に新造艦の紹介する」
一つ一つ心に書き留めるように、ゆっくりとヴェルが頷き、最後に復唱する。
内容に間違いが無いこと確認するヴェルに、一つ頷く。
「悪いが少し寝させてもらう、後は頼んだぞ、ヴェル」
「
呟くヴェルの声を、どこか遠くに感じながら。
睡魔に襲われた頭は、抵抗空しく、飲まれていく。
ゆっくりと目が閉じられていき…………記憶はそこで断絶した。
前書きにあまり色々書かないでって言われたので、あとがきに色々と書くことにする。
前書きには意味ありげなことを適当に書いておく(おい
とりあえず、遅くなって済みませんでした。いや、自分としては新年始まる前に終わらせるつもりだったんですが、帰省して実家で書けなかったので一番の誤算だった。
とりあえずまたぼちぼち更新していきます。あと七話で完結なので、最後まで見てやってください。