響が可愛いと思ったから勢いだけで思わず書いちゃったような艦これ二次   作:水代

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神通さんの戦歴見てたら思いついたので久々に執筆。

ども、昨日から適当に2-5掘って、今朝目覚めに一回行って捕鯨に成功した水代提督です。

最近ずっと弥生更新してたので、たまにはこっちを。


контратака(コントラァタッカ)

 

 駆逐艦一隻の鎮守府。

 そんなものが今まで深海棲艦に滅ぼされずに残ってきたのは、そもそもこの海域にはあまり深海棲艦が存在しないからだ。

 ヴェールヌイは艦娘の中でもかなり錬度の高い艦娘ではあるが、それでも駆逐艦一隻である。その駆逐艦一隻でも何とかなる程度の戦力しか今までは戦ってこなかった。

 それは、時に戦艦ル級などと言う強敵と戦うこともあったが、それでも単艦であったりと、これまではとかくこちらにも勝因があった。

 

 だが、現状はどうだ?

 

 敵の数は戦艦ル級四隻、重巡リ級八隻、軽巡ホ級五隻、駆逐イ級十三隻、潜水カ級二隻、軽空母ヌ級四隻に空母ヲ級二隻の三十八隻。

 

 どう考えたって、駆逐艦一隻で勝てるはずが無い。

 中将殿のところから島風が応援に来ているが、それでも駆逐艦二隻だ。

 駆逐艦の最高峰と呼ばれる島風だが、それでも()()()の最高峰だ。

 性能だけ見れば戦艦と張り合えるはずも無い。

 駆逐艦が最も力を発揮する夜戦だと言うことを差し引いても…………否、敵に潜水艦がいることを考えれば、まだ昼戦のほうが良かったかもしれない。

 

 つまり、どう足掻いても絶望しか見えない…………そんな局面なのに。

 

 だと言うのに。

 

「く…………くくっ…………くくく」

 口から笑いがこぼれる。自分でも何がおかしい、と思うそれを止められない。

 もしここにヴェルがいれば、なにを笑っているのか、と冷めた視線を向けてこられること請け合いだろうが、残念ながらすでに出撃していいない。

 

 そう、出撃して。

 

 三十八隻と言う深海棲艦の大軍に、

 

 たった二隻の駆逐艦で突撃しろ、

 

 そんな自身の命令を、

 

Да(ダー) (了解)」

 

 たった一言で了承したあの馬鹿な娘は、

 

 今は…………いない。

 

「………………バーカ…………」

 馬鹿なやつ、と内心思っている。こんな辺境の左遷で飛ばされる流刑地同然の鎮守府の何がそんなに気に入っているのか。

 そんなものを守るために、本気で戦おうとしている、まったくもって馬鹿らしい。

 だが、そんな彼女の願いのために、あんなに必死になった自分もきっとまた馬鹿だ。

 そして、そんな馬鹿である自分が決して嫌いではないと思ってしまうのはきっと、大馬鹿である証だろう。

 

「くく…………くくく…………」

 

 また笑いがこみ上げてくる。

 ああ、やっぱり血筋なのかもしれない。自分の息子の顔もろくに認識しているかも怪しい、ロクデナシだったが。

 それでも、親父の立てた作戦だけは完璧だった。

 少なくとも、自身の知る二十二戦で、一度足りとて外したことの無いその実績は、かつて海軍の英雄と呼ばれるだけのものが確かにそこにあった。

 そして、そんな父親の血が、もしかすると自身の中にも引き継がれているのかもしれない。

 

「何だろうな…………数時間前まであんなに不安で不安で、もうこの世の終わりだ、なんて思えるくらいに落ち込んでたのに」

 

 今は、気分が高揚して仕方ない。

 

 恐れなど無い、そもそも自身の作戦が外れるはずが無い、とすら思っている。

 

 傲慢な考え方だ。だが、それを当然だと思っている自身がいる。

 もし中将がこの時の自身の心境を知ればこう言ったかもしれない。

 

 蛙の子は、やっぱり蛙だね…………と。

 

 

 * * *

 

 

 海の上を滑るように進む。

 夜だけあり、墨をたらしたように黒一色に染まる海は、まるで自身たちの未来を現すように、先を見通すことができなかった。

 ただ隣で共に走る戦友の存在と、自身が信頼する男の言葉だけが、この闇の世界の恐怖に打ち勝つ勇気を与えていた。

 思うことはただ一つ、負けられない。

 あの島には今、彼がいる。自身があの島にやってきてからずっと共に過ごしてきたあの男が。

 目の前で失われた自身の最も大切なもの。それをまざまざと見せ付けられ、喪失感に苛まれ、自身の無力に嘆き、絶望し、そうして療養の意味で送られたのがあの島だった。

 そこで出会った彼は、一度は折れた自身の心を、また立ち上がらせてくれた。

 

 いいさ、この安い命…………お前にくれてやるよ。

 

 だから、負けられない。自身の命だけではない、自身は彼の命をも背負っているのだから。

 だから…………絶対に、

 

「負けられない」

 

 呟いた言葉は、けれど共に進む戦友の耳には届いていたようで。

 気づけば、島風がこちらをじっと見つめていた。

 

「なんだい?」

 

 そう尋ねれば、島風がいや、と前置きし。

 

「正直、安心したわ」

 

 なにが? そんな自身の問いに、島風が水上を滑りながら思案をする、と言うなんとも不思議なポーズをとり、やがて答える。

 

「響がまた立ち直ってくれたこと、かなぁ?」

 

 思わず口を閉ざす。島風の言っている意味が分かってしまうからこそ、黙ってしまう。

 

「私は、もう響は戻ってこれないと思っていたから、だから意外だったわ、またそうしてやる気を見せることが」

 

 島風はあの時一緒にいた。だからこそ、余計にそう思うのだろう。そしてそれはこちらとて同じだ。

 

「島風はどうしてまだ戦っているんだい?」

 

 島風の言葉に明確な答えを返さず、逆に問いを投げかける。最早分かりきった答えを。

 あの時はどうしてか、分からなかった。けれどあの島に着てからは分かるようになった、その答えを。

 島風はそんな自身の内心を知ってか知らずか、けれどあっさりと答える。

 

「提督のために決まってるじゃない。そのために、島風は一日、一時間、一分、一秒だって止まらない…………止まれないわ」

 

 そう胸を張って、駆逐艦の最高峰たる少女はさらに速度を上げる。

 それに離されないように、自身もまた速度を上げる。

 そして、激しく波立つ音に負けないくらいの声を張り上げ告げる。

 

「私だって、同じだよ…………司令官がいるから私はまた立ち上がった。司令官が私の手を引っ張ってくれたから、私はまた立ち上がれた。だから私は司令官のために戦うよ」

 

 戦わないならそれが一番だ。平和とはなによりも尊いと知っている。私が知らなくとも、()()()()()()()の記憶が知っている。

 けれど、戦わなければ守れないと言うのなら。

 

「今度こそ、絶対に守ってみせる」

 

 もう、あんなのは嫌だから。

 

 もう、目の前で姉妹を失うのは嫌だから。

 

 もう、大切なものを守れないのは嫌だから。

 

 そんな自身の思いに、決意に。

 けれど島風がつまらなそうにそっと呟いた。

 

「そんなの…………島風だって同じに決まってるじゃない」

 

 

 * * *

 

 

「いらっしゃい…………ようこそ、私の鎮守府へ」

 目を開いた時、まず目に入ってきたのは、一人の女性だった。

 それが始まりだった。それが、()()()()がこの世に生を受けて最初に見た光景だった。

 とても小さな鎮守府だった。とても有名な鎮守府と同じ読みをしながら、けれど誰も聞いたことも無いような小さな小さな鎮守府。けれど、そこには暖かさが、優しさが、温もりが溢れていた。

 自身は3番目に建造された艦であり、その時、部隊の旗艦は彼女が勤めていた。

 

 駆逐艦雷

 

 自身の妹であり、自身の手の届かないところでいなくなってしまった最愛の姉妹の一人。

 そして自身のすぐ翌日に建造されたのが彼女だった。

 

 駆逐艦電

 

 雷と同じ自身の妹で、自身の目の前で沈んでいった最愛の姉妹。

 

 純粋に喜んだ。姉となる暁はいないが、それでも特3型駆逐艦四隻中三隻も一つの鎮守府に揃っていたのだ、喜ばないはずが無い。いつかは暁もやってくるだろう、と縁さえ感じていた。

 

 そう、本当に大切な…………なによりも大切な家族たちだった。

 

 その、はずなのに…………。

 

「なんで…………どうして…………」

 

 分からなかった。それがどうしてなのか、自身には理解できなかった、理解したくなかった。

 

「馬鹿ね…………だって、私、響の家族だもん…………簡単なことでしょ?」

 

 ほんの少しの見落としだった。逃げていく敵、艦隊の勝利は確実で、けれど敵の最後の足掻きにも等しい魚雷。

 油断していた。もう敵は逃げるだけなのだと。そんな油断をしていた。

 気づけばもう避けることのできない距離まで魚雷は迫っていて…………。

 

 そんな自身の前に、雷が立ち塞がった。

 

「…………やめて、また私を置いていかないで、雷」

 

 そんな自身の言葉に、けれど雷は苦笑して。

 

「ごめんね、響」

 

 そう呟いた。

 

 

 * * *

 

 

「準備はいいかい?」

「誰に聞いてるのよ、そっちこそ、いつまでも準備に手間取ってないでしょうね?」

 互いに愚問だと答え、手にしたソレをぎゅっと握り締める。

 夜の闇を切り裂く砲撃音。三十八隻もの深海棲艦が砲撃し、雷撃し、空爆するその轟音が嫌でも耳に入ってくる。

 逃げる味方は見えないが、攻撃の音がする、と言うことはまだ生きているのだろう。

 今からあの深海棲艦の群れへと突撃する。そう考えると、体が恐怖で震えそうになる。

 だが、恐怖を押さえつける。守らなければいけない、その意思と意志で体を奮い立たせる。

 

「本当に上手くいくのかな?」

 

 ふと呟いた島風の弱音。先ほどまでなら一緒になって同調していたかもしれない、が。

 

「いく…………いや、必ず上手く行かせる」

 

 成否は関係ない、自分たちがそう導くのだと、結果を奪い去っていくのだと、そう決意し、返した。

 

 

 

 必死だった。ただ、ただ必死だった。

 これまで個々単位の鎮守府でしか行ってこなかった深海棲艦の討伐。故にこそ、その討伐数もたかがしれていた。

 そして、増え続ける深海棲艦に防戦が続く現状を打破するためついに複数の鎮守府で連合艦隊を組み、深海棲艦討伐のための遠征部隊が組まれた、それが駆逐艦暁が所属する艦隊は、つまりそれだった。

 序盤は良かった、連勝に続く連勝、中盤も良かった、多少の被害は出たがそれでも連勝し続け。

 

 あっさりと、連合艦隊は敗北した。

 

 計二十八隻からなる連合艦隊は。

 

 たった一隻の深海棲艦に完全なる敗北を喫した。

 

 黒いフードのついたレインコート状の服の悪魔。

 

 目を閉じれば今でも思い出せる、脳裏に焼きついた悪魔の笑みが。

 

 悪魔の放った航空部隊に、味方の艦載機が次々と落とされ空母が沈黙した。

 悪魔の撃った先制魚雷に、味方の戦艦が戦う前から撃沈された。

 悪魔の放った砲撃に、味方の艦隊が脆くも崩されていった。

 悪魔の撃った至近魚雷に、味方は総崩れとなった。

 

 勿論こちらだって攻撃しなかったわけではない。むしろ、激しい攻勢をかけ、あの悪魔を倒そうと奮闘した。

 

 だが、味方の攻撃を受けてなお、悪魔にはかすり傷ほどのダメージしか無かった。

 

 至近距離で駆逐艦、軽巡洋艦、重巡洋艦の魚雷を全てぶつけても平然とした表情で笑っているその姿に全員が理解した。

 

 この悪魔には絶対に勝てない、と。

 

 そうなった連合が瓦解するのは一瞬だった。

 

 けれど普段なら決して自身たちの決めた海域を出ることが無いはずの深海棲艦が、ハイエナのように後ろから追ってくる。それが連合艦隊を壊滅させた。

 あの悪魔はすでにいない。あの笑みを全員の脳裏に恐怖と共に刷り込み、姿を消した。

 だが、恐怖のこびりついたその様で、追ってくる深海棲艦に立ち向かえるものなどいなかった。

 やがて夜が来る…………長く、永い、夜が。

 

 瓦解した連合艦隊のすでにほとんどが深海棲艦により轟沈され、残ったのは暁を含め、僅か三隻。

 後ろから追ってくるのは当初の自分たちの連合艦隊よりもさらに多い、三十を超える深海棲艦の群れ。

 暁自身は小破程度で済んでいるが、他の二隻はダメージが深く、戦闘続行など不可能に近い。

 つまり、どうやったってこの先に待つのは、自分たち三隻の轟沈だった。

 

 もし、もしも、だ。

 

 この二隻を見殺しに、囮に、暁だけ逃げ出したのなら。

 確率は低いが、それでもまだ助かる見込みはあった。

 幸い暁のダメージは浅く、そもそも未だ逃げ切れていないのは、他二隻が低速艦だからだ。

 敵も反撃をもらわないように付かず離れずの嫌な位置でこちらへと砲撃をし続けている。まさしくなぶり殺しだ。

 だから、もしも暁だけ逃げ出せば、まだ逃げ延びるチャンスはあった。

 

 そんなことができれば、だが。

 

 振り返る。先行して海路を確保する自身のすぐ後ろには、傷つきながらも敵の弾を必死で受け止める長門と、その長門に抱えられたぐったりとうなだれた様子の瑞鳳。

 ぐっと拳を握る。できるわけが無い。仲間を見捨てて自分だけ逃げるだなんて、できるはずが無い。

 だが、このままではジリ貧だ。いくら敵がなぶるようにある程度距離を開けて撃っているせいで被弾率が低い、と言ってもそれでも当たる時は当たる。すでに中破した長門が一体あとどれだけ持つのか。

 もし、長門が航行不能となれば、すでに自力で動けない瑞鳳と長門の二人を暁が引っ張っていくなどと言うこと駆逐艦には不可能だ。

 その時は、三人揃って海へと沈んでいくことになるだろうと考え、身震いする。

 そんな未来は嫌だ、そうは思っても、現状、逃げるしかできることが無い。

 反撃など無意味だ。あの数を相手に、この距離で、どんな攻撃ができるのだ。

 相手は戦艦の間合いからこちらへと一方的に砲撃してきている。長門の装備はすでに損壊してしまっており、当初持っていた自慢の46cm三連装砲も砲身が曲がってしまっている。唯一無事な15.5cm三連装副砲も戦艦同士が砲撃するようなこの距離では意味を成さない。

 

 このままではいつか遠くない未来に詰む。

 

 それを避けるためにもどうにかしないといけない。

 

 だが、どうやって?

 

 歯を食いしばり、必死に思考を巡らせていた…………

 

 …………その時。

 

 

Ура(ウラー)!」

 

 懐かしい声が聞こえた。

 まだ一度も会ったはずは無いのに、その声を、けれど懐かしいとそう思った。

 それはもしかすると、()の記憶なのかもしれない。

 感じているのは、声ではなく…………自身に似た存在がいる、と言うその魂のようなソレなのかもしれない。

 

 そして、声が聞こえた直後。

 

 ズバァァァァァ

 

 少し遠くで、水飛沫の上がる音が聞こえる。

 

「五連装酸素魚雷!いっちゃってぇー!」

 

 次いで聞こえる声、そして直後に聞こえるのは一際大きな水飛沫の音。

 

 足は止めなかった。そんな余裕は無かった。けれど、振り向いた先で、確かに見た。

 

 自身たちとほぼ同じようなデザインの制服に、白い帽子を被った蒼い瞳の少女。

 

 そして、少女がぽつりと呟く。

 

контратака(コントラァタッカ)(さあ反撃だ)」

 




戦況分析

味方
ヴェールヌイLv85 島風Lv99 
暁Lv45(小破) 長門Lv50(中破) 瑞鳳Lv40(大破)



空母ヲ級2隻 戦艦ル級4隻 重巡リ級8隻
軽巡ホ級5隻 駆逐イ級13隻 潜水カ級2隻 軽空母ヌ級4隻


ちょうどいい区切りなので、あと二、三話で第一章終了にします。何よりも、ロシア語でタイトル考えるのが凄く面倒になってきた。
特に、綴りと意味はいいんだけど、カタカナの読みを探すのが非常に難解。
と言うわけで、完結したら、第二章として暁ちゃんメインにヴェルヌイ添えた普通のタイトルのをやっていこうと思います。

あとどうでもいいけど、作中に出てきた連合艦隊を一方的に倒した深海棲艦。
分かりますよね? 現在5-5でしか出てこないあの深海棲艦です。
正直、28隻相手に単艦で勝つとかどんだけだよ、とも思ったけど、艦隊の平均レベルが40~50くらい、と過程するとマジで勝ってもおかしくないのが彼女の怖いところ。でも可愛いから許される。
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