ARIAアニメ第三期13話のアリシア引退の約1ヶ月後のお話。


初めてのss制作で拙い文ですが、読んでいただけると嬉しいです。


1 / 1
第1話

「アリシアさん。本当に、本当に、お疲れ様でした。」

 

 

 

 

 

 

季節外れの雪が降った「白き妖精(スノーホワイト)」

アリシア・フローレンスの引退式から1ヶ月がたったある日。

アリアカンパニー唯一の水先案内人(ウンディーネ)で、

「遥かなる蒼(アクアマリン)」の通り名を持つ

水無灯里はいつものように店のシャッターを開ける。

「このシャッターを開けるのが、私の1日の最初のお仕事。

 今日も素敵な1日になりますように…」

今日のアクアは雲一つない青空で春らしい暖かな風が吹いていた。

太陽の光を反射してキラキラと輝く水面を見つめていると、後ろのほうから物音がした。

「おはようございます、アリア社長!」

「にゅ!」

振り返ると白くてちょっと大きな火星(アクア)猫、アリア社長がそわそわしていた。

「アリア社長今日も元気ですね。今朝ごはんの用意をしますね!」

「ぷいにゃ!」

 

朝ごはんを済ませた灯里とアリア社長はスケジュール表を確認する。

「今日もご予約はありませんね…」

「にゅ…」

アリシアがいた頃は常に埋まっていた予約も、今では1週間に2,3件あるかどうか。

灯里自身に問題があるわけではない。‘‘白き妖精がいなくなった’‘というマイナスイメージが払拭しきれず、結果としてアリアカンパニーに閑古鳥が鳴くという状況になってしまった。

「こんなことで落ち込んでいられません!また予約がいっぱいになるように頑張ろう!」

気合をいれた灯里は、ゴンドラの準備を始める。

予約のない日はサンマルコ広場へ行き、自らお客様を探すのだ。

 

ゴンドラの準備をしている灯里の背後から、近づく人影が一つ。

その人は灯里の横髪を掴むと、思いっきり下へと引っ張った。

「ダブルもみあげ落としーーー!!!」

「うひゃぁぁぁぁっっっっ!!!!」

「よう、もみ子」

「もみ子じゃありませんよ~、暁さん」

灯里のもとを訪れたのは火炎之番人(サラマンダー)の出雲暁であった。

「こんなところでどうしたんですか、暁さん」

「うむ、たまたま近くに用事があったんでな。寄ってやったのだ。

 それにしてももみ子よ、暇そうだな」

「だからもみ子じゃないですよ~。それに暇じゃありません!

 今からお客様を探しに行くんです!」

「ほう、それは丁度いい。オレ様が客になってやろう!」

「えっ、それは嬉しいんですけど暁さんお仕事は大丈夫なんですか?」

「ああ、今日は休みだからな。だから気にせず、オレ様を案内しろもみ子!」

「はひっ!」

 

それから灯里と暁はゴンドラでネオ・ヴェネツィアを巡った。

様々な観光名所を巡り、じゃがバターを食べたりのんびりお茶をしたり…

気づくと既に、日が傾き始める時間となっていた。

 

「さすがは一人前だなもみ子。超ノロ伝説が懐かしいな」

「あはは、あの頃はまだまだ半人前になったばかりだったから」

「なぁもみ子、一人前の水先案内人(プリマウンディーネ)になってどうだ。楽しいか?」

「はひ!お客様をいろんな所へご案内して、触れ合うことはとっても楽しくて

 お客様に喜んでいただくととっても嬉しい気持ちになります。ただ…」

「ただ、なんだ?」

「アリシアさんのように毎日予約でいっぱい!ってことにはならなくて。

アリシアさんは本当にすごかったんだなぁって改めて実感します。

それに比べて私はまだまだなんだなって。

それとたまに、夢を見るんです。藍華ちゃんとアリスちゃんと合同練習をしている時のこと。

アリシアさんやアリア社長といろんな素敵を見つけた時のこと。そんな夢を見た日は思っちゃうんです。あの、楽しくて夢のようだった日々に帰りたいって…」

「ダブルもみあげ落としーーー!!!」

「はひぃぃぃぃ!もう、何するんですか暁さん!」

「確かに、アリシアさんはすごいお方だ。だがもみ子、お前はお前だ。アリシアさんにはアリシアさんの、お前にはお前の良さがある。だからもみ子らしくのんびりやっていけばいい。そうすればいずれ、お前の良さに気づいた奴らがたくさんやってくるさ。なんてったってもみ子はアリシアさんの弟子で、このオレ様が認めた一人前の水先案内人(プリマウンディーネ)なんだからな!」

「暁さん…。はひっ!ありがとうございます!」

 

 

それから二人を乗せたゴンドラは本日の終着点である浮き島行きロープウェイ乗り場へと到着した。

「今日は世話になったなもみ子、礼を言う」

「はひ、こちらこそありがとうございました!」

「あー、その、なんだもみ子。たまには浮き島に遊びに来てもいいぞ」

そういった暁の顔は、夕日のせいか、はたまた別の理由からか少し赤くなっていた。

「いつか必ず遊びに行きますね暁さん!そのときは案内お願いしますね!」

「お、おう!任せろ。では、オレ様はそろそろ行くぞ。

これから頑張れよ、遥かなる蒼(アクアマリン)」

「はひ!頑張ります!」

 

 

それから約1ヶ月。日々の灯里の努力もあり、

アリアカンパニーは少しずつだが客数を増やしていき、

「遥かなる蒼(アクアマリン)」への指名も増えていった。

朝、いつも通り灯里は店のシャッターを開ける。

「今日も素敵な一日になりますように!」

朝食を済ませ、ゴンドラの準備を終えると灯里は店先に立つ。

 

「お客様、ようこそアリアカンパニーへ。さぁ、素敵な一日をご一緒しましょう」

 

一人前の水先案内人(プリマウンディーネ)、水無灯里の素敵な日々はこれからも続いていく。

 



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。