オーバーロード~遥かなる頂を目指して~   作:作倉延世

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 調子がよくて、連日投稿2日目です。


第4話 迫りくる危機

 

 ひとまずは相手、もう畜生と呼んでやりたいが、アインズは落ち着いて声をかける。

 「どうしたんだ。一体、お前は『森の賢王』ではないのか?」

 「何と、某を知っているのでござるか?!」

 ああ、異名に関しての自覚はあるのか、意味は分かっているのだろうか?では、

 「お前の種族名はジャンガリアンハムスターというのではないか?」

 「?、外の者たちは某をそう呼ぶでござるか?」

 これに関しては仕方ないと思う。人が勝手につけた名称であるわけだし、それを知って当然と言うのは無理がある。

 「それにしてもお前は何から逃げていたんだ?」

 それで、自身のおかれた立場を思い出したらしい。

 「そうでござった! 助けてほしいでござる! このままでは某、皮をはがされてしまうでござるよ!」

 それは相当野蛮な相手だろうなあと、思っていたところで新たな気配がした。しかし、それはよく知るものであり、彼は内心で絶叫する。

 (ああああ! ――……そういうことか)

 そういえば、昨晩のやりとりで森の魔物を狩るかもしれないと報告があった。ある程度は自由にやってくれて構わないが、まさかその相手がこの珍獣であるとは。

 (バッティング、という奴だな)

 それは間違いなく、自分の身内たる存在であった。いつか、墳墓で見た時と同じく、軽やかに降り立った存在に後ろで控えていた2人がすぐさま跪く、今はほかに人もいないのでまあ、正しい判断といえると思う。

 

 「申し訳ございません! モモンさん!」

 ふむ、連絡は行き渡っているようだ。と、組織の出来上がりに満足する。

 「ああ、いや、特に気にする必要はないぞ、アウラ」

 実際そこまで大きな失敗ではないような気がする。精々、やんちゃな娘が近所の犬を泣かせてしまったという認識でしかなかった。

 「一体、これはどういうことだ?」

 説明を求めると、彼女は体を震わせながらも話してくれた。なんでもこの森にいたドライアードに楽園計画の協力者になってほしいと頼んだところ、その際の条件として、力を証明することになり、この辺りで強いといわれている。「森の賢王」の皮を持ってくることになったらしい。アウラとしてはほかの方法を取りたかったのだが、どうしても相手が納得しなかったという。それで、やむなく賢王を襲っていたという訳である。

 (何か事情でもあるのか?)

 確かに現地の者たちが見ただけでは自分たちの実力は分からないであろう。しかし、それでも楽園計画は魅力的なものであるはずだと思うのだが、アウラもそこを詳しく話してくれた。そして、封印されているという魔樹の存在を。その名をザイトルクワエという。

 (そうい事か)

 その存在は本能だけで生きており、そこに知性はないという。話ができないというのは致命的である。とても楽園でやっていけるとは思えないし、封印されているということであれば、結局のところ問題しかおこさない存在であったのだろう。そして、ドライアード達はその存在がある限り、この世界に安全なところはないと思っているらしい。

 「アウラよ、そのザイトルクワエとはどれ位のレベルであるか分かるか?」

 それを聞くと、彼女はやや首をかしげて、考え込みやがてあげる。

 「たぶん、80位かと、あたし一人でも何とか倒せると思います」

 ならば、それを依頼すればいいのにしなかった。つまり、

 「そのドライアードはアウラの事を信じていないということか」

 それも仕方ない気がする。どうやらこの世界はYGGDRASIL(ユグドラシル)程、高い存在というものがいない。レベル35のデスナイトとガゼフが大体同じくらいだと思えば、その存在の歪さが浮きだつ。そしてここで必要となるのは、見た目のインパクトであることを考えれば、自ずと答えは出る。

 (あいつだな)

 思えば仕事らしいことを頼めていない。異変以降、一度だけ会ったが、彼とも意思疎通ができて驚いたことを思い出す。

 「アウラ、一つ提案があるのだが」

 「アインズ様の言葉であれば」

 「いや、お前の意見も聞かせてほしい」

 とりあえずは思いついたことを話してみる。彼女の目は輝いていた。

 「さすがアインズ様です。あたし達一同を思ってくれて」

 そう言われて悪い気はしなかった。うまくいくかは分からないが、それでいくとしようとアインズは決めた。

 「ではアウラよ行動に移れ、アルベドには私から伝えておこう」

 「はい! アインズ様! 必ずやドライアードを楽園に組み込んで見せます!」

 「ああ、頼むぞ」

 こうして、話が終わり、アルベドへと伝言(メッセージ)をとばす。彼女もひどく感謝していた。そこまで喜ばれることだろうかと照れくさい気持ちになる。それから長らく無視していた賢王へと向き直る。今自分たちがしていた話を聞いていたらしいが、

 「某を追っていたエルフとお主らは知り合いでござったのか?」

 それを聞いてさらに気分が落ち込む。この時点でそこに結論を出せていないということは、やはり

 (ガセだな)

 いったい誰だと思う。よりによって賢王なんて名付けた奴は、知性の欠片も感じない。それでもまあ、あれだと彼は考える。利用する方向でいくかと、正直討伐したところで大した名声も得られそうにない。他にも理由を上げるとしたら、これだ。

 (モモンガさん、もしもこの子をいじめたら動物虐待で訴えるからね!!)

 (分っていますよ。餡ころもっちもちさん)

 ギルドでも随一の動物好きだった彼女の声が頭に響いているような気がするのだ。

 「さて、お前を追っていたのは私の部下だ。その意味が分かるな?」

 わざとドスの効いた声をだすよう心掛ける。彼女がそれを手伝ってくれた。そして効果があったらしく。賢王、いや、巨大なハムスターはその身をひっくり返し銀色の毛で覆われた腹を惜しげもなくさらけ出す。分かりやすい服従であった。

 「某、お主に降参するでござるから、命だけは助けてほしいでござる。某、仲間に会うまでは死ねないのでござる」

 もしも、この台詞を、肉食獣を、獅子や狼を連想させる魔物が言えば、様になるのだろうが、とてもそうはみえない。それでも、アインズに響く言葉があった。

 「仲間…………会うまで…………か」

 「アインズ様(モモンさん)?」

 ナーベラルが心配そうにみてくる。大丈夫だと手で伝えてやる。

 「お前は一人なのか?」

 ここは、匹と聞くべきであったかな? と思うが、それはどうでもいいことだと直ぐに思い直す。ハムスターはやや縮こまりながら答える。そこには貫録なんてない。只々、愛らしい仕草でしかなかった。

 「うう、某、生まれてこの方、ずっと一人でござった。できることなら仲間、同族に会いたいでござる」

 「そうか」

 お前も、一人なんだなと思ったところで、すぐさま取り消す。それは彼女たちに対して失礼だ。それでも、その境遇を聞いてしまえば、アインズとしてはもう放置もできない相手でもある。楽園に守護獣くらいいてもいいかもしれない。ハムスターだけど。

 「私に忠誠を誓うのであれば、汝の生を許そう」

 それを聞くやハムスターはすぐさま起き上がり、今度は身を屈めて来る。

 「某、忠誠を誓うでござる。殿に誓うでござる!!」

 次にハムスターはアインズにその体を押し付けるように体を動かしてきた。きっと自身の匂いを擦り付ける一種のマーキングというものだろう。となりから激しい歯ぎしりが聞こえたのは気のせいに違いない。

 「ああ、分ったから、離れろ。そうだなお前に新たな名を与えるとしようか」

 すこし考えてみる。と言ってもそんなに悩む内容でもない。

 (ハムスターなのだから、ハムを入れりゃなんでもいいだろ)

 「よし、お前は今日からハムスケと名乗るがいい」

 正直自信はないが、それでもハムスターは喜んでいた。

 「某、今日から森の賢王改め、ハムスケでござる!」

 (んん、いっきに阿保っぽくなってしまった改名だな。少し不安になってきたぞ)

 「ナーベよ、この獣の名はこれでいいのだろうか?」

 「アインズ様(モモンさん)が名付けられたのなら、個人的には愛らしさを感じます。おそらくはシズも納得するでしょう」

 何故そこで、あの無機質なメイドが出て来るのかは分からないが、問題はなさそうだ。このまま連れて帰るとしよう。

 (どうせ大した評価はもらえない)

 そう思っていたのだが。

 

 

 

 「何て立派な魔獣なんだ!」

 (はあぁ!!)

 ニニャの絶賛であった。その様子から別にふざけているとか、からかっているわけでもないらしい。

 「これ程の魔獣、私たちでは皆殺しにされていましたね」

 戦士として自分以上の経験を持つペテルがそういうのであれば、きっと間違いはないのだろう。

 「これ程とは、これはいい歌ができそうですよ」

 リーダスもそのペン裁きを見る限り、相当興奮しているようだ。しかし、どんな内容になるのか。

 「ナーベよ、お前はどう思う」

 先ほど同様不安になってきて彼女に意見を求める。彼女は微笑んで答えてくれた。

 「実際の強さはともかく、この瞳には力強さを感じますね」

 (はあああぁぁ!!!)

 どうみても、アインズには愛玩獣のそれも相当な部類で弱弱しいものに見えないというのに、やはり、この世界は以前の世界とは異なるということか。しかし、まさか彼女(NPC)もそうなのかと思ったところでそれも当然かと思う。そもそも彼女は、ただ、楽しければ、面白ければを追求したあのYGGDRASIL(ユグドラシル)の出身なのであるから、ある意味それもアインズ達《リアル》の人間のせいともいえる。

 (本当に悪いのは、運営、そして悪乗りした俺たちみたいなプレイヤーだよな)

 まあ、時がたてばそれも気にならなくなるだろう。

 

 「モモンさん! これは是非とも凱旋すべきです!」

 「…………がいせん?」

 

 いや、言葉の意味は分かっているが、どこか受け入れたくない自分もいる。仮に連れて帰って、嘲笑の対象にならないかという不安。それともうひとつそれをしてしまうということは、

 「モモンさん」

 不安そうなンフィーレアの顔、そう、こんな見た目でもあの村を守るための抑止力にはなっていたのだ。それでも

 (安心してくれ)

 軽く会釈をする形で伝える。通じたらしく、少年の顔に安堵が浮かぶ、人員を追加するとしようか

 (誰がいいかな、シズ? それともロドニウスか?)

 現在、墳墓にて待機となっている者たちの名前が浮かぶ二人とも銃の扱いに長けていたはずだ。それぞれの上司の評価も思い出す。シズ・デルタ、先ほどナーベラルがあげたメイドでやや人に化けるのは無理だが、今のカルネ村であれば受け入れ可能だろう。ユリ、ナーベラルについでプレアデスたちでは真面目組なのだとか、セバス情報である。ロドニウス、本来の種族を考えれば中々、活躍する機会がないが、デミウルゴス曰く、優秀な人材だとか、無理に懸念点をあげるとすれば、やや性格に難ありということであるが、まあ、今更である。それも彼をそう創った。かつての友たちが原因であるのだから。

 (深く考えても仕方ないな)

 

 「ルプスレギナさん、そういうことで、『森の賢王』は私がもらい受けることになってしまいまして」

 表向き、他人となっている彼女に報告と謝罪を行う。こういうのは、きちんとしなければならない。しかし、彼女は気にしたふうもなく。

 「構いません、いと優しき我が主であれば新たな方法を用意されるかと、それに、こう見えて私、結構腕に自信がありますので」

 あくまで微笑みを絶やさず笑ってみせる彼女。それは漆黒の剣とて、納得せざるをえないことであった。自分たちより強いであろうあのジュゲムたちが言っていたのだ。

 『姐さんは、俺たちなんか比べもんにならねえ位、強い御方だ。死にたくなかったら節度をもってくだせえ』

 と、その時はルクルットを指さしながら言っていたが。そして今現在、彼女と対峙して戦士の感が伝えて来る。彼女は強い、仮に熟練の暗殺者が殺意を隠して近づいても不意打ちすらできず、次の瞬間殺されているであろうことを。そして、その時でも彼女は優雅に笑っていることであろう「何か御用でしたか?」と、

 (これ程の人物を従えるとは、一体何者だろうか)

 ペテルはその人物に興味が出てきていた。そして、自分たちもそれに追いつこうと努力を続けたいとも思った。モモンの評価も得られている。「4人がかりでもオーガを8匹倒せるのは相当ですよ」あの人に言われると、なぜか嫌味に感じないのが不思議だ。

 (世界はこんなにも広いんですね)

 目前の人物に、そして今行動を共にしている者たちのことを改めて規格外であることを認識するペテルである。

 

 アインズも気にすることはやめた。現在この村には、彼女に、ゴーレム、ジュゲム率いるゴブリン達がいるし、常に、二グレドの班が警戒をしてくれている。昨夜の出来事もその賜物であったのだから。彼女たちの働きには感謝しなくては、もし余裕があれば、転移門(ゲート)を専門とした輸送部隊と、常にどこにでも派遣できる戦闘部隊を作ってもいいかもしれない。

 (ひとまず、アルベドかデミウルゴスだな)

 まずは彼に相談に乗ってもらうのがいい、いや、もしかしたらもうその方向で動いているかもしれない。今度、聞いてみよう。

 

 「エンリ、それじゃあ。またいつか来るからね」

 ンフィーレアも最後に想い人たる少女に言葉をかける。彼もまたわかりやすい性格であり、周囲のほとんどの者、アインズですらそれに気づいていて、そして成り行きを見守るものの。

 「うん、いつでも来てね。ンフィーは大事な()()だもん」

 悪意なく、善意のみで紡がれた言葉に僅かにひきつる少年と、笑い続ける少女。

 (これは、苦労しそうだな)

 それはアインズだけの結論ではないだろう。しかし、彼も人のことは言えない。

 

 養父と養子、血のつながりはなくとも、この点だけは似たもの親子であるようだ。

 

 こうして一行は少年に同情しながらも城塞都市への道を進むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夕方、カルネ村を訪れる者たちがいた。が、それは人ではなかった。ドライアード、木の妖精たちに、木がそのまま自立歩行しているようなトレントたちである。そしてそれを引き連れてきたのはオッドアイを持つエルフの少女であった。

 「初めまして、エンリ様!あたしはアウラ・ベラ・フィオーラ。アインズ様の臣下にして、ナザリック地下大墳墓第6階層守護者でございます」

 元気よく挨拶をしてくる少女にエンリは内心驚いていた。階層守護者、それはルプスレギナから聞いている。ゴウンはその墳墓の主であり、次に偉いのがあの時会ったアルベド、そしてその次が7人の階層守護者たちである。その彼女が引き連れてきたのは一般的にはモンスターであるが、恩人たるゴウンの考えを聞くのが先だ。

 「こちらこそ初めまして、エンリ・エモットといいます。こちらは妹のネム・エモットです」

 一度頭を下げる挨拶は大事だ。妹もしっかりやってくれている。

 「私のことは気軽にエンリと呼んでくだされば」

 「そう?じゃあ、エンリ、これからこの子達をお願いしたいんだけど、いいかな?」

 この人物はすぐに要望を聞いてくれた。案外柔らかい人物かもしれない。外見こそ、自分より年下に見えるが、エルフと人間では寿命の概念が大きく異なる。それに自分はただあの方に迷惑をかけた存在でしかないのだ。

 「あの、説明を求めても?」

 受け入れるつもりではあるが、それでもある程度の事情を知っておかなくてはならない。この場には村長にも来てもらっている。にわとりというものの話も彼は快く引き受けてくれた。ルプスレギナ曰く、まだ試作品の段階を出ないといっていたが、その肉はエンリ達が食してきたどれよりもやわらかく、弾力があるものであり、とてもおいしいものであった。たまごも工夫次第でいろんな料理にできて、村人たちに活力を与えてくれた。それもこれも、ゴウン様のおかげであるが、村長のおおらかさにも感謝しなくてはならない。

 「ああ、そうだね、…………」

 それから聞かされたのは仰天ものであるもののなんとか平静を保つ。何でも、トブの大森林の奥深くに封印された魔樹という存在がいて、彼女たちはその脅威に怯える生活をおくっていたようだ。ほかに移ろうにも、強いモンスターの縄張りでそれが叶わず。それを見かねたアウラがそれならばカルネ村へと来るよう言ってみたところ、その魔樹をどうにかしないと不安で仕方ないということであった。その魔樹はかつてあの竜王たちですら倒しきれなかった伝説の存在だと言うのだ。確かにこのエルフの少女を見る限り、それ以上強いとは思えないかもしれない。それでもエンリは確信していた。きっとゴウンであれば、その方たちに仕える者たちであれば、問題なく対処できる相手ではないだろうか、ルプスレギナの話からの勝手な空想になるかもしれないが、そうだと断言できる自分がいるのも確かである。そして、そのゴウンの指示に従い、彼女とは別の階層守護者が対応したところ、その姿にようやく彼女たちも安心したとのことで、ここまで来たということであった。

 「それで、いいかな?」

 もちろん自分としては断る選択肢はない。が、それでも確認は大事である。

 「村長さんは」

 「私としては反対はないさ、エンリちゃんさえよければ」

 (ちょっと!!)

 何故そんな大事なことを自分に投げて来るのか、自分はただの村娘だ。しかし、ここで投げ出すのはエンリにはできなかった。

 「分かりました。しかし、ただで入れるということはできません」

 その言葉に周りから様々な視線が飛んできて、心臓が止まりそうになるが、彼女とて譲れないところがあるのだ。

 「村に入っていただく以上、何かしらやってもらうことになると思いますが、あなた達は何ができますか?何でも構いませんので、教えてもらえますか?」

 そう、ただあの方の保護下に加わるというのはエンリにとって許せないことだ。たとえ、できることが少なくても何かしらの仕事につき、ゴウンの為に働くべきだ。と、その凛とした表情は言っていた。

 

 そして、それを聞いた者たちはそれぞれに思う事を胸に抱いている。

 (ルプスレギナの言う通りの娘みたいだね)

 (それでこそ、エンちゃんすよ)

 ナザリックの者たちは感銘を受けていた。

 (エンリちゃん、エモットさん、あなた達の娘は立派にやっているよ)

 (おねえちゃん、かっこいい)

 (流石です。お嬢)

 カルネ村の者たちもその姿に感動を覚えていた。

 (間違いないこの方は)

 そして、木々の代表である、ピ二スン・ポール・ペルリアもそれを受けて、確信した。一見ただの少女たるこの娘がこれから自分たちが仕えていくことになる偉大なる王の娘であると。

 「私たちは、果物を作ることができます」

 「そうですか、では農園を作り、そこで働いてもらうことになると思いますが、それでいいですか?」

 彼女は無理強いはしない、それが難しければ、村で受け入れることはできないまでも、新しい住処を探す用意をするつもりであった。

 「いえ、その条件で構いません」

 「分かりました。カルネ村はあなた方を受け入れます」

 なんとか話はまとまりそうだ。

 (また、デミウルゴス様に)

 そう、彼に相談に乗ってもらう必要がありそうだ。ゴウンからの信頼であれば、あのアルベドの次にあるという人物だ。農園造りにしてもいい考えをもらえるかもしれない。そして、同時に憂鬱にもなる。その人物はいくら言っても自分のことを「お嬢様」と呼ぶのをやめない。ルプスレギナは普段であれば、気楽に、あのアルベドでさえ、呼び捨てにしてくれるというのに。そしてこんな時だというのに、思い出してしまう。

 あれから彼女がきて、いきなり自分達に頭を下げたのだ。驚きそうになったが、何とかその理由も聞かせてもらえた。助けてもらったあの日に、一度自分たちのことをどうでもいいとゴウンに言い、そのあと、養子となったことであの態度の変わりようで怒られてしまったということ。

 不思議と怒りも悲しみもなく、ただ、微笑ましいと思うだけであった。そして当然とも思う。その時点であれば、自分たち姉妹と、あの方は何の関係もなく、ただ図々しい願いをしたものとそれを快く受けてくれたもの。それ以上でもそれ以下でもない。むしろゴウンの頭が固すぎるのでは少々失礼なことを考えてしまったのだから。

 それから別に自分たちは気にしていないと伝え、むしろ妹はなんで彼女が怒られるのかとゴウンに少しばかり文句を言いだしてしまい。さすがにまずいと頭を下げたが、彼女は許してくれた。それから付き合いが始まった。そして思う。アルベドの想いが届くといいな、と

 (もしかして)

 自分自身、アルベドに養母となってほしいなんて思っている部分もあるかもしれない。と内心で笑ってしまう。自分が思い出に浸っている間にも話は続いていた。

 

 「あんた達、分かっていると思うけど、この方はアインズ様の娘だから、――」

 

 「 ――はい、わかっています」

 

 (あれ?)

 少し気になることがあった。確かに養子ではあるが、その言い方では誤解を招くことにならないだろうか?

一人のドライアードがこちらに振り向く。

 「私はピ二スン・ポール・ペルリアと申します。これからよろしくお願いいたします。姫様」

 

 (えええええ?!!)

 

 待ってほしい。なんでそうなる。とエンリは内心穏やかではいられず。何とか助けを求め、周囲を見回すが、

 「そうっすよ~エンちゃんとネーちゃんはアインズ様の娘っすからね~」

 「ルプスレギナさん!!」

 「はは、エンリちゃん達も出世したなあ」

 「村長さん?!」

 「わ~い!お姫様だって。お姉ちゃん!」

 「ネムゥ!!」

 まるで自分だけがおかしいといわれているような気分だ。それだけ、周囲がその状況を受け入れているということなのだろう。

 (どうして)

 こうなるのだろうかと、少女は自分そっちのけで騒ぐ者たちを前にため息をつくことしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 (うぅ、この格好は正直つらい)

 あれから来た道を戻る形でエ・ランテルへと向かい、そして何とかたどり着いたところであるわけだが、

 (何で周りの者たちは畏怖の視線を向けて来る?)

 アインズは現在、新しく臣下?ペットにすることにしたハムスケにまたがる形でいた。これでは、メリーゴーランドに乗るおっさんだ。だというのに、羨望の眼差しを向けられるのがまた辛い。

 

 「すいません。みなさん」

 声をあげたのは今回、終始旅についてくるだけにとどめていた、リーダスであった。

 「どうしましたか?」

 返すのは一応、今回の依頼のすべての依頼主ということになっている、ンフィーレアである。

 「いえ、俺はこの後、用事があるんで、一足早く抜けさせていただきますよ」

 「あ、わかりました。でもいいんですか?僕はあなたにも」

 そこで、男はいいというように手をだしてきた。

 「俺は今回、ただ、一緒に歩いて、草取りやっただけですから」

 そしていうことはすべて言ったといわんばかりに彼は歩き出してしまった。それを止めることは誰にもできない。

 (いつか、歌を聞かせてもらいたいものだ)

 それはアインズの本音である。せっかく自分をモデルにしたというなら、気になってしまうというのが人情だ。というかあいつらが知れば、それこそ、ナザリックの全軍をもって手に入れようとするかもしれない。

 しかし、それはそうと

 (限界だ)

 「ンフィーレアさん、私は一度、ハムスケの魔獣登録を済ませようと思います」

 魔獣を町に連れ込む以上、組合のほうで手続きをする必要があるらしい。

 「そうですね、それでは一旦別れる事になりますね」

 「ええ、すみませんが、薬草の積み下ろしはそちらに任せることになりそうです」

 そこまでして、依頼達成という所をこっちの勝手な事情で抜けることになるのだ。謝罪くらいでは済まないかもしれないが。

 「構いませんよモモンさん、今回は私たちはほとんど何もしていなかったようなものですから」

 「謙遜をペテルさん。あなた方のチームワークは本当に素晴らしいものでありました」

 嫌味一ついわず、それどころか気遣ってくれる漆黒の剣には感謝しなくてならない。それと、もうひとつ確認しておかないといけない。

 「ビョルケンハイムさん、護衛なんですが」

 そう、これもまた解決しなくてはならない問題であった。トーケルがどうするかは分からないが、それ次第では考えを変えなくていけない。

 「いえ、モモンさん。私どもの依頼はすでに終了しているということで構いません」

 「それは、いいのですか?」

 確かにありがたいことではあるが、本当にいいのだろうか?確かに成人の儀は終了したし、薬草調達も終えた。だが、まだすべて終わったということではないのに。

 「私とアンドレはこの後、ンフィーレアさんの手伝いをしてそれからあなた方を待ちますよ報酬の支払いはその時にでも」

 「ええ、私共としましてはそれでいいんですが。本当によろしいんでしょうか?」

 「はい、今回のことでかなり貴重な体験をさせてもらえました。ありがとうございます」

 頭を下げてまでそういわれてしまっては、それを断るほうが失礼にあたる。そして、

 (すみません)

 一度、内心で謝り提案する。

 「それでしたら、せめて、ナーベを同行させますので、是非ともこき使ってやってください。ナーベ、お前も構わないな?」

 「はい、問題ありません」

 そもそも登録を行うだけで3人も行くというのは大げさだ。だからこそ一人、残すわけだが、ナーベラルを選んだのは、完全にアインズの私情であった。先ほどから浴び続ける視線。一番輝いていたのは彼女であったからだ。本人は心から称賛してくれているのだろうが、アインズとしては精神を削られる感覚しかしなかった。これならまだ視線が見えないだけ、レヴィアノールのほうがましといえる。

 「分かりました。お言葉に甘えさせていただきます。ナーベさんお願いしますね」

 「分かりました。ンフィーレアさん」

 話はまとまり、アインズ、レヴィアノール、ハムスケは一行を離れるのであった。

 

 

 

 

 

 正直、安堵した自分がいる。アインズ達と別れ、ンフィーレア達と彼の実家の薬屋に向かう途中、ナーベラルは考えていた。いい加減、自身の感情と向き合わねばならない。何故、あの方といると心臓が高鳴るのか。その理由を。

 (私はアインズ様に惹かれている?)

 その可能性は高い訳であり、だからこそ。うまく振舞えなくなるのだろう。

 (そんな訳ない)

 同時に強く否定したい気持ちもあった。それでは、今度こそあの方に見捨てられてしまうかもしれない。かといって、それではこれまでと同じく。否定と動揺の堂々巡りであり、話が進まない。それでは一体自分がどうしてこうなってしまったか考えるしかない。

 (……………)

 しばし考える。そして思い浮かぶのは、あの光景。

 (やっぱりあの時)

 そう、主が自分に謝ってきたあの出来事がすべての転換点であると思える。あの時からなのだ。「死にたくない」なんて、ナザリックのシモベ失格の事を思うようになってしまったのは、そしてそうなったのは、主の言葉、「お前たちの存在こそ大切なのだ」と、その言葉自体は別に自分だけを指してのものではないのは理解できる。しかし、それでも嬉しかった。そしてその前に言われた「悲しくなる」もだ。自分たちの命など、至高の方々のアインズの物であり惜しくなどなかったのに、それなのに、今は違う感情が胸を占める。

 (怖い)

 本当にそう思う。もしも自分が死ねば、主が悲しまれる。それもだが、もうその優しき主のそばにいられなくなることが何よりも恐ろしく感じる。そしてだ。それを、その気持ちを、その感情だと言うのであれば。

 「恋」だと、「愛」だと、いうのであればそれはいけない事だ。

 (認めてはいけない)

 そうだ、だからこそこれを、この気持ちを認可するわけにいかない。何故ならとその答えも出す。

 (アルベド様に申し訳が立たない)

 自分は彼女を後押しする立場にあるし、そうあろうと決めたのも単に彼女と主がお似合いだとかそういう軽い理由ではない。自分は見てきたでないか、主を想い涙をながす彼女を、そして、何とか主を支えたいのに、それができず嘆いている彼女を。せめて主の心に平穏が訪れることをひたすら祈っていた彼女を、今回の異変以降、己の気持ちを押しとどめて主の願いを最優先にしてきた彼女を。そう、それはそれだけアルベドがかの主、アインズを想っていて、愛しているということであり。その気持ちの重さを、覚悟を知っているからこそ自分は彼女こそ、ナザリック地下大墳墓、その支配者たるアインズ・ウール・ゴウンの正妃にふさわしいと、それに比べて自分は何だ?たった、一度だ。たった一度、主に優しき言葉をかけられ、暖かい御手を頭にのせてもらっただけで、その忠誠の形が変わるというのか?それではなんて、自分はなんと。

 (軽い存在ね)

 自傷するように結論づける。だからこそこの想いを決して認める訳にはいかない。きっと一時の気の迷いでしかない。

 

 そうして、なんとか己の気持ちを押しとどめようとするナーベラル・ガンマであるが、本来彼女は戦闘を専門として創造されてメイドなのだ。必然的ともいえるように彼女は察知する。

 (???)

 感じるのは明確な殺意。

 

 「みなさん、少し止まっていただけますか?」

 「ナーベさん?」

 一度一行を止めて、腰の剣を構え、バレアレ宅へと向ける。その光景に後ろで見ている者たちはただただ、困惑するばかり。

 「どうしたんですか?」

 「何か気になることでもあるか?」

 正直、この程度の殺気も読めないのは呆れるばかりであるが、それでも主が共に過ごした者達、もしも何かあれば、主が悲しまれる。それは自分にとって許容できるものではない。

 「ペテルさん、ルクルットさん、一応周囲の警戒を、トーケルさん、アンドレさんはンフィーレアさんを気にかけていてください」

 ひとまずは警戒態勢をとらせる。この中で一番非力なのはあの薬師少年だ。そして、主が今回、最も繋がりを持てたことに喜びを感じている人物でもある。ここは、なんとしても守らねばならない。陣形がこれでいいか不安はあるが、いつまでも相手も待っている訳ではない。

 (…………)

 しばし、瞑想をして、主に忠誠を誓う。

 (アインズ様)

 そして、行動をおこす。

 「隠れていないで出てきたら?身を潜めることも碌にできない下等生物(カトンボ)が」

 この相手であれば、煽ってやるのが一番に思えるため、わざと、以前であればいつも使っていた。言葉を使う。バレアレ宅の扉がひとりでに静かに開いてゆく。半分ほど開いたところで、自分と同じようなローブをまとった人物が出て来る。そこでようやく、他の面々も警戒する。

 「あ~れ~、ばれちゃった~?」

 現れたのは金髪にボブカットの女性であった。その瞳は値踏みするようにナーベラルへと向けられていた。

 「おねえさん、すごいね~私の潜伏を見破るなんてさ~」

 「別にたいしたことではないわ。あなた、殺気を抑えようともしていないもの」

 「ふ~ん、そうなんだ~。でさ~おねえさんさ~さっき私のことをなんて言ったのかな~?」

 このやりとり自体不毛だと思いながらナーベラルは遠慮なく言い放つ。

 「下等生物(カトンボ)、それ以外にあるかしら?」

 女の顔が一気に殺意に塗れて歪む。

 「ふんふ~ん、んじゃあ、死ね」

 両手にスティレットと呼ばれる武器を構えて突撃してくる女を迎撃するナーベラル。

 

 (絶対殺してやる!)

 クレマンティーヌは最初に自分を看破した女を必ず死体にしてやると、決めていた。その理由は別に侮辱されたからではない。女の目が気に入らなかった。それは満たされた者特有の輝きを放っていたのだ。きっと、この女には愛する男がいて、そして、愛されているのだろう。別に他意はない。ただ気に入らないだけだ。そしてその男も必ずこの町にいることだろう。ならば、この女を殺してやって、その死体で絶望の淵へと叩き込んでやる。できないはずがない。何故なら自分は

 (人外――英雄の領域に踏み込んだクレマンティーヌ様なんだよね~!)

 

 二人の戦いは拮抗していた、剣と刺突武器が激しく火花を散らす。しかし、残りの面々もそれに見とれている暇はなかった。

 「ペテル、来るぜ!」

 いうなり、ルクルットはンフィーレアへと弓を射かける。

 「え」

 それに一瞬、戸惑う薬師少年であったが、

 「ンフィーレアさん!」

 トーケルが飛び掛かる形で少年を押し、自身も地面に向けて飛び込む。そしてルクルットの放った矢は闇へと消えて、やがて、金属音を鳴らした。

 「ばれてえええ、いたかああ」

 現れたのは、まるで酒に酔っているように体を不気味に揺らしている痩せ型の男であった。ナーベが相手をしている女と同じように二刀流、彼の場合は、ブロンズソードを装備している。それで先ほど放たれた矢をはじいたのだろう。

 「総員戦闘態勢!」

 ペテルが叫ぶ。漆黒の剣は即座にンフィーレアを護れるように陣形を組み替える。

 「れんらくうううどおおおりいい、だった」

 それだけ言うと男もまた突撃してくる。その動きは錆びついた人形を無理やり動かしているみたいであった。

 (防げるか?)

 この男の底が見えない。しかし、後ろではナーベがたった一人であの化け物のような女とやり合っているのだ。自分たちだって銀級冒険者。それにここで、志半ばで死ぬつもりはない。あの人達に追いつきたいという目標があるのだ。

 「みんな!絶対生き残るぞ!」

 「当り前だ!」

 「やってやるのである」

 「僕にはやらなきゃいけないことがある!」

 漆黒の4振りたる剣たちが怪しき2振りを迎え撃つ。

 

 

 

 

 「これで登録終了か」

 もらった書類を見ながら、アインズは組合を後にする。これでハムスケをどこの町にでも入れることができる。

 「待たせたな」

 待ってくれていた二人?に言葉をかける。何もせずただ待つだけというのは辛いものだと彼も元の世界での経験でよく理解していた。

 「いえ、お気になさらず」

 「殿を待つのも某の仕事でござる」

 「そうか」

 ふと、周囲を見回してみる。

 「すげえ、何だよあの魔獣」

 「あんな魔獣を従えているのが銅級なわけねえぜ」

 「ねえ、あの人って、」

 「知ってる!兜の下はすごい男前だって!」

 ハムスケや自分を称賛する声、しかし、アインズはどうしても信じられない。もしかして、全員にドッキリでもされているのではないかと、阿保みたいなことをどうしても疑ってしまう。怖いという思いはあるが、彼は試すことにした。

 「レヴィア、周囲の視線」

 「畏まりました」

 相当な負担であるだろうに、その言葉一つでやってくれる彼女にも感謝しなくてはならない。

 「ほとんどが畏怖であると同時に羨望でございます。よろしければ、台詞も言いましょうか?」

 (あ、マジなんだ)

 「いや、それには及ばない」

 ともあれ、これで、バレアレ宅へ向かうことができるなと、意識しかけたところで、声をかけられた。優しい老婆の声であった。

 「お主は、もしや、孫の依頼を受けたというモモン殿か?」

 (ふむ、おかしいな?)

 自分たちがンフィーレアの依頼に合流したのはいわば偶然であったのに、何故この老婆は知っているのか?道中少年から聞いていたが、やはりあのンフィーレアの祖母ということか。只者ではない。

 単に、リイジ―・バレアレが最初の目的通り孫がやったと勝手に勘違いしている訳であるものの。互いがそれに気づくことはない。

 「ええ、そうです。あなたは?」

 (これで違ったら恥ずかしいな)

 「リイジー・バレアレ、ンフィーレアの祖母じゃよ」

 (ンフィーレア君の言う通りの人物らしいな)

 曰く、ポーションが絡まなければ、温厚な人物であると、できることなら少年ともどもスカウトをしたいものだと彼は思う。

 「ところで、その魔獣は?」

 ハムスケのことを尋ねられた。

 (まあ、気になるよな)

 例えば、町でライオンを放し飼いにしている奴がいれば、聞かない訳にはいかない。この例えは無理があるなと彼は内心で苦笑する。

 「森の賢王ですよ。先ほどねじ伏せましてね」

 「ハムスケでござる」

 「ほお~これがあの伝説の」

 (思っていたより広まっていたんだな~)

 本当、噂程、ろくなものはない。実態は言葉のやり取りさえ、理解が怪しいというのに。

 「これから、あなたのお宅に向かうのですが。よければ、ハムスケに乗っていかれませんか?その年では歩くのも大変でしょう」

 それは自然にでた言葉、アインズとてできることはしたい性分なのだ。いや、違う。以前の自分であれば、自分も疲れていると見向きもしなかっただろう。きっと、そうだろう。

 (あいつらのおかげだな)

 心に余裕があるとはこういうことなのだろう。

 「あまり、人を年寄り扱いするもんじゃない」

 拒絶されたが、不快感はない。

 (元気なご老人だ)

 人との触れ合いがこんなにも楽しく、暖かいものだったなと笑おうとした所で耳に轟音が響く。

 

 !!!!!!!!!!

 

 (何だ!)

 咄嗟的に音源と老人の間に体を差し込む。この人物になにかあれば、あの少年が悲しむ。それはアインズにとって不快なことだ。

 

 「な、なんじゃ?」

 「殿!」

 「モモンさん、あれを」

 

 レヴィアノールが指を指したところは建物の一角、3階ほどの窓であった。みれば火が燃えあがっている。そして先ほどの爆音、そこから考えられるもの。

 (爆弾)

 まさかと思う。この世界の技術ではまだ不可能。それがデミウルゴスを中心とした《研究・開発班》の結論だったはずだ。ならば、

 (魔法か?)

 いや、論点はそこではない。何でおこったのかだ。原因を追究しなくてはと、彼のように思ってしまう。

 (たっち・みーさん)

 見てみれば、倒れている人たちもいる。まずは介抱だと一歩踏み出した時に気が付く。

 「リイジーさん、下がってください」

 「?なんでだい?」

 「直にわかります」

 そして倒れている者たちは何とか自力で起きるが、様子がおかしい。

 「動死体(ゾンビ)!!」

 アインズはすぐさま飛び出し、今しがた起きあがった2体のゾンビの首を斬り飛ばす。しかし、ゾンビはそれだけではなく、周囲にも溢れているらしく。あちこちから悲鳴が聞こえてくる。

 「嫌な予感がするな」

 まるで、隠すつもりもなく、見てくださいといわんばかりのこの犯行。

 (陽動?)

 もしそうであるならば、狙いは何だ?

 「リイジーさん失礼します」

 「なんじゃ?!」

 驚く老婆を抱え、一飛びでハムスケに乗り込む。レヴィアノールも既に控えている。

 (頼もしいやつだ)

 「ハムスケ!全速力だ!リイジーさん道案内を!」

 こうしてアインズは急ぎ、バレアレ宅へと向かっていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カジット・デイル・バダンテールは笑っていた。今回の儀式が成功すれば、大望へと近づける。備えは万全、あの女は心配であるが、もし失敗してもこれがあれば、

 

 「ふははは、『終末の水鏡』といったなこれは」

 至宝の一つであるこれを用いれば、さらなる死を招くことができるであろうと彼は笑い続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その男もまたエ・ランテルへと向かっていた。あの方に許しをもらわねばならない。そして叶うのであれば、忠誠を誓うのだ。

 「アインズ・ウール・ゴウン様」

 

 城塞都市を舞台に英雄譚が紡がれる。

 

 




 今作のピ二スンはweb版を意識して書いています。次回、第2章最終話予定です。

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