オーバーロード~遥かなる頂を目指して~   作:作倉延世

18 / 63
 今回も次の話のためのつなぎ回です。


幕間その3 それぞれが目指す先

 

 城塞都市エ・ランテルの被害は甚大なものであった。冒険者が死亡者347人に、重傷者650人と1000近い者たちがその職業を離れざるをえない状態となってしまった。

 

 そのほか、衛兵からの死亡者が約1265名、この事件のあと、退職したものが2041、とこちらの再編成もしなくていけない。住民の被害に関しては未だ調査中であった。これは先の職種についていたものについてはそのすべてが騒動の際の戦死ということであったが、こちらに関しては死因が多すぎるのだ。ゾンビに殺された者、数日前から行方不明であり、そして、ゾンビとして出てきた者。瓦礫に潰された者。爆発に巻き込まれて数人の死体が混ざり、正確な人数がわからないという者たち。更には、別の土地、あるいは、街などから運び込まれた死体も混ざっていて、それらすべてを洗い出すところからやる必要に駆られた。

 

 そして被害は人だけではない。破壊された住居に店舗と止む無く営業停止になった商人たち、住む場所をなくした人たちの仮の住居も用意しなくてはならない。金や物資の流失も大きい。この騒動を未然に防げなかったということで、有力な商人に、資産家達はほかの都市に移ってしまった。これもまずい、経済とは、人体を流れる血液のように、回す金と物資(モノ)があって成り立つのだ。それが外へとでることは、すなわちエ・ランテルという名の人が大量出血しているという事実。一番痛いのは、バレアレ薬品店がでていったことだ。話を聞いたところによると、カルネ村へと移るらしい。確かに、あの店の商品の原料はあの村の先の森から採れる薬草が使われているというので、合理的な判断といえばそうだ。しかし、そうなると、もうこの町であの薬を買うことはできない。その村からこの町へと、運ぶという輸送業を立ち上げるというのも一つの選択肢なのであろうが、採算がとれるようになるまでどれくらいかかるのやら。そしてその費用は誰が持つのか?

 

 出血ばかりに目を奪われる訳にはいかない。傷を負ったら必ず黴菌が入るもの、治安の悪化も懸念される。というか、既に悪化していた。恐喝に詐欺などのものから、誘拐、性的暴行、殺人など、騒動以前より確実に犯罪率が上昇していた。先に述べたこともあり、エ・ランテルは、いわゆる裏家業の人間たちの格好の稼ぎ場になる()()()()あった。

 

 悪い事ばかりではなかった。立派な消毒薬(抑止力)が現れた。そう、先の騒動にて、活躍した。漆黒の英雄モモンとその一行だ。数千のアンデッドを屠り、通常、ミスリル級の冒険者たちが対策をしてようやく対処できるであろう。骨の竜(スケリトル・ドラゴン)集合する死体の巨人(ネクロスオーム・ジャイアント)を1分足らずで倒したという全身鎧の戦士モモン。そのどちらも目撃証言があり、その信憑性が伺える。

 そして、彼のチームには若くして第3位階魔法を使いこなし、その端麗さから「美姫」と呼ばれる魔法詠唱者(マジック・キャスター)ナーベ、その戦いぶりから助けられた者たちからも恐れられ、「戦鬼」と評される戦士レヴィア、長らくトブの大森林に君臨しながらも、モモンに敗れ、忠誠を誓い、その智謀で一行に助言を与えているという「森の賢王」現在はハムスケという名らしい。

 と、正に英雄とその仲間たちと呼ぶにふさわしい面々だ。彼ら、特にモモンの評判は高い。先に述べた桁外れの実力もそうだが、まずはその容姿、なんと、それだけの力を持ちながら、その年齢は20代半ば、これはもう一人の戦士も同じらしい。しかし、別に珍しい話ではない。あの「青の薔薇」をまとめる女性もそれくらいであったはずだ。そしてその顔は非常に整っており、冒険者組合にて、登録の際にその顔を直視した受付嬢が卒倒した程だという。舞踏会にいっても置物でしかなかった自分とは大違いだ。そしてその性格も優しく穏やかであるという。子供を抱き上げて朗らかに笑っている光景や、足を痛めた老人を背負い、運ぶ様子が見られたという。これだけの人物なのだ。彼を、彼らを利用しない手はない。

 

 今回の彼らの昇格、冒険者として新米である銅級から最高位であるアダマンタイト、それはその功績、住民の願いを聞き届けるという形であったが、それは表向きである。実際のところはかなりの打算が絡んでいる。一つは治安維持、その男は非常に人が良く、おかげで魅力的な(旨い)人材、資材(細胞)をを食らおうと集まった悪人(黴菌)どもを追い払う(駆除する)ことができた。

 

 次に城塞都市の評判を取り返さなけらばならない。間違いない、数々の冒険者を見てきたが、彼らは必ずかの13英雄に並ぶ者たちへと成り上がることだろう。その伝説の始まりの地をこの都市にするのだ。そして、そのまま英雄ゆかりの地とするのだ。

 

 その為に、彼らをなんとかここに縛りつけることができないか思案する。

 

 男を縛る3つの要素がある。すなわち、権力、金、そして女だ。

 

しかしながら、モモンに関してはそのすべてが通用しなかった。

 

 まずは権力、この人物の正体はどこかの貴族であり、何かしらの目的があって、冒険者としてこの町に来たという噂がある。今のところそれに関しては分からないが、しかし見えてくるものもある。何故冒険者なのか?単に英雄になりたいから?いや、おそらく何か私的な目的があり、その為に冒険者となったのだろう。根拠はある。この職業は腕と信頼さえあれば、誰でものし上がれる。いや、冒険者に限った話ではないか。

 

 話をもどそう。

 

 次に考察するのは、上位の冒険者となったうえで何を求めているか、という事。貴族とのつながりか?普通では手に入らない何かを探しているのか?いくら考えても仕方ない。ここで重要なのは彼らはいわば、大きな目的の途上というところだ。こういうタイプは得てして権力に執着がない。事実、この男も下手をしたら、家庭を築いてそれで満足するだろう。ほかにも根拠はある。一応、本当に特別な処置として、貴族爵位をもらえるよう王に掛け合ってみるとそれらしく言ってみたところ。言われたのだ。

 『興味ありませんよ』

 正直、腹が立ったが、ここで彼らとの縁をなくす訳にはいかない。

 

 そして、金も駄目そうだ。その装備が物語っているのだ。そして彼らはとんでもない高級ポーションを持っているという話もあるのだ。とても無理そうだ。

 

 最後の女という手段も難しい。まずはその周り、ナーベの美貌は評判であり、そしてあのレヴィアもその素顔は傷があるらしいものの口元などの形から整っていると言われている。それだけの美女が近くにいるのは厳しい、が、諦める理由にならない。冒険者組合長に依頼をして、それとなく高級娼館に連れていくよう頼み込んだのだ。「琥珀の蜂蜜」「天空の満月亭」「紫の秘薬館」かなり上位に入る娼館だ。無論、相手をする女には排卵誘発剤を飲ませて。

 「子は鎹」という言葉がある。文字通り子供の存在がその人物の楔となる。もしも、女の内の誰かがモモンの子を身籠ることがあれば、彼はこの都市を多少、否、その性格から気にかけなければならなくなる。そして、この話は何も無理矢理ということではない。先に述べたとおり、彼はすべてが理想的な人物なのだ。この計画をこっそり組合長とは別に娼館の女たちに流したところ、喜んで薬を飲んだのだ。うまくやれば、英雄の伴侶となれる。彼女たちにとっても絶好の機会なのだ。笑いが止まらない。いい流れだと、だと、いうのに。

 

 駄目だったらしい。

 

 何とその男は女たちを前にしても色めき立つことも、変化も見られず。むしろ、女たちから非難を浴びることになった。私たちを貶めて楽しいかと?もしや、モモンは特殊な性癖、あるいは同性愛者なのか?と疑問をもったが、彼女たちが怒りながら教えてきた。彼には婚約者がおり、それはあのナーベ以上の美貌を持つ人物だという。いや、これに関してはあまり意味がない。要はモモンとは、そこまで高潔な男ということであった。

 

 やる事なす事すべてがうまくいかないが、諦めるという選択肢はない。何としても、と、言うときに、新たな人物が現れた。

 

 その名をアインズ・ウール・ゴウン。

  

 その者の使者が来るという手紙が、エ・ランテル都市長パナソレイ・グルーゼ・デイ・レッテンマイアの元へと届いたのだ。本来、存在しない者たちの手により、傷を負った城塞都市にこれまた存在しないはずの人物が尋ねて来る。

 

 

 

 

 

 

  大 墳 墓(カルネ村)からの使い

 

 

 見たことない服装だなと、パナソレイは思う。自分は一応、貴族であり、この都市王国、帝国、法国の境界線たるエ・ランテルを王から任せられる程の人物だという自負がある。日々、色々な知識を集める事も怠っていないつもりであるが、その人物の洋装は本当に、心当たりすらなかった。

 しかし、それも仕方ない話だ。この男が着ているのは、いわゆるガウチョスタイルと呼ばれるものであり、どちらかといえば、中世ヨーロッパを思わせるこの世界では縁がなく、かつてアインズがいた世界のそれも既にすたれた文化の産物であった為、最早異星人といっても過言ではないの隔絶がある。

 

「きみが、あいんず・うーる・ごうんの?」

「はい、かの御方の使いたる。ロドニウスと申します」

「ぷひー、かるねむらで、おせわになっている。というかたが、このまちになんのようかな?」

「…………」

 

 男は黙ったと思うと、パナソレイの瞳をじっと見つめて来る。その瞳の虹彩はひどく不安定に揺れているように見える。まるで、死にかけの魚だ。なんだろう、何を考えている。

 

「やめませんか?」

 

 唐突な提案、一体を何をというのか?

「なんのことかね?」

「あなた、普通に喋れますよね?」

(!!!!)

 そう、自分はいつも、その豚のような外見に似合う、鼻息で会話をするのだが、無論無意味ということはない。これで相手を油断させて、交渉を有利に進めるという意味があるのだが。何故それを、

 

「なんのことかなー」

 ここは、一度誤魔化しをいれてみる。ブラフの可能性もあるのだ。

(さて、どうかな?)

 しかし、ここで男の眼光に歪な靄がかかる。その靄はまるで、自分を飲み込まんとしているようで、

(!! 今のは?)

 一瞬、自分が何か得体の知れない、否、まるで深い底に引き込まれる感覚を味わったのだ。

 

「やめませんか?」

 まるで先ほどのやりとりをもう一度、そう、まるで時間が1分だけ、巻き戻ったように錯覚する。

 

(何者なんだ?)

 諦めることにしよう。少なくてもこの人物は人を外見で判断するという輩ではないということか。

「……さて、失礼した。それでは話を聞くとしましょうか」

「では、まずはこちらを」

 初めて自分の変貌を見た相手はひどく驚き、その様をみるのが一つの楽しみであるというのに。この男はまるで気にする様子がないのだ。そして男はまるで、小石を拾う感覚で、ゴブリン2匹分ほどの大きさの袋をテーブルに置く。その質量と無造作に置かれることで、軽く揺れた。それだけの衝撃を受けたのだ。

 

「これは?」

「端的に申し上げます。この度、被害を受けたエ・ランテルに対する我が寛大なる主からの見舞金でございます。復興支援として役立ててほしいということです」

 

 袋に触れて、驚愕する。それ程の金額であったのだ。一体どうしてそれだけの財を渡すというのか?

 

「この金額は、正直助かりますが、一体何故?」

 

 そうだ、そのゴウンなる人物とこの都市は関係ない、それどころか、そんな名前の貴族や商人など聞いたこともない。

 

「我が主はつい最近、この辺りに渡って来た。旅の魔法詠唱者でございます」

 男はまるで、パナソレイの思考を読んでいるかのように言葉を続ける。

「魔法詠唱者?」

 冒険者などでもその職についているものがいるので、ある程度の認識はある。しかし、それはどういう人物なのか?

「そして、この見舞金には3つの意味があります」

 男は指を3本立て、彼に示す。確かに、いきなり大金を渡されても、その理由が分かっていなければ恐ろしいというものだ。男はまず薬指を曲げる。

「1つ、都市長に対する挨拶だと思っていただければと」

 男はさらっと恐ろしいことを言ってのける。挨拶?それはどういう意味か、この国でそんな理由で大金を受け取るというのは非常に危険だ。間違いなく探りをいれられるし、最悪、取り上げられ、ゴウンの元へとあの馬鹿どもが向かう可能性もある。

(そのゴウンという男、常識、いや、この国の現状を知らないのか)

 それも当然か、むしろ漏れるようではそれこそ国は終わりだ。

 続いて折られるのは中指、

「2つ、賠償金でございます」

 賠償? 一体何に対しての?

「バレアレ家のことでございます」

 あの薬師一家のことか?男は語る。バレアレ家をカルネ村に移るよう頼み込んだのはそのゴウンなる人物という。何ということか、その理由も男は語る。その主は一種の研究者であり、ポーションに関する知識を買い、バレアレ家を引き抜いたという。

(あの婆あ)

 いったい、いくら積まれたの言うのだ? いや、きっと彼女のことだ。研究によりいい環境に釣られたに違いない。大変な時だというのに、男はそのまま続ける。

「そして、最後に情報を売って欲しいのです」

「情報?」

「モモンとその一行についてのことを我が主はご所望でございます」

(いったい、どうして?)

 しかし、バレアレのこともあるのだ。また引き抜きでもされたらたまらん。彼の存在は城塞都市の、ひいては王国の為に必要なのだ。なんとかごまかす方法を考えねばならない。いや、そもそもそんなに自分も知っていることがないのだ。

「すいません。モモン君に関しては私も噂の域をでない程度の情報しかもってなくてね」

「それで構いませんので売っては頂けないでしょうか?」

 

 パナソレイは考える。これだけの財力をもつ魔法詠唱者とどう付き合うべきか、このやり取りが間違いなく重要な局面だ。薬師の件はまだ何とかほかで補填ができるだろう。挨拶というのは、彼は貴族爵位が欲しいのか?あるいは、ほかに狙いがあるというのか?そして、モモンのことを知りたがっているということは、彼とは無関係の人物ということか、あれだけの力を持つ戦士、そしてこれだけの金貨を簡単に出すことができる魔法詠唱者。

(一体どうなっているのだ?)

 しかし、それらをうまく利用してやれば、王国を救うこともできるかもしれない。

(何とか国王に)

 かなり用心に用心を重ねて、接触をしなければならない。いや、

(それこそ、今回の件が使える)

 そう今、目の前の男も言っていたではないか。見舞金と、この城塞都市の重要性はあいつらが認めていることでもある。それなら、とパナソレイは国の為には何が一番か思考を続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

  新生教団設立

 

 

 

(勘弁してほしい)

 玉座の間で執務をおえ、次の案件までの間にエ・ランテルでのことを思い出して、内心ため息をつく。あれからあの都市は復興をしなくてはならないが、カルネ村のように表だった支援を行う訳にはいかない。それに、いずれ、もらう、最悪ぶんどる予定の村と違い、あの都市は王国にとっての重要な地だ。先ほど、受けた伝言(メッセージ)からどうやら、彼はうまくやってくれたらしい。今回の見舞金、都市長に言った3つなんて建前以外のなにものでもない。あれにはいくつかの意味合いはあるが、それはすべて計画の為だ。アルベド、デミウルゴスと打ち合わせを行ったうえで彼を送ったのだ。

 

 意味はいくつかあるが、最大の狙いはモモンとアインズが別人であると一般の認識として植え付けるのが狙いだったりする。これもまた、追々とその意味は出てくることだろう。それぞれの設定も完璧に出来上がっている。魔法の研究をしているアインズと、ある()()()()を探しているモモンという設定であったはずだ。

 そして、パンドラズ・アクターが用意した。予備のシナリオと準備は、いや、どれだけやってもこれで、十分と言えるわけないのだが。

 

 そして、ため息をついた理由はモモンとして活動している時のことだ。あれから依頼がひっきりなしであったが、当然、都市に関わるものがほとんどであった。まずは治安維持、盗賊やワーカーと呼ばれる者たちの討伐依頼であったり、子供の誘拐を専門とした組織とやりあったりもした。個人的にはヘッドギアの連中をとらえたかったが、彼らが出てくることはなかった。

 次に自分を迎えたのは接待の数々であった。これ自体は社会人であるアインズにも経験がないわけではないので、別に問題は、あった。連れていかれたのは大人の店であった。しかも明らかにやる雰囲気を出していたのだ。なんとか事なきを得たものの、ナーベラルの物悲し気な顔と、レヴィアノールの覆面越しでも分かる侮蔑の顔が辛かった。あの時、体が反応しなかったのはいくつかの理由があった。

 

 まずはいくら見た目が人といえ、アンデッドなのに変わりないこと。あれから改めて調べて分かった。あの指輪でしていたのは、アインズの骨の体、それに服を着せるのと大差ないように、筋肉、皮膚、臓器、各感覚器官がくっついただけに過ぎなかったのだ。指輪の呼び方も変えねばならない。さしずめ、

 「擬態(びと)の指輪」

 といったところか、結局のところ、性欲というものが喪失しているのは変わらない。

 

 2つ目は今の自分の目的を考えれば、そんなことをしている余裕はないということ、笑ってしまう。自分はこんなに使命感や責任感があったほうか?と。

 

 そしておそらくこれが一番でかい、ふと傍らで自分の補佐をしてくれた女性をみる。その視線に気づいたのか、優しい笑みを浮かべる。

 

「アインズ様、いかがされましたか?」

 

 彼女たちには悪いが無意識に比べてしまったのだ。髪の質感に、肌の色合い、瞳の輝き、そして向けられる表情なのだろう。確かに、高級娼館という事もあり、魅力的であるのは認めるところであったが、どうしても客に向けられる視線であった。彼女の顔は本当に自分を、愛、思ってくれているものなのだから。

 

(いかんな)

 気をつけないといけない。彼女はそういう対象ではない。衝動的に襲うなんてことをすれば、それこそ、友たちに顔向けできない。そして直前のやりとりを思い出して湧いてきたのは怒り、浮かぶのは赤毛のメイドに黒髪の鳥女、

(何考えてんだ、あいつら)

 どこをどう勘違いしたらその結論に至るというのか、自分はそんなに節操がないと思われているのか、それは目の前にいる彼女や、あの騒動でよく働いてくれた彼女に失礼だ。何より、いつも完璧な彼女がその時ばかしはやや悲しみ暮れる顔を見せたのだ。

『あなた様のお望みでしたら私は何も言いません』

 と、あれを思うとやらかした2人にはかなり腹を立てた。しかし、それ以外では役割をこなしているのも確かなので、せめてもの情けとして各々の上司にその罰を任せることにしたのである。

 

「何でもないさ、アルベド」

「そうですか、先ほど義兄から連絡がありました」

 

 この後やることは新たな方針だ。

 

「そうか、しかしお前はいいのか?あれには私以上に憤っていたと記憶しているが?」

「いえ、アインズ様がそうされるというのであれば私は従うまででございます」

 それでは意味がない。彼女自身は無理をしていないのか?と疑問が湧く。 

「それと、改めて、惚れ直しました。愛しきアインズ様」

 余りにも唐突な事に彼は、はあ? と内心思う。

「急にどうした?」

 いったい彼女は何を言っているというのか?

「いえ、アインズ様の威光にあの愚か者は更生し、そして、()()()を思ってくださるその御優しさを目の当たりにすれば、当然のことでございます」

「そうか、それがお前の認識だというのであれば、私は何も言わないさ、では迎えるとしようか」

 

 

 

 そうして、玉座に座る支配者に跪く男女が二人、しかしその顔は対照的で男は既に歓喜の涙を流し、女は恐怖に顔を青ざめているのであった。

 

 クレマンティーヌは既に諦めていた。同時にこれまでの自分がどれ程思い上がっていたのか認識を改めざるをえない。自分は英雄の領域に踏み込んだ化け物、互角にやり合えるのは、王国戦士長を始めとした5人だけと思っていたが、自分を殺せる存在なんてここにたくさんいた。ここに連れてこられた時、あの死の支配者(オーバーロード)が自分にかけた言葉が鮮明に再生される

 

『これから君には洗礼を浴びてもらおう《ボスラッシュ》という言葉を知っているかな?』

 

 聞いたこともない言葉とともに、文字通りの地獄が始まった。両足を斬られ、体が地面に叩きつけられた。体の真ん中に大きな穴を開けられた。植物にからめとられて全身の骨を折られもした。熱波を浴びせられ、気道を焼かれ、声がでなくなりもした。臓器を引っ張り出されて、それを自分の口に入れられもした。そして何より恐ろしかったのはそれだけされて、()()()()()()()事だ。ある程度の怪我で、一度回復、それも疲労すらなくすとんでもないものであった。それでもいくら歪みまくった精神でも確実に摩耗した。半殺しと再生、回復と暴力。もう殺してくれと涙をそれまで流さなかった分をすべて出し切るほど懇願したというのに、その願いは聞き届けられることはなかった。そしてそれを休むことなく

 

 ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、繰り返して

 

 ようやく終わった時にはまだ半日しかたっていないという事実を自然と受け入れる事ができた、ように思う。ここまでくると、自分のそれまでが酷く生温く感じてしまう。親や兄にされたこと、弱かったころにされたこと、そのすべてが、これから自分はどうなるのだろうか。

 

「さて、君たち2人についてだが」

 

 支配者の言葉が続く、隣の男はその一言一言を、まるで神の声を聴くかのように耳を傾けている。いや、この男にとってはそうなのだろう。しかし自分は違う。その単語、一つ一つが小さな針となり、心臓に刺されてゆく感覚を味わう。

 

「新たに教団を立ち上げてもらおうと思う」

「おお!」

 男は目前の支配者が口を開くたび、むせび泣いている。本当にこの男は壊れたのかもしれない。

 

 

 

 アインズもまたデミウルゴスとのやり取りを思い出しながら続ける。この設立の狙いとしては表裏といったところか、どっちに転がってもいい訳だ。表の理由と目的はいつか神を名乗る必要が迫られた時の保険、裏向きの理由と目的としては敵対的なプレイヤーを釣るための罠、つまりは餌なのだ。この2人にある程度練度の高いアイテム、装備なりを渡して囮となってもらう訳だ。アルベドやナーベラルの確認はとったとはいえ、それですべてをチャラにする訳にもいかない。ある程度は危険な目にあってもらおう。

 

「そしてその名だが」

 

 これはあの武人のアイデアだったなとアインズはその名を告げる

 

「『魔導神教団』とでもしようか、無論、仮名ではあるが」

「おお、なんと素晴らしい。まさにアインズ・ウール・ゴウン様に相応しい」

 

 臣下たちとしてはなんとしても自分の名を入れたいらしいが、それをするわけにはいかない。もし、入るとしたらこの先の展開次第だな。

 

「そして、ニグン・ルーインよ、お前はその教団で改めて神官として働け」

 この男に関しては実は危ない罠があったのだが、デミウルゴスの進言で取り除くことに成功している。流石だ。

「何という栄誉、必ずやこの世界最大のモノとしましょう。アインズ・ウール・ゴウン様!!」

「次にクレマンティーヌ」

「はい」

 

 返事はしなくては、今支配者の傍らに控えている悪魔の女もかなりやばいのだ。

 

「お前は少し有名らしいな?」

「はい、秘宝を盗んできた身ですので」

 

(あれがね)

 ここで言っているのは無論、『4つの至宝』ではない。ンフィーレアに取り付けてあったマジックアイテムであった。現地の人間が造ったとされるものだが、装備した者の自我を奪い、ただの道具とするそれにアインズは末恐ろしいものを感じた。これが法国産だとすれば、あの国はそれだけ追い詰められているというのだろうか。だからといって、昨晩のことや、カルネ村の件を許すという訳ではないが。

 

 アインズは空間に手をいれると、仮面を取り出す。以前、アンデッドであることを隠す為につけたのとは、また違う仮面、やや藍色に赤い瞳が笑っている。それを彼女に放り投げる。そこはさすがと言うべきか、片手で受け取ってみせた。

「クレマンティーヌは死んだということにする。以降、お前はその仮面で顔を隠せ、そしてそうだな」

 

 渡したそれを見て思いついたことをそのまま言葉にする。

 

「これからは『ヤルダバオト』と名乗れ」

 

 

 

 

  墳墓に響く

 

 

 シズは第9階層の通路を自室へと歩いていた。その手にはプラスチック製のケースが握られていた。可愛らしいデザイン、モデルはすべて実物の写真が使われている。それを見て、彼女にしては大変珍しく微笑む。

 

「…………可愛い」

 

 タイトルは「砂ネズミの日々」それは例の変質した一室から出てきた品であった。主はそれらのものの閲覧を認めてくれ、モノによれば、褒美として賜りもする。なんと寛大なことか、そして彼女は今回の城塞都市側の援軍として出向、多くのゾンビにテロリストの眉間を打ち抜いた。もちろん証拠が残らないよう工夫もした。その結果としてこれをもらうことにしたのだ。

 現在、ナザリックは変わりつつある。自分が今回もらったものは「でぃーぶいでぃー」と呼ばれるもので、専用の設備が必要らしいが、それも主が用意してくださった。というか、デミウルゴスが造ったのだ。主の話によれば、《リアル》では「でんき」なる魔力で動いていたらしいが、それをあの階層守護者がこの世界ように調整したものだという。まあ、彼女にはあまり興味がない話ではあるが、

 その映像の中身は一度視聴しているので、知っていた。

 

 砂ネズミとは非常に繁殖能力がたかく、一つのケージに雄雌1匹ずつぶち込んでやれば、それこそ、ネズミ算式に増えていくのだ。そして彼女が見たのはそうして増えていく様、ただそれだけの映像資料であり、アインズもそんなしょうもないものでいいのかと心配したが、彼女にとってはそれが一番だ。もこもこした毛玉がどんどん増える様子は。総じて「かわいい」と感じられ、彼女にとってはそれこそ永遠に見続けられる光景だ。これからは休み時間の暇つぶしの一つだ。

 

『ああああああああ!!』

 

 聞こえて来るのは次姉の絶叫、また何かしたのだろうか?彼女たち姉妹にとってはよくあることなのだ。

 

 部屋に入れば、いつも通りの光景、何やら厳重に鎖がまかれている棺桶、激しく暴れている。そして周囲にはわずかに焦げる臭い。

 

「ユリ姉、勘弁してほしいっす~!!」

 

 棺桶が叫ぶ、そしてその前に仁王立ちしていた長姉は冷たく言い放つ。その手には銀の十字架が握られていた。

 

「駄目です。反省なさいルプスレギナ。あなたのやったことはアインズ様に対して最大の不敬です。ナーベラルまで巻き込んで」

「姉としての気遣いっすよ~!!」

「ただ、ふざけただけでしょう?」

 三姉の名が出てきたが、一体なにをやったのだろう?確か、長姉の首をもって逃げたり、()の札に何やら落書きをして叱られたこともあったはず。聞きたい気持ちはあるが、話しかけられる雰囲気ではない。

 部屋を見回してみれば、その姉は椅子に座り、何やら顔を両手で覆っていた。見えているところは熟れた果実のように真っ赤だ。

 

「…………ナーベラル、ルプー今度は何をしたの?」

 彼女のその台詞が姉妹たちにおける次姉の評価であった。しかし、姉は何も答えてくれなかった。

 

 

 

 ナーベラルは顔とは別にその頭は真っ白であった。ルプスレギナとレヴィアノールがアルベドに報告したことを確認された時は、一瞬蒸発するかと思ったのだ。それこそアルベドを差し置いてできるはずがない。前々からどうしようもない人だとは思っていたが、ここまでとは、同僚も同僚だ。いくら寝ていたとはいえ、どうしてそんな勘違いをしたというのだろうか?とても主と褥を共にするなんてそんな余裕、なかったはずだ。

(!!!!)

 考えて、さらに熱くなる。現在、主は例の指輪を所持しているため、しようと思えば、お世継ぎを作ることもそういったことも可能だ。

(資料を探した方が)

 自分は戦闘を専門として造られた存在だ。その手の知識は皆無だし、やり方だって知らない。それでも、主に求められた時を考えれば、

(!!!!!!)

 頭が爆発したように感じる。違う、主の命令は関係ない。自分がそれを強く望んでいると自覚したからだ。駄目だ、しばらくは何も考えない方がいいかもしれない。ここで、妹が話しかけていることに気付くができればほっといてほしい。しかし、

 

「…………ナーベラル、ナーベラル、ナーベラル」

 

 妹は中々行ってくれない。仕方ない。

 

「何かしらシズ?」

「…………アインズ様と何かあった?」

「!!!」

 この妹にも言われるとは思っていなかったので、再び、顔が熱を帯びる。それを見て、

「…………ずるい」

 この妹にしては、いや、自分さえ初めて見たかもしれない。頬を不満げに膨らませていた。

「…………私も、アインズ様とお出かけ、したい」

 そう言い、更に頬を膨らませる妹をみて、ナーベラルは

「ふふ」

 笑っていた。そう、主が率いる冒険者組はナザリックとしては主に心穏やかに過ごしてほしいという願いも込められていた。確かにそう見られてもおかしくない。妹の頭に手を置いてやり優しく撫でてやる。いつも主がしてくれるみたいに、

「…………??? ――」

 さっきの顔をみて、この妹がかの方に抱いている感情が解ったような気がする。自分はアルベドやシャルティアに近いものであったが、この娘の場合はアウラやマーレに近いようで、親に甘えたい子供のものなんだろうと確信が生まれている。

「そうね、アインズ様にお願い、してみましょうか」

 確か今回の働きと、あの女を再利用することにより、主は何か褒美を考えていてくれと言った。女に関しては自分を気遣う必要はないのに、どこまでも優しく、愛おしい御方だ。そんな主と、目前の妹と一緒に時を過ごすというのもいいかもしれない。

 

 優しく微笑む姉と不思議そうな顔をしている妹のとなりでは棺桶が暴れ続けていた。

 

 

 

 

 同じころ、第7階層にてヴェルフガノンは絶句していた。無理もない。目の前に

 

「ぎゃああああああああ!!!!!!!!!!!!!」

 

 何故か裸吊りになっている同僚がいるのだから。彼女を吊っているのは縄ではなく、茨であるが、

「レヴィ、何やらかしたんだ? 知ってるか、フェリ」

 同僚たる鎌を背負った少女に声をかける。

「いい加減な報告をやったとしか、聞いていない、これから寝る。話しかけるなめんどい」

 不機嫌であった。いや彼女に関しては仕方ないが、

「ガデは知らないよな?」

「?????」

「ああ、よく分かった」

 そこで現在、彼女を折檻している男へと聞いてみる。そして教えてもらい、珍しいと感じた。彼女は用心深い性格でそんなミスかと驚いた。

 

「やあああああ!! 食い込んでるうう!」

「ヴェルフガノン彼女は何をいっているのでしょうか」

 それは仕方ないことだ。肺呼吸の人間にエラ呼吸の感覚が分からないものに近い。

「まあ、ほどほどにしてやってくれよリーダー」

「それはどれほどでしょうか」

 考えて答える。

「レヴィが死なない程度」

「成程参考にしましょう」

「ベルううううううううううう!!!!」

「死ぬなよ、レヴィ」

 

 話は終わりだと彼はその場を立ち去る、せっかく休暇をもらえたのだ。親友の顔も見ておきたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  吸血鬼はご満悦

 

 シャルティアは自室のベッドにて横になり転がっていた。時折、足をパタパタと動かす様は正に恋する乙女だ。

「ふへへへへへ」

 

 今回の件で主から貰ったものやされたことを思うと、顔の緩みが止まらない。その手には大事そうに〈下  級  治  療  薬〉(マイナー・ヒーリング・ポーション)が握られている。

 

 しばらく転がり続けていたが、やがてそれをやめ、起きあがる。

 

「アルベド、勝ち誇るのも今の内でありんすよ」

 

 そして彼女は上機嫌に歩く。行き先は第10階層、最古図書館(アッシュールバニパル)だ。この調子で頑張ってもっと、主に知らしめるのだ。シャルティア・ブラッドフォールンの魅力を。

 

 

 

 

  悪魔は振り向かない

 

「よろしいでしょうか?デミウルゴス様」

 ようやく、グリム・ローズの折檻が終わり、彼女は直属の上司を訪ねていた。

「どうしましか、レヴィアノール」

「いえ、今回の件で一つお伺いを立てたいことが」

「言ってみなさい」

「今回、冒険者として私が一緒に行く意味、ありましたでしょうか?」

 自分の役割はナーベラル・ガンマに気持ちを自覚させ、よりいっそうの忠誠を主に誓ってもらうのが目的の1つだった、しかし、あの様子を見ると、別に自分がいる必要性がなかったようにも感じるのだ。そして、

「レヴィアノール、君は私の命令を見事に果たしました。胸をはりなさい」

「お褒めの言葉ありがとうございます。デミウルゴス様」

(本当にそう思ってんならこっち向きなさいよ!!)

 悪魔は明後日の方向を向いたまま、振り返ることをしなかった。

 かの悪魔でも乙女の恋心というものは見通せないらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  剣たちの新たな旅路

 

「なあ、ペテル。提案があるんだけどよ」

 いつも夕食をとっている酒場でのこと、声をあげたのはルクルットである。というか、このチームの場合、大体彼が話の口火を切ることが多い。

「何ですかルクルット、新しい軟派の方法ですか」

 彼の話はそれが多い、いかにして女性の気を引くか、ということだ。

 「また新たな自爆芸であるか」

 それはほかの面々も思っていたらしく、ダインに続いて、

「いっそ、そのまま玉砕しちゃってくださいよ」

 ニニャも辛らつに言い放つ。彼の軽いところに一番腹を立てているのは案外彼女かもしれない。

 

「ちげーよ。みんなそろって、俺をそんな目で見ていたのかよ?」

 ほかにどんな見方をすればいいのかと、全員の顔が言っていたらしい。彼は肩を落とす。

「あのよ、今回、俺たち、死んでいたと思うのよ、ナーベちゃんや」

「モモンさん達がいなければ、ですか」

 引き継いだのはニニャ、確かにそうだ。今は復興で忙しくいつまでもあの騒動を引きずるわけにいかないが、その通りでもある。あの夜自分たちが生き残れたのは彼らと、モモン達と行動を共にしていたからだ。でなければ、あの刺突武器の女や、重心移動のない男、大量のゾンビたちに殺されていたことであろう。

「それでよ、せっかく生き残ったんだ。俺たちもやってみねえか」

「何をですか?」

 彼は一瞬、ニニャに視線を向けると、決めたらしく言葉にする。

「ニニャの姉貴探し」

「ルクルット!!」

「本気なのである?」

「え」

 それはこの場の誰もが知っている事情、彼女の姉は過去に悪い貴族に目をつけられ、連れ去られたという話だ。そして、以降、彼女の目的には姉の捜索があるのだが、彼女はそれをチームでやる事をよしとしない。巻き込みたくない。という思いがあるのだろう。

「ルクルット、本気なのですか?」

 そうだ、それをするということはもしかしたら、貴族を敵にするかもしれない。彼女もそれを心配して、それなのに、

「ああ、俺もいい加減なことは言わねえ」

「どうしてですか?」

 問いかけるのは当然彼女だ。それに対して彼は軽く言い放つ

「モモンさんの真似かもな」

「「「はあ?」」」

 そして、ルクルットなりに語る。モモンという人物はまるで人を助けるのが当たり前だとしている。そしてあの時、ゴブリンとオーガの群れに襲われた礼をまともにしていないと、というか、モモンが受け取らなかったのだ。

『別に大したことではない』

と、彼は言ったのだ。その代わりという訳ではないが、自分たちも人の為に動いてみないか、ということであった。

「そうですね、私は賛成です」

 自分たちの目的は別にあるが、もう理想の形で叶えることもできない。ならば、その方向で動くのもいいかもしれない。ダインも黙って頷いていた。

 

「でも、いいんですか?」

 それでも彼女は戸惑う、本当に助けを借りていいのか、と。

「当り前だろ」

「気にする必要ありません」

「それが仲間である」

 

 その言葉に彼女もようやく決意をしたのか、了承してくれた。彼女の姉の捜索、情報がいる。その為にも目指すは、

 

「「「「王都!」」」」

 

 声が揃いあい、笑い合う剣たちの新たなる旅路の始まりであった。

 

 

「ところで、ニニャ」

「何ですか?」

「お前の姉貴って美人?」

「…………」

 

 また、拳を振るわなくてはならないようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ???

 

 

 

 城塞都市での仕事は終了、次の仕事の為に、準備をしなくてはならない。魔法のスクロール、ゾンビ用の死体は数が少ない。どこかの墓地をあさる必要がありそうだ。人員の調達は別の班の仕事だ。そこで目に付く、目の前に倒れている男、息遣いが見られず、死体に見えるが、

「起きろ、馬鹿」

 横っ腹を蹴り飛ばしてやる。

「いてえ、何で蹴るし」

「仕事中だ馬鹿」

 ようやくなじんだ左手で次の指示が書かれた紙を持つ。

 

『カガミヲ届けよ、送り先は紙に描かれた盗人』

 こんなお粗末な暗号、よく思いつくなと呆れてしまう。何やら、でかい事をするみたいだが。その計画の名は

「…………ゲヘナ…………?」

 

 




 ここで、次章予告をします。

 モモン達が動いている裏で彼女たちも動いていた。そして、アインズが知るのは、この世界の秘密。彼の覚悟と決意が定まる第3章

 「王都への道のり、麗しき吸血鬼御一行」

 いつも通り、あまり過剰な期待はしないでお待ちください。

 その前に、外伝2本やります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。