それは、アインズの一言から始まった。玉座の間、絶対の支配者たる。彼の前には6人の女性がいた。彼女たちの名はプレアデス、本来7人姉妹であるものの、とある事情により、末妹のみ所属が違うため、普段はその6人を指してのものであった。
「さて、プレアデスたちよ、よく来てくれた突然の呼び出しに応じてくれて感謝しよう」
「それには及びません。ナザリックの者であれば、アインズ様の呼びかけには何をおいても従います」
主の言葉に返すのは長女たるユリ・アルファ。彼女はそれがまるで生き物が無意識に生命維持の為呼吸をするのとなんら変わらないと言ってみせ、臣下としての礼をする。残りの5人もそれにあわせる。その姿は寸分の狂いもなく揃い、一瞬、6人が1人に見える程、揃った礼であった。これはアインズ自身も感嘆したくなるが、それをしたところで、彼女たちは「当り前」だと言うのだろう。あまりそういったことに時間をとるのも建設的ではない。
「さて、今回お前たちを呼び出した理由だが」
15分後、食堂にて頭を抱えているのは、この中では当然ともいうべきかユリであった。主から頼まれたことの意味を考えて、そして答えが何も出なかったのだ。
「アインズ様はどういった意図であのようなことを」
「ユリ姉、深く考えても仕方ないっすよ」
それも彼女たちにしてみればありふれた光景、長女が止まれば、次女が進むことを促す。というもの。普段の態度には大いに思う所があるが、確かに今はあまり考えて時間をとられるほうが問題である。
「そうね、それじゃあ始めましょうか。みんなもいいかしら」
「問題ないですわ」
「いつでも始められるます。ユリ姉様」
「…………全力を尽くす…………」
「やりましょおぉ」
たとえ、至高の方々にそうあれと創造された能力にないことを求められても彼女たちにやらないという選択肢はないのである。
しかしながら、
「ねえ、何でこうなったのかしら?」
結果を前にして、嘆くユリ。その前には、黒い物体が皿に乗っている。それは自重を支えきれないのかその身を揺らしていた。その様は、まるでかの方のようだと、不敬ながら考えてしまう。
「…………分析不可能、分量の間違いはなかったはず…………」
その物体を指でつつきながらシズが答える。行儀が悪いからやめるように言い、改めて考えてみる。そう、妹の言う通り、料理長に借りたレシピを完璧に再現してみせたはずだ。それが、どうして、
(やっぱりスキルがないとダメなのかしら)
自分がほんの少しその関連を持っているだけで、自分たちはそういったことを想定した能力は皆無なのだ。まあ、それをいったら、今のナザリックでできるものが皆無な訳であるけれど。
「ナーベラル、あなた達の方は」
気分を変える為にもほかの姉妹へと声をかける。確か、こっちは3女同士のグループであったはずだ。
「申し訳ございません。ユリ姉様」
「ごめんなさい、ユリ姉さん」
悲痛な顔をしているナーベラルに、特に気にした様子が見られないソリュシャンと、同じ3女でもこの二人は本当に対照的だ。その前には自分とシズが用意したのと同じように。まるで、心臓を燃やしたような肉の物体が転がっていた。確かこの二人が作ろうとしていたのは、
「ええと、一応聞くけど、それは」
「ええ、『ハンバーグ』になる予定のものでしたわ、姉さんたちのほうこそ、そこでシズがいじっているのが『オムレツ』、ですか」
「こら!シズったらやめなさい――ええ、そうなのよ」
「ユリ姉様でも駄目なのですね」
これはもう一つのグループも駄目そうだと思ったところで、厨房の奥が爆発した。包丁や皿が飛んでくる。それを無言で、傷もぶつけることもせずに受け取る。この墳墓にあるものは、すべて主がここを維持する為にやってきたことの象徴であり、たとえ道具の一つでも欠けることは避けたいところであった。
「ルプスレギナ、エントマ、これはどういうことかしら?話を聞かせて頂戴」
残りの三人もその瞬間に背筋を正すほど、低い声音。長女が本気で怒った時の声だと分っているからだ。今の怒りは調理をしていた2人に向けられているが、自分たちだって、普段完璧ではない。理不尽なことで叱りはしない優しい姉だというのは理解している。それでも、たとえ9割9分9厘の保証があったとしても1厘の不安材料があればその限りではない。ひとまずは、説教を受けている2人に憐憫の視線を投げかけて、長女の代わりにこの場を提供してくれた料理長に頭を下げる。
さて、何故あの爆発を起こしたということであるが、ルプスレギナとエントマの2人は、揚げ物に挑戦していたようで、その際の火力をあげるため、符術を用いておこったものであるということであった。呆れるばかりで声もあげられないユリは代わりに殴ることにした。
ひとまずはできた料理を並べてみて、ますます情けなくなってしまう。最後の2人がつくったのもまた黒い塊でしかなかった。
「ちなみにそれは?」
「『唐揚げ』っすよ!」
「ですわぁ」
材料はコカトリスの肉だという。当然
「どうしましょうか。明日だというのに」
主に頼まれたのは、食事会を行うので、そこで提供する料理を自分たちにも作ってほしいというものであった。その催しでは可能な限りの参加者を募るということであったので、確かに料理長とその配下だけでは厳しいものがあるだろう。
それでも疑問に感じる。どうして自分たちであったのだろうか?少なくともあの場に、守護者統括のアルベドや、デミウルゴスもいたわけであるし、セバスも今回のことはある程度の事情を聞かされているらしい。彼からも上手くやるよう言葉をかけてもらっている。だからこそ、奮闘している訳だが、どうにもというか、まったく上手くいかない。
できた料理を口にしても、素材のおいしさなんてすべてなくなっていてただ、炭を食べている感触しかない。このままではいけない。
その後、彼女たちはなんとか形にすべく再び厨房へと足を運ぶのであった。
「ふ~ん、ユリたちがね~、て、何でプレアデスたちなの?」
第6階層、アンフィテアトルムにて今回のことを聞いたアウラが発した声であった。
「そこはアインズ様の考えられるところだから、というのはまずいでありんしょうし」
そう、以前のままであれば、主がそう言ったのだからそれに従っていればいいというものであったが、それが原因で主がここを去ろうとしたのも確かなのだ。
「そ、そうですよね。でも、本当に何ででしょうね?」
マーレもまた考えるが、どうしても分からない。親睦を深めるための食事会、それ自体は以前、デミウルゴスが主に献上した品が影響しているというのはまず間違いないように思われる。では次だ。
「単にアインズ様が食事をおとりになりたいということであれば、それこそ個人的に命じればいいはず、それを食事会という形にしたのか。ということでありんすが」
「それこそ、あれじゃないの?」
姉と吸血鬼は続ける。かの主はすごく寛大でお優しい方だ。自分たちの思いや忠誠を汲んでくれたのではないだろうか、ということであった。
「で、でも。アインズ様がそれだけで今回のことをやるなんて」
そう、それだけとはどうしても思えない。
「マーレ、じゃあ、ほかに何かある?」
「それは分からないけど」
「まあ、マーレの言いたいことも解りんすけど」
そう、主は自分達が思っているような支配者ではないと言ったが、至高の方々がいなくなったことに関してはその方自身、本当に不敬であるが、そうでも言わないと、本当に主がきえてしまいそうなのだ。
(それは嫌だ)
多大な恩義があり、見守ってもらい、文字通りあの異変まで自分たちを必死に護っていたのだ。できることなら、生涯仕えていって、その上で、甘えたいのだ。だからこそ考える。主が今回の催しに何を狙っているのかを、
この3人がここまで、アインズのことを考えるのも当然理由がある。彼は確かに凡人であるが、それでも曲りなりにも社会人をやってきて、様々な友との語らいである程度の経験、一種の勘とも言うべきモノを持っているのも確かなのだというのが、あの悪魔の見解であった。それは単にこれまでの積み重ねだけで言っているのではない。
彼なりの根拠があるという。それが、今回の主の采配だというのだ。
「ええと、改めて確認するけど、その時、生き残っていた愚か者共って、24人だって話だよね」
ということで、彼女たちもまたその時の話を思い出しながらあの悪魔の言葉とあわせて考えていく。
「そうでありんすね。そしてアインズ様はその者どもを3つに分けた。マーレ」
吸血鬼が自分へと話を振ってきた。自分だってその時の話を忘れるつもりはない。大好きな主が謎の激痛に襲われた原因であろう。あのクズがまとめていた一団なのだから。
「はい、ガゼフさんに引き渡した8人、自由にした8人、そして、デミウルゴスさんに捉えるよう命じた8人です」
「そうそう、あの戦士長っていう男ね」
マーレとしてはガゼフのことは正直、気に入らない。自分たちはずっと主に仕えてそれでも中々笑ってくれるということはないというのに。その人物はすぐに主と打ち解けあった様子で笑い合っていたのだ。そして主自身の言葉も聞いている。
『本当に素晴らしい男だ。できることなら協力者、楽園にて建設予定の兵団をまとめる立場になってもらいたいものだ。と、これはコキュートスに悪いな』
『オ気ニナサラズ、ソレハ人間ノ軍隊ノ話デアリマショウ』
『はっはっは、お前もその辺りを理解してきたか、嬉しく思うぞ。私は』
『全テハ、我ガ友ト彼ラノオカゲデゴザイマス』
彼は無意識に杖を握る手に力をいれていた。どうしようもない嫉妬、ガゼフに対して湧いてきそうな殺意をなんとか抑えようとする。それは、結局のところ、父親にくっついていたい年ごろの子供の感情であった。例えるなら、同僚と飲みにいくというその足に必死にしがみついて、連れていってほしいと懇願するもの。しかし、そこは大人の付き合いというもの。仕事の一環ともあり、謝られながら置いていかれてしまい。そして父親を連れ去るその相手に抱く感情にしては少々、過激な気もするが。
「で、何でアインズ様がそんな面倒なことをしたかっていう話だけど」
「アウラ、その言い方は、まずいんでありんせん?」
「あ、今のなし!!」
姉たちの声が聞こえてマーレもすぐに頭を切り替え、決意する。もしも、この先、主に甘えられる機会があれば勇気をだして行動に移していこうと。
「まあ、チビ助の気持ちもねえ、アインズ様であれば全員ナザリックに連れて帰ることもできた。それこそ」
その先は誰も何も言わなかった。そうなった時、彼らを待ち受けるのはナザリックのものであれば誰もが知る事なのだから。
「はい、でもそうしなかったのは」
ここから先はその悪魔込みの話になる。まずは主の願い「楽園」、そこを目指すために必要なのは情報、だからこそ生き残った連中の一部を
「ええと、デミウルゴスが言うには、まず戦士長に引き渡した8人」
「でもさぁ、流石はアインズ様って感じだよね!」
姉が話を止めて主を褒めたたえる。その理由も知っている。件の戦士長がその場に来ていたのはほんの偶然に過ぎなかったという。それを見通してみせたというのだから。やはりあの主はすごい。
(ウィリニタスさんの話だったよね)
その時に戦士長の初期対応と連絡役として文字通り飛び回った人物だ。
「ええ、ああ、愛しきわが君、あなたはすべてを見通しているというのでしょうか?」
シャルティアもまた手を組み、天井、空を見上げ、呟いていた。彼女なりに主のため色々やっているようだが、何だか変な影響を受けているのではないだろうかと、心配になってくる。
「と、話を戻そうか。その8人の意味だけど」
「うん、えっと、『布石』なんだって話だよね」
「そう、それはおそらく」
「法国に返した8人も同様ということでありんしたね」
そう、まずはアインズ・ウール・ゴウンの名をこの世界に、少しずつ広める。その為に彼らの存在が必要であるということ、つまり
『人間というのは急激な変化についていけないのですよ』
やっぱりと思ってしまう。主やかつての方々、そして今回の件で主が笑ってくださったもの達のような人間がいるのも確かであるものの大半の人間というのはくだらない生き物だ。中には主の優しさに付け込もうとする者たちもでるかもしれない。その時は、
(殺します)
今のところはまだ大丈夫そうであるが、主の願いは知っているし、理解もするけど自分にとって最優先するのは主の心の平穏だ。
「それで、そうやって少しずつアインズ様の名を広げる予定なんだってね」
あくまで予定だ。アインズだって知っている。結局、思い通りになる事なんてほとんどない。なら、どう転んでもいいように、可能な限りの策を用意するだけだ。別に大したことではないよう思えるが、彼女たちにしてみれば、それこそ、幾百、幾千の未来を主が見ているのかと、忠誠に力が入る。当の本人が聞けば、「大げさすぎる」と悲鳴をあげるのだが、
「ようやく話を本筋に戻せそうね」
「うん、ええと、それだけのことをするアインズ様が」
「何の考えもなく、プレアデスの皆さんを指名するはずがない」
「まあ、時間はまだあるし、ゆっくりと考えんしょう」
ルプスレギナは調理室にて鍋の様子を確認していた。始めの頃はただの黒い液体であった。料理がようやく形になりつつあったのだ。あれから苦労した。作る料理、その数々が失敗したのだ。失敗作はちょうど通りかかった執事助手と執事見習いに処理してもらっている。
そこで見回してみる。ナーベラルとソリュシャンはそろって、仕上げをやっている。なんだかんだでこの2人は仲がいい。
「2人ともどうっすか~?私の方は何とかなりそうっす~」
「あら、そうなの?ルプー姉さんのことだから。あとひと悶着はおこしてくれると期待していたのに」
「それは期待に添えれず悪いっすね~」
「ソリュシャン、あまり不穏なことを言わないで頂戴。ルプスレギナもユリ姉様の負担になるようなことは控えてくれるかしら?」
冗談だと理解して、軽口な3女と、割と本気で殺意交じりの釘をさしてくる3女、本当にその性格は正反対だ。それでも自分は知っている。
「2人とも今回は頑張っるすよ」
「ええ、勿論ですわ」
「急にどうしたの?ユリ姉様に殴られ過ぎて、遂に壊れたの?」
正直、その発想はひどいなぁと、内心少々傷つくはずもなく。ルプスレギナは恋する妹達に激励を送り、その場を後にする。
「男心を捕まえるには胃袋からって言うっすからね~」
「エンちゃん~どうっすか~」
「ルプスレギナ姉様ぁ、はい順調ですぅ」
今、エントマが見ているのは蓋をしたフライパン、そう彼女が今しているのは蒸しの作業であった。その湯気は最初は毒気を思わせるようなものであったのに、今はしっかりと調理中のそれであった。その香りを姉妹一効く嗅覚で捉えて安心する。これなら、十分提供できそうだと。
「これなら、アインズ様もお喜びになるっすよ~」
その言葉を聞いた途端、彼女の触覚が直立したように反応する。
「褒めてぇ、もらえるでしょうかぁ?」
「きっと、すよ」
「頑張りますぅ」
ルプスレギナは姉妹たちの感情はある程度把握しているつもりであった。だからこそ、目前の妹や、その娘とよく喧嘩をするもう一人のこともよく解っている。
(まあ、二人ともまだまだお子様っすからね~)
決して口には出さない。もしそうすれば、次に飛んでくるのは弾丸と札だ。まだ自分は死ぬつもりはない。
「シーちゃん~お姉ちゃんが来たっすよ~」
シズは膝の上で腕を組む形で屈み、稼働中のオーブンの中を見つめていた。その目がコンマ0.1秒だけ自分の方へ向けたと思えば、すぐに視線は戻り。
「…………ルプー、邪魔…………」
たった一言の拒絶であった。
(うう、エンちゃん、ソーちゃんもたまに酷い時はあるんすけど)
自分はどうやら、ナーベラルとシズには嫌われてこそいないものの厄介者扱いのようだ。おかしい。自分は姉として彼女達に優しく接しているというのに。
「悲しいこと言わないでほしいっすよ~」
「…………私の方は問題ない…………」
とりつく島もないとはこのことだなと、諦めてその場を後にしようとしたところで、
「…………どうして?…………」
聞こえたのは、疑問の声であった。
「何すか?」
「…………どうして、ルプーが姉なの?…………私のほうがよっぽど、お姉さんらしい…………」
(あちゃ~そこまで言われるっすか~)
確かに至高の方々がそうあれと創ったのだからだ。と言えばそれで済む話であるが、それでは彼女は納得しまい。少なくともこの場で返す最適な言葉達がある。
「シズ、2つ、教えてあげるわ」
「…………!?…………」
明らかに動揺している妹に言葉を続ける。
「少なくともね、本当の姉は『らしい』なんて言葉使わないわよ。それと、あまり順序にこだわりもしないわね」
少なくとも自分の姉はたとえ、末妹として創られたとしてもああなのだろうと確信がある。そのまま、その場を後にする。
「ユリ姉~来たっすよ~」
ここまでくると、全員訪ねたくなるのがルプスレギナという人物だ。
「ルプス、あなたこそ大丈夫なのでしょうね?」
「大丈夫すっよ。ちゃんと
指し示すように自分の鼻を叩いてやれば、姉はそれで納得したらしい。
「そう、ならいいけど」
「ところで、ユリ姉、何してるんすか?」
「見ればわかるでしょ。生地をこねているのよ」
「さっきから、サンドバッグみたいに殴っているそれがっすか?」
まあ、姉のことだ心配はいらないだろう。
「ふう、それにしても本当によかったわ、これで何とかアインズ様の期待に応えられそうね」
今回のことで最も気をもんだのは間違いなくこの姉だろう。最も痛い目にあったのは自分であるが、
「ぼ、私たちはあの方にそれこそ死力を尽くして、仕えないといけませんから」
「ユリ姉、今は2人っすよ」
「そういえば、そうね」
「大変すね~長女というものは、自分のことすら好きに呼べないんすから」
「別にいいのよ、僕はあの娘たちをまとめる立場にあるのだから」
本当、責任感の塊のような人だ。だからこそ、自分や妹たちも尊敬しているのだから。
「そういえば、気になっていたんすけど~」
だからこそ、好奇心がうずく、それは時として猫を殺すほど恐ろしいものであるが、狼である彼女には関係がない。
「ユリ姉って、アインズ様のことをどう思ってんすか?」
それを言われた姉は、しばし無言となり。
「ルプス、また殴られたいのかしら?」
脅された。
(やっぱりユリ姉なんすよね~)
ナザリックの女であれば、一部の例外や、それこそ子供を除いてかの方に惹かれるだろう。現に妹たちはそれにあてられたのだから。自分は不思議とそんな感情が湧かなかった。かの方は自分が仕える。最高の主、それ以上でもそれ以下でもない。デミウルゴスやコキュートスに近いかもしれない。そしてこの姉もおそらくは同じなのだろうが、もしもだ。仮定であるが、この姉がかの方に想いを抱いていたとしてもきっと表に出すことはないだろう。それは自分にさえだ。姉らしいと思う反面、不器用な人だとも思う。まあ、結局は予想の域をでないし、それを知るのは姉だけだ。ここで、厨房の空気が変わる。
(そろそろね)
もう、煮込み時間も終わりらしい。
「んじゃ、行くっすね~」
「ええ、頼んだわよ」
結果から言って、食事会は大成功であった。アインズ自身、その料理に舌鼓を打ち、何より味に五月蠅いというアウラが目を輝かせて口にしていることから決まりであった。
現在玉座の間にて、かの支配者と守護者たちにその統括、そして彼女たちの姿があった。
「さて、プレアデスの諸君よ、今回のことは実に大義であった」
「もったいない言葉でございますアインズ様」
代表でユリが答える。
「さて、今回の目的だが」
「アインズ様」
そこで声をあげたのは、
「シャルティア?どうした?」
「その内容、私に言わせてもらってもいいでしょうか?」
「「シャルティア!!」」
叫んだのはアルベドにアウラであった。彼女が頓珍漢なことをぬかして主を落胆させないかと危惧しているのだ。しかし、アインズとしては挑戦させるべきと判断した。あまり無下にし続けて、誰も発言できなくなるのは最悪の展開だ。
「分かった。では頼もう」
「ありがとうございます。アインズ様」
そして彼女は説明する。まずは1つ目、アインズが手に入れた「人化の指輪」、その味覚のテストを行いたかったという事。これはそのとおりであるし、ある程度は皆も想像できたことであるらしい。
「そして2つ目、それはある可能性を模索する為でありんした」
「ほう、なんだ?その可能性は?」
教師になったような気分で問いかける。
「新たな技能の習得の可能性、でございます」
それを言われて、プレアデス自身も驚いたような顔をする。それも当然であろう。本来、どんなに頑張っても彼女たちは料理ができない。しかし、今回しっかりしたモノを提供してみせた。それが答えだ。
「そして、これは最後に、私の予想になりんすが」
「言ってみろ」
「アインズ様が純粋に彼女たちの料理をお求めになったのではないかと」
周囲から飛ぶのは疑問の視線、唯一分かっているのはアルベドとデミウルゴスくらいか、そして彼女は語る。かつて至高の方に「メイドは万能説」を唱えていた方がいらっしゃったという事を。そして、優しき主はその友の言葉を証明するために今回の件を企画したのだと
「ふふふ、ははは。いいぞシャルティア、よく言ってくれた」
アインズ自身の願望であったのも確かなのだ。実験を兼ねた今回の件、それではっきりとした。
「ありがとう、シャルティアよ、さて、みんなも気づいたと思うが、私たちはこの世界で更に強くなれる可能性があることを見つけた。次は分かるな?」
「はい、我々一同、アインズ様の為、計画のため、これからも尽力する所存でございます」
「「「すべては御身が為!!」」」
アルベドが言い、全員が引き継ぐ形であった。
「ああ、ありがとう。それと改めてプレアデスよ」
「はい」
「今回の品々、すごく美味しかった。ありがとう」
「アインズ様」
最後の言葉の後半、それは間違いなく、支配者ではなく、アインズ個人の言葉であった。そしてそれをかけられた彼女たちの表情も様々であった。主に認められ、誇りを胸に抱く従者だったり、最愛の人に喜んでもらえたと幸福をかみしめている女性のもの、はたまた、父親に褒めてもらい。自慢げに胸をはる娘のものであったりとまるで6人で1つの個体と勘違いするほど優れたプレアデス達と言えど、各々が感情を持つ個なのだと証明するようであった。
今作のプレアデスの関係及び、アインズ様への感情ですが、原作、公式アンソロジー、スピンオフ作品など読んだ上で、いろいろと追加した作者の勝手な解釈です。
シャルティアの活躍は次章で楽しみにしていただければと。
それと第3章は前の章より短めになる予定です。