「この作者、頭いってるんじゃねえの」と思われても仕方ない内容になっていますが、作者は至って真面目に執筆しています。
今回の話も結構オリキャラは出てきます。結構、血生臭い表現も増えています。
苦手な方はブラウザバックをお勧めします。
では、最新話どうぞ。
ラキュースの放った横なぎをあくまで華麗に躱してみせるレイナース。彼女はそのまま数段飛び越して階段上段へと降り立つ。
彼女は次の一手に出る。自身の武装であるフローティング・ソーズを発動させて、相手へとけしかける。しかし、それさえも全て無駄な動き1つなく彼女は躱して見せ、その光景は妖精が舞っているようであると、吟遊詩人ならば言っていたかもしれない。
それでも、ラキュースは剣群を操り、何とか彼女を第3層における分岐点、その脇へと押しやって、静かに宣言する。
「ここは私が残ります。皆は先に行って、指揮はモークさん、お願いします」
「でも……」「鬼リーダー、残るなら私たちの方がまだ適任」
反論するのは双子の忍者たちであった。彼女達の言いたい事もラキュースにはよく分かっている。確かに自分の持ち得る技では、もっと言えば自分の剣速では、彼女には届かないであろう。それでもと彼女は言葉を続ける。
「彼女は、速度だけではない。重さもあるのよ。あなた達では、軽くて却って危険よ」
「それは」「そうかもしれないけど」
それでも、言葉を続けようとした2人を諌めたのはペテルであった。
「行きましょう。とにかく先に進むことが重要だと思いますので」
2人が視線を動かしてみれば、他の3人も無言ながらその目で訴えていた。彼女の言う通りにするべきだと。
「「分かった」」
彼らの判断は決まり、即座に6人は上層へと、目的地である神祠を目指して駆け上がる。その様子を重爆と呼ばれし騎士は何もせずに見送っていた為に思わずラキュースは問いかける。
「何故、私の仲間を見逃す?」
騎士はどこまでも億劫そうに答えを返した。
「別に、通すなとは言われていますが、全員を止めろとも言われていませんでしたので」
どこかやる気なさげなそんな彼女の態度に内心、少し感謝しながらラキュースは再び剣を構え、そして突撃した。
規則破りの冒険者とどこか冷めた騎士の戦いは第3層、その最上層部、バルコニーとも言えそうな所で続いていた。ラキュースは騎士へと狙いを定めて上段に下ろす。彼女はそれを体の芯を傾けるだけで躱してみせる、それに合わせて剣群の一振りを彼女の顔面目掛けて飛ばすも。
「……!!!」
騎士はそれを器用に槍を振って弾くように回避してみせる。その事で彼女の中の確信は固まりつつあった。
(やっぱり、彼女は)
重爆の異名を誇る騎士はこちらの手を
(本当に、彼女の性格に感謝しなくてはならないわね)
その無駄な思考が彼女の命取りとなった。騎士が放つ正に‘重爆’の如き一撃が彼女の右足、その甲を捉えた。
(!!!)
鋭い衝撃、それでいて鈍く、足に杭を打ち込んだような痛みが一瞬走り、感覚が遠くなる。砕けこそしていないもの、人体に罅は入ったかもしれない。
(なら)
直ぐに備え付けのポーション瓶へと手を伸ばそうとして、それを遮るように矛先が人体をかすめる。
「簡単にそう言った事はさせませんことよ」槍を振るいながらも彼女は呆れたように続ける。「どうでも良い事ですけど、どうして御一人で私を相手にしようとされたのかしら? よろしければ教えて貰いたいものですわ」
レイナースの言葉は正論であった。そして、彼女自身が疑問に思っている事でもある。そもそも回復薬、あるいは回復術込みの戦闘というのは複数人、チーム単位でやる事が前提である。だって、そうだろう? それらの行為をするにしたって、隙は出来てしまうのだ。時間にして、8から10秒。しかし、それだけあれば戦士の世界では命を奪うのはたやすい事である。
もっと言えば現在の状況は完全にレイナースへと傾いているのである。剣と槍では後者に分がある。というのは有名な話であり、その理由として上げられるのは間合いの差であろう。それと、騎士である彼女の技の幅の広さもある。
一般的な槍の使い方としては、前に突き出す。この一点であるが、彼女の場合は振り回す事は勿論であるが、更にその動作中、巧みに持ち手を動かす事でその間合いさえ自在に操るのであるから、そして彼女自身の体質と相まって、この戦闘においては負けはないと言うのが騎士の見解である。彼女は続ける。
「それに、分からない事は他にもありますわ。あなた方は冒険者、つまり、この行為は違反以外の何物でもない。違いまして?」
「違わないな」
ラキュースは喋り方が素になりそうであるのを何とか堪えながら答える。冒険者とは、あくまで対モンスター用の傭兵であり、それ以上でも以下でもない。ましてや、他国への攻撃なんて許されるものではない。
「それでも……」
彼女は痛む足を引きずりながら何とか続きを口にする。
「間違っていたとしても、あなた方帝国を放置する訳にはいかない」
「熱心な事ですわね……それならば、冒険者等ではなく、正規兵を目指せばよろしかったではないでしょうか?」
彼女の言う事も最もであり、ラキュースは数秒黙りこくってしまう。そして、その顔めがけて騎士の槍は振るわれる。それを何とか、魔剣と剣群で防いで言葉を返す。
「そうでしょう。それでも私はこの道を選んだ。きっと酷い人間なのでしょう」
「そうですわね」
騎士は知らない事であったが、彼女は英雄譚に冒険譚に憧れ冒険者となった。しかし、その一方で、国を想って涙を流す彼女の力にもなろうとしている。確かにそれ自体は欲深い事であり、とても褒められたものではない事は確かである。
剣戟は続く。冒険者は剣と剣群、合わせて7本の剣を振るって何とか騎士へと攻撃を届かさせようとする。それでも、彼女にはどれ1つたりとも当たりはしなかった。対して、彼女が放つ攻撃は余りにも的確であり、僅かな動きの間に出来る隙、無防備になる所を狙って的確に迫ってくる。何とか剣群へと意識を集中して、それらも防いでいるが、それも完璧ではなく、その体には切り傷が増える一方であった。そんな状態だというのに状況は一切変わらない。ラキュースの方が消耗が激しいのであった。それもそのはず、そもそもそれまでの戦いで彼女は魔剣と武装である
それでも、この戦法をとっているのはそれ位しないと彼女とは渡りあう事も出来ないと、それまでの戦闘の経験から分かっていたから。
(本当に何なんでしょうか?)
そんな必死の姿に騎士は疑問を感じる。今回の件、彼女達には何の得もない。それ所か、冒険者としての信用を完全に失うといっても良い事態である。そこまでして、自分たちの邪魔をしたとしても、王国が帝国に併合される時は変わらないであろう。
(不思議ですわね)
頭では余計な事を考えていても、目と体は確実に彼女を屠る為にその槍を振るう。既にこちら側は死者が出ているらしい。それならば、向こうの方も何人か殺しておかないと割に合わないと、あくまで仕事感覚で、売り上げのノルマを超えなくてはという感覚で彼女は思考する。
そして、冒険者が振るった大ぶりの右振り、その隙をついて渾身の突きをそのがら空きな左肩へと放つ。
彼女の顔は「しまった!」という顔をしていて、慌てふためくように周囲の金塊もよってくるが、もう遅い。
(本当に不思議ですわ)
それまでの戦闘で、彼女が単体ではそこまで強くない事、どちらかと言えば支援向きであると彼女なりに結論を出していた。更に、今自分としてみせているその戦い方だって慣れたものではないと既に理解していた。そして、そんな慣れない動きを続けていれば、隙が出来るのも必然と言えた。
その一撃がラキュースの左肩を穿つ。その威力はすさまじく、彼女は後ろへと吹き飛ばされる。
「ぐ!」
そう叫ぶ、彼女の左肩は原型こそとどめているが、真っ赤であった。砕かれずに済んだのは装備のおかげであったとしか言えない程にその傷は深く、痛ましいものであった。
「1つ言えるとすれば」騎士は倒れた冒険者へと歩み寄りながら続ける。「たった9人でどうにかしようと思ったのが何かの間違いだと思いますわ」
そう、ここに来ている帝国軍には彼女は興味がないので全然知らないが、相当な腕前が立つ者が揃っているらしくて、何よりあの宮廷魔術師殿がいるのである。
(…………)
彼女はそこで息を吐いて見せる。彼女にとっては全てがどうでも良いのだ。王国が繁栄しようと、帝国が繁栄しようとどちらでも良い。彼女はそこで、鎧からハンカチをとって見せると、前髪で隠れた部分へと押し当てる。湿ったような音に、布に何かが付着するどんな人が聞いても不快感を持つであろう音。手を戻してみれば、その先に握られているハンカチには、黄色いシミが表面積8割程にまで、広がっていて、そこで彼女は此処まで見せた事のない顔をして、布を握りしめて見せる。
「…………~!」
激昂した表情に歯ぎしりとそれまでの彼女が嘘であるような印象を抱かせるものであるが、それも一瞬の事であり、次の瞬間にはいつも彼女がしている何にも興味を示さない冷たいものに戻っていた。開いた手にあるハンカチも元の綺麗な物に戻っていた。それは、そういう品であるのだから。
(そう、私の目的は……)
そう思考していた彼女に弱弱しいものであるが、声が聞こえてきた。
「…………か」
見れば、まだ彼女は気を失っていなかったようであり、その事にレイナースは内心でうんざりとした。気を失ってくれれば、もっと楽に死ねた、いや、殺してやったと言うのにだ。先程の一撃もあるが、先に彼女の右足は死んでいるとみてもいい、それに此処までの戦闘での彼女の疲労具合と計算してみれば、その答えは彼女は立ち上がる事はないといったものであり、せめて最後の言葉は聞いてやるかと耳を澄ましてみる。
「……聞いても……宜しいか?」
「何でもどうぞ、せめてもの情けですわ」
この問答の最後に彼女は死んでいる事であろう。ならば、それ位はしてやっても良いかと本当にその場の気分で騎士はそうする事を決めて、改めて彼女の言葉に耳を傾ける。
「仮にだ…………帝国が王国を併合して……そうなったとして……ラナーは………………第3王女はどうなる?」
「ああ、そう言う事ですか」
騎士はそこで、目前にて倒れている人物、問題しか起こしていないその彼女がそんな事をするのか理解出来た気がした。別に共感も感慨もないけど。
(と、なると彼女は不憫という事かしら?)
王国と帝国が毎年行っている戦争。表向き、それは毎年膠着しており、後、数十年は続くであろうと見られている。しかし、実態は違う。
(陛下も気合が入っていましたしね)
それは、帝国側がそう見えるよう振舞っているからであり、それも合わせてかの皇帝の策の内である事は自分を含めて帝国の要人たちは知っている事実でもある。
(あるいは?)
彼女たちは自分たちがこの遺跡を調べている事に何か危惧を抱いているようであった。一体何なんであろうか? と彼女は考えようとして、直ぐに辞めた。今すべきはそこではない。彼女への返答であった。
「そうですわね、そうなると仮定した場合、やはり打ち首――公開処刑ではないかと思いますわ」
そう、どういった事情かは知らないけれど、皇帝は王国の王女、特に第3王女を毛嫌いしている所がある。容姿が愛らしい。多少は頭が回る。それ位しか、自分が知る事はない。それでも、あの「鮮血帝」がどうするかなんて火を見るより明らかというものであろう。
故にそう返したのであるが、それが愚かな行為であると騎士は自覚していない。その頬を何かがかすめた。
(???)
それは左頬であり、あいた手を当てて、そのひらを見れば血がついていた。つまり、斬られたという事である。
周囲を見れば、先ほども何度も弾いた金塊が浮遊していて、前から再び彼女の言葉が聞こえて来た。
「ならば……なおの事…………あなた方を放置する訳にはいかない」
動けない彼女はそう言って、剣群を再び騎士へとけしかける。その事に心底呆れながらもレイナースも今しばらく付き合う事にするのであった。
そう、彼女の言う通り。「蒼の薔薇」の決断は早計だったとも言える。引き返すのが最も最善であるのは、一連の話を聞いた者であれば、誰もがそうだと答える事であろう。だが、それでも彼女達が、リーダーである彼女がそう言った判断をしたのは、いくつにも重なる事実と、そしてその時点で彼女が持っていた情報の数々が生み出した事故と言ってもいいものかもしれない結果であった。
王国と帝国の戦争の事実に王国の実状、本来であればここに居るべきは王国正規軍であるべきであり、彼女たちではなかった。そうだろう? 国家同士のやり取りなんて、本来やるべき者達が他にいるべきであるから。しかしそれでもこうなった理由を無理やりにでも上げるとすれば、両国における、この平野に対する対応の違いもあったとも言える。
カッツェ平野。
この地では、アンデッドが発生し、周囲へと散らばる為に、どうしてもこの地でのアンデッド討伐は必須となり、その際、王国は冒険者を中心に、そして帝国は正規軍を中心にその討伐にあたっている事もこの状況を産んだ理由の1つであろう。
何より大きな理由があるとすれば、彼女が冒険者という立場にありながら、国の要人と親しい間柄であったという事であろうか? 何にしても私的な理由に変わりはなく、そして取った行動の代償というものも大きくつくものである事には変わりはない。
「……!!」
イビルアイは脇腹を抑える。理由は単純、矢が刺さったからである。あれからの戦闘では残った鷲馬ライダー達の動きがまた一段と変わったものもあるが、理由は他にもあった。そこで、彼女は地上へと視線を移す。
「命中……次へと移る」
自分が彼らと空中戦をやっている間に敵方の増援が来たのであり、その数は20人程、そのほとんどが長弓を構えている事からその専門の部隊とも言えよう。
「ふん! これ位何ともない。お前らも直ぐに片づけてやるさ」
彼女自身は威勢よく言うもののその動きは明らかに鈍りつつあった。ニンブルの読みは間違ってはいないのであった。
(やはり、あれだけの魔法を連発しているのですから)
それは当然とも言えよう。此処まで来ると、彼女の強気な態度も彼女にとっては戦略の内であったと何とか推測する事も出来た。
(何にしてもです)
この状況に持っていけるまで、多くの部下の戦死した。あれからの戦闘、無論こちらは玉砕覚悟で挑んだのであるが、天は自分たちを選んだようであった。想定よりも増援が速かったのであり、それも帝国では随一の部隊であったのが大きい。確かに現在も空を飛び回り続ける魔法詠唱者は強い。しかし、それだって無限ではない。彼女がどうして、自分達を容赦なく殺しにかかる理由も理解していた。
(そうですよ。貴方を始末すれば、他の方々もそのつもりでありましたから)
だからこそ、互いに死力を尽くす。そこに綺麗ごと等存在せず、憎悪と憎悪をぶつけあいであり、それを抜きにしてもだ。自分も部下をやられているのであり、とても唯で返す事など出来ない。
(償ってもらいますよ。死んで行った部下たちの為にも)
優勢になったが故の心の隙、それが彼の命取りであり、すかさずイビルアイは雷を放つ。が。
「アノック様!」
部下の1人が急降下でニンブルを引っ張りそれを躱す。その様子に舌打ちをするイビルアイであったが、そんな暇は許されず、直ぐに移動する。数秒前まで彼女がいた空間を5本の矢が過ぎ去る。そう、今の彼女は飛び続ける必要に駆られていた。少しでも止まれば、矢が飛んでくる。かと言って、その射程範囲から離れようとすれば、鷲馬ライダーが決死の体当たりを仕掛けて来るので、それで少しでも時間が出来てしまえば、飛んでくる矢の餌食である。
(ち! 想定よりも速い!)
もっと言えば、先ほどの戦闘、24騎を落とした戦いにしたって、別に彼女は余裕という訳ではなかった。彼女自身の信条か、あるいは性格からそうなっているのかは定かではないが、彼女は戦闘時には決して弱音の類を吐くことがない。それが原因で傲慢な性格ととられがちであるが、彼女だって別に鬼ではない。今は関係ない事であるし、仲間を大勢殺された彼らにしてもどうでも良い事であるけど。
彼女は何とか飛び回りながら、現在の戦況を把握してみる。相手は空を飛ぶ鷲馬ライダーが以前、6騎、それに地上で自分を狙う弓兵が20人、それに先ほどの挑発が効いているのか空を駆ける連中も現在は弓に攻撃手段を絞っている為に、自分は26の弓から逃げなくてはならない。
(たく、悪い癖だな。全く)
思わず奥歯を噛みしめる。過去にあった体験を思い出してだ。自分の経験則で言えば、弱みを見せるなんてろくな事がない。
泣けば、助けを求めれば、人は優しくしてくれる? いいや、むしろそういった者達から奪われていくのだ。
そんなもの、全く根拠がない都合の良い妄想の類と何ら変わらないではないか。ならば自分が強くなり、そしてそうあり続けるしか、こんな残酷な世界で生き残る方法なんてない。
彼女の孤軍奮闘はもうしばらく、続くと思われたが、あっさりとその終焉を迎える。敵方の矢の群れを掻い潜り、低空へと避難した時、右足に何かが巻き付いた。
(な……)
一瞬生じた思考の空白、それは鎖であった。
(彼らも来てくれましたか)
その姿に安堵の息を吐くのはニンブルであった。新たにこの場に来たのは3人であるが、それでも信頼出来る程の強者達である。
1人は、鎌と戦端に分銅がついた鎖が連結した武器を扱う者であり、相手の足に鎖を絡ませている相手でもあり、その口を開く、その声は年若い外見に反してしゃがれたものであった。
「はいはいと、獲物は捕まりましたよ」
まるで、既に捉えたと言われたようで、思わず彼女は反論してしまう。
「これで捕まえたつもりか? 舐めるな!」
次の瞬間には彼女は行動に移っていた。自身の右足、そのふくらはぎを中心に巻き付いたそこに躊躇なく雷を打ち込んで見せた。それは、彼女の足を吹き飛ばし、結果的に鎖も離れる。
「おお、とんだ人物ですね」
「確かに、てっきり己の身が傷つくのを絶対に嫌うタイプだったと思っておったが、そうでもないらしい」
彼女の咄嗟の判断にそう称賛を送るのは槍の穂先、その途中に大ぶりな斧が取り付けてあるハルバードと呼ばれる武器を持った兵士であった。
ここまでの2人であるが、その装備は他の兵士たちはとは明らかに違っていた。帝国軍指定の鎧――以前、ある村を襲った者達が偽装の為に変えていた姿に近いもの――ではなく、鎖鎌を武器に使う男の装備は現代で言う忍び装束そのものであり、もう一方の男が身に付けているものは殆んど革の服と言っても過言ではなく、心臓の位置を護るようにペクトラレのようにも見えるプレートがあり、彼がどちらかと言えば、近接格闘戦よりも機動戦に特化した仕様であると分かる者であった。
そう、彼らは特殊な者達、元、冒険者の正規軍であった。これもかの「鮮血帝」の働きの1つと言えよう。現在、帝国では冒険者及び、その組合の立場というものは少しずつであるが狭いものへとなって来ていた。
かの皇帝にしてみれば、いわゆる戦力の分散というものを嫌ったらしい結果であると帝国市民の間では噂になっているが、真相は定かではない。
何度も確認するが、冒険者とはその名前とは裏腹に「対モンスター用の傭兵」という認識であり、それこそが存在意義でもあったが、ここ近年の帝国ではその仕事を正規軍が行うようになってしまった為に、その仕事は減りつつあった。ならば、今回の様に遺跡調査などもあるという話になるが、こちらも正規軍が請け負う事が増えつつあり、結局、冒険者に回ってくる仕事と言うのは贔屓にしている客からくる御指名依頼などが彼らの食い扶持となりつつあり、この平野におけるアンデッド退治にしたって、正規軍が行う事が増えつつあった。
この事態に皇帝は新たな制度を投入する事にしたのであった。
すなわち、冒険者達の正規兵雇用制度であった。それに合わせて、モンスター退治も正規軍が行う事になっているのは、ある法則性に彼が気づいたからだとも言えた。
すなわち、人同士で訓練をするよりもモンスターを殺した方が、兵士の練度が上がるという事に、それはかの竜王が怒りを燃やしている彼らの働きの一環もあったが、もっと単純な話でもある。命の保証がある訓練よりも常に生死が分かれる緊迫感が帝国兵の練度を確実に上げているのであり、今回彼女達が相手をしている者達もそうやってのし上がって来た者達が多数であるのだ。
「まあ、目的は達したしね」
アインズが元いた世界であれば、間違いなく
「何?」
あのまま力任せに引きずり下ろすつもりではなかったのかと? 実際、鎖の絡みつき具合は強くかといって、それを丁寧にほどく時間を相手がくれるとは思ってもいなかったのであり、ああした訳である。自身の体は少しばかし特殊である。この場におけるすべての戦闘が終了した際に切断面をくっつけておけば良いと。そういう判断であったのだ。
(じゃあ……)
何が狙いなんだと思った所で、自分より高い所にいる人影に気付いた。
(な……)
迷いは一瞬、しかしその一瞬が命とりである事に変わりはないのである。彼女の肩に衝撃が走り、次の瞬間には全身を叩く痛みに襲われた。何をされたのか理解に及ぶまで何とか彼女は3秒で答えを出す。
そう、先ほど自分は空中から叩き落されたのであり、自分は今、第1層の最上層に倒れているのであろうと。
(そうか、そう言う事だったか)
初めに自分の足に鎖を絡ませたのは引きずり落とすのが目的ではなかった。
(はは、ティア達といい勝負じゃないか)
現実逃避気味に彼女は内心でそう笑う。自分をこんな目にあわせた奴はあの細い鎖をとんでもない速度で駆け上がり、そして飛び上がったという事になるのだから。
何より驚いているのが、その人物がそれだけの高度から何事もなかったように降り立っている事であった。その目は怒りに染まっており、自分を見下ろしている。
「よう、まだ生きてるみてえだな」
「当り前だ。そう簡単に死んでたまるか」
「ああ、そうこなくっちゃよ」
魔法詠唱者に憎悪の視線を投げかけているのは、背に大剣を背負った男であった。先程彼女をそれで落としたのは明白であった。それは、ツーハンディッドソードと呼ばれるものであった。
そう、彼こそ元冒険者であり、現帝国正規兵でもある3人目であった。彼には特殊なタレントがあり、それが高度から落下したにも関わらず全然無傷である理由である。彼はイビルアイへと問いかける。
「おい、どういうつもりなんだ? 王国はよ?」
彼らにしてみれば、遺跡調査中に突然襲撃を受けた立場である為、当然の態度であった。それに対して、イビルアイは正直に告げる。別に深い意味はなかった。単にその手の駆け引きが無意味だと思っての言動であった。
「お前たちがここで見つけた物で何をしようとしているか気になってな。それで、無理矢理にで――」
それ以上言葉にする事はできなかった。男が突然、彼女の頬を蹴り飛ばしたからである。初めから全て聞くつもりなどなかったように、いら立った声で続ける。
「ああ、そうだよ! ここにある物を今年の戦争で使う予定だったんだよ!」
「おい! アルス!」
この時点で、倒れている彼女は帝国兵によって完全に包囲されており、近くに来ていた仲間であろう1人が彼を咎めた。それを聞いた彼女はこんな時だというのに頬を緩め、笑う。
「はは、馬鹿、発見って奴か?」
男が言ったのは間違いなく軍事機密であろうことはその手の話に疎くても、大体察する事が出来るというものである。そんな彼女の姿が更に癪にさわったのか男は彼女に蹴りをまたも入れる。その衝撃で彼女を覆っていたローブがはだけ、その下にある体が彼らの目に映る。
「は、女だったか……けどな、敵である以上、容赦はしないぞ」
「ああ、私だってそうする」
「いちいち癪にさわる野郎……女だな。おい」男はそこで、彼女の胸倉を掴んで見せて、仮面を睨むと言葉を続ける。「ニーノ、ヴィレム、イスカ」
「はあ?」
イビルアイは思わずそう口にする。いきなりこの男は何を言いだすんだと、そんな彼女を無視するように男の言葉は続く。
「セルメラ、ウッドロウ、スラッド、ガーメル、ルスーノ、ヨルダン、……」
それからも男の言葉はしばらく、続き。やがて言い終えたらしく、男はイビルアイへと再度殺意に溢れた視線を向ける。
「何なのか分かるか?」
「さあな」
彼女はあくまで、嫌味に返す。こんな状況で感傷的になっても仕方ないといった様子である。それを受けて、男は叫んだ。それは、彼女に向けられた怒りが集大成となったものであった。
「てめえが! さっきまで! 羽虫みたいに! 殺した連中の名だ!」
「ああ、そうなのか」
彼女のその態度が更に男の憤怒というなの炎に油を注ぎ、業火となる。
「だろうな、てめえにとっちゃ、どうでもいい奴らだよな。別にそこは否定しねえ、俺だって過去に沢山の奴を殺してきたが、全員の名前を覚えているって訳じゃあねえからな」けどな、と男は続ける。「この場では特に関係ない事でもある。てめえは唯じゃ殺さねえ、償いはさせる。てめえ自身が負う痛みでよ」
男は仲間の1人、ハルバードを片手に持った男に目配せする。
「おい」
「やるのか? 相手は女なんだが?」
「関係ねえ、それに少しでも情報を集めなきゃならない。一体誰の差し金であるかってな」
「ま、仕方ねえな」了承した様子の男は倒れたままのイビルアイへと視線を移して言う。「そう言う事になる。悪く思うなよ。王国の冒険者さんよ」
男はイビルアイの左腕を掴むと、その手首を左足で踏みつける、そして手に持ったハルバード、その槍先を器用に彼女の小指、その第1関節へと押し当て、斧の部分に足をかけた。それを確認した上で、男はイビルアイへと告げる。
「なあ、知ってるか? 指ってのは、
「それが……どうした?」
彼女はあくまで、その強気な態度を崩さない。この時すでに彼女の体は帝国兵の手により、抑えられており、いかに彼女であろうと、その脱出は難しいものであった。
ならば、魔法はどうだろうか? と思考を続けて、彼女は再び笑う。
(ふん、結構やる奴らだったな)
何とか、その大半を落とした騎兵達であるが、自分もまた随分と魔力を使ってしまったらしい。後半における、弓兵達の集中砲火もまた、激しいものであった。
(後は、数の利というものか)
1人で20人近くを倒してきたのだ。別に後悔はない、仮に見逃したとして、その場合は、彼らは間違いなく彼女達へと矢を放ち、その命を取ろうとしたのであろうから。
(なんでだろうな?)
彼女はこんな時だというのに、今の状況が生まれた理由を探っていた。そしてすぐに答えは出た。
(やっぱり、あいつだな)
あの猪突猛進という言葉を体現した彼女がここで、帝国と出会ってしまったと言うのが大きいのだろう。彼女はあの王女と仲が良い。そして、帝国の皇帝はその彼女を嫌っていて、それから、例年の戦争、王国の貴族達はまだやれると思っているらしい。が。
(あいつも言っていたしな)
王都にある冒険者組合、その長の言葉であった。遅くても3年後、速ければ今年、王国は帝国に敗北することであろうという事。もしも、帝国の支配下になれば、以前のように冒険者としての活動を行う事は困難となることであろう。だからこそ、他の組合への移動を視野に入れておけという事であった。
その言葉に彼女は怒りを燃やしたが、長はどこ吹く風といった様子であった。彼にとっては、どこでその仕事を、誰の下でやると言う拘りはないらしく。
『この際だから言っておく。冒険者組合は国家のあり方に関与をするつもりはなく、仮に明日、王国が帝国になっていたとしても、その結果、死んだ者達がいたとしても特に何かするつもりはない。お前たちは以前から問題行動が目立っている。良いか? 次、何かやらかしたら確実に罰則を追ってもらう。以上だ』
本来の指名依頼である、この依頼を受ける前に受けた話であった為に、もしも生きて帰ったとしても処罰は免れないことであろう。
(あの馬鹿は)
何とか王女を介せばどうにかなると思っているかもしれないが、あの長とも付き合いは長く、彼がそんなに甘い性格ではないと知っている。
(どうなるだろうな)
思わずその処罰の内容に思いをはせてしまう。プレートの剥奪? だとしたら、前代未聞であろう。英雄に近づいた自分たちがそうなった時、世間はどんな目で見てくるだろうか。一番気になるのはやっぱり、彼女の反応であろう。それとも、無期限の活動停止処分? これもそうなった時、どうなるか非常に気になる内容である。
そして、彼女は再びその仮面の下で笑う。こうして、その時の事を思い浮かべているという事はなんだかんだで自分はあの場所が気に入っているのだ。ならばと彼女は男へと語りかける。
「ああ、そうだな。やってみるといいさ」
「そうかよ。分かったよ」男は今にも彼女の指を切断しようと構えている男へと目配せして、そして彼女へと言葉を投げかける。「んじゃ、拷問の始まりだ。最初の質問だ。お前たちにここの事を教えたのは誰だ?」
「………………」
「だんまりか、そうか、そう言う事でいいんだよな?」
「………………」
「やれ」
支持を受けた男はかけた足へと力を入れ、そして、肉を絶つ音、しかし、そこまで大きくないものが周囲へと響き、次には彼女の指から大量の血が溢れ、そして彼女の絶叫が響いた。
「がああああああ!!! ~~~!!」
それは、彼女自身の心が弱いという事ではなく、いわば、肉体的本能が上げる悲鳴であった。
彼女の孤独な戦いは続く。
「おい、な、何があったんだ?」
それが、目を覚ました相棒の言葉であった。それに対して、もう1人の兵士も声を返す。
「分かんねえよ。気付けばそうなっていたんだもんな」
その男2人、彼らが請け負っていたのは、この遺跡の正面階段、その入り口における見張りであった。が、いつの間にか気を失っていたらしい。
「やべえな、最近忙しすぎて碌に眠れてなかったからか?」
「かもしれねえな。不味いな、交代の時間はどうなっている?」
そんなやり取りをする彼らの耳に大きく何かを叩きつけ続ける音が響く。
「? 何だ? この音は?」
それは、情報から断続的に響いて来るようであり、そしてだんだんと大きくもなってきている。
「何か、転がってきている?」
そこで、2人して階段の上方を見上げてみれば、それは直ぐに視界に収まった。何かが高速で転がり落ちてくる様であり、動転した男たちは素っ頓狂な声を張り上げる。
「おわああああ!」
「なんだあああ!」
急いで、その場を離れようとするが、それよりも早く物体が転がってくるのが先であり、2人は左右に吹き飛ばされ、再び気を失った。
転がってきた塊はその過程で2つへと割れ、それは人の形をしているものであった。
「くそ、最初のとこまで転がり落ちるとはな」
立ち上がった青紫色にも見える鎧を身に付けたガガーランがそう言う。
「………………」
一方で、黒い鎧を身に付けた不動と呼ばれた騎士は無言であった。
「んで、どうするよ。まだやるか?」
拳を構えて彼女はそう言う。武器は落下する際にどこかへと落としてしまって手元にはないが、それでも諦める理由にはならなかった。そんな彼女に対して、騎士は一度周囲を見回してみると、静かに言葉にする。
「お前の負けだ」
「ああ? 何を言ってやがる」
思わずそう返してしまった彼女であったが、その耳に届く音を聞いて納得した、彼が言わんとしている事に。それはひづめが地面を蹴る音、それもかなりの数であった。
(ち、そう言う事かよ)
現れたのは騎兵達であった。それは、上層でラキュース達を出迎えた鷲馬ではなく、馬に乗った騎兵達であり、その数は15、彼らは素早く戦士である彼女を取り囲んで見せると、全員でその首に向けてランスを向けて見せると、その様は丁度真上から見た時、まるで、花を描いているように見事な足並みの揃いぶりであった。
その部隊のまとめ役らしき兵士が彼女へと声をかける。それは、諌めるような声音であった。
「王国冒険者チーム『蒼の薔薇』所属のガガーラン殿とお見受けする。直ちに降伏されたし」
首に押し当てられたランスの穂先が彼女の鍛えに鍛えた肉体、その首の部分の皮膚を破り、少量の血を垂らし、滝のミニチュアを15本作ってみせ、それが同時に彼女への警告であった。ここで言葉に従わなければこのランスは更に食い込み、貴様の命を奪って見せると。
(はあ、詰んでるって奴かね)
「先に聞いておきてえ、俺はどうなる」
「拷問を行いまして、情報を引き出したの後、牢屋にてその一生を終えて頂きます」
答えた兵士の声は冷たいものであった。それが既に確定事項であると言いたげに、その言葉に彼女は得に背が冷たくなるなんて事はなかった。
「おいおい、それじゃ、俺は此処までって事になるのか?」
「そうなります。此処の件はどうしても王国へと持ち帰らせる訳にはいかないので」
「そうかよ」
ガガーランはこの状況から何とか逆転する方法はないかと考えてみる。しかし、何も思い浮かばなかった。既に自身の首へと死が迫っているのだ。小さな痛みがそれを訴えている。
(はあ、此処までかね)
彼女は覚悟を決め、少しでもあがこうとしたとこで、周囲に異変が起きた。突然、騎兵達が騎獣ごと崩れ落ちたのであり、それは先程まで戦闘を続けていた騎士にしても同じことであった。
「おいおい、今度は何だよ……」
そう言う、彼女の意識もそこで途絶えた。
「これで、この場は問題なし、と状況は、どうするかね?」
倒れた彼女たちの元へと新たに現れたのは2人であった。2人とも似たようなスーツを身に付けており、その顔には見た者10人中、10人が怯える事間違いなしであろう仮面を身に付けた男たちであった。
「単に、相打ち、という事で宜しいのではないでしょうか?」
怒ったように声を上げるのは、まるで鬼を思わせる仮面をつけた方であり、その声は少年のものであった。
「何だよ? まだ怒っているのか? 酒呑童子よ」
「当り前です」酒呑童子と呼ばれた少年? は男へと視線を向け、言葉を続ける。「まさか、此処までの戦闘になるなんて、ベルゼブブ、貴方はこうなる事が分かっていたのではないですか?」
その視線は暗に男を責めていた。この人物はこういった事を喜んでも可笑しくなとも言っているようであり、男は肩をすくめてみせる。
「んな訳ねえだろ。まさか、あの貴族剣士様が突っ込むとは思いもしなかったし、もっと言えば、先客がいた事にもびっくりだよ」
「……どうでしょうかね」
鬼面を付けた少年の言葉に流石にベルゼブブと呼ばれた男も何か思う所があったのか、問いかける。
「前々から思っていたが、どうにも俺はお前に嫌われているらしいな」
「そうですね。貴方は嫌いです。それに、あの方の事も少し苦手ではあります」
「なんで、そうなんだろうな。あいつと、今も馬車で待機しているあの方はたまに喧嘩になるって、話題ではあるけど」
別にそれ自体は問題ではないらしい。と男は話を締める。そして、と口を開く。
「ひとまず、今回の仕事は何だ? 言ってみろ」
「馬鹿にしているんですか?」
「違う違う。半分はそうだが、もう半分は確認の為だ」
(何ですか、その言い方は)
やっぱり、自分はこの男が嫌いであると、鬼面を付けた少年は口を開く。
「今回のこの出来事、それで命を落とす者をゼロにしろ。何が何でも、でしょう」
「ああ、その通りだ」
先に此処に来ている彼女からの連絡であった。確かに、この場にいる者達は弱く、計画の為と考えると首を傾げてしまいそうになるが、それでもこの世界における水準が高い事は確かなようであり、殺すには惜しいという事と。此処で、帝国を相手にするつもりは元からなかったと言うのもある。この国に関してはまだ情報が少ない。
「と、なると」男は倒れたガガーランへと視線を向け、続ける。「あれは、また別の所に移さねえといけねえな」
「なら、自分がやります。ベルゼブブにやらせると、分解されてしまいそうなので」
「本当に信頼されてないな、それならもう辞めたって言ってるんだが」
「信用出来ません」
鬼面を付けた少年はそう冷たく言い放ち、戦士のとこへと歩いて見せると、事もなげに彼女を横抱きに抱え、次に空間に穴をあけたと思うと、その中へ彼女を移して、戻ってくる。
「これで、適当な所で出すとしましょう」
「そうだな、それが良い」
それから、男は肩に背負った袋を地面に置き、その中から紫色の液体が入った瓶を手に取ると、それを倒れている帝国の騎士達へと振りまき、スクロールを1つ取り出して見せて、それを宙へと放り投げる。それは、瞬時に灰となった。
「よしよし、これで良し、と」
今使用したのは、いわば新作のスクロールであり、そこに込められている魔法は彼らを決まった時間、眠りにつかせて、決まった時刻に起こすというものである。彼らはこれで、問題ないだろう。
「では、行くとしようか。せっかくだ。色々やっておきたいしな」
「何ですか? その手に持った器具は」
訝しむ声に男は笑いながら、それを少し振って答えてみせる。
「何、ちょっとした工作器械だ」
「そうですか」
そのまま2人は正面の階段を上り初め、まるでしりとりをするように仕事の話を続ける。
「んじゃ、ボロボロの死体を、そこそこの重体にして」
「その近くにポーション瓶を置く」
「んでもって、あのお転婆なお嬢様方に紳士の皆さんを回収っと」
「ついでに、この遺跡にある物は全て自分たちが頂きます」
「そうだな、それも重要だ」
かの主の計画の為に、その為にここにある文献に、マジックアイテム、それらは全て、自分たちが頂く。それはどうしても曲げられない事でもあった。
そう、これは誰が想定した事態でもなかった。偶然に偶然が重なり、引き起こされた事態。それがどこへ向かうかは誰にも予測が出来ない事でもあった。
初め、コメディで行ければと思っていたのに、いつの間にかシリアスになってしまいました。それに合わせて、もうしばらく、この話は続くと思います。
重ね重ね迷惑をおかけしますが、お付き合いの程、お願いします。