オーバーロード~遥かなる頂を目指して~   作:作倉延世

62 / 63
第28話 大地凪ぐ牙(グランド・シャーク)

 近衛隊所属の若者は歯ぎしりする。今の状況に不満を持ってだ。どうして自分がこんな後方にいなくてはならないかと。

(ええい、私は伯爵家の出だぞ!?)

 彼の家は6大貴族が一角であるぺスペア侯爵の家と親しく現当主である彼を次の国王へと推薦する家であり、その縁もあり彼はこの行事に参加する事となった。彼は伯爵家の3男坊であり、確かに座学に剣術等王国でも高い水準の教養を受けてはいたが、それでも3男というだけで彼の立場というものは低いものであった。

 家を継ぐのは長男であり、次男は継承者である長男に何かあった時の為の予備、そして彼は更にその次男の予備であった。

 この事実が彼にとっては、何よりも耐え難い事であった。たかが、生まれた順番で自らの人生が決まってしまっているのであるから。

(ふざけるな。私はそんな物ではない)

 家督を継ぐ為、というより本当に自身の存在はあの家にとっては保険でしかないのだ。それでも、家を継げる可能性だってゼロではない為に親の望み通りの教育を受けてきた。このまま何もなく人生を歩めば、自分は城勤めの兵になる、させられる事であろう。

(そんな事、認められるはずがない)

 はっきり言って、兵の給付金というものは貴族当主としての収入に比べれば本当に少ない。実際の所、王国全体で見れば十分高給取りには入るが、そんな物貴族である彼に見ればはした金でしかない。何より財産が、屋敷が、土地が手に入らない事が我慢ならない。

 よって、彼だって何とかしようと彼なりに動いていたが、結果は振るわないものであった。そもそも、王国では「家督は長子、それも男児が継ぐ物」という考えが一般的であり、常識であり認識であったから。その為、彼がいくらコネを作ろうとしても、誰も相手にはしない。もしも、彼の兄たちに問題があれば多少はよかったかもしれないが、残念な事に彼の兄達――あくまで貴族としてだ――は非常に世渡りが上手い者達であり、どう頑張ってもその方向で彼が兄達に対抗する事は出来なかった。

(――確か)

 その事で以前声をかけてきた貴族の事を思い出す。彼も3男であり、家督を継げる見込みはほぼないと言う。そんな彼は自分に他にも似た境遇の者達を集めて新たな派閥を、貴族でも王でもない第3の派閥を作ろうと自分に持ち掛けて来たのだ。と、言ってもその説明をしたのはその貴族ではなく、彼の代理人という女性であったが。

(あの女は確かにやり手だろうな、それに……)

 かなりの好みであったと思い出す。彼女は年齢こそ女性としての適齢をいってはいるが、それを差し引いても魅力的な体の持ち主であった。何というか、人生を積んできた者特有の艶麗さを感じさせる相手であり、自分は若い女性よりも、彼女のような人間の方が好みであったし、彼女と床を共に出来る可能性があるというだけでその提案に乗りそうになってしまったが、何とか堪えた。

 あの手の女性というのは、非常にしたたかであり下手をすれば、自分が食われてしまうから。しかし、他に良案が出る訳でもなく、好転出来ている訳でもない。

 だからこそ今回の件だって重要であるのだ。何とか姫君の印象に残るように働けば、彼女に、人気だけはある世間知らずなお姫様に好感を抱いてもらえれば家督争いにおいて、有利な一手となるはずであるが、それも先の失敗で難しくなってしまった。

(まだだ、私は一兵士で人生を終えるつもりはない)

 限りない富を手に入れる為に出来る事はあるはずである。例えば、前を走っている者達。冒険者にワーカー達、彼は別に興味はないが、彼女達がかなりの美人ぞろいであるのは確かなようであり、何とか彼女達を取り込めないかと、自らが貰っている金銭等と相談を始める。

(兄上達にだって弱点はある)

 兄共はめっぽう女に弱く、特に長兄は若い娘を好んでいるのだ。ワーカー所属の魔法詠唱者等はそんな兄の好みに最高に合っているはずであるのだ。あの人物は少女趣味であるから。

 それだけではない。例の派閥の話だってこれが終わればもう一度検討しても良いかもしれない。当然、茨の道になるであろうがそれ位こなさなくては己が野望は叶うまい。

(大変だろうが、やってやる)

 上手く事を運んで家督を継ぐ、次いで王族と上手くコネクションを作り、6大貴族にも引けを取らない権力を手にして、最後にあの女性を自分の妻とする。その時までに彼女の手綱も上手く握らなくてはならない。荒唐無稽にも程がある計画を決意して、彼は違和感に気付いた。

(蹄の音がしない……?)

 自分は後ろから3番目であり、後から2人が続いているはずであるのだが。先程から全くその気配がしないのだ。道に迷った? いいや、それはあり得ない。あのおかしな霧は抜けており、視界は晴れている。あるいは、慣れない騎獣の操作をしくじって、転んだのだろうか? いずれにしても馬鹿な奴らであるし、自分が悲しむ必要も悼む必要もない。むしろ、今回の行事における活躍の場を争う相手が減った事を有難く思う。

「まったく、何をやっているんだか」

 先程、馬車が横転した所を何も出来ずに唯見送っていた事は棚に上げ、彼は嘲笑して後ろを振り返る。しかし、その顔は次の瞬間、青くなる。

「何だ? あれは?」

 彼の目に映ったのは、不自然な光景であった。見えるのは地面から生えた一本の腕、その手は満開になった花のように広げられており、まるで溺れかけた人間が助けを求めているようであった。問題はそこではない。その手が自分を追走しているようであったから。手の周囲は、まるで水のように波打っており、その非現実的な光景が更に彼を恐怖させる。

 現在、己はスレイプニールに跨って大地を駆けている。身に吹く風は心地よく、鎧で包んだ体を冷やしてくれる。むしろ冷え過ぎてしまい、温かい飲み物が欲しくなってしまう位に。それ程の速度で走っているのに、その手は全く同じ速度で自分を追いかけて来ているのだ。

「いや、それより、も。あの、手は……」

 それも酷く見覚えがあるものであった。見覚えのある防具に身を包まれたその手、それは現在の自分も同じものを身に着けているものであった。

 つまり――

「あれは、あれは……」

 その先を言う事は出来なかった。それを口にしてしまえば、認めてしまうように思ってしまうから。体中の血の気が引いてゆく、体が更に冷えてくる。何か得体のしれないものが自分の後ろにいるのだ。

「まずい、まずいまずい!」

 彼は急いで足でスレイプニールの腹を叩いてやり、速度を上げるように促す。しかし、それ以上速度が上がる事はなかった。

「何をやっている貴様! 働かなければ、食用にしてしまうぞ!」

 脅しをかけるが、それでも全く速度が変わる事はない。むしろ疲れが出ているようであった。それで、彼も遅まきながら気付、気付かされた。この騎獣は自分よりも先に後ろから来ている謎の存在に気付いていたのだ。その為に、必死に走っていたのだ。それでも、その存在は近づいて来ている。

「馬鹿な! スレイプニールより早く動ける存在なんてそういないはずだ!」

 その事実を認めたくなくて、あるいは助けを呼ぶように彼は声を荒げる。しかし、その声が前方に届く様子はない。再開した行軍において、彼がそれだけ後ろに配置されていたという事であり、それを決めたレエブン候に彼は恨み言を叫ぶが、それだってもう彼に届く事もない。

「ふざけるな! 私がここで終わって良いはずがない!」

 手綱を振り、必死に騎獣の腹を蹴り続けるが、状況は変わらない。やがて手は彼の隣を並走する。初めは不気味であったその手が違う意味に彼には見えてくる。まるで、自分を奈落へと引き込もうとしているようであり、彼は呼吸する事を忘れてしまう。

「!!!」

 そして、何かが地面から飛び出した。彼は最後に大きな音を耳にする。それは、自らが何かに押しつぶされ、人から唯の肉塊になるものであった。

 

 

「???」

 荒れ地を進む国王一行。その中心、国王、第3王女、大貴族が乗った馬車の後ろを走るレヴィアノールは一度後ろへと顔を向ける。

「どうかしたのレヴィア?」

 そんな彼女が気になり、隣を走っていたナーベラルは声をかける。

「ん~。何か後ろが騒がしいみたいなのよね」

「ちょっと不穏な事を言わないで頂戴。唯でさえ、アインズ様(モモンさん)がいないんだから」

「あ~ごめんなさい。気のせいだと良いんだけどね」

 現在、彼女達にフォーサイトの2人が国王達が乗る馬車の護衛を務めており、開始時同様その前方と後方に馬車が一台ずつついており、その周囲を近衛隊の者達が固めているのだ。

「まあ、モモンさん抜きでもしっかりしないとね。以前の事は悪いと思っているわ」

「別に貴方が謝る必要はないわ。あれは、私の不手際であるし」

 そう、主がいない所でもしっかり振舞う必要がある。そして、警護依頼となるとナーベラルは以前主のいない所で大きな失態を演じてしまっていたから。故にそれを知るレヴィアノールもそう言うのであり、ナーベラルは彼女の気遣いに感謝しながらも、問題ないと返す。

 もう、大きな失敗はしないと身構えているが、それでも何があるか分からない。

「余り先の事を考えても仕方ないわね、少しゴルトロンさん達と話してくるわ」

「はいはい、いってら~。こっちはあたしが見ておくから」

 手を振るレヴィアノールに軽く会釈をして、ナーベラルは前方へと進む。護衛対象である馬車を抜き去り、その際に御者である騎士に頭を下げ、相手も慌てて頭を下げ返してくるが、特に気にする必要はないと返して彼女は更に前に進み、体格の良い神官に、小柄な魔法詠唱者へと声をかける。威圧的にならないように笑顔を心掛けながら。

「ゴルトロンさん、フルトさん、少し良いですか?」

「これはナーベさん。どうしましたか?」

 言葉を返すのは神官の方であり、魔法詠唱者の方は軽く頭を下げるだけであった。必要以上に口を開かないタイプであるらしく、別にそれ自体を不愉快に思うことはなかった。姉妹や、墳墓に努める一般メイドにだって、そう言った娘はいる訳であったし、冒険者として活動をしている際にもそう言った手合いの相手を務めて来たから。この程度の事で腹を立てていては、とてもやってはいけないから。

「はい、この後の予定を確認したくて来ました」

「この後って、確か……」

 ロバ―デイクは予めレエブン候から受けた説明を思い出しながら言葉を続ける。現在、この一行が進んでいるのは、王都より南西の方向、大都市であるエ・レエブルとエ・ぺスペルの中間地帯を目指しているとも言える所であった。勿論、街道よりずれている為に道は悪いを通り越して酷いものであり、走る度に衝撃が臀部へと伝わり、今の所は問題ないがもうしばらくすれば、痛みで座るのも億劫になってしまうかもしれない。

 それに周囲を見回してみれば、小規模であるが森だって見える。そして、レエブン候の話によればこの先にやや複雑な地形が広がっていると言う。そこは、岩が転がり、土地の高低も激しく崖が多い所であり、普段は人が寄り付かないらしく、そこが一時期の休憩場所となる予定との事であった。

「そこで、モモンさんに、ヘッケラン達と合流予定との事でしたね」

「はい、そこまで後20分と言った所でしょうか?」

「私達は普段、この辺りに来ることがありませんのでそこまで詳しくもないですが。レエブン候の話ですとそのはずでしたね」

「そうでしたね、やはりこのスレイプニールというものは凄いのですね」

 改めてナーベラルはそう感じていた。彼女なりの素直な感想であった。実際、八足馬の足は速く。時間は出発してから、3時間と15分程しか立っていないというのに、既に距離はかなり進んでいる。

 それも当然と言えば、当然であった。レエブン候は元よりその速度で城塞都市を目指しているのであり、彼が考える計画に則るのであれば、王都からエ・ぺスペル付近までは2日で行くつもりであるのだから。

「ええ、本当ですよ。この一団に簡単に追いつける者もいなければ、襲える者もいませんよ」笑いながら続けるゴルトロンであったが、その顔は曇る。「常識的に考えれば、ですが」

「そう、ですね」

 彼が言いたい事が分かってしまう為にナーベラルも表情を暗くする。それだけの速度で走れるスレイプニールに攻撃をあてて来た者がいる為に、もう安全とは言えなくなってしまっているから。

「――ヘッケランとイミーナは負けない」

 そう言うのは、周囲を警戒している魔法詠唱者であった。彼女は小さな頭を常に回しており、注意深く辺りを伺っている様であり、その目には空を思わせる青色をした瞳は藍色に光っており、何かしらの技能を使っているようであった。

「アルシェさん。余り、無理は」

「――大丈夫」

 神官が心配するように声をかけるが、魔法詠唱者は一言だけ言葉を返す。が、直ぐに新たに言葉を紡ぐ。それは、彼女なりに譲れないものであるらしい。

「――ヘッケラン達も頑張っている。私だけ楽をする訳にはいかない」

「それだったら、何もしていない私の立場はどうなるんでしょうか?」

「――ロバーは回復係だから何もしないのは当然。むしろ怪我をしないように注意して欲しい」

「そうですか……」

 彼女の意思は固まっているようで、ありしばらく警戒を止める事はしないらしい。

「あの、フルトさんが使っているのって」

 ナーベラルは出来る限り失礼にならようにと心がけながら問いかける。その事であれば、特に気を遣わなくてはならないものである事を知っていたので。

「はい、タレントですよ」

 しかし、神官は軽く答える。その言葉を聞いた瞬間、ナーベラルは姿勢を崩しそうになるが何とか堪える。神経を尖らせていたと言うのにそれが全て無駄であったと言われたような気がして。

「あの……よろしいんですか? そんな簡単に言ってしまって」

 彼女にしては珍しく困ったような表情を浮かべて神官へと言葉を返す。

「別にモモンさん達のチームであれば、不用意に言ったりしないでしょう。ですよねアルシェさん?」

 彼は念の為に魔法詠唱者へと確認を取る。彼らは現在、横に並んだ状態で走っており左に彼が、中央にナーベがおり、彼女を挟む形で彼女がいるのであるから。実際、フォーサイト側から見てもモモン一行というのは、評価が高いのであり好感を持てるのだ。まだ出会って半日は立っていないが、ここまでのやり取りで信頼できるものであると彼なりに考えての事であった。現に、当人である彼女に確認をとっても、彼女は短く答えるのみであった。

「――別に問題はない」

 その言葉は冷たく聞こえ、初対面であったり彼女の事をよく知らない者が聞けば、少々思うところはあるかもしれない。しかし、彼には分かっている。簡素な答えであっても、それだけで彼女もまた彼らにある程度は心を開いているのだと。そもそも、彼女が本当に拒絶するとすれば、全く口を開かなくなるのであるから。

 人格面に大問題がある天才剣士等がいい例だ。

 その時の光景を脳裏に浮かべながら、ロバ―デイクはナーベラルへと彼女が持つタレントについての説明を行う。現在、双方のチームの前衛兼主力がいない状態であり、もしもこんな状況でモンスター等とぶつかれば、臨時でチームを組んで戦う事になるかもしれない。故に、共有できる事はしておいた方が良いのだ。

「成程、相手が使える魔法の位階を知る事が出来るというものですか」

 そう、感想を返しながらもナーベラルは内心で汗をかいていた。と、いうのもこの小柄な魔法詠唱者が使えるタレントというものが自分達に対してもかなり有効であるのだから。

 アルシェ・イーブ・リイル・フルト。そんな彼女が持つ生まれながらの異能(タレント)は、看破の魔眼と帝国(向こう)では呼ばれているらしい。

 この世界の生き物は例えどんなものであっても、魔力というものを持っているらしく。彼女の目はそれを探知する事が出来るらしく更に魔力系魔法詠唱者に限れば、どれ程の位階まで使用できるかまで分かると言うのである。

(聞けば、聞くほど恐ろしいわね)

 そして、次に生まれるのは主に対する尊敬の念であった。現在、自分達はその辺りの対策だってしっかりと編んでいたからだ。それだって、元を辿れば主の発案であるのだ。本来であれば、自分達と同じ存在に対するアイデアであったが、そのおかげで何とかバレずに済んでいるのも確かである。

 彼女は一応、その対策が生きているか確かめる為に魔法詠唱者へと声をかける。

「フルトさん。私の魔法力等も分かるのですか?」

(……)呼ばれた彼女は無言でナーベラルの方へと首を回す。別に気分を害するという事はない。自分のタレントの話となれば、必ずと言って良いほど起きる展開であったから慣れっこというものであり、彼女を見る。(――やはり、高い)

 それが、彼女の感想であった。この魔法詠唱者が持つ魔力は高く。同じ第3位階の使い手と言っても、自分よりもずっと高い素質の持ち主であるのは確かなようである。

「――はい。ナーベ様がお使いになれるのは第3位階までのようですが、きっともっと高い位階魔法を使えるようになるのも時間の問題ではないでしょうか」

「アルシェさん、それは本当ですか?」

 彼女の言葉に当人よりも食いついたのは神官であった。それだけ、今の発言というのは重いものであったから。

「――私は適当な事は口にしない」

「そうですか。やはり、モモンさん達は英雄なのですね。正真正銘の」

 彼らの驚きようにナーベラルは微妙に感じてしまう。この世界であれば、第3位階が使えればそれだけで英雄と称されるのであるから。ならばそれ以上が使えるとなれば、最早伝説級のお話となってしまうらしい。しかし、元からそれ以上の魔法が使える身となれば別に嬉しくも何も、それ所か何も思わないのであるから。

 手が動かせることを褒められて喜ぶ健康な人間がいるであろうか? それと似た感覚であった。

 何にしても彼女のタレントによって、自分達の正体が明かされるということはなさそうである。

 そして現在彼女が行っているのは、自身のタレントを応用した使い方であった。生物が持つ魔法力を見る事が出来るとなれば、こんな使い方も出来るらしい。

「しかし、それではフルトさんの負担が大きいのでは?」

「そうなんですよね」

 一通り、アルシェのタレントを知ったナーベラルがそう言えば、ロバ―デイクはため息を付く。タレントにしたって使用すれば消耗する訳であるし、今の彼女こそ特に問題は起きていないように見えるが、それでも不安な尽きない。

 彼らの案ずる視線を受けてなお、彼女は静かに答える。

「――大丈夫。後、2分ほど続けたら休憩に入るつもりである」

「なら、良いんですけどね」

 再び大きな息を吹く神官を横目に見ながら、ナーベラルは質問を続ける。

「どうして、そこまでされるんですか? 周囲の事であれば、私にレヴィアも見ておきますので」

 彼女なりにアルシェを心配しての事であった。本来身内以外であれば、特に気にもかけない彼女がそうするのはタレントしかり、位階魔法関連でこの魔法詠唱者を評価しての事だったからかもしれないし……

 そんな言葉をかけてくれる彼女。普段、自身の姉の様に振舞っている彼女には悪いが、そんな彼女よりもずっと美人なナーベの気遣い自体には感謝しつつもアルシェも譲れないとばかりに言葉を返す。

「――さっきも言った。ヘッケランとイミーナも戦っているのに、私だけ何もしないなんてあり得ない」

 そう言って、再び周囲を見る彼女であったが、不意に頭に熱を感じて不思議に思う。暖かなものが広がっているようであった。

(???)

 そして2人の方を向いて、疑問を口にする。

「――あの、ナーベ様?」

「何でしょうかフルトさん?」

 どうやら、彼女は無意識に行っているらしい。頭部に感じる感触をこそばゆく感じながら、彼女にしては珍しくやや顔を崩しながら言う。

「――どうして、私の頭に手を?」

「はい? あ!? ごめんなさい! つい」

 言われてようやくナーベラルも気付いた。どうやらいつの間にか彼女の頭に右手を置いてしまっていたらしい。それが出来る程には接近していたのであり、もっと言えばそんな事やっている所ではない。乗馬中に手を不用意に伸ばすのは危険な行為である。現代で言えば、車の片手運転を高速道路で走っている最中にやるようなものである。余程腕に自身がなければ出来ない芸当でもある。が、彼女に関して言うのであれば、特に問題もないかもしれない。

 それよりも彼女にとって問題であるのは……

「あっと、そうですね」

 今の行動をどう説明するかだ。アルシェは訝しげな視線を向けてくるし、神官も首を傾げている。当たり前だろう。今の自分がやったのはそれだけ非常識な事であるから。衝動的にやってしまったと言えばそうであるし、その理由だって思い当たる。物静かに少ない口数に、人形のような雰囲気を持つ少女を装飾品で片眼を隠した妹と重ねてしまったらしい。

(いけないわね。つい、いつもの癖で)

 彼女と会った時は頭を撫でてやるのが日課となっている。最近は他の妹にもやってあげている。彼女から聞いたらしく、自分達もそうして欲しいというのである。断る理由もないのでそうしてやっている。

 その事を姉の1人に言えば、不満だらけの答えが返って来たのであるから。

『何でナーちゃんばかり! 私だって甘やかしてあげていると言うのにっす!』

(貴方の場合は……ね。もう自業自得だと思うわよ)

 あの人物は思い浮かべれば確実に心が疲労してしまう。それだけ存在感だけはある人物なのだろう。

「故郷の方にフルトさんみたいな子がいますので、その時の癖でつい。気を悪くされたら、申し訳ございません」

 まさか、自分に妹がいるなんて情報を主の許しも得ずに出す訳にもいかないので、上手く誤魔化すようにそう言う。

「そうでしたか。ナーベさんにも妹のような娘がいらっしゃるんですね」

「――どこも似たようなもの」

 その答えを聞いて、2人は納得した様でありナーベラルは胸を撫でおろす。と、いうのも彼らにしても別に珍しい話でもなかったからだ。

 アインズが元いた世界であれば、血の繋がりが重視されるがこの世界ではその限りではない。アルシェにしても別に頭を撫でられるのは珍しい事ではなかったから。共にいる神官は勿論であるが、今は別行動中の戦士にしても、野伏にしても自分をそう言った風に扱ってくるのであるから。

 彼女自身は別に悪い気はしていない。それ所か、彼らの事を兄や姉のように思っているから。

 彼らの反応を見て、ナーベラルは早くこの話を変えてしまおうと更に話題を振る。

「皆様、とても仲が良いんですね。当たり前と言えばそうですけど」

 以前、一時期共に依頼をした彼らも言っていたではないか。命を預けあうのであるから、そうである事が当たり前であると。

「そうですね。ワーカーと言えど、生死を共にする仲には変わりはありませんから」

「――そう。でも」

 彼女は顔をしかめた。明らかな変化にナーベラルも思わず身構えてしまう。

「――違う奴もいる」

「アルシェさん、今はその話は良いでしょう」

「――失礼、今のは話は忘れて欲しい」

「はい、そう言う事にしておきます」

 口ではそう返しながらも、ナーベラルは今の話をしっかり記憶しておこうと、時間が取れればメモを取っておこうと心に決める。此処までのやり取りでこの小柄な魔法詠唱者が妹同様、優しい子である事ははっきりとした。フォーサイト(彼らの)の雰囲気から読み取れるし、仕事に対する姿勢だって真面目いっぺんとうであるから。先程自分が彼女の頭を撫でてしまったのは、やはり彼女を(シズ)と重ねてしまったからだと認めて。

 ならば、己の勘を信じる。それだけの少女が嫌悪した表情をする相手ということは、ゆくゆくは主の障害になりかねないのであるから。

「と、話が長引いてしまいましたね。フルトさん、くれぐれも無理はしないでください。貴方もいざという時の戦力なんですから」

「――勿論、私だって戦う」

「サポートに回復は私に任せてもらいましょう」

「ええ、その時はお願いしますね」

 主力陣が居ないとなっても、依頼を受けている以上全力で護衛対象を護らなくてはならない。いざという時の為に、更に打ち合わせをしている彼女達の耳に叫び声が聞こえる。

「大変よナーベ! 急いでレエブン候に確認を取って頂戴!」

 見れば、血相を変えている(覆面をしている為に本当にそうであるかは分からない)レヴィアノールがスレイプニールを速めて来た所であった。

 

 

 ナーベラルを見送った後、レヴィアノールは手綱を握りながら空を見上げていた。

(どうしたもんかしらね)

 彼女もまたこれからの事を彼女なりに思考していた。今回の件における自分達の目的。依頼を達成する事は勿論であるが、同時に新たなコネクションを作る。その最もはやはり王族達である。

(と、言ってもね)

 余り気乗りはしなかった。初めに見た印象。国王は人は良さそうであるが、その良さが返ってこの国を更に危機に陥らせているように自分は思ってしまったから。

(デミウルゴス様に意見を求めるべき? でも、それはしたくないわね~)

 やはり自分はあの人物が苦手であると改めて再認識させられる。これが、至高の御方にそうあれとされたのであれば、いくら創造主であっても恨み言を言いたくなってしまいそうである。

(ま、今は護衛の方に集中しなくてはね)

 考えを変えようにも王族達の事は中々頭を離れない。特に第3王女等もそうであった。無邪気であり、可憐であり――あくまで、この世界の水準に当てはめるのであればだ――更に頭も良いという噂である。

(でも、なんか阿保そうに見えるのよね~)

 彼女はとても口に出来ない事を考える。仮に、これを言葉にしてしまい。王国関係者、特に城に近い者等が聞けば、発言者は即座に首をはねられる。

 それでも、それがレヴィアノールが王女を見た素直な第1印象であった。世の中の事を本当に理解していないような箱入り娘。そういった事であれば、あの階層守護者と良い勝負かもしれないと。

(それだって、以前までの話だけどね)

 今の彼女は違うし、それは同僚である彼の話を聞いても間違いはないようである。そんな彼女達も王都に居たはずであるが、偶然会うなんて事はなかった。それだけ、あそこが広いという事であろう。

(後は、ワーカー達よね~)

 主は出来る事なら彼らとも親しくなり、帝国の実情を聞き出すつもりのようであった。一応、墳墓の方でも働きかけており、現在帝国には彼女が向かっており、情報を集めているはずであるが、どういった内容であるか知っているのは、限られた者達であり主だって全て聞いている訳ではないらしい。

(ん~~。あ、後、ナーベラルの事もどうにかしてあげないとね)

 そうしなければあいつが五月蠅いしと彼女は1分程更に頭を回して、そしてその耳にまた何か聞こえたように感じる。

(やっぱり、後ろが騒がしいわね)

 ナーベラルの方は何も感じないようであったけど、これも当然と言えば当然だ。彼女は素質のほぼ全てを魔法技能へと割り振っているのであり、身体能力であれば墳墓では平均よりやや下に入るほうであるから。種族特性にしたって、彼女は姿を自在に変えられるドッペルゲンガーであるというのに、作る事が出来る姿は現在取っている女性としての姿だけだと言うのであるから。

 それだって、以前までの話であり彼女自身が努力すれば更に色々な姿になれる可能性だってある。が、その時間は取れそうにないらしいし、彼女自身の望みを言えばあの姿を維持していたいと言っている。

(別に心配しなくても、アインズ様はありのままのあんたを愛してくれるわよ)

 彼女自身が口にした事はないが、それでも、付き合いのある自分は察してしまっている。彼女は本来の姿である埴輪顔を主に見られたくないらしい。言うなれば、化粧前の素顔を決して恋人に見せたくない女性のような心理なのだろう。

 それ自体は別に悪いと思わないし、主はそれこそ無限とも呼べる度量の持ち主だ。彼女だけに限らず、普段と違う姿を持つ彼女達だって、それを知ったとしても何の問題にすることはないだろう。

(ま、せっかくだし。どうにかそう言った場は設けてあげたいわよね)

 ひとまず考えるのをそこまでにして、彼女は手綱を上下に揺らして騎獣に後ろに下がるよう促す。獣は賢いらしく、彼女の意図に従って速度を緩やかに落とし始める、中央の馬車から離れてゆく。あまり褒められた行為ではないが、後方の様子は確認しておくべきであると判断しての事であった。

 下がりながら、彼女は近衛隊の者達に声をかけていく。

「ちょっと良い?」

 かけられた騎士は全身を振るわせ、その姿に彼女は一瞬憤りを感じる。

(何よ?)

 どうやら、自分は先の件で彼らに怖がられているようであった。別に自分は間違った事はしていないはずであるし、むしろ感謝して欲しい位だ。彼らが実践慣れしていないのは身に纏う空気に、鎧の真新しさから分かっていたから。

「な、何でしょうか? レヴィア殿」

「さっきから後ろの方で不可解な音がするんだけど、何か不審な事は?」

「え、特に何もないように思えますが……」

 目をあわせようとせず、しどろもどろな騎士に脳汁が沸騰しそうである事を自覚して、何とか爆発するのを抑えながら彼女は礼を言う。

「分かったわ、ありがとう。これからもよろしくお願いね」

 可能な限り笑顔を作り(無駄であると後に気付いた)激励を送る。こんなでも、今は国王達を護る為の仲間であるから。

「あ、はい……」

 それから彼女は更に後方へと騎獣の速度を落として向かう。現在、この一行は初めよりも馬車に騎士の間隔が広くとられている。先にやられた攻撃に、それによって引き起こされた2次災害を踏まえての事であった。

 後方を行く馬車。今は、唯の荷物置きとなっているその馬車の傍についたのはそれから25秒程であった。御者にも一応話を聞くが、やはり何も聞こえないと言う。

「一応、聞くけど。この後ろをスレイプニールは何機走っていたかしら?」

「は、一応5機が続いている予定であります」

「ありがとう。よく分かったわ」

 再び、礼を言って彼女は更に後ろへと下がる。そこで、異変に気付いた。

(おかしいわね)

 最後の馬車の後ろを走っているという騎士が誰1人いない様であったから。間隔としては、10メートルから20メートル程に広がっているはずであり、その辺りであれば最低1機はいるはずであるのに、いくら見渡して見ても誰もいない様子であったから。

(どうなっているのかしら?)

 まさか、はぐれたとは思わない。自分達を包んでいた霧であれば、殆んど晴れているしまさかそこまで無能でもないだろう。彼女は嫌な予感を覚えて、スレイプニールに指示を出そうとした所で騎獣の様子が変わる。急に加速を始めたのであり、突然の事に彼女は姿勢を崩しかける。

「ちょっと、どうしたの! 急に慌てて」

 首をさすって、落ち着かせようとするがまるで言う事を聞いてくれない。彼女を乗せたスレイプニールは速度を落としていた為に、温存出来ていた体力を全て出し切るように駆ける。その様子に彼女もようやく、その可能性に思い当たった。

「何か……いるのね?」

「ブルるるる」

 振動を言葉に置き換えたような声で鳴く騎獣の姿に彼女の懸念は確信へと変わる。既に新たな襲撃者がいるらしいのだ。ならば、この事を一刻早く中央を走る彼女達に知らせなくてはならない。走る事は騎獣に任せて、彼女は周囲を見るが、やはり誰もいないようであった。

(なら……)

 空かと思い見上げてみるが、やはり何もいないようであった。

(どこ? どこにいるのよ?)

 先は弓による狙撃であった。ならば、またかと思うが、その可能性は排除する。あれ程の腕を誇る者が他にいるとも簡単には思えない。いや、そうであって欲しいと。

(全く、本当にどうなっているのかしらね)

 内心で愚痴りながらも彼女は意識を前へと向ける。主がいないからこそ、自分達でどうにかしなくてはならないから。

 そして5秒程かけて、最後の馬車へと追いつき、彼女は声を上げる。

「速度を上げなさい! 後ろから何かが来ている!」

「はあ?」

 御者は思わずそう答えてしまう。それも仕方ないと言えば、仕方ないと言える。攻撃があれば、誰かが騒ぐはずであるから。だからこそ、急にそんな事言われても即答は出来なかった。

「いえ、しかし……」

 今の陣形を崩す方が問題ではないかと御者はレヴィアノールへと伝える。最初は密集していたが為に、酷い目にあったのであるから。そう伝えようとして、彼の視界は暗闇に覆われて何も言えなくなった。彼が最後に感じたのは、体中に何かが刺さったもの。それによって、激痛も襲ってくるが悲鳴を上げる間もなかった。

 

(ちょっと何よこれ……)

 その光景を見たレヴィアノールは困惑する。非現実的な事が唐突に起きたからだ。馬車より少々離れていたからこそ自分は巻き込まれずに済んだのだと言う事に気付かされる。本来の自分であれば別に問題はないかもしれないが、今の自分は一介の戦士であるのだから。

 それは、地面から突然飛び出して来た。そして、隣を走る馬車に飛び込み、破壊した。その破片が周囲へと飛んだ。そして御者は食われたようであり、飛んできた腕が頬をかすめた。彼に操られていたスレイプニール達は運よく逃れたらしく、突然自身に掛かる負荷が減った事に戸惑いながらも、己が勘が鳴らす危険信号に従い走る足に力を入れる。

 成人男性一人を一飲み出来る程の体躯も驚きであったが、それよりも更に驚かさせられたのは、それが非常に見覚えがあるものであったから。

(まさか)

 何でこんな所でこれを目にするのであろうか? と、彼女は本当に思った。それは、この世界であれば、そこまで知られていない存在。かといって、自分がそれを知ったのだって、墳墓にある資料で見たのであって、もっと言えばここで見る事は絶対に無いはずの生物であったから。

(鮫を見る羽目になるとはね)

 確か、前を行く同僚が休日に姉妹とその生物が主体となった映画を見たと言っていたのを思い出す。大方、あいつの趣味であろう。

 実物よりもずっと大きく見える鮫のような生物は御者を飲み込みながら、再び地面へと潜る。その際鮫が接触した部分の大地がまるで水のように波打ち、しぶきを上げる。一滴が彼女の被り物へとかかり、拭ってみればそれは泥のようであった。

(本当に何なのよ!)

 そう、鮫とは本来海。液体が溜まった所で生息する生き物であり、それが陸上にいるという事が更におかしいのである。しかし、そう言えるのは主がかつていらっしゃった世界での話であり、この世界であれば、それだって出来る方法がいくらでもある。

 唯、現状ではどうやってあるいはどうなっているか、まるで検討がつかないのも確かであった。

「ほら、あんた! 死にたくないなら必死に走りなさい!」

 全力で蹴ってしまえば、簡単に騎獣の内臓を破壊してしまう為に力加減に細心の注意を払いながら蹴ってやり、彼女は前へと進む。攻撃の予兆さえないのであるから、今はとにかく前へと進む事に意識を集中させる。一刻も早く、この事を彼女達に伝える為に。

 

 

(見つけた)

 その男は静かに歓喜していた。その手には、指には色とりどりの指輪がはめられており、地肌の方が面積が少なくなってしまっている。しかし、別に男が着飾る為につけている訳ではないようであった。その全てが光を放っており、それが示すは魔法の行使。他にも、男が付けている装飾品。首にかけられたネックレスに、腕に通したブレスレット、果ては体に巻き付けた鎖を思わせる物まで、その全てが輝いていた。

 これによって男は何かしらの魔法を使用しているようであった。そして、そんな彼の手に握られているのは千切れた腕、それも鎧を身に着けたものであった。

 それ自体は別に男の興味を引くものではない。それよりも、大事なのは手の甲の部分。そこに刻まれた獅子と荒鷲と蛇を組み合わせた姿のようなモンスターが描かれている。

 それには見覚えがあった。今回の一件の為だけに結成された部隊。彼らを出来ることなら活躍させてやりたいと、名声を高める為の工夫としてわざわざ一流の絵師に彼らの紋章を描かせていたらしいから。そのデザインだって協力者のおかげで頭に入っている。そして、この紋章を持つ者がここにいるという事は、彼から伝えられた情報に一切の誤りがないという事の証明でもあるから。

(ようやく、ようやくだ)

 その男は仲間達からは寡黙だと思われがちであるが、それは単に男自身が口を必要以上に動かさないようにしていたから。「口は禍の元」という言葉を男は知らないが、あまり物を言う事を好んでいないのも確かであった。しかし、だからと言って何も考えていない訳ではなく、その内心は喜びと狂気に溢れていた。

(ようやく、この時が来た。絶対に、だ)

 男は一度目を閉じる。それだけ、男にとっては千載一遇の好機であるのだ。男にとっては、ずっと待ち焦がれていた事でもある。

(絶対に、絶対に、絶対に絶対に)

 次いで男は自分の首に空いた左手を当てる。必要以上に伸びた爪が彼の肌を切り裂き、血を流すが彼はまるで気にしていないようであった。

(絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に)

 殺した騎士から奪った腕を握る手に力を入れる。肉が潰れる音、筋肉繊維が千切れる音がリズムよく響いていき、やがて破砕音もしてくる。骨が砕けているのは明白であった。そのまま5秒間が過ぎ、限界を迎えた腕がはじけ飛ぶ。それは、男自身の腕力で行った訳ではないのは、やや細い彼の腕から見て取れる事であった。

(殺す)

 それは、言葉にしてみれば3文字の言葉であるが、それこそ男の悲願であった。

(殺す! 殺す! 殺す殺す殺す! ころおぉすうぅ!!!!)

 王国の崩壊を願う者達、彼らの負の思いというものはレエブン候が考えるよりもずっと暗く深いようであった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。