ふと気がつくと、そこは宴会場でした。
疲労がたまりすぎていた俺が倒れてしばらくして目を覚ますと、心配そうな顔をしたライアン君がいた。
『よかったです……てっきり……その………あ、みんなは宴会してるみたいですけど、アルスティア様は休まれますよね?』
俺がイノシシをブッつぶしたあたりで村長が思いついたらしいんだが、肝心の俺が倒れたのでお開きになりかけるところだったらしい。外傷もなく、単に疲れただけだろうと判断して宴会が開かれたらしい。
俺の答えはこうさ。
行くわ。
お前は宴会で飲んだ酒の杯数を覚えているのか?
「………」
おぼえてないでーす! ぶいv ぶいv とかやってる今日この頃。
ぶいv ぶいvだぞ ぶいvv 楽しすぎてダブルピースとかしちゃうわ。村人ちゃんたち何の意味かよくわかってないけど俺もわかんないからセーフ。
主にわたくしちゃんが大活躍したおかげで村に攻撃をしかけてきていたモンスターは退治することができたので、じゃあせっかくだから宴会でもやろうかという話になったわけだが。村長が大事にしてたワインをご開帳! みんな飲めや歌えやの大騒ぎ! 俺もこの体がどのくらい飲めるかなんて忘れて調子に乗って飲みまくり、ふと気がつくと宴に参加していたみんながダウンしてたということだ。おかしいなあ、飲み勝負を吹っかけられたから勝負してたはずなのに記憶がないぞー?
酒は言語だね! 宴会中俺がなんもしゃべらないのに意図が伝わる場面があったが、のんべぇ同士は言葉なんていらないってことを証明してやった!
「うぅぅ……聖女様ぁ……気持ち悪いです……」
「?」
死屍累々。うめき声だらけの宴会場で唯一生きてるのがライアン君だけってみんなだらしねーなぁ!
声は出ないけどしゃっくりは出るみたいだ。ひっく、としゃっくりしつつ、俺はフラフラのライアン君を前に、最後のワインを飲み干した。
かー! 生き返るねぇ!
「聖女様なんで大丈夫なんですか………あんなに飲んでるのに……」
さあ、体のつくりが違うんでしょ。
しかし大人たちが全滅してるなら俺がライアン君をなんとかせんといかんなあ。酒の片付けは明日でいいや。誰かやっといてくれるでしょ、きっと。
俺は口を押さえるライアン君を家まで送ろうと思って、手を差し出した。
「て、手を……?」
「??」
んーおんぶがいいの? しょうがない子だなー。
俺はしゃがんで背中を差し出してみた。乗ってこない。首をぶんぶん振って手を伸ばしてくる。素直じゃないぞ。
鼻歌も出ないのでふーふー息を吐きながら歩く。気分がいいな! つないだ手をブンブンしながら家まで帰る。
「あっ……笑った……」
いわれたので振り返ると、驚愕に目を見開くライアン君がいた。笑った? 誰が?
俺が思わず振り返ると、誰もいなかった。消去法で俺しかおらんな。顔を触ってみると確かに笑っていた。笑えるのか、この体は。うーん、酒を飲まないと笑えないってどうよ?
こうして俺は飲みすぎてフラフラのライアン君を連れて彼の家まで帰った。
もうリアンは寝ているらしい。それか宴会場でぶっ倒れてるかだ。ついでにミミもいない。未成年にしか見えないライアンが飲み始めたあたりで、酒の年齢制限なんてものはないことはわかっていたが、こりゃミミも宴会場か? 記憶があいまいだ。いたような気がする。
「うぅ……気持ち悪い」
口を押さえるライアン君。吐かそうかな。その方がいいこともある。と思って桶もって行ったら首を振られた。根性ある子だね。
俺はライアン君を、彼の自室にまで連れて行くことにした。なぜか抵抗されたが、ドア開けてもエロ本があったりはしなかった。童話関係の本。神話の本。表紙だけで判断すると、そんな内容の本が棚にぎっしり並んでいた。やはりというか昔話やら神話やらに興味があるのだろう。
「ありがとうございます……」
ライアン君をベッドに寝かせる。顔は真っ赤。犬耳はさすがに赤くなかった。
おっ、こんなとこに水を入れる容器が! 水差し? ってやつか。机の上のカップに水を注いで渡してみると、目を閉じたまま飲み始めた。
「はぁ……だいぶ楽になりました…………ふああ」
眠いのか大あくびをするライアン君。
俺はベッドに腰掛けて笑おうとした。ぴくぴくと動く口元。動けってんだよ!
「………」
ライアン君がぼーっとした目で俺を見上げてくる。黒い髪の毛が大きくシーツの上で広がっていて、シャツの隙間から見える素肌は艶々と血色良く、中性的な顔立ちのせいもあるが、女の子が寝ているようにも思える。
寝るのが一番の回復方法だ。若いから明日には元気になるはずだ、二日酔いとかいうデーモンがいなければ。
俺は虚ろな瞳の彼の額を撫でた。
えーっと、欧米じゃおやすみのキスするんだっけ? どこにするんだ……? 額かな?
俺がキスをすると、まるですとんと落ちるように綺麗な寝息が上がり始めた。おお、可愛い寝顔だ。無防備過ぎる目元についた涙を指で拭ってやる。
「………」
眠い。飲みすぎたのかあくびが止まらない。
部屋に……戻………。
……………すやあ。
「アルスティア様、起きてください……」
うるさいぞ。あと五分寝かせろ。
「お、おきて………どーしよ………夢でも見てるのかな僕は………アルスティア様。おきてください……触っていいのかな……罰とかあたらないかな……」
困り果てた声が聞こえてくる。んだようるせぇなぁ……。
なんかこの枕硬いな。なんだ? まァいいや寝とこう。
俺は枕?にしがみついたまま顔をぐりぐりと押し付けた。
「っうあ……!? ほ、ほんとうにまずいです……! おきて……お願いします……ぅぅ……やわらかい……い、いいにおい……」
様子がおかしいな。目を開けてみると服が目の前にあった。服ゥ?
俺はようやく頭が正常に機能を果たしていくのを感じた。目を擦りながら上半身を起こしてみると、なるほどライアン君が困っている理由がわかった。
ライアン抱き枕を抱きしめて寝ていたらしい。いやー寝心地よくてさ……。
「あの」
顔面を真っ赤に染め上げたライアン君の顔がすぐ傍にあった。
おお、悪いな。さっと上半身を起こす。
気分悪そうにしていたライアン君は、だいぶ顔色が良くなっていた。今何時くらいだ? 時計がないからわからんが、月の角度からしてド深夜なのは間違いない。
寝なおすか。一応、リアンに使ってない寝室を使っていいと言われているので、そこにいけばいい。多分だがリアンの旦那さんつまりライアンとミミの父親の寝室というか書斎だったんだろうなと思う。亡くなってるんじゃないかな?
俺が腰をあげると、ライアン君は目元を潤ませながら切なそうな顔をして見上げてきた。
……仕方ないなあ。
俺は期待のまなざしを向けてくるライアン君の横に椅子を持ってくると、首を傾げてやった。子守唄は出来ないけど、寝るまでは付き合ってやるさ。
翌日。俺は、村人たちが集まる場へとライアン君を引き連れて向かっていた。
おまけ
ジ「僕の二次創作小説がエタった!」
スッ
ペ「ハァーィジョージィ………TSFは好き?」
ジ「なにそれ」
ペ「Oh...とっても素敵なシチュなのに……読んでみようぜ」
ジ「そういってニッチ過ぎて人を選ぶんだろ。騙されんぞ」
ペ「確かに数多あるジャンルの中じゃニッチだが、名作が生まれてるんだぞ。入れ替わりもののあの名作くらいは一度聞いたことがあるだろぅ」
ジ「ふーん」
ペ「どうよ?」
ジ「面白そう! 擬人化ソシャゲに課金するわ」
ペ「Go!?(原文) ほら………これ……」
ジ「僕のお気に入り数!」
ペ「TSFやればお気に入り数増えるから……見てないでこっちきて」
ジ「一般ウケする?」
ペ「Oh...Yes...TSF...TSものはいいぞ……深いぞ……」
ジ「……」
ペ「お前もこっちにきて作者になるんだよ!」
ジョージは死んだ。TS沼の深さにはまってしまったのだ。
今彼は皮ものに嵌っている。