ここまで急激に伸びたのは驚きましたが、今後共頑張っていきますので、応援よろしくお願いします!!
今回は千冬に対しての扱いとなります。
形式上の罰として寮の自室で一日過ごすことなった一夏。
しかし今の彼は晴れやかな顔で夕食を作っていた。
「~~♪」
冷蔵庫の食材は殆ど調理され、一夏は今までにないくらい軽やかな気分で料理を楽しんでいたが…
「一夏。私だが…入ってもいいか?」
ドアがノックされ、向こう側からは見知った姉の声が聞こえてきた。
――――――――――
「………で、話って何?」
室内に置いてあるテーブルを挟んで向かい合う一夏と千冬。
しかし、今の状況は普段とは真逆と言ってもよかった。
ふてぶてしい態度の一夏に対し、どこか申し訳なさそうな表情で俯く千冬。
「……すまなかった。篠ノ之達のことは…」
千冬が謝ったのは、箒達の暴行を今まで容認していたこと。
「今まで私は、公私混同を避けようとお前に厳しくしていたが…悪い意味でお前を贔屓目に見ていたようだ」
一夏は筋金入りの鈍感で、女性からの好意に疎い。
しかしそれは彼一人の責任ではなく、周囲にも原因がある。
まず、千冬しか家族がいなかった状況。
姉以外の家族からの愛情を受けてこなかったこともあり、一夏は家族愛というものすら理解しづらい環境で過ごしていた。
そしてもう一つは、一夏に好意を寄せている少女達の愛情表現。
思春期の少女達にとって異性への告白などは羞恥心があり、中々素直に言葉を口にすることができない。
だが、愛情を学ぶことが難しい環境にいた一夏が彼女達の遠まわしな愛情表現を理解できるかといえば、できない。
唯一一夏に正しく伝わった例としては凰鈴音のアレンジしたプロポーズのような言葉があったが、後に彼女は慌てて撤回してしまい、彼女の真意は恐らく一夏に伝わることは永遠にないだろう。
「…千冬姉が気に病む必要はないよ」
一夏はコーヒーを一気に飲み干す。
「ただ、教師としての織斑先生に頼みたいことはあるけども…」
「な、何だ?」
一夏は新しくコーヒーを自身のカップに注ぎ、座る。
「今後、あいつらからの過剰な接触で俺が不快な思いをしたらそれぞれの国とは一切関わりを持たない」
「な……!?」
一夏の口から出た予想外の言葉に絶句する千冬。
「向こうだってそれは避けたいはずだろ?何せ俺は『唯一の男性操縦者』で、世界最強のIS乗りの弟だ。貴重なデータを手に入れるチャンスが自国の代表候補生のせいでふいになったり、ましてやその候補生の過失で怪我とかされたらそれこそとんでもない問題になる」
今までは特に考えていなかった一夏だが、楯無から訓練の後などに幾度となく警告された。
自分がどれほど世界にとって重要な存在になっているのか。
最初はそれを煩わしいと考えていた一夏だが、今はその立場を上手く使う方法を考えついている。
「もし奴らが妙なことをすれば、俺は今度こそ歯止めがきかなくなる。だからそうなる前に打てる手は打っておくべきって考えただけだよ」
警告さえしておけば愛国心の強いオルコットやボーデヴィッヒは高確率で自分には余計な手を出さなくなる。
デュノアにしても会社の都合などもあり、大きな騒ぎになれば最悪、彼女は塀の中だ。
比較的フットワークの軽い凰や、天災の妹たる篠ノ之が厄介だが、一夏はすでに彼女達を封じる策を思いついている。
「一夏…お前は、本気であいつらと縁を切るつもりか?」
「当然さ。アイツ等のせいでどれだけ被害を被ったか…」
思い返せばキリがない。
直接的な暴力が多かったが、そのほかにも食中毒未遂、専用機による襲撃とその状況を簡素に纏めるだけでもちょっとした本が書けそうである。
「最近は抜け毛と胃痛に悩まされてさ…この間ようやくコーヒーを飲んでもいいって許可が医者から下りたんだ」
「そう…だったのか…」
忙しさにかまけて弟を見てやれなかったことで余計に罪悪感が浮かぶ千冬。
「で、千冬姉はどうするつもり?」
「どう…とは?」
一夏は指を二つ立てる。
「一つはこれまで通りあいつらを放し飼いにする。もう一つは俺の要件を受け入れ、余計な介入を防ぐ」
千冬が選んだ道は…
―――――――――
後日、入院中の専用機持ちのうち箒を除く4人に国から連絡が入った。
『今後、織斑一夏に必要以上に接触してはならない』
『彼に暴行を加え、学園生活を送る上でストレスの原因になるような行動をしてはならない』
当然ながらそれに反発をするセシリア達だったが、『もしこれが破られた場合、君達は国に強制送還される』と言われ、渋々引き下がった。
だが、それに当然納得していない人物も存在しており…
「巫山戯るな………一夏が、そんなことを言うはずがない…!」
ベッドの上で彼女は自身の爪を噛んでいた。
「そうだ……あの子が…一夏を上手く引っ掛けて…」
小さな声でブツブツと呟く彼女を友人達が見れば、間違いなく困惑するだろう。
「会長の妹だからって調子に乗って……そういえば、布仏さんもよく一緒にいるな…」
すでに爪が割れて、布団が一部血で染まりながらも彼女はつぶやいた。
「待っててね、一夏………君の心を、必ず助けてあげるから…!」
人知れず狂気に満ちた少女の魔の手が、2人の生徒に迫ろうとしていた…
次回、鬼の目覚め