3度目の人生は魔法世界で   作:恋音

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初めましての方は初めまして、どうも恋音(かのん)と言います。この作品は言語その他諸々残念主人公が他人に振り回され振り回す作品です。
3度目という表記は『2度目の人生はワンピースで』歩んだ主人公が転生し、記憶を持たない状態で『3度目』を魔法の世界で過ごすという事なのです。が、しかし。

───それは主人公使い回すための言い訳だ!

ただ主人公を作るのが面ど…しんど…出な…やや困難であったのでこうなりました。名前や性格が同じなだけであります。よって『2度目』を知らずとも『3度目』を問題なく読めます。

IQは下げてお読みください。


死喰い人編
第1話 天国と地獄の扉


 よぉし。分かった、ひとまず分かった。

 私の前世に色々あって、更に地獄の扉を開く様な人間だった事はよぉく分かった。

 

「………ぴぎゃぁあああっ!!!???」

 

 でも目を覚ました瞬間どう考えても悪役みたいな顔した鼻無し男に睨まれる状況は無いと思う。

 

 

 ==========

 

 

 

 気が付いた時には私は真っ暗な空間に居た。

 

「おう…?」

 

 ぽそっと呟いてみたけど、無駄だった。すぐに分かった。この黒は何もかもを吸収して消す。

 

「誰か居らぬか!であえであえ!!」

 

 ふざけて叫んでみたけど誰も答え無い。

 うーん、ちょっと寂しい。

 

「ん?何これ…え、何これ」

 

 一寸先は闇どころか伸ばしたはずの手のひらだって見えやしない。

 どこが上か下か、どっちが右か左かだって分からないあやふやな世界で身体がフワフワ浮いている感覚。

 少し怖い、けど記憶のどこかで懐かしい感覚が蘇っている。なんというか、生き物全ての原点に帰ってきた様な不思議な感じだ。

 

 ……と言うか、私は誰だ?

 

 いや、記憶はボチボチあるんだ。私が何処かの世界で危機一髪だらけの生活を送っていて、トラブルだらけ苦労だらけで。

 そして大切な何かを**したから、私は誰かの声を聞きながら目を閉じ…あ、ダメだ。

 すごく…嫌な予感がする。

 

 私は、目を閉じた?

 

「私、死んだ?え、ちょっと待ってください神様仏様。これ、もしかしてファンタジーでありがちな転生パターン?私の記憶はどこですか?おいおいちょっと待ってくれよ前世の私は一体何をやらかしたって言うんだ?チヤホヤされて調子乗ってたのか?殺人を起こしたのか?誰かを貶める様な最低な女だったのか?それとも聖女だった?天使だった?ダメだ本当にダメだ記憶と言っていい記憶が全く出てこないジーザスッ!!!!」

『やっっかましい!!』

 

 スッパァァァアンッ!

 そんな音が後ろから聞こえたのと、鈍い痛みが後頭部に生まれた。

 

 思考が一瞬停止した。

 

 私、もしかしていきなり叩かれた?

 

「なにすんの!?なにすんの!?」

『うるさいんじゃお前は!静かに過ごしておったのにギャーギャー喚きおって…!』

「いや普通パニックになりますよね!?」

 

 声の聞こえる方向に顔を向けたが見えなくて悔しい。流石に1発殴っても許されるような気がする。と言うか私だけ痛い思いをするの……実に理不尽。世の中平等って大事だよね〜〜。

 

「ということで殴らせろ推定ジジイ」

『何が「ということ」じゃ、このアホったれ!不法侵入!』

「不法侵入ぅ?」

 

 凄い激しく誤解を生んだ気がする。

 (気分だけ)不服そうな表情をしてみると真っ黒な視界の中で霧がかったようなぼんやりとした輪郭が見えてきた。場所が分かれば上等だ、殴る。

 

『お前、器用な奴じゃな…。わざわざ時空の狭間になど落ちてくるとは』

 

 やれやれと言った様子で推定ジジイが音を零す。耳がぐわんぐわんする感じ、とりあえずこの空間が不快だということが分かった。

 

 懐かしく感じたり不快に感じたり忙しいな、多忙さはまるでブラック企業だよ。だから空間が黒いって事か?

 

「ここはどこ、私は誰、貴方は誘拐犯」

『おい』

 

 決めつけたセリフにツッコミを入れられた。でも出来れば前半二つは教えて欲しいです。

 

『はぁ…ここは時空の狭間』

「じくうのはざま」

『人が死したあと、天国と地獄に行き生まれ変わるが。ここは言わば例外が迷い込む場所じゃ』

「と、言うことは私は死んだ、と」

 

 死んでしまうとは情けない。

 ふむ、と考えてみる。

 

「様々な死因があると思うが、なぜ私は体を動かすことが出来る?なぜこの空間は何も見えない?記憶がない理由は?後私が前世?で何をしてこうなった?それとなぜこの空間に迷い込む事になった…」

『疑問があるのは分かったから少し待たんか!』

 

 これでも結構混乱しているから手早く説明して欲しい。害をなす堕天使じゃないとはだいたい分かったから遠慮なく行く。

 

『そうじゃな…』

 

 一つずつ順番に説明される。

 寝惚けた様な頭を必死に回転させながら仕組みというものを理解した。

 

 まず『天国』と『地獄』という物は死んだ後に行ける空間では無く扉らしい。

 それにより生まれる時の家庭環境に差がある。ベルトコンベアー的なので振り分けていく様だが、死後の世界は工場かよと思った私は悪くない。

 

 善人や良い行いをした人は天国の家庭環境。

 悪人や悪い行いをした人は地獄の家庭環境。

 

 『いい子』で無ければならない理由はこれだったのか。人間の遺伝子や本能で察していた様だ。

 

 

 次に、体を動かせる理由は至極簡単な話。作業を簡単に進ませる為らしい。死んだ状態の一番近い活動可能体にまで戻して、その上感情を持ち出されると現在の堕天使さんの様に面倒臭く、時間を取るから自我も記憶も消すとか。

 死んだ瞬間に記憶が消えるなら私はそれに合わなかったという稀有な存在なのね。

 まぁ記憶があれば死んだ殺した云々の面倒臭い状態になるのは分かるので非常に納得。

 

 私が比較的冷静に話を聞けているのは記憶が無いが故に前世への執着が無いからだと思う。かなり意識しないとぼんやりとした感覚すら思い出せないのは残念だけど、仕組みだから仕方ないか。

 

 

 そして最後にこの空間の話。一つの世界を会社だとすると社長が創造神。そしてその部下が天使らしい。細々とした神様は会社にお邪魔する派遣員やバイトみたいな扱い。……わかりやすいけどその例えはどうなんだ。

 堕天使という存在は天使の中での不良。だから何も無い、時空の狭間に堕とされたらしい。

 

 時空の狭間は人間には視力の関係で真っ黒に見えるけど普通の牢獄の様らしい。

 

 

「私の死因は?」

『なんじゃ、聞き流しておったのにわざわざ気にするのか』

 

 身に覚えがないからこそ他人の話を聞くみたいで気になる。死因知らなければ知らないでいいかなとは思うけど。

 

『記憶を探る、少し待て』

 

 無くした記憶を探るとか凄いな。これが神様じゃないんだから驚きだ。

 実際神様に会ったらどうなっていたんだろう。

 

『あーーー……お前さんアレか…あー…そうか』

「えっ、何、怖っ」

『なるほど、ここ数十億年誰かがここに来た記憶が無いから忘れておったわ。はぁ、お前か』

「何その私が前にもここに来て同じような事した的なため息」

 

『………ほぉ、聡いのォ』

 

 なんでだろう。胃が痛い。

 

『まぁお前に前世はもう関係あるまい』

「…そりゃ、記憶がないのに執着しろ。と言われても困りますけど」

『ちなみに前世の死因は自殺じゃったなー』

「おい!おい!さり気なく暴露しないでいただけますかねぇ!?」

 

 やだ疲れる。堕天使自由過ぎる。

 堕天使という生き物は総じてめちゃくちゃなのか、それとも人を混乱させる存在なのか。

 

 ……にしても自殺ねェ。

 仮定として前世の私が『前にも時空の狭間でこの様なやり取りをした』と置こう。正直な感想としては『もう来たくない』だ。

 ベースとなる人格が違えば話は変わるのだが恐らく同じだろう。もう来たくない、死ねば自分にはここに来る可能性があった。

 

 なのになぜ自殺をした?

 自ら死ぬ様な事を?

 

 うん、分からん。考えるだけ無駄だな。私が新しい人生で長生きすれば良いだけだ。

 

「追い込まれる人生だった、ということは天国行きワンチャンあるな」

『何を考えとるかと思えば先の心配じゃったか。そうじゃな、お前さんはそういう奴じゃな』

「どういう奴かは分からないが転生特典カモン」

 

 定石(セオリー)を楽しみにしています。

 その気持ちを込めて両手を広げると『は?』と言われてしまった。

 顔面が見えないが絶対腹の立つ顔をしている事には違いない。

 

『そんな物は神にしか出来んわ』

「……マジかよ」

 

 稀有な存在。不思議な空間。他と違う空間主。

 そこまで来たらチートで特別な特典が付くのはもう流れでしょ!なんでだよ!

 

『あーあー分かった。分かった。アドバイスだけしてやるわ』

「平穏無事に人生を送れるアドバイス…?」

『…………はて、何か言ったかの』

「おい待てその間はなんだ」

『仕方あるまい、お前の魂にはベッタリと【災厄吸収】という能力がくっついておる。生きるだけで災厄続きじゃ』

「なら!!何故!!それを払拭できる様な!!チートの才能が!!ないんですか!!」

 

 まるで血涙。

 衝撃の事実に涙が止まりません。胃がキリキリする。せめて痛みを無くす仕組み的なのはついていて欲しかった。

 

『人生は〝集中力〟を高めて〝想像力〟と〝思い込み〟で大概なんとかなる。次の生をせいぜい楽しめ』

「その投げやりなアドバイスはな…──ぅを!」

 

 体が、私の体が光だした。

 初めて体が見える。少なくとも皺だらけの手じゃないみたい。

 

 でも更に光が強くなって、光の塊になる。ここまで光れば体云々は見えない。

 

『〝リィンカーネーション〟』

「だだだ、堕天使さん!?」

『なに、失敗はするまい。天国か地獄かはお前さんの前世次第だがの』

 

 笑っていた。

 

『またのぉ』

「も、もう一度は要りませんんんんんッ!」

 

 

 

 災厄吸収能力という不安を抱えながら、私は転生を経験する事になった。




初ハリポタということで設定等に把握漏れあるかもしれませんがその時はこっそり教えてくれると有難いです。
この物語は想像の斜め上を行く系作者、恋音(かのん)よりお送りします

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