3度目の人生は魔法世界で   作:恋音

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災厄「ヤッタルデ」


第11話 神は決して無能では無い

 私は現状が謎で堪らない。

 

「如何しましたかな?」

 

 コウモリみたいな真っ黒で不健康な男が隣に並んで学校の道具を買いに来てるとか。

 

「なにゆえ……」

 

 学校なんてどうでもいいからアズカバンに引きこもりたいです。

 

 

 

 シリウス・ブラックことグリムに出会って約10年。その間に色々なことをした。

 

 数ヶ月に1回現れる看守長(人間)の目を欺きつつ、風、温度、湿度、除菌洗浄と色々環境を整えたり。整えられた時は大号泣したけど。

 グリムが犬の姿になれるので吸魂鬼から幸福を吸い取られる事を回避したり。こっそり手紙のやり取りで交流を図ってたことを知った時は大爆笑したけど。

 魔力溜りでもないのに熱と吐き気が収まらなくて原因調べたらコチコチご飯の中に毒が入ってると知ったり。正直世界の殺意の高さより殺意(物理)に耐えれる体に恐怖したけど。

 グリムがホグワーツで起こった色々なことを教えてくれたり。ほぼ抜け道や悪戯だったけど。

 

 うん、引きこもりライフ快適じゃん?

 

 今日はいつもと違い日課であるグリムの牢屋に行ったけど彼が居なかった。その代わり現在私の隣に居るコウモリ男さんが『ホグワーツ魔法魔術学校に入学するから準備するZ』的な感じで来て引きずられるままに外に出たけど。

 会話続かないよね、普通。

 

「Ms.リィン?」

「だい、じょうぶ、ぞり」

「……ぞり?」

「大丈夫どりゅん」

「…………どりゅん?」

「あー、えー、言語不自由、許すして」

「そちらの状況を考えれば仕方ない事だとは思いますがね」

 

 ため息混じりに独り言が聞こえた。

 自己紹介してないけどこの人はホグワーツの教師らしい。

 

 グリム談によるとホグワーツ入学には手紙が届くらしいが、私は環境が特殊だから仕方ない。

 

「それでは買い物を開始する」

「いえっさー!」

「効率良く、そして素早く終わらせ帰還する」

「大賛成ぞ!」

 

 ラジャッ!と敬礼してみるが華麗に無視されてしまった。悲しい。

 

「まず杖の選定」

「…………つえ」

「魔法使いには()()()()杖が必要である」

 

 お、おお?基本的に?という事はこの人杖無しがあると考えているのかな?お仲間!先生私とお仲間さん!

 

「お金は?」

「吾輩が用意してある」

 

 流石にお金という概念が無い、って事は無かったか。

 見せてもらうが単位がどれくらいなのか分からない。単位を!単位を教えて欲しい!

 

「銅貨、銀貨、金貨に別れている。銅貨はクヌート。29クヌートで銀貨1シックル。17シックルで金貨1ガリオンだ」

「クヌート、シックル、ガリオン」

「では問題だ」

「ぴゃっ!」

 

 唐突な問題にビックリして肩が跳ねる。コウモリ男さんはこちらを見ずに買い物リストを見ながら言った。

 

「子供でも飲めるバタービールという甘い飲み物だが、カップサイズで10シックルである。1ガリオンで買った場合釣りは幾つだ」

「な、7シックルでは?」

「ではその釣りを全て銅貨で換算すると?」

「203クヌート……」

「……ふむ、この程度の知識は大丈夫だと考えて良さそうだな」

 

 子供でも分かりそうなことをなんで聞くんだろうと思ったけど私教育とは無縁の場所でここまで育ちましたから、本来では野生児とほぼ同じ知識だったというわけか。

 やべぇ誤魔化しようが無い。

 

「杖!」

「ん、あぁ、すまない。考え事をしていた」

 

 多分この人良い人だ。

 歩く速度をわざと落としてくれているみたいだし会話に知識を織り交ぜてくれる。

 

 バタービール飲んでみたい。

 

「てっきり」

「はい?」

「筋肉は衰えておるとばかり思っていたが体力はある様だな」

「あそこ、狭き。筋肉付く方法沢山実況済み」

「実況するな」

「犯行」

「それも違う」

 

 何年経っても言葉は難しい。

 グリムと話しているから全く喋れない訳じゃ無いけどね。

 

 

 まずダイアゴン横丁にある杖専門店「オリバンダー」という所で杖を選ぶ。材質は不死鳥の尾羽根にレッドオーク。柔軟性があり、長さかなり短めの18cm。

 

 杖には忠誠心というものがある様だ。

 相性とかじゃないのかな……。

 

 店主のオリバンダーさん曰く『最も均整が取れている材木に、自発性のある芯材。持ち主の選り好みが激しい。理想は頭の回転が速く順応性が高い………が杖が短いので持ち主の性格に少々難ありというのが私の意見である』

 

 なら長いのくれ。反抗的な杖は要らん。

 ……交換不可らしいけど。

 

 

 続いて向かった先は鍋。はじめてのおつかいというわけで1人で向かった。まぁ薄ぼんやりと前世の感覚があるわけですから問題無く買えた。

 その間にコウモリ男さんはフローリッシュ・アンド・ブリッツ書店という所で教科書を買ってきてくれた。

 

 効率を求めるだけある。

 

「あとは制服とペットか……」

「ペット…?動物?」

「左様」

 

 動物と聞いて思い当たるのはやはりナギニさんだ。私、蛇と話せるよー!

 

「……なお、蛇では無い」

「ほぎゃん!?」

 

 あれっ、なんで私が蛇を求めていること分かったんだろう。

 

「校長が自ら選んだペットが居る。連れてくる故、目の前の店で制服の採寸をする様に」

「はーい……」

「貴様は出生や環境が特殊であったからな、その配慮だろう」

 

 ダンブルドア校長が思っていたより良い人だった。グリムの話によると好感度は高いみたいだけど盲信させる天才ってイメージだったから。

 

 いや、この人含めて警戒した方がいいよな。

 

「では」

 

 踵を返してどこかへ向かって行ったので私も店に入る。

 中には採寸している男の子とキョロキョロ周りを見回している男の子、計2人居た。

 

「ん?兄姉の付き添いか?」

 

 採寸していた子が失礼な事言ったので頬を膨らませる。

 

「採寸ぞ!ホグワーツ入学生!」

「……驚いた、こんなチビが居たのか」

 

 そう言われてハッとする。私は採寸している男の子の肩より背が低かった。

 

「なん、じゃと……」

 

 え、栄養失調だとッ!?

 グリムがチビチビ言ってきたけど大人目線の話だとばかり…!まさか同年代と比べてもこんなに体格差が生まれるとは!

 

「わ、ホント、軽いね」

 

 一気に目線が変わる。キョロキョロしてた方の子に脇の下に手を入れられ持ち上げられた様だ。

 

「私、特殊環境下、居るした、居る所」

 

「キミもホグワーツ入学生?」

「ん、あぁ」

「魔法界の事詳しい?」

「………そうだけど」

 

 ホッとした表情で男の子は良かったと呟く。

 

「僕魔法界の事知らずに育ったんだ!良かったら教えて欲しいな」

「……キミ、マグル生まれか?」

「えっ?生まれは分かんないなぁ。父さんと母さんは魔法界の事詳しいから違うと思うけど」

「私も教える事ぞ願う!」

「キミがマグル生まれ?」

「残念無念、穢れた血とやらではござりませぬ」

「僕心底キミの環境が気になってきたよ」

「僕もだ」

 

 魔法界出身でも教わらない環境ってあるんだよ坊っちゃん達。

 

「僕ハリー、キミ達は?」

「僕はドラコだ。家名はマルフォイ」

「リィンぞ」

 

 聞き覚えがある様な無い様な気がするけどとりあえず言いたい事は1つ。

 

「私、いつまで拘束続行?」

「「あっ」」

 

 いつまで経っても降ろされる気配が無いので進言する。

 

「はい坊ちゃん終わりですよ」

「……ん」

 

 ドラコ君の採寸が終わったようで採寸台から降り、代わりにハリー君が乗る。

 

「Ms.リィンは」

「呼び捨てでよろしきですぞり」

「……リィンは何故そんな喋り方なんだ?」

「ドラコ君」

「ドラコでいい」

「ドラコは1歳児が閉鎖空間にて教育など何もせず育つしたなればどうなると予想するです?」

「………………廃人か、人形だな」

「なれば私はまだよろしき方ですぞね」

 

 閉鎖空間って言っても快適な生活だったしグリムや吸魂鬼と会話出来たからね。

 

「聞いて損した気分だ」

「なにゆえ!?」

「心情的な意味で……知らなきゃいい事は世の中にあるんだってこと、分かった」

 

 お腹を押さえながらドラコは遠い目で呟く。

 私、グリムの過去─悪戯仕掛け人の悪戯録─を聞く度に良くするから分かるけどそれ胃痛だな?

 

「まぁ地雷ボンッは否定です」

「えっと、地雷じゃないって事…?」

 

 僕ハリーでいいよ、と言いながら聞いてきた。

 

「正解です!」

 

 にぱり、と好印象に見えるように笑うとおずおずと手を伸ばされ撫でられた。

 

「………僕さ、妹欲しかったんだ」

「父が言うには、妹はろくなものじゃないと言っていたが……」

「私愛すされたキャラになるを願望中!」

「ヤバいコイツ意図的に人を誑かすタイプだ」

「前言撤回……したいけど……僕の中で歳下の守るタイプが欲しいって願望が……! 騙されててもいいから…!」

「キミさては損するタイプの人間だな」

 

 妹キャラとかほぼ無条件に愛されるお得なポジションなので進んで妹キャラになる。

 

 ハリーの採寸が終わったので私と交代する。

 サイズが最小でも余って採寸に時間がかかってごめんお姉さん。

 

「終わりましたかなMs.リィン」

 

 コウモリ男さんが犬を連れて戻ってきた。

 その真っ黒な犬は死んだ目でリードに繋がれており非常に大人しいが、私は目が合った瞬間気づいた。

 

 お前、グリムだな???

 シリウス・ブラックだな???

 

 コウモリ男さんがハリーやドラコを見て嫌そうな顔をする。そこになんの因縁があるのか分からないが私はそこの見覚えのある犬に言いたい。

 

 だからグリムだよねお前???

 

「それ」

 

 私が犬を指さすとコウモリ男さんは調子を取り戻したのか、リードを私に渡してきた。

 私の採寸はどうやら無事終わったようだ。

 

「校長からプレゼントだ」

「………名前は?」

「付けてもいいと」

「ではグリム」

「…ヴ、ワンッ」

 

 あ、コイツグリムだ。

 腕を広げておいでーってしてみるとポフリと肩に顎を乗せて来た。死んだ目だったけどホッとしたみたい。

 

「……説明は、いただくですぞり」

「ヴァンッ…」

 

 悲しそうに鳴いた。グリムはアニメーガスと言って動物もどきになれる魔法を使え、変身後の姿は真っ黒な犬だ。

 学生時代の悪友、悪戯仕掛け人にパッドフットと呼ばれていた由来はここらしい。

 

 兎に角、校長からグリムが送られてきたという事は間違いなく監視。校長は敵だった。

 問題はコウモリ男さんがグリムはシリウス・ブラックだと言う事を知っているかどうか。

 

「この犬何ぞ?」

「分からん」

 

 クイッとハリーに引っ張られた。

 

「この人誰?」

「えっ、誰?ホグワーツの先生と予想?」

「……言ってなかったか」

 

 コウモリ男さんは考える素振りを見せ、口を開きかけた。

 

「ドラコ、採寸は終わったかな」

「愛する僕のハリー!」

 

 ドラコの父親とハリーの両親がやって来て、お互い固まった。固形物質だらけかよ。

 これはお互い知り合いだったとか言うパターンですかな。

 

「セ、セブルス!?」

「スニベルスぅ!?」

「セブ!?」

 

「……ルシウス、リリー。とポッター」

 

 今、私の脳細胞が輝いた。

 

「あ……」

 

 ポツリと言葉が零れ全員の視線が集まる。

 ハリーとそっくりの父親が私の傍に座っているグリムに目をやる。

 

「エッ、パッ…──ゴフッ!?」

「ゥウウウウウ!」

 

 グリムが吹っ飛んでハリーの父親の口をダイナミックに塞いだ。口封じ(物理)凄い音したよ。

 

「素晴らしい忠犬具合だ。褒めてさしあげよう」

 

 グリムが嫌そうな顔して、そっと私の後ろに隠れた。おい、忠犬具合どこ行った。

 うん、ごめん、ちょっと情報量が一気に来たから帰っても良い?

 

 えーっと、私の父は闇の帝王。

 

 その部下はコウモリ男さんであるセブルス・スネイプと、彼に視線を向けているルシウス・マルフォイ。

 

 そして彼の息子で、いとこのドラコ。

 

 父に殺されかけたが生き残った英雄一家と呼ばれ、グリムの学生時代の親友であるジェームズ・ポッターとその奥さんよリリー・ポッター。

 そして息子のハリー。

 

 

 つまり、私はこの場にいる全員と会ったことがあるという訳だ!なんだそれは!

 

 

「セブルス、いつの間に子供を…?」

「違う!」

 

 セブさんは必死に否定しているが、闇側の人間だけじゃない現状上手く言葉が出せない様だ。

 下手したら光側にバレるもんね。闇側は一斉投獄されてアズカバンだもんね。私にみたいに。

 

 …………………はぁ????

 

 何だ、うら若き私は投獄されたというのに良い地位に居るいい歳こいたおっさん共はお日様の下悠々と過ごしていたという事?

 

「……ふ、ざけるなぞ貴様ら!」

「いきなりどうした」

 

 ドラコが目を白黒させている。

 

 そりゃ、私は親が親だから仕方ないけどさ、なんで父に謁見所のレベルじゃない所業を出来るセブさんや親戚筋になったルシウスさんはこんな平和に生きてるの!?

 平和侮辱罪で鉄槌下すけどいいよね!?世界で1番平和を望んでいる私に与えられないとか神様無能かよ!いや災厄が有能過ぎるだけか!?

 

 

 フゥーーー落ち着け落ち着け。

 

 

 ひとまず目標は私が味わったこと。

 

 胃 の 壁 を す り 減 ら す 事 。

 

「ポッター一家様、この度は身内が大変ぞご迷惑ぶっかけるしたぞりんちょ」

「ごめん語尾と言い回しが気になって話に集中出来ない」

「ハリー黙る」

 

 頬っぺたを引っ張ってハリーの口を塞ぐ。

 私の口封じ(物理)はなんて優しいんだ。

 

「いやぁ、ルシウスさんもお元気いっぱいで嬉しい限定ですぞり!」

「は、はァ……?」

 

 困惑してセブさんと私の間を見たりしているルシウスさん。私が誰か気付いて無いようなので好都合だよね。

 

「私はこの通り、ルシウスさんが言うした通りの容姿。中の上、上の下にぞなりますてまことにビックリ仰天ぞ!ドラコは言うした通り美人となりますたね!いやぁ、影口などという所が似るせず私一安心ですたぞ!」

 

 私が脅しネタとして覚えてなかったとでも思うなよ。1文字1句覚えているからな!『何が我が娘1番だ親バカめ精々中の上か上の下にしかならんだろう、なぁ姫君』『それに比べて私の息子の可愛さと来たらこれは将来美人確定だ!』などとツラツラツラツラ。

 多弁症が貴様は!ノイローゼになるわ!

 

 そこまで言うとルシウスさんはサッと顔色を消していった。

 言葉の意味が分かっているのは恐らく本人とセブさんだけだろう。

 

「ね、セブ先生!」

 

 アイコンタクトを送る。

 『誰かに口を割ったらお前の過去をバラす』とね。もちろんチラリとリリーさんに視線を送ることを忘れない。

 何かしらの弱点なんでしょ。

 

──バタン

 

「へ、あ、父上が倒れた!」

「大丈夫ですか!?ドラコこれ大丈夫!?」

「分かるか!僕は癒者じゃないんだぞ!?」

 

 慌てる子供達とそれを尻目に呆然と立ち尽くす大人達。

 その光景を見ながら小さく言葉を漏らした。

 

「やはりこれはあかんだろ」

 

 ポッターとマルフォイと私が同じ学年で集うという宿命に、世界の殺意の波動を確かに感じた。

 




ドラコ・マルフォイ……この作品でリィンのいとこ。純血主義の貴族であり、胃は弱い。良くも悪くも色々な所が父譲り。生え際とか。
ハリーポッター……原作主人公。魔法界を知らないが原作と違い愛は確かに知っている。母親の方が好きです。父親の愛は重すぎる。

ホグワーツ入学前の子供達はロンドンにある漏れ鍋という店から魔法界のダイアゴン横丁に入ります。リィンはアズカバン直行なので街への入り方とか知りません。

これを機に原作読むことオススメします。もしくはDVD借りて見てみなさい。
原作知識なんてものが無駄になります。
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