3度目の人生は魔法世界で   作:恋音

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第14話 鬼が出るか蛇が出るか

 

「リィン・アズカバンです。よろしく」

 

 ハッフルパフの席に座る先輩方や同級生に挨拶をする。嬉しい事にすんなり受け入れてくれた。

 これで『アズカバンとか、なにそれこわっ…近寄らんとこ…』みたいな反応されても別に気にしないんだけど。

 

 周囲の視線は気になるものも、私より後ろは特にトラブルも無く組み分けが進む。私がトラブルだったという意見は聞かない。

 

 知り合い、と言ってもドラコとハリーだけど2人は別の寮になった。ドラコの視線がウザイ。

 ドラコはスリザリン。ハリーはグリフィンドール。彼らの両親の寮と同じだ。

 

 

 さて、これからどうするかなぁ。

 

 

 そんな事を考えているの校長であるダンブルドアが挨拶を始めた。入ったらいけない部屋だと忠告したり、あまり自分には関係無い話だ。

 

「しかしのォ…──」

 

 不自然に話が区切られ生徒の視線がダンブルドアに集う。

 本人は髭を撫でながら困った様に笑っている。

 

 ……と見えた。

 本意は分からない。

 

「……ん?」

 

 目が合った気がした。どうしよう、凄く嫌な予感がするんだ。

 

「今年はハッフルパフの生徒が多くてのォ、部屋が足りんのじゃよ」

 

 嫌な予感がする(確定)

 

「元々部屋の少ない寮、しかし参った。スリザリン寮なら空いておるんじゃが」

 

 教師陣はちらっとダンブルドアに視線を向けるも特に表立って何かを言おうとする人間は居なかった。待って、待って。

 

 ちょっとだけでいいから待って。

 

「そうじゃ、Ms.()()()()()。お主ならスリザリンでも構うまい」

 

 構います。

 構うからニッコニコ笑顔で私に話しかけないで下さい。

 

「私は、ハッフルパフ生」

「しかし寮も足らん。1人移動するだけでちょうどピッタリなんじゃよ……どこかの部屋が規定より多い人数を入れるとなると、同室の者にも厳しい思いをさせてしまうんじゃ」

「それで私が、選択、訣別、視野……選ぶ?されるはおかしい」

「スリザリンもいいぞ?皆がその素質を持っており、望めばその寮になる。……そう言ったのはMs.アズカバン、キミじゃよ」

 

 痛い所を突いてくる。

 私の発言を鑑みるに、スリザリンでも支障は無い。たどたどしい英語で語るも上手く反論は出来ない。だってグリム─シリウス・ブラック─が適当過ぎて口調の過ちを直してくれなかったんだもん!会話出来る分これでもマシな方だけど!

 

 あ、どうしよう。今急にグリムに会いたい。

 

 体に擦り寄せてくるゴワゴワした毛並みと体温が無いことに違和感と焦燥感を覚えながらダンブルドアを睨みつける。

 それを無視しダンブルドアは再び口を開いた。

 

「それにスリザリンでは広い1人部屋じゃぞ?」

 

 本来、そう、『アズカバンに収容されていた何も知らない人形手前の少女』としてなら、他人の目がある方が良いだろう。

 しかしダンブルドアは『ある程度大人びた子供』にとって最良の選択肢を与えた。グリムから聞いたか、セブさんから聞いたか。

 

 

 

 それにグリムが成人男性という事で1人部屋正直めっちゃ助かる!

 

「………………ハッフルパフがいい」

「では生活拠点がスリザリンというハッフルパフ生でどうじゃ?それに寮の教師はセブルスじゃ」

「………………かま、構う無い、否定構う」

「構わない、と言うことじゃな!ほっほっほ、助かった」

 

 悪役に持っていくために半スリザリン生で助かったって事でファイナルアンサー???

 

 

 1人部屋惹かれたんだよ。グリム、というかシリウスを私以外の異性と同室にするのは流石に不味い。私も話したいし。

 

 

 

 前代未聞。ハッフルパフ生inスリザリン寮という奇妙な生徒がホグワーツに入学した。

 

 

 ==========

 

 

「ハァイ、あたしハンナ・アボット」

「えっと、リィン・アズカバンです。ハンナさん」

「ハンナでいいよ、変わった事になったけど同じハッフルパフ生じゃない!」

 

 晩餐の料理が並ぶ中、組み分けが私より早かった女の子に話しかけられた。ハッフルパフはお人好しが多いからここにしたんだけど、結構反応が気になる。

 

「大変そうね、スリザリンに行くの」

「う、うん」

「困った事があったら頼ってね」

「ありがとう……ハンナ」

 

 私より背の低い人が居ないみたいなので私が自然と見上げる形になってしまう。若干感動して涙が目に溜まるのは仕方ないと思う。

 

 うるうるとした瞳で上目遣いという顔の良さをアピールする結果になった。

 

 胸に手を当てて悶えていた。

 同学年に友人が出来るのは助かる。

 

「やぁ、僕はセドリック・ディゴリー。一応ハッフルパフの先輩になるから、僕も頼って欲しいな」

「ありがと、セドリック……」

 

 隣に座っていた先輩が食べ物を取ってくれた。

 ブラブラと足をばたつかせながら喜びを見せるとイケメンは笑う。

 

 久しぶりにまともな食べ物に有りつけた!凄い!食べるの楽しみ!

 

「イギリス料理ってホント、自国民が自虐ネタに使うのが納得する程不味いわね」

 

 ハンナが何か言っている。しかし私は目の前の料理に釘付けだった。

 早速パンを手に取って確認。わぁ、ふわっとしてる。どちらかというと硬い方なのかもしれないけど間違いなく私が普段食べてるパン(乾燥)より柔らかい。

 早速口に含むと食べ応えのある歯触りに幸せを感じ、麦の香りが幸福感を満たす。

 口の中の水分が無くなるのでトマトスープを口に含めば、簡素な味わいなのだがそれでも美味しくて美味しくて。

 

「私……こんな美味しき食事は初体験……!」

 

 想像以上に食べるという行為に飢えていた。

 ハッフルパフからだけで無く様々な所から視線を感じるんだがそんな事気にせず『食べる』楽しみと幸せを料理と共に噛み締める。

 

 イギリス料理が不味い?他国の料理は美味い?

 そんなものカビ付き乾燥パンに比べたら微々たる差なんだよォ!

 

「し、しっかり食べるんだよォ!」

 

 あ、ハンナさん頭をグッシャグシャにしながら撫でるのは勘弁してください。食事中は邪魔。

 

 

 

 

 ホグワーツ生活にひとつの楽しみを見出し、他人より遥かに少ない量の食べ物で久しぶりの満腹を感じていると、意を決した様子で誰か先輩が話しかけた。

 

「リィン、貴女の家名はアズカバンなのよね?」

「そうぞ〜。私、気付いた時からずっとアズカバンに居るです」

「きづいたときから」

「パンもカチカチで、お水が透明と不明でした」

「水は無色透明だよォ……セドリックパス……」

 

 苦笑いを零しながらセドリックが変わる。

 

「なんでアズカバンに?」

「……パパが……めっ、なの」

「キミのお父さん?」

「私、分からぬ。不明、不規則、理解不能、分からぬ。でも、アズカバンは私の家……辛い」

 

 アズカバンは放置気味なこともあり生活しやすい。『アズカバンに放り込むぞ!』が法的最終手段ならば私にも適用しておいて欲しい。生まれたことが罪=アズカバン、ならば、悪い事した=アズカバンでも何も支障は無い。

 アズカバンは怖い。その認識をしている、って事を周りに知ってもらって置いたら良い。

 

「まぁ何より栄養不足は否めないね……」

 

 ボソッと1番の問題点をセドリックが呟く。

 それは私も思います。

 

 

 ==========

 

 

「困ったら絶対言うんだよ」

 

 という言質をセドリックから取ったので地下室にあるというスリザリン寮に向かう。ハッフルパフの寮に1度顔を出して、ようやくだ。グリムにも会いたいし。早く。

 

「はぁ……」

 

 でも気が重たい。

 父親を出せば1発で大丈夫だと思うが、純血思想の多いスリザリンで異質な者がやって行けるのか?まぁセブさんに頼めば基本は大丈夫だが。

 

「よし!」

 

 気合いを入れて合言葉を述べる。扉を開けると談話室が目の前に飛び込んできた。重々しい感じと言えばそれまでだが重圧感が質の良さと上品さを見せつけている。

 

 談話室に居た者達と目が合う。どうやら寮の説明の最中だったようだ。

 

「リィン!」

 

 ドラコが私を見つけて駆け寄る。あ、良かった知り合いいて、ホント良かった。

 

「お前の家名どういうことだ馬鹿!」

「馬鹿ァ?分かった待ってドラコ。ね?ね?」

「めちゃくちゃ探したんだぞ?この僕が!一体組み分けが始まるまでどこにいたんだ!」

「アズカバン、出るして、姿くらましでこちらに直接歩行開始を……」

「探し損した!」

 

 理不尽な罵倒にふくれっ面をする。

 さて、7年間この寮でお世話になるのか。

 

「所でリィン、お前父上とどんな関係だ?」

「へ?」

「まぁアズカバンに居たのなら分からないかもしれないが……」

 

 ルシウスさんの話題が出て寮がピリッとした空気に変わる。

 へぇ……グリムからの話でマルフォイっていうのはそれなりに地位の高い家だって聞いてたから納得だ。

 

「説明聞かぬの?」

「僕は『マルフォイ』だ。表立って避難する人間も居ないし、スリザリンの事なら分かっている」

 

「なればそのマルフォイが頭の上がらぬ私ってホントに何ぞり」

「それは僕が聞きたい」

 

 ドラコはそう言うと恭しく手を差し出した。

 

「では父上の言う通り丁重に扱うとしよう」

「上から目線のエスコートぞね」

 

 ドラコの思惑を有難く思いながら手を取る。

 ハッフルパフの私はスリザリンに馴染みにくいだろう。制服の色が違うのが目立つ。それでも私に危害が加えられない様に、というか扱いが難しい私をスリザリンに馴染ませてくれる。

 

 私も察する事が出来たので『本来スリザリンに行くはずだった(素質有り)ハッフルパフ生』という立場で過ごした方がいいのかもしれない。

 

「初めまして、リィン・アズカバンです。礼儀作法どころかおしゃべりぞ疎いです。よろしゅ、よろしくお願いします。」

 

 ぺこっと頭を下げる。

 スリザリンの同級生や先輩方は随分優しいみたいで過度な接触をして来なかった。マルフォイの名前が本当に強い。

 

 スリザリン生は仲間内に親切で過保護みたい。

 ホグワーツ内部では迷子にならない様にしばらく先輩達と行動を共にしてなれる見たい。

 

 手を繋いで私が居なかった時の寮の説明をしてくれる。備え付けの紅茶とかは使っていいらしいし、寮内での扱いはスリザリン生と同じみたい。

 細かい事は自分達にも分からないのでスネイプ先生に聞けって、言ってたから後でセブさんの所に行かないと。

 

「ドラコ、ドラコ」

 

 解散の号令が掛けられまばらに生徒が散っていく最中、私は頼りになる友の名前を呼んだ。

 

「なんだ?」

「関係の、質疑応答」

「えーっと……僕の質問に対する回答をしてくれる、と?」

 

 その言葉に部屋に行こうとしていた人達は思わず立ち止まった。そりゃ気になるよね。

 

「私とドラコ、従兄妹ぞ」

 

 スリザリンの時が一瞬で止まった。

 

 私にとってルシウスさんは伯父さん。つまりその逆も然り。

 私はとっても優しいからドラコの叔父さんが闇の帝王だと言うのは言わないであげるね。

 

 

 

 

 ──今は。

 

「はぁぁぁああぁぁあ!?」

 

 ドラコの絶叫を聞きながら部屋に向かった。




誰が予想したであろう、この展開を。多分別の寮を住処にする生徒って二次創作でないと思う。けどどうしてもスリザリンに入れたかった。ダンブルドアの咄嗟の足掻き。
ハッフルパフ生=闇の魔法族になる可能性が無い人、だからね。
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