3度目の人生は魔法世界で   作:恋音

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第20話 真夜中のティー

 

「まぁまぁまぁまぁ」

「……ミネルバ」

 

 泣き疲れた一年生を四人。腕に抱えたスネイプは口元に手を当てたマクゴナガルに対して恨むように目線を向けた。

 

「セブルス、貴方上に向かいませんでしたか」

「……呼ばれましたので」

 

 どういうことか分からないが、まるでポートキーで移動したかのように己の場所が変わっていた。目の前にトロールが現れたのかと思ったが、これである。

 スネイプは眉間に皺を寄せ、1番近くでスピスピ鼻を鳴らして眠りこけた金髪のクソガキを恨んだ。

 

「(我輩を、顎で使おうと。呼び寄せようとする人間など姫君しかおるまい)」

 

 特に残りがグリフィンドール生だと言うのだから、彼らに『スネイプに助けを求める』という思考が過ぎるとは思うまい。

 

「……はぁ」

 

 はてさて、どうして移動してしまったものか。三つ首の犬が罠として機能していることを確認したはいいが、なんの予兆もなく呼び寄せられた。

 

「それにしてもなぜ寮にいるはずの子供たちがこんな場所に……」

「さて。無謀にもトロール退治でもしたのではあるまいか」

 

 スネイプが呼び寄せられた直後。

 リィンはスネイプにへばりつきながら言った単語はふたつ。『トロール』と『ハリー』だ。

 トロールはまだ分かる。だが、ハリーという名前を口に出した。

 

「(我輩にハリー・ポッターの名前を出せば、行動すると考えての発言、であろう)」

 

 とんでもなく厄介極まりない。

 ぺティグリューの入れ知恵か。※シリウス

 

「セブルスや」

「校長」

 

 マクゴナガルだけでは無く、ダンブルドアや他の教師も続々集まってきた。スネイプは、ため息を吐いた。

 

「状況を教えてくれぬか」

 

 スネイプが端的に情報を説明しているそばで、リィンのペットの犬が利口なのか会話を理解しているように頷いていた。

 

「……おそらく、魔力の暴走があったのでしょう。それにより、あー、幼い頃に会ったことがある我輩を『頼れる大人』と無意識下で呼び寄せたものかと」

 

 推測を口にすれば、少し迷ったように頷く。

 それをダンブルドアも確認していた。

 

「そして、安心したのか泣き疲れ、この有様ですな」

「……なんと」

 

 ダンブルドアは驚いた顔をした。

 

「とにかく、生徒たちを寮に。ミネルバ、セブルス、頼まれてくれるな」

「わかりました」

「はい」

 

 リィンはあくまでもハッフルパフではあるが、部屋の数の問題上スリザリンで寝泊まりしている。

 それに、スネイプが身近だと、何かと都合がいい。

 

 マクゴナガルは魔法でグリフィンドールの三人を浮かせた。スネイプもそれに習おうとしたのだが、嫌な予感がして後生大事に手で抱えなおした。

 

 足元で犬と、クィレルの頭の後ろで父親がめっちゃ観察していたので、セコムの試験に滑り込みセーフした。

 

「(軽い……軽すぎるな)」

 

 己は虐待寄りで育っていた為、学生は今より不健康で小柄だった。しかし、おそらく、それ以下であろう。

 

 Ms.アズカバン。

 『家』名に込められた意味を改めて認識したが、今のスネイプに出来ることは何も無い。

 

 部屋に運び入れ、ペットの黒い犬に向かって『きちんと守るように』と言い放つだけだった。

 

 

 

「……てめぇに言われなくとも」

 

 

 

 ==========

 

 

 

「──ティー、起きろ」

「……はぁい」

「お前、どうやってスニベルス呼び出した?」

 

 寝起き、ドアップでシリウス・ブラックの顔面があって流石にびっくりした。

 顔がいいのは分かったからさ、グリムは犬の時の距離感と人間の時の距離感を少しは考えようね。

 

「まずそもそも、スニベルスはティーにとって世話係って認識であってるよな」

「いぐざくとりー」

「で、スニベルスは闇の帝王の部下。あいつが今何を企んでんのか知らねえが、ティーにとっては敵とは言い難いと」

「味方とも言う難きですが」

 

 私の杖を使って振るうと、ティーセットが用意されて暖かい紅茶が注がれる。魔法の便利で優しい部分を味わうと、胃がじんわりと暖かくなった。

 

「んで、トロールと対峙した時急にスニベルスが現れたが、あれティーがやったんだろ?」

「うん」

「あいつは『魔力暴走だろう』って推測してたし、説明は事実だから俺も頷いた。ダンブルドアもそうお考えだろう」

「まぁ、そうですねぇ」

 

 私は首元からペンダントを取り出した。

 

「これ、パパからあげるされたお世話係強制呼び出しペンダントですぞり」

「すんげえ嫌な言葉の羅列」

「私蛇語使えるです」

「……蛇語なぁ。スリザリン、って感じだな」

 

 スリザリンの寮のモチーフがスリザリンだからだろう。私はそのまま説明をつづけた。

 

「蛇語でセブさんの名前を呼ぶすれば、今回みたいにするが可能ですてね」

「…………なるほど、言葉で反応するポートキーか。これまた、技術面とんでもないな」

「そうなのです?」

「おう」

 

 グリムは少し嫌そうな顔をした。

 耳の先までピクリと動いて、顔つきは犬のときより複雑だ。

 

「これ、スネイプのやつ、機能知らないだろ」

「多分ご存知なきです」

 

 私はペンダントをひらひらと見せびらかす。

 するとグリムの眉間の皺が、まるで新しい迷路を刻むかのように深くなった。

 

「蛇語ってことは、闇の帝王かティーにしか使えないって事だろ? つまりスネイプ側で防ぐ術は無い、と」

「推定」

 

 そう。

 一切の拒否権は無いものと見ている。もちろん調べられたり対策は打たれるかもしれないけど、闇陣営(娘である私)の味方のフリをしている現状では、下手に動けるはずがない。

 

「さらに言うなれば、多分パパは『危険な目にあった時、最悪盾にする』って気持ちでやったと思うです」

「最悪かよ」

 

 だって私の目の前に来たんだもん。

 私と敵対者の間に居るってことは、対応出来なければ盾になって死ぬってことだもんね。

 

 

 するとグリムは、笑顔で微笑んだ。え、何、怖。

 

「それにしてもハリーはいい子だよなぁ」

 

 出た。ジェームズ・ポッター賛歌。

 来たぞ、また始まったぞ。

 ホグワーツに通い始めてから、留まるところを知らない。

 

「目元なんか、ジェームズにそっくりだしな。あの悪戯っ子みたいな笑い方も……」

「でも中身は結構真面目ですぞね」

「そこがリリー似なんだ!最高だろ?ジェームズとリリーのいいとこ取りだ!」

 

 目を輝かせて熱弁するグリム。

 ハリーを褒めているようで、実はジェームズ・ポッターとリリー・ポッターを褒めているだけじゃない?

 

「……で、結局ジェームズの話になる、と」

「なるっ!」

「即答した……」

 

 私は紅茶をすすりながら死んだ魚のような目になる。耳からタコが出て床を這い始めた気がした。

 

「いいか、ティー。ジェームズは本当に最高のやつだったんだ。毎晩のように寮でイタズラ計画を立てて、マラソンみたいに走り回って……! マクゴナガル先生に捕まっても、しれっと『僕じゃありません』って顔をするんだ。で、俺も隣で『その通りだ!』って合わせるんだよ」

「……それ、完全に共犯者ぞり。はた迷惑属性の」

「違う違う!友情だ!そう、男の友情!」

 

 何が違うのか、私には分からない。

 

「ジェームズは頭の回転も早かったし、魔法の腕も抜群でさ。授業で先生がちょっとでもボソッとミスったら、それを拾って大騒ぎにするんだ。俺なんかゲラゲラ笑い転げてさ……あの頃は本当に楽しかった」

「……ハリーの話はどこ行きますた?」

「してるだろ!だってハリーはジェームズの子だぞ!」

「それはそうですけど……」

 

 論理の飛躍がすごい。

 ハリーの「いい子さ」を語るはずが、結局ジェームズ自慢に着地している。

 

「リリーがジェームズを叱るときもさぁ、あの眉をひそめる顔……いやぁ、あれは怖かった。でも、その後でジェームズがリリーを笑わせるんだよ。あの二人の掛け合いは、もう舞台劇の域に達してたな!」

「……。」

「ハリーの中にはその全部があるんだ! ジェームズの悪戯っ子な目と、リリーの真面目な心と、二人の愛情がな!」

 

 拳を握って熱弁するグリム。

 私は、どう反応したものか分からず、ひとまず紅茶をすする。

 熱すぎて舌をやけどした。

 

「……で、その話、何回目ですたっけ」

「七回目だ」

「自覚ぞ存在あるですか」

 

 私は死んだ魚のような目をしてしまった。

 グリムは全く気にせず、むしろもっと話したそうに身を乗り出してくる。

 

 

「でもさ、グリムって」

「ん?」

「ジェームズ・ポッターにバレるすてるよね?」

 

 グリムがペットとして連れてこれられた時、ジェームズ・ポッターは明らかにグリムの事を知った様子で。人違いならぬ犬違いをしてくれれば良かったのだけど、確信した様子だった。

 

 グリムは頭を掻き回して、そうなんだよな、と悩んだように呟いた。

 

「こればかりはダンブルドアに相談してみる。ティーに悪影響を及ぼす事は無いだろうし」

「ありがと〜」

 

 私は軽く返事したけれど、心のどこかで考えていた。

 

 グリムは本当に、ハリーをジェームズの亡霊みたいに見ている。ミニマムジェームズだと思っている。

 でも、ハリーはジェームズじゃない。リリーでもない。

 そのことに、彼がちゃんと気付く日は来るんだろうか。

 

 私が小さなヴォルデモートでは無く、リィンだってことを自覚する日は来るのだろうか。

 

 ……とりあえず、またハリーのことを「いい子だ」って言い出す前に、紅茶のおかわりを淹れて口を塞ぐことに決めた。

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