ハロウィンが終わり、グリフィンドールの3人組のセブさんを見る目が変わった。
ちなみに、翌日すぐセブさんに『どうやって吾輩を呼び寄せたのだ』って確認されたけど、よく分からない状態で混乱していた事を拙いながらも伝えると、渋々納得したようだった。
セブさんはオリジナル魔法でトロールを切り裂き、私が泣きながら感謝したせいかは分からないのだけど。
現状『過剰表現された救世主の尊敬すべき先生』のイメージ図。
そんなセブさんに対して、3人組はキラキラした視線を向けている。
「……Ms.グレンジャー。誰がそこまでいえと言った?傲慢な言い方にグリフィンドール5点減点」
「私の言い方にまで指導していただけるのですね…!ありがとうございます」
「…………Mr.ウィーズリー。貴様はどうやら集中力が足りない様子、勉学以前に取り組むための基礎がなっていない。グリフィンドール5点減点」
「なるほどぉ、さっすがスネイプ先生!」
「………………ポッター、図書館の本は校外に持ち出してはならん。グリフィンドール5点減点」
「スネイプ先生のことだから何か考えがあるんですね、わかりました」
「──なぜそうなるグリフィンドール脳め!!!??」※少しでもいい印象を抱けばバカ正直に信じる思考回路のことを言う
私は罰則と称してセブさんに呼び出され愚痴を聞かされていた。
11月に入ったホグワーツはとても寒く、なんだかんだと魔法を駆使して快適な空間を作り出していたアズカバンに比べて凍えるような日々が続いていた。
セブさんは部屋を暖かくして私に紅茶を注いだあと頭を抱え始めたのだ。多分、そういうとこ。
「セブさん、何故私にぞそれ言うです」
「……姫君の企みでしょう?」
私に訝しげな視線を向けてくる。
その視線をかいくぐって足元のグリムをひとなですると、私は紅茶に手を付けた。
「しゃっきり不明ぞり」
「……『検討がつかない』、ですな」
「けんとーぞ不時着」
「なぜ………………」
さっぱりわかんないなぁ、って呟いたら言語訂正入った。悲しい。
「何を企んでらっしゃるので?僭越ながら、我輩に出来るとであれば極力お力になりますが」
本心からそう思ってるわけではないだろう。
余計に振り回されるのが嫌だから、先に釘を刺してきたんだろうな。
「別に」
私は何も企んでない、というようなポーズを取りながらソファにもたれかかった。
「ただ、嫌われるよりは、好かれる方が良きではなきですか」
セブさんは味方では無い。今のところ敵とは言い難いけれど、味方と断言出来るような人物ではない。私を最優先の位置には置かないから。
だから私の位置を押し上げておきたいという企みはある。
「…………それこそ、余計なお世話というものですな」
嫌われる方がしょうに合っているのか、セブさんはわかりやすい嫌味だけを口に出した。
面倒臭い男だよ、本当に。
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クィディッチの試合当日、私は観客席から目を丸くした。
驚くべきことに、出場選手の中に一年生のハリーがいるではないか。
クィディッチという競技は、私にはまだ馴染みが薄い。
だから隣でドラコが、得意げにルールを解説してくれていた。
クィディッチとは、箒に乗ってプレイする1チーム7人で行う空中の対戦球技というものらしい。
2チームに分かれ、所定の球をゴールに投入して得点を競う、バスケットボールやサッカーなどに似た球技のよう。クアッフルと呼ばれる大きな赤い球をゴールに投げ入れて点を稼ぎ、二つあるブラッジャーはプレイヤーを狙ってぶっ飛んでくる危険球、さらに金色の小さな羽つきボール、スニッチをシーカーが捕まえた瞬間試合終了──そんなスポーツだ。
ルールは複雑だけど、つまりは「飛んで暴れて得点する」ゲーム、という理解でいいらしい。
魔法界においてもっとも人気のあるスポーツで、ホグワーツでは2年生以上がクィディッチチームというのを各寮で参加できるとのこと。
ハリーは授業でその才覚を見せ、マクゴナガル先生に目をかけられたため選手として出場している。
「才能ってズルゥイ……」
「リィンも上手いって聞いたけど?箒の授業で一番早く浮き上がったって」
ドラコが横目でこちらを見て得意げに言う。
私は肩をすくめながらも、心の中では同意していた。
──箒、楽しかったなぁ。
あの風の感覚、地面が遠ざかるあの高揚感。
今、グラウンドでビュンビュンと飛び回る選手たちを見ると、胸の奥がうずいて仕方ない。
「君がスリザリンなら僕が推薦したんだけどね」
「ドラコが?」
「もちろん僕も選手には立候補するけど、君は女の子だから舐められやすいだろう。その点、マルフォイの僕がフォローすればアズカバンという家名だとて問題ない」
相変わらず自信満々な口ぶりだ。
私は空を見上げながら、少しだけ笑った。
「私も、マルフォイですもんね」
それどころの話じゃないけど。
ドラコの従妹ではあるけれど、私は闇の帝王の娘だからね。自分で言っておいて心の中で苦笑する。これをアドバンテージと取るかハンデと取るかは私の身の振り方次第とはいえ、今のところ厄介極まりない。
私はハロウィンのあの日、アズカバンに入れられたのだから。生まれたことが罪として。
「あ、今あの選手がしたのがブラッジャー逆手打ちで……」
私は半分もルールを理解していないので、ドラコの熱弁をとりあえずふむふむと聞き流す。
と、そんな時だった。
「……あれ?」
空を飛ぶハリーの姿が、妙に傾いた。
箒が勝手に暴れているみたいに、上下に激しく揺さぶられている。ハリーは必死にしがみついて、体勢を立て直そうとしていた。
それは、素人の私が見ても異常だった。
「箒に呪いか!?」
「呪いって……?」
「箒に細工なんてできるのは、よほど強力な闇の魔術だけだぞ! しかもあれ、ニンバス2000だろ? 最新式だ!」
なるほど、つまり。
『とても難しいことを今誰かがやってる』ということだ。
教師レベルじゃなきゃ無理。つまり、ここにいる大人が怪しい。
人為的な可能性が高そうなので私は迷いなく教員席を見た。
足元のグリムが心配そうにクンクンと甲高い悲鳴をあげている。
「あ……」
分かった。いや、感じた。
肌の奥がチリチリする、闇の魔術特有の懐かしい感覚。
うそ、でしょ。
もしかして強力な闇の魔術に関しては、私、感知力高い?
……まぁ可能性あるよね。生まれてから闇の魔術に囲まれていたり、アズカバンにいたり、グリム(シリウス・ブラック)と一緒にいる時間が長いんだから。
「……いた」
教員席でそれっぽい行動をしている人物が2人。
セブルス・スネイプとクィレル先生だ。
どっちか……あるいは両方か。
私はポケットから杖を取り出し、ためらわず唱えた。
「"ネビュラス"」
霧よ。
私の呪文が教員席に広がり、教員席では周囲が見えないほどの霧に取り囲まれた。
闇の魔術は呪いをかける対象を見続けなければならないという特性がある。インペリオとかがそう。ベラの凝視はめちゃくちゃ怖かった。
だから物理的に呪いを遮ってしまえばいい。
「(正直、どっちでもありうるんだよな)」
どちらの教師が掛けているのか、それともどちらもかけているのか。
私はクィレル先生の事はあまり知らず、セブさんの事の方は知りすぎるほど知っているけどどちらも可能性として有り得る。
なら同時に封じてしまえばいい。
「さぁ、どっちだ」
私の初めての友達に手を出したクソ馬鹿野郎は。
私はすぐさま試合後、ハリーへのねぎらいをドラコに任せて教師たちの元へ急いだ。
「Ms.アズカ……」
「後」
お前はあとだ。
セブさんが私に声をかけようとするけれど、私は鋭く命令だけ下して視線で制した。
黙ってろセブルス・スネイプ。
「……っ」
私の様子を確認したセブさんは素直に引き下がった。
腹の中が煮えたぎるほど不愉快な感情に襲われている。誰の許可で私の友達に手を出したんだ。不愉快で、不愉快で、とても冷静になれない。
私のためにハリーが危険な目に遭うのは百歩譲っていいとしよう。私のためになるなら。
でも私の知らないところで勝手に私の友達を危険な目にあわせた落とし前だけはとってもらわなくちゃ。
それがセブさんなら私はあんたのことを容赦しない。だから追って沙汰を待て。
「クィレル先生」
「みっ、Ms.アズ、アズカバン。ど、どうされ、ましたか」
「少し、話ぞ存在するです。ちょこっとだけお時間、よろしきですか?」
私はクィレル先生の服を掴んで微笑みかけた。
ちゃんと笑えているか分からないけれど。
「い、いや、私は、あの、これから、あ、ああ明日の授業のじゅっ、準備かあるため」
「なれば手伝うします」
だからいいよね。
何度か言い逃れをしようとしたクィレルの引き際の悪さにイラついて私は思わず舌打ちをしてしまう。
「(ビクッ)」
あぁ、分かった。
──こいつか。
「お前、私が誰かご存知ない?」
「み、Ms.リィン・アズカバンですよね……?」
「へぇ?」
この世界でハリーを殺したいような人間って、私が知らないだけで複数いるのだろうか。
闇の帝王を打ち破りし子供。
生き残った子。
なーんてハリーは言われているから、狙われるなら闇の帝王一派だと思っていた。
「良きですかクィレル先生。最初に言っておきます」
私がこれを口に出すことで私は本当に、本格的に、闇陣営には居れないかもしれない。
けど、ダンブルドアや他の生徒たちが聞き耳を立てていることや人の流れがある場所だから宣言しておく。
「ハリーは私の友達です!」
「はっ、はい!」
「わたしの友達、害、傷、つけるがこと、私、絶対、絶対。絶対許せぬですっ!先生、闇の魔術の先生でしょ!あの箒、めちゃくちゃにした犯人!私許せぬです!」
DADAの先生なら解決してよ。
そんな気持ちを込めて私はクィレル先生の服を掴んで宣言した。
この場にいる闇に通じている家の者はまだ私の正体に気付いてないかもしれない。
けど、気付いた瞬間、是非とも思い出して欲しい。
『闇の帝王の娘』がハリーを傷付けることを許していないということを。
「り、リィン……!僕も大事な友達だよ!僕らはベストフレンドだ!」
因みにこれを聞いていたハリーがジェームズポッター化したのは、まぁ、うん、シリウスがうるさかったということだけ言っておこう。