「やあ僕の友達!元気そうだね」
「友達辞退許可ぞもらうすてもいい?」
ハリーがどちゃくそにうざくなってしまった。
こ、このグリフィンドール脳…!
部屋に戻れば『ハリーのティーに対する態度は俺に対するジェーそっくりで』と話が始まり。
大広間に出れば『やぁ僕の大親友!』みたいな面してハリーが始まる。
名付け親子うるせぇ〜〜〜〜〜〜〜。
「僕らさ、もう親友と言っても過言では無いと思うんだ。ねぇマイベストフレンド」
「うーん……」
ここまで好感度爆上げになるとは思ってもみなかった。
ちなみにセブさんには見捨てられたよ。私が助けての視線を向けても嫌そうな顔して気付かないフリをされてしまった。殺したい。
「お、君のペットも嬉しそうだよ」
「グリム……」
食べ物も喉に入らない。
私は深く深くため息を吐いた。
「ハリー……」
「なんだいマイフレンド」
「席、戻る、行け」
「ははっ!そんな寂しいこと言わないでよ!照れてるの?」
うぜーーーー!!!
そんなうんざりする日々が続き、12月のクリスマス。
『姫君、良ければ、う、うちに滞在されますか?』
ドラコを迎えに来たMr.ルシウス・マルフォイがご機嫌伺いをしてきたクリスマス休暇。
そう、ホグワーツではクリスマス休暇は帰宅する生徒が多いようで、スリザリンでもハッフルパフでも殆どの人間が家に帰るので、閑散としている。
私は家がアズカバンなので帰れない。帰ろうと思ってももちろん帰れるけど、帰りたがらない少女を積極的に演じたいと思います。まぁ実際ご飯の美味しさがあるのでアズカバンには帰りたくないんですけども。
1人しか居ないスリザリンから出て、グリムを連れて大広間にやって来ていた。
「メリークリスマス」
「メリークリスマス!」
寝ぼけ眼を擦りながらロンがグリフィンドール塔の方向からやってきたのでクリスマスの挨拶をする。
「リィン、スリザリンに人っていたの?」
「ううん、微塵も。皆無ぞり。ロン、来る?」
「うわっちょっと気になるけど……女の子1人のとこに行くのは無理かな」
グリフィンドールには『食い扶持が増えるから』という理由でウィーズリーが残っているらしい。私はロンくらいしか交流が無いので、まっさきに声をかけていた。
正直ハリーとドラコは最初の友達ではあるけど親の関係の確執があるし特別感がある。その点ロンとハーマイオニーは特に因縁がなく、純粋なお友達という感じがするのだ。
「それにしても良かったじゃん、ハリー帰って」
「ううん……」
ハリーの友情大爆発の姿を見て哀れんでいたロンはそう声をかけた。
「ま、嫌われるよりは好かれる方がいいでしょ。Ms.アズカバン?」
「そう、ですけどぉ……」
立場的にハリーに好かれるのはとても命が助かる。それはそれとしてここまで精神に来るとは思わなかった。
ハリーの行動がジェームズ・ポッターに似てるってことは、これを掻い潜った上に惚れたリリー・ポッターってとんでもない聖女なのでは……?
「はぁ……」
「ところでさ、クリスマスプレゼントがあるんだけどあげてもいい?」
「えっ」
ため息を吐き出した私にロンが衝撃的なことを言ってくれた。
「クリスマスプレゼント……?」
「何その今までクリスマスプレゼント貰ったことないみたいな反……いや、うん、やっぱりなしで。はいこれ」
ロンは私に黄色と緑でできたマフラーを渡してくれた。
「僕が用意したって言うか、ママが編み物得意だから、作ったのはママなんだけど」
「……ロンがお願いすてくれたです?」
「まぁ、ね」
ホグワーツの制服にはマフラーがある。ただ、私は持ってなかった。ニットはスリザリンの先輩がお下がりとしてくれたけど、あくまでもスリザリンの色味だから寮の中でしか使えない。それから手持ちはローブと、スカートと、シャツ。それくらい。
寒さには強いというか、寒さを何とかする魔法がいくつかあるから特に不便には思ってなかったんだけど。……あ、ここ笑うところね。アズカバンジョークだよ。
そんなこんなで、お金もないからプラスαの制服を持ち合わせていなかったのだ。
スラックスとかマフラーとか冬スカートだとか。なんなら私服はほぼない。強請ろうかな。
「マフラー……」
「君、ハッフルパフ生だろ?でもスリザリンにいるし、表面に色がいっぱい出るやつ使いにくいかと思って。だからハッフルパフとスリザリンのミックスカラーにしてもらったんだけど」
ロンの心遣いはどちらの寮の人と一緒に居ても違和感が少なくなるようにというものだった。
私は早速マフラーを身につける。ありがたい……本当にありがたい……。
「ありがとう、ロン。ずっと大事にするです」
「ふぅん……。どーも。ママにお礼言っとくよ」
「ロンのママだけではなく、ロンにもすごくすごく感謝感激雨嵐ぞり」
ロンは素っ気なくあっそ、と言って七面鳥のグリルを頬張り始めた。
「やぁ、そこのレディ」
「メリークリスマス」
するとそっくりな顔の双子が現れた。ホグワーツ生は顔で違いが分かりにくいから名前の判別がすこぶる難しいのだけど、これは本当に分からないや……。
「こんにちは、メリークリスマス」
「ロニー坊やと仲良くしてくれてありがとう」
「君がホグワーツのトリックスター、Ms.アズカバンだね」
「お会いできて光栄だよ。僕はフレッド」
「僕はジョージ」
「「今日はママのセーターを着てるから見分けが着いちゃうね」」
その言葉に服を見てみれば、FとJのアルファベット。なるほど。
「Fがジョージで、Jがフレッド?」
「驚いた!」
「なんで分かったんだい?」
「何となくぞり……」
悪戯好きっていうのは知ってたし、どうせ素直な自己紹介はしてくれないんだろうなって思ってたから。
「ロン達から会話はいっぱい視聴ぞすてるです」
「「??」」
「僕から話は聞いてるよ、って言ってるんだよ」
「なるほど?」
「こりゃわからん」
「それにしてもちっさいな」
「あぁ、誰よりもちっさい。フリットウィック先生には負けるけどな、ギリギリ」
私はやれやれと肩を竦めた。
「アズカビャン……アズカバン生活で、まともな食事ぞ摂取可能だと思考するですか?」
「「????」」
「……アズカバン生活でまともな食事を取れると思ってるのか、って言ってるよ。リィン、初対面の人には長文を喋らないの」
「ぐぬぬ、解せぬ」
「解して」
ロンの翻訳にフレッドとジョージはなるほど、と納得した表情をした。
「というか、Ms.アズカバンって本当に家がアズカバンなんだ」
「何をしたらそうなるんだ?」
「しゃっきり不明〜〜〜」
ウィーズリーにはもう一人兄弟がホグワーツにいるらしく、2人は『いっぱい食べて大きくなるんだぞ』と言って去っていった。
言われずとも、お腹の許す限りは食べようと思いますとも。《》
こんなすばらしいクリスマスのご馳走は、私にとって初めてのことだ。
いや、本当に幼少期、1歳以下の時はあったけど。離乳食の時代のご馳走なんて察するようなレベルだ。
丸々太った七面鳥のロースト百羽、山盛りのローストポテトとゆでポテト、大皿に盛った太いソーセージ、深皿いっぱいのバター煮の豆、銀の器に入ったコッテリとした肉汁とクランベリーソース。
テーブルのあちこちに魔法のクラッカーが山のように置いてある。
私の記憶の中にあるクラッカーの常識とは違うそれ。
ロンと協力して引っ張ったクラッカーは、大砲のような音をたてて爆発し、青い煙がモクモクと周り中に立ち込め、中から海軍少将の帽子と生きた二十日ねずみが数匹飛び出した。
ダンブルドアは三角帽子と花飾りのついた婦人用の帽子とを交換してかぶり、クラッカーに入っていたジョークの紙をフリットウィック先生が読見上げていた。ハグリッドという巨大の森番はワインを何杯も飲んでいるせいか顔を真っ赤にし、マクゴナガル先生の頬にキスをしていた。
朝からいっぱい食べたせいか、体が重たくて、昼にはウィーズリーの四兄弟と猛烈な雪合戦を楽しんだ。雪にあたってビッショリ濡れて寒くて、ゼイゼイ息をはずませながら魔法を使って乾かした。
午後はゆっくり紅茶でも飲みながらセブさんの所へおじゃまし、ソファで軽く居眠りをすればあっという間に夕飯の時間になった。
夕飯ではロン達が寮でチェスをやっていたと聞いて、私もチェスのルールを教えてもらいながら食事を楽しんだ。七面鳥のサンドイッチ、マフィン、トライフル、クリスマスケーキ。
どれも一口ずつしか食べられなかったけど、とても楽しいクリスマスを過ごしていた。
「はぁ……疲れるすた……」
スリザリン寮に戻って一人で談話室の暖炉の前で寛ぐ。
人の気配が何も無い場所はどうにも寂しくて。
そこで私はチャンスだと思った。
「よし、グリム、行くぞり」
私は枕と毛布を持って、部屋着のまま外に飛び出した。
──コンコン
扉を叩く。
出歩きを禁止されている夜に響くノックの音は、ホラーの気配を感じさせるものだ。
へへ、お化けはこわいけど、ゴーストも怖いけど、アズカバンより数倍マシなもので。
「何事ですか?」
扉を開いて私を見下ろした人物はマクゴナガル先生だった。
「まぁ、Ms.アズカバン。今は出歩いては行けない時間ですよ」
「あの、わかる、すてます。マクゴにゃ、……先生」
名前は舌を噛むのでちょっと省略。
「ごめんなさい。スリザリン、1人もおらぬですて。その……その……えっと……」
モジモジと躊躇ったような私の態度に察するところがあったのかマクゴナガル先生はしゃがんで私に視線を合わせてくれた。
貰い物の中でも大きな服を着た私の姿はさぞかしい小さく見えただろう。
「寂しくなりましたか?」
「……はい」
「そうですか、ふふ、特別ですよ。今日はクリスマスですから」
マクゴナガル先生は私を部屋に招いてくれたのだった。やったぜ。グリムは変身術の先生の部屋に入ることで正体がバレないか心配していたようだけど、私的には大満足のクリスマスになった。
「──ねぇマイフレンド!死の秘宝って知ってる?」
そーーーーーんなことを抜かすハリー・ポッターが新学期に現れなければ、もっと大満足だったかもしれないけどね。