3度目の人生は魔法世界で   作:恋音

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第23話 死の秘宝の透明マント

 

 新学期。

 実家に帰っていたハーミーやハリーが帰ってきた。帰ってきた瞬間、興奮したようなハリーに捕まったので、私はドラコの手を掴んだ。

 

「僕のことはいい、僕に構わず行け!」

「いやぞり!逃がすてたまるか!!」

 

 私はズルズルとドラコを引きずり、勢いのまま詰め寄るハリーの防波堤として盾にした。

 

「それで、死の秘宝って?」

「私も知らないわ」

 

 私の言葉よりハーミーの言葉に皆は驚いていた。

 

「おいおい、学年首席との噂が名高いハーマイオニーが知らないだって?冗談も程々にしろよ。3歳児でも知ってるぜ?」

「僕もそれくらいの時には両親から聞かされてたよ。リィンはともかくハーマイオニーは両親がいるでしょ?」

 

 しかしハーミーは涼しい顔で応戦した。

 

「あら、それって私が魔法界の伝統に詳しそうに見えるってこと?ありがとう。ただ残念ね、私はマグル育ちなの。そんな私に勉強を尋ねてくる人が何人もいるのは……まあ、光栄だけれど?」

 

 皆様口がお上手で。

 空気がうっと詰まり、みんなが視線をそらす。

 

「いいなぁ、私も嫌味ぞすたいです」

「じゃあ君も何か言ってみれば?まあ、アズカバン育ちでは言葉の角の磨き方を教わる機会が無かっただろうけど」

 

 ドラコに嫌味を言われたので、私はドラコに対して嫌味で返すことにした。

 

「肯定するです。親に一から教えるすてもらった訳じゃないので、皆が羨ましきですぞ」

 

 意訳:温室育ちのおぼっちゃま達とは育ち方が違うんだよ

 

「……。君本当にコミュニケーション能力1年生か?」

「心が痛くなる嫌味やめてくれる?」

「ごめん、謝るよ。アズカバンネタだけはやめよ?」

「えっと、なんでも聞いてね」

 

 謝られるより同情される方が心に来るのでハーミーの勝ちです。

 

 

 

 

「死の秘宝っていうのは吟遊詩人ビードルが作った寝物語、『三兄弟の物語』に出てくる道具の事だ。魔法界では決まって、親が子供に読み聞かせるんだ」

 

 ドラコが死の秘宝とは何ぞや、ということを説明してくれた。私たちは寒空の中、雪のことなんか気にせず中庭で集まって話しているのだ。

 私の首元には緑と黄色のマフラーをつけており、おしくらまんじゅうのごとくぎちぎちだ。

 

 寒さ対策で私は防寒の魔法を使っているとは言え、君ら、若いな。寒くないの?

 

「マグルで言うくまのパディントンや不思議の国のアリスね」

 

 ハーミーがつぶやく言葉に、私は読まれた覚えも心当たりがなかったけれど、ハリーは心当たりあったのか『そんな感じ』という言葉を吐く。

 

「従兄弟の家でよく叔母さんが読んでくれてたよ」

 

 ハリーの従兄弟はマグルの様で、本人も自認マグルで過ごしていたからなのかマグル文化にも馴染みがある様子。

 

「確か物語は──」

 

 昔々のこと、三人の兄弟がさびしい曲りくねった道を、夕暮れ時に旅していました──。

 

 

──

 

 

三人の兄弟が旅の途中で、命を落としかねないほど危険な川に鉢合わせる。通常であれば渡れないその川を、兄弟たちは魔法によって橋を作り、容易く渡ろうとした。

兄弟たちがまんまと危険を回避したことに腹を立てていた『死』は、策を巡らし、3人にそれぞれ褒美をやると告げた。

 

戦闘狂の1番上の兄は決闘すれば必ず持ち主が勝つような強力な杖を求め、『死』からニワトコの杖を与えられた。

 

傲慢な2番目の兄は『死』を辱めたいと考え、人々を生き返らせる力を求め、死者を呼び戻す力のある石を与えられた。

 

謙虚で賢い3番目の弟は『死』から逃れる手段を求め、透明マントを与えられた。

 

 

後日、1番上の兄は強力な杖の力を吹聴し、自分は無敵だと人々に自慢した。しかし1人の魔法使いが寝込みを襲い、杖を奪い去ってしまった。

 

一方、2番目の兄はかつて結婚を夢見ていた女性を死から呼び戻したが、死者はこの世になじむことができず、思い悩んだ2番目の兄は彼女と本当に一緒になるため自殺した。

 

『死』はこうして兄弟のうち2人を自分のものにすることができた。しかし透明マントを持つ3番目の弟を見つけることはできなかった。

 

やがて3番目の弟は高齢になり、透明マントを息子に受け継がせた後、『死』を古い友人として迎え入れ、自らの意志でこの世を去っていった。

 

 

──

 

「なんっっっっか、強欲にぞなるな、謙虚でいろっていう大人のメッセージぞ感じるです」

 

 自分ではけっこう筋の通った返しをしたつもりだったのに、ドラコは頬をぷくりと膨らませ、私をつんと睨みつける。

 

「……君って、どうしてそんなに夢のないまとめ方を選ぶんだ?もう少し言い方ってものを考えた方がいいよ」

「魔法の、力って、すげー……?」

 

 絞り出した感想はそれでも気に入らなかった様で、ドラコは軽くため息をつき、マフラーをぎゅっと首元まで引き上げた。

 

 ハーミーが肩についた雪をぱんぱんと払ってから、改めてハリーに向き直った。

 

「その話がどうしたって言うの、ハリー?」

 

 ところが、返事がない。

 視線を向けた先には──

 

「……ハリーはどこ?」

「えっ!? 今、ここにいたよね!?」

 

 さっきまでハーミーの横に立っていたハリーの姿が、跡形もなく消えていた。

 中庭は開けていて、隠れる場所なんてない。転んだ音も、走り去る足音もなかった。

 

「急用か?」

「いや話を振ってきてそれで一言もなく居なくなるなんて、ハリーに限ってありえないよ!」

「そうね、どっかの誰かと違って、そんな失礼なことしないから」

「なんだと!」

 

 サク、サク……。

 

 雪を踏みしめる音がかすかに耳に入り込む。

 誰の姿も見えないのに、私たちの目の前の地面に足跡だけがひとつ、ふたつと増えていく。

 

 

「ぴっっっっ……!」

 

 ゆ、幽霊!!??

 

 いやでも幽霊だったら足は無いはずだしホグワーツのゴーストは半透明で浮いてるはずなのにどうして。

 

 脳が、戦闘モードへ切り替わる。

 『やられる前にやる』は闇の魔法使い産まれアズカバン育ち流のセルフディフェンスだ。これのおかげで物陰からの嫌がらせもといみみっちい悪ガキのおままごとを回避して来たんだからさ。

 

 私は雪を蹴り上げ、瞬間的に踏み込み、足跡の主めがけて拳を放った。

 見えない相手に殴りかかるのはかなり怖いけれど、やらない方が多分もっと怖い!

 

「うわ!?」

 

 勢いよく放った拳は何か冷たく柔らかな布を殴ったようで、何故かそこからハリーの声が聞こえてきた。

 

「……ん?」

「ちょ、ちょっと待って!殴らないで!!本当に!!」

 

 突然、何もない空間からハリーの顔だけがぬっと現れた。

 

「ぎゃああああ化けて出るすた!!!!」

「ワンッ!」

 

 グリムが落ち着け、と言わんばかりに吼える。

 私の追撃を阻止するように上から覆いかぶさった。

 

 物理的に動けなくなった私はもごもごと暴れるけれど、どうしようもなく。毛皮の下から顔だけ無理矢理出すと、ハリーが何かを脱いだ様で、普通の姿で現れた。

 

「ごめんごめん、驚かせすぎちゃったね。グリムもリィンを止めてくれてありがとう」

「ワン!」

 

 ハリー、生きてる??

 

 私が混乱していると、ドラコがひたすらに驚いた顔をしていた。

 

「お前……まさか……いやペベレル家が実在していたらポッター家に繋がるという推測はされていたけど、まさか」

「じゃーん、死の秘宝の3番目の弟が持っていた、透明マントでーす!」

 

 じゃーん、という軽いSEで誤魔化されてはならない代物なのは魔法界の知識があまりなくても分かるぞ?

 というか、え、なんで?

 

「父さんが譲ってくれたんだ。ポッター家の家宝なんだって!」

 

 ジェームズ・ポッター本当にお前ってやつは!!!!!!!(心の叫び)

 

「これでどこにでも行き放題!って訳で、リィンどこ行く?」

「家宝は家から出すなぞり!!!!!」

 

 おうシリウス・ブラック。

 ドヤ顔で胸張っている犬っころ。ジェームズ・ポッターの罪はお前も共に被ると思えよ。

 

 リリー・ポッター!回収!回収して!お願いします!そんな死亡フラグと一緒にトラブルメーカーを過ごさせないで!

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