ハリーが透明マントというものを手に入れた。
その晩、シリウスに問いかけるともちろん彼も知っていて。
「よくジェームズに誘われて深夜のホグワーツを遊び回ったもんだ」
「純血貴族とすての品位とかひょっとして存在せぬ?」
そんな風に呆れた他人事の意見は、僅か数分後に覆されるものとなる。
──コンコン
「んっ?」
ノックの音につられて扉を開けると、生首のハリーがそこにいた。
「──リィン、一緒に冒険に行こう!」
「ポッター……」
これは絶対にジェームズ・ポッターの血。
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どうやってスリザリンの寮の中に入ってきたのか問いかけると、ハリーはドラコの後ろをこっそり着いてきたのだという。
それでハリーは声色を変えて『リィン・アズカバンの部屋ってどこったかな?』と不特定多数が居る談話室で声を出して、答えを知ったらしい。無駄に行動力があって怖いよハリー。
「で、今からどこ行くですぞ?」
「この前面白いもの見かけたんだ、なんかね、僕の未来が見えるんだよ」
「未来?」
ハリーと一緒に透明マントの中に入ってコソコソ話をしながら歩く。ホグワーツは未だに何も考えなければ迷子になりそう。
普段?あの、グリムについて行くだけです。自力で覚えるのは一旦諦めたよね。
わかんないよ、曜日で抜ける段差が違う階段とか、ルートが変わっちゃう廊下とか。
「げ…ミセス・ノリス……」
廊下の前にポツリと猫が立ち尽くしていた。
アーガス・フィルチさんの飼い猫、だったっけ?グリムがいると基本的に近寄ってこないから、あまり細かく知らないんだよね。
「避けて通ろう……」
と、ハリーが避けようとすると、コツコツと足音が聞こえてきた。
廊下の奥から光が反射して見え、2人して顔を見合わせる。見つかるとまずいよね。
私は足跡と足音を消す魔法を唱え、急いでハリーの手を引いて走り出した。
しばらく走ると、人の気配がしなくなった。その途端ハリーが振り返る。
「今の何!?」
「改良すた魔法ぞ……アパレヴぃ……足跡ぞ出す魔法の反対魔法?」
「すごいすごい、流石、同級生の中で1番魔法が上手いんじゃないかと言われてるだけあるね」
それは初耳なんですけど。
「純血貴族や、ハーミーには負けるぞり?」
「そんなことないよ!決闘クラブが開催されたら、きっと無双すると思う。なんというか、実戦的なんだよね、リィンって」
「決闘クラブ……」
「魔法の繊細さとか綺麗さっていうのはあんまり分からないけど、正直リィンには無いと思う」
「…………ハリー・ポッター?」
「でもなんだろう、圧倒的なパワーでこう……!すごく憧れる!力技って言うのかな!」
褒められている気はしないけど、ハリーの言いたいことはわかる。
シリウスは力技も繊細な魔法も両方使えるけど、私は繊細さよりも命が物理的にかかっていたから魔力でのゴリ押しが殆ど。
ちなみに防御魔法も得意だよ。防御魔法って複雑であればあるだけいいからね。
魔力をネックレスに例えるとするなら、絡まって解くのが難しいのが私の防御魔法。自分でも解けません。
きちんとしまってすぐに使えるような綺麗なアクセサリーボックス鍵付きで入れたって鍵さえ開ければ使えちまうんだから。ぐっちゃぐちゃにしようぜ。
……なんで防御魔法が得意なのかと言ったら、命に関わるので。
「あ、ここだよ」
ハリーの声に視線を戻すと、誰も使われていないような部屋があった。
中に気配がないことを確認したハリーが私の手を引き中に入っていく。
「……この鏡なんだ」
そこには、鏡があった。古ぼけていて装飾もどこか古臭くて、アンティークと言うには品がない、そんな感じの鏡。鏡面は水垢がついたように濁っていて、鏡としての役割も果たせないような見た目だ。
「この鏡が、何です?」
「なんかね、未来の自分が見えるんだ。僕、綺麗なお嫁さんもらってクィディッチの選手してるのが見えるんだよ。きっと未来を示唆する鏡なんじゃないかなぁ」
「お嫁さん?誰ぞり?」
「赤毛の綺麗な人!」
「…………それリリー・ポッターでは???もしくはハリーではなくジェームズ・ポッターとか」
それほんとにハリー?
私の訝しげな瞳に気付いてハリーを見ると、ハリーは少し固まったあと鏡にへばりついた。
「いや…ぼ、僕のはず……父さんじゃ……う、目の色が緑だから多分ぼく…………なんでこんなに父さんにそっくり……」
「ハリー」
私はハリーの肩を優しく叩いた。
「残念ながら、私、ジェームズ・ポッターとハリーがそっくりになる予感しかせぬのですよ」
「や、やだなぁ……!」
ハリーって結構ふつうの子供だよね。
……両親が揃っているしマグル育ちって言うのもあるからなのかな。
やっぱり地元が近いからかハーミーともマグル会話で楽しんでいるみたいだし。
「で!リィンは何が見える?」
「えぇ……っと、私、は…………」
鏡の向こう側の私は、ハリーの言う大人の姿とはかけ離れていた。
「…………子どもの、姿ぞり」
「今とそんな変わらないってこと?」
「すこしだけ大人ぞ。多分、五、六年生?」
普通に健康的に育った私が、青いリボンを着けて笑顔で笑っている。
アクセサリーなんて私は持ってないので、どこで手に入れたのか分からないけれど。すごく楽しそうだ。
「……箒で、空、飛ぶすてる」
「クィディッチ選手かな?」
「ううん。もっと…………自由ぞ」
青い綺麗な海を、私は光いっぱい浴びながら飛んでいる。カモメと並走するように広い広い世界を私は楽しそうに飛んでいる。
「いいなぁ」
船がいくつか海に浮かんでいて、鏡の中の私は本当に楽しそうだ。
暗いアズカバンでも、霧がかってる魔法界でも、曇り空の多いホグワーツでも、森の中でもない。
明るくて、綺麗で、広くて、暖かくて。
「い、っ、いいなぁ……!」
鏡の中で楽しそうにしている私が、憎くて仕方なくて。私は堪えきれない涙を落とした。