3度目の人生は魔法世界で   作:恋音

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第3話 3回以上は確定でいいと思う

 

 暦が8月に代わり、生まれて大体2ヶ月が経過したある日の事。いつも通りナギニさんに言葉の勉強と魔法の知識を教えてもらいながら過ごしていた時だった。

 

「世話係が出来た」

 

 鼻と髪と常識無しの父は何を言ってるんだと思った私は悪くないと思う。

 

 唐突に始めて周りの理解を振り切る方法はとてもやめて欲しいし暴君だと思った。父に連れられてやって来た男はビクビク震えながらやや小太りの薄らハゲだった。

 ……魔法を使うとハゲになるのではないか説が私の中で提唱された瞬間だ。

 

「コヤツはピーター・ペティグリューだ」

「ぴ?」

「ピーター」

「ぴーぁー」

「……。我が娘さては天才なのでは???」

「ご、ご主人様…?」

 

 ピーターと呼ばれた人間はやや疲れているのか歳をとって見えるが、おそらく20代前半だと思う。父に振り回されて大変ですね。

 

 生まれてようやく首が座ってきた状態でこの騒ぎ。世話係にしては若すぎる気がするけど。

 

「リィン、これを」

 

 父は私の首にペンダントをかけた。そして蛇語で語りかけてくる。

 

『何かあれば蛇語でセブルスと叫ぶんだ。一瞬にしてやって来る。俺様は表に出にくいからな』

 

 名前しか知らないけどセブルスさんには心から同情したい。

 あとなんで蛇語を理解出来て喋れること前提なのかそこを聞きたいのですが父よ。

 

『我が娘、喋れるのは分かっている』

「むぁ」

『何故わかったか知りたい顔だな、俺様の娘だからに決まっているだろう!』

 

 ………嗚呼、この人アホなのか。

 

 ナギニさんが蛇なのに呆れた表情をしていた。

 

『あの男は強き者に屈服する。裏切りの可能性は捨てきれないのだ……』

 

 なるほどね。

 父にとってピーターは信じられなくて、セブルスさんは信じられる。

 そして私は蛇語を理解出来て喋れる。

 

 だからこそいざと言う時の為にこのペンダントという事か。

 

 ──いつバレた。喋れる事が、ハッキリした自我を持っている事が。

 

『……ごめんねリィンちゃん。私は主の味方なの。隠してあげられないわ』

 

 下手人見つけたわ。うん。

 

『……分かった』

『ソイツはこき使え』

 

 他人には蛇語が分からない。だから父の真似をした純粋無垢な子供のフリをする。

 父は阿呆だけど頭いいとか狡いと思う。

 

「俺様も忙しいからな。世話は貴様とナギニに任せる」

「は、はい!分かりましたご主人様!」

 

 ビクリと肩を震わせて返事をしたピーターは父が出ていった瞬間大きく息を吐いた。

 

 父は一体何をしに行ったんだろうかと思ったけど碌でもない事をしてると考えるとお腹が痛くなるので花畑でルシウスさんと遊んでる事にした。

 

 大の大人が花の冠を被せあって遊……。

 

 想像以上にR18-Gだな。

 

「はぁ……怖かった…」

「いーあ」

「ヒッ!?」

 

 お、おう。怯えすぎでは無いか…?

 父の娘というレッテルが邪魔をして…──ん?まてよ?果たしてこのレッテルは邪魔か?

 

「ぴあ」

「は、ハイッ!」

「そぉ」

「……??」

「そーおー!」

 

 ビシッと窓を指さして訴えた。喋る筋肉を鍛えなければならない気がする。

 

 私は、外の世界を知りたい。

 

「ひょっとして…外に出たい…とか?」

「うあー」

「あっ、際ですか…。えっ、コニュニケーションが取れるの?なんで?」

 

 全ての理由は『父の娘だから』で済ませて欲しいです。

 

 そう、父の娘というレッテルは使える。

 少なくとも怯える人間に対しては。

 

 虎の威を借る狐?笠に着る?他人の威光で威張る?

 なんとでも言うがいい。自分本位な人間は何でも利用する。快適と、怠惰、そして安全の為に。

 

「ぴあー」

「は、はい!」

「……ごお」

「ヒェッ」

 

 さぁ、私を連れていくのだ。

 

 

 ==========

 

 

「ひゃぁあ!」

 

 バチンと姿現し─瞬間移動の魔法─の音と共に一気に明るくなった視界。始めて見る外の世界に思わず興奮する。

 斜めに歪んだ建物は道の両側にそびえ立っており、街ゆく人々はローブを着込んでいる。建物の中はキラキラしていて、そこらで物が浮いていたりなど様子は様々だ。

 

 うん。封ぜられし厨二心的なのが疼くよね。

 

 そりゃ、父は闇の云々とか名乗るわけだ。頭も可哀想な事になってるし。

 ……魔法研究者なら発毛魔法的なの作ればいいのに。

 

「えーっと、お気に召した…?」

「ぬあああ」

「……よく分かんないんだけど」

 

 赤子は皆そういうものだよ、学べ独身。

 

「じゃあ首動かせる?」

「む!」

 

 コクリ、と頭を縦に振ると目に見えてホッとした表情に変わった。

 

「ここがグリンゴッツ魔法ginkou」

「ぬ?」

「ginkou…お金を渡したり受け取ったり」

 

 なるほど銀行か。

 説明によるとグリンゴッツ魔法銀行はゴブリンが経営する魔法界唯一の銀行らしい。お金だけじゃなくて様々な物も仕舞えるとか。

 

「こっちはオリバンダー杖店。僕がgakuseizidaiの頃からkeieiされてるけど…」

 

 ふんふんなるほどなるほど。

 

 ……全くとは言わないが分からないな!

 説明を聞くには勉強不足だ。無理。所々意味の分からない単語があるから重要な部分が分からない。蛇語翻訳機の発売はまだですか。

 

 動詞や副詞はまぁまぁ大丈夫だ。でも名詞が特殊すぎるんだこの世界は!

 

「で、こっちはフローリシュ・アンド・ブロッツ書店。ホグワーツのkyoukasyoとかtyomeizinの本もあるよ」

「んむぅ…?」

「あー…流石に分からない…かな…」

 

 私が分からないと頷くと、ピーターは私を抱いたまま少し震えた。

 

「………」

 

 私の機嫌は損ねたく無い、という事か。

 

 まあ、自我があると分かった以上『訴える』事も『伝える』事も出来る。

 ピーターが怯える、私の父に。

 

「ごお!」

 

 強き者に屈服するなら、私に屈服しろ。

 今は父の威光で威張るだけの狐だけど、心に強く染み付けばいい。

 

 私の平穏の為に…──

 

「わっ!」

「うわぁ!?」

「にょあッ!?」

 

 心臓が飛び出るかと思った。

 

 私を落としそうになったのか、ピーターはワタワタと焦る。

 『他人を利用して安心安全を手に入れる』って感じに決意を固めようとしてた時に邪魔するのは止めて頂けませんかね。

 

「もっ、もう、ホント、止めてよジェームズ」

「えぇ!? ピーターに子供!? なんで!?」

「ちょっと、声が大き過ぎるって!」

「ゥアーッ!」

「ほら!」

 

 そこには生え際が少し寂しくなった眼鏡の男が驚いた顔をして私を見ていた。

 

 ……やっぱり魔法使うとハゲるのでは?

 

 いや、そこまで酷くは無いんだけど。それでも、ねェ。

 闇の頂点に立つ父は全てハゲていて、その親戚のルシウスさんも生え際がハゲていて、父に私の世話係としてなら認められるピーターも円型のハゲ。とりあえず有能な人達はハゲている。

 

 つまり使えば使うだけハゲて……。

 

 いやいやまてまて、目の前のハゲもどきが居るじゃないかリィン。

 この人が魔法苦手だったりしたらハゲにはならない。それは決定される。

 

「ぴーあ」

「う、ご、ごめんね。……このmegane掛けてるジェームズはgakuseizidaiからitazuraが好きでとってもやかましいんだ」

「うあ?」

「……ごめんなさい」

 

 よく分からない。とりあえずこの男がジェームズという名前なのは理解した。

 

「まさか驚かして驚かされるとは思ってもみなかったよ……流石ワームテールだ」

「僕はジェームズの言ってる流石の意味が全く分かんない」

「ええ、本当にねッ!」

 

 スパーンッとジェームズさんの頭に平手が炸裂した。……随分気持ち良く決まったな。

 

「ごめんなさいピーター、と、赤ちゃん」

「う、うん。でもジェームズの手綱は持っていて欲しいよ、リリー」

 

 私より小さな赤ん坊を抱いた女の人はリリーさんと言うらしい。多分ジェームズさんと夫婦だ。

 

「ジェームズ、何してんだ?って、おお、は!?ピーターァァア!?えっ、なんでガキが!?」

「シリウスもうるさい…」

「いい加減にしなさいよそこの双子。ハリーが起きちゃったらどうするの」

 

 シリウスさんという方が増えた。やだどんどん増える。

  赤ん坊のハリー君はこの騒音の中スヤスヤと眠っていた。こんな中で寝れるとか将来は大物になれるんじゃないだろうか。

 

 私やルシウスさんの息子と同年代かな〜。

 学校はホグワーツ魔法魔術学校って言うところが有名で、イギリスに住んでたら大概その学校らしい。……父はあまり好きじゃ無いみたいだ。

 

 するとほんの少しの差だけど私を抱く腕の力が強くなる。

 

「ぴあ?」

 

 見上げると悲しそうに笑っている。視線の先には騒がしいジェームズさんとシリウスさん、そしてハリー君を抱いたリリーさん。

 

 

「……ごめんね」

 

 

 私の視線に気付いたのかピーターは小さな声で謝った。

 

 

 その謝罪は、誰に向けて言ったんだ。




幼少期は一人称視点で聞きなれない単語達はローマ字にすることにしました。解読しようと思えば簡単に出来るやつ。
ピーター・ペティグリューの長い物には巻かれろ的な精神、嫌いじゃない。
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