3度目の人生は魔法世界で   作:恋音

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第5話 涙の数だけ味方が減る

 

 

 微睡んだ思考の中で父が私を抱いていた。ようやく見つけた宝物を大切に守る子供の様に。

 

「あぁ…これが〝愛しさ〟だったのか…」 

 

 真っ赤に染った宝石みたいな『空』から、ぽつりぽつりと『雨』が降り、私の顔を濡らす。

 室内にぼんやりとランタンが揺れていた。

 

「欲しかった、ずっと、手に入れたかった」

「ぅあ…」

「愛してる。愛してる。……リィン、愛してる」

 

 確かめるように何度も呟かれる言葉、限界だった眠気が一気に襲いかかってきて、私は心地よく目を閉じた。

 

 起きた時に、親バカの蛇面があっても、もう叫ばない。

 

 

 

「びぃぎゃあああああ!」

 

 嘘。叫んだ。

 さすがに顔面がホラー。私、ホラー無理です。

 

 

 

 ==========

 

 

 

「魔法が上手、魔法が上手」

 

 そんなあんよのノリで魔法を求められても。

 

「ベラ、ピーター。魔法の様子はどうだ?」

「えっと、流石ご主人様の娘と言いますか、魔力の循環がスムーズなので暴走はしてません……」

 

 魔法が使えたその翌日、急遽私の魔力テストの様な事が行われた。

 私専属超優秀世話係のピーターが私の手を握って、父の側近であり髪が物凄いチリ毛のベラトリックス・レストレンジ─通称ベラ─が屈んで私を見ながら『天才』という判断を下す。

 

 魔法というのは杖が無いと出来ない物だと思っていたけど、どうやら素手でもいけるらしい。

 

「ぴあ」

「えっ、何?」

「んおあー!」

 

 右手で杖を振る真似をしてみるとピーターはすぐに察してくれた様で自分の杖を貸してくれた。

 

 まず最初に疑問がある。それを検証する。

 

 時空の狭間に居た堕天使は『人生は〝集中力〟を高めて〝想像力〟と〝思い込み〟で大概なんとかなる』と言った。

 問題は『集中力』と『想像力』と『思い込み』

 

「〝うあーれーお〟!」

 

 杖を置いてまず浮遊魔法を使う。何度も見たから想像しやすい。

 ………ピーターが浮いた。うん、成功。

 

「び、びっくりした。あ、でも杖使って無いね」

 

 今度は私は杖を振って魔法を使ってみた。さっきと同じ様に、同じくらいの力で魔法を。

 

「ぴぎゃん!」

 

 不発。

 なるほど、大体わかった。

 

「ど、どういうこと?さっきはうまくいったのになんで使えないの?」

 

 ピーターは困惑した表情で私を見た。私は想像以上の結果にほくそ笑む。

 

 確かに集中力と想像力と思い込みが必要になってくる訳だ。私は一つの仮説を立てた。

 

「んにょ」

 

 この杖は魔法を制御するためのものだ。そして、素手で使えるということは、杖は必要ない。

 

 ピーターに杖を返しながらそう思う。

 

 

 魔法とは、人が誰しも使えるものであると考える。魔法の使える素質は魔力としよう。

 マグルとはその魔力が足りない者、そして魔法族とはその魔力が一定以上の数値を持っている者の事だろう。

 

 不可思議な能力を持つ魔力というものは、扱いづらいものなのだろう。そして、それを制御するためのものが杖。

 

 『コントロールさえ出来れば杖はむしろ邪魔になる』という事。

 

 『集中力』と『想像力』と『思い込み』の補助をしてくれる杖だけど、必要以上が出ないようにセーブされている恐れが高い。

 

 感覚でだけど杖無しとありで魔法を使う時同じくらいの量の魔力を使った。

 イメージするならホースと蛇口だろう。流れる水の量の半分を魔法だと置くと、ホースは全開で使う事が出来、蛇口は捻らなければ出ない。

 

 呪文を唱える事は、恐らく捻る動作。

 

 

 あくまでも私の考えた仮説だから正解とは言えないけど。

 

 ピーターの様子を見た限り、子供の時代には魔力の暴走とやらがよく起きるのだろう。つまりそれを学ぶ為に勉学をし、杖を手にいれる。

 

 そうなると杖無しでは魔法が使えないと認識されていくんだ。子供の頃、杖無しで使えたのに。

 

 

 ダメだ、魔法界の闇を覗いた気がする。洗脳教い…──胃が痛くなってきた。

 

 

 この世界は常識を疑ってかかることにする。

 闇が深い。

 

 ひとまず、私の魔法についての解釈はこう。

 ・発動は〝呪文〟では無く魔法の『想像(イメージ)

 ・『集中』してコントロールすれば杖は不要

 ・『思い込み』で魔法界は魔法族を支配

 

 うん、闇が深い。特に最後。

 自我がある状態であり、この世界の常識を持たないからこそ気付ける物なのかもしれない。

 

 

「にしても姫君は可愛いねぇ…」

「ドラコの方が可愛い」

「ルシウス・マルフォイお前うるさい。私達の愛しい闇の帝王と姫君の親族になったからって調子乗りやがって…」

「お前の方が何倍もうるさいベラトリックス・ブラック。我が妻と姉妹とは思えん程の野蛮さだ」

「野蛮さ上等じゃないの、私は闇の帝王のもっとも忠実な従者だ」

 

 ベラはブラックって苗字だったっけ?レストレンジだと思ってたんだけど。

 私が疑問に首を傾げているとピーターがこっそり呟いた。

 

「ブラックはベラトリックスのkyuusei、昔の家名だよ。ルシウスのお嫁さんはベラトリックスの妹なんだ」

 

 はへ〜、流石貴族。しかも血を遵守する思想の持ち主。近親交配凄いな。

 ……でもそれよりも口に出してない疑問をサラッと答えたピーターの方が凄い。なにその才能。

 

「魔法を覚えさせよう」

 

 カッ!と目を見開いて父が告げる。

 想像以上にホラー。

 

「アバダ」

「クルーシオ」

「インぺリオ」

 

 即答したのは上からベラ、ルシウスさん、セブさんだ。真顔だ。ビックリするくらい真顔だ。

 

「……それ全部許されざる呪文じゃん」

 

 ピーターが死んだ目で呟いた。

 

 名前から嫌な予感しかしないので謹んでお断り申し上げます!全力で!

 

「アバダは最高よ最高。goumonも捨てがたいけど闇の魔術のsinzuiと言えばこれさ!」

「いや、やはりクルーシオだ。記憶操作をすれば証拠が残らない」

「インぺリオの方がいい、いざと言う時ヤツらを操れれば便利だと何度思ったことか…!」

 

「スニベルスはなんかごめん」

 

 口々にそれぞれが利点と思うところを上げていく。ピーターが罪悪感に塗れた顔をしながらセブさんに謝っているので学生時代の怨恨か。

 

「ぴあ!」

「1771年に人間に対して使用することを禁止されてる禁忌の魔法だよ。もし使ったら一生アズカバンだ」

「あじゅかびゃん」

「上手!」

 

 アズカバンとは監獄らしく、吸魂鬼(ディメンター)と呼ばれる生物が看守で、彼らは世界でもっともおぞましい生物らしい。平和や幸福を奪い、絶望を与えるとかなんとか。

 あれ?闇の魔法使いとそう変わり無いよね?

 

 まぁそれでも魂を取られて昏睡状態にするらしいから一生涯近付きたく無いね。うん、アズカバンという所には絶対入らないようにしないと。

 

 

 

 

 

 

 

 ──約1年後、フラグは見事に回収した。

 

「なにぬえぞぉおおぉおッ!!」

 

 リィン。父は闇の帝王。

 歳は1歳と数ヶ月、現在アズカバンでござる。

 

 牢屋の中のな。




短めですね。ひとまずこれにて死喰い人編は終わり。隠された1年間は適当にわちゃわちゃ過ごしていたと考えて。
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