3度目の人生は魔法世界で   作:恋音

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第7話 「予言の行方は」「アバダ」

「ダンブルドア!」

 

 『生き残った一家』と呼ばれ出したポッター夫妻とその男の子。

 彼らは体調を考慮して聖マンゴ魔法疾患傷害病院。イングランド、ロンドンに位置する魔法病院で様子を見ていた。

 

 彼らの元に現れたのはセブルス・スネイプに頼まれたアルバス・ダンブルドア。

 人の良さそうな笑みを浮かべてジェームズ・ポッターに手を振る。

 

 駆け寄るジェームズは新聞を片手に苦悶の表情を浮かべていた。

 

「ダンブルドア!何かの間違いです!シリウスは闇側の人間なんかじゃ…!」

「分かっておるジェームズ。リリーも無事そうで一安心したわい」

「ダンブルドア先生……。その、ご心配をお掛けしました」

「良い、無事なだけで」

 

 ニッコリ笑うとダンブルドアは子供用のベットで寝入るハリーに目を向けた。

 

「……予言のことは聞いておるな」

「えぇ。ハリーの額に、呪いの印が」

 

 ハリーの額にはヴォルデモートが苦し紛れに放った()()()()()()()死の呪いを打ち破った跡が稲妻の様に付いていた。

 詠まれた予言にはこうあった。

 

 ──闇の帝王が自らに比肩する証を印す。

 

「(違う)」

 

 確かに傍から見れば予言にあった証と見えるかも知れないだろう。

 だが比肩するとは思えない。これは呪いに対して愛の守りによって護られた証だ。

 

 比肩とは、つまるところヴォルデモートと同等の力を持った物である。

 

「(どこじゃ、一体どこに。……ッ!)」

 

 ヴォルデモートは姿を保てなくなり、ジェームズの放った死の呪いにより姿を消した。死んだ生きているかの判断は付かない。

 だが、だ。

 

 ダンブルドアは嫌な予感に冷や汗を流す。

 

「付けることが、叶わなかった……?」

「ダンブルドア?」

 

 ボソリと呟いてジェームズとリリーを見る。

 愛の守護呪文は恐らく2人が無意識の内に付けた物だろう。本来なら2人、もしくは1人が死ぬ場合で無ければ完成されなかった。

 

 リリーのハリーを護る為の愛。

 ジェームズの禁忌を恐れず家族を守る愛。

 

 もう1つ、死の呪いが完成されなかった何かの一因は置いておく。

 

 もしも誰かが死を迎え、ハリーが愛の守護呪文で護られ生き残る。もしもそんな状況があれば。

 どうなるのか、一つだけ心当たりのある魔法があった。

 

 最も邪悪なる魔術。分霊箱(ホークラックス)。不死性を獲得するために自身の魂の一部を閉じ込めるための強力な物だ。

 もしも、ハリーがヴォルデモートの魂を閉じ込めるための『箱』になれば。

 

「(それこそが比肩する証)」

 

 確かに彼の魂を持っていれば比肩する力を手に入れるかもしれない。

 

 だが実際問題どうだ。

 闇の魔術が使われた痕跡は全くない。

 

 同じ条件の別の誰かが予言の子だったのか、それともなんらかの要因で『予言が消滅』してしまったのか。

 

 後者ならば魔法界は混乱と危機を迎える。

 闇の帝王を打ち破る者が消えてしまう。

 

 

 

 ダンブルドアは正解に近い答えを出す。いや、ほぼ正解だ。

 知らない事は2つだけ。この世界に現れた災厄のやる気、そしてそれを見事に吸収し栄養と変えてしまう吸魂鬼(ディメンター)もビックリの吸収力。

 

 

「ダンブルドア、シリウスは冤罪だ!アイツがピーターを殺すはずが無い…ッ!」

「っ、あぁ、分かっておるよ」

 

 シリウス・ブラックは、世間的に『闇の魔法使いでポッター夫妻をヴォルデモートに売った』とされ、『阻止しようとしたピーター・ペティグリューを殺した』とされている。

 

「シリウスは僕らを売るはずない。それにピーターは守人だった。嫌な考察しか出来ないのが悔しいけど、ピーターは口を割ったのかもしれない」

「……そうじゃな」

 

 ダンブルドアはそう答えるしか出来なかった。

 手元に戻ってきたセブルスという手駒。元々彼が闇の帝王の命令でホグワーツにスパイとして存在していたことは気付いていた。

 これ幸いと二重でスパイをしてもらうこととなった今、ジェームズの考察は半分あたりだ。彼も闇側に存在していた。気付かなかったから今の状態になってしまったのだ。

 

「先生、シリウスの疑いを晴らしたい」

「よく考えるんじゃジェームズ。シリウスが裏切ったなどという話はお主が1番分かっておる、がしかしのぉ。シリウスでさえ、気絶に追い込まれたんじゃ」

「……ッ!?」

 

 シリウス・ブラックは優秀だ。()()()()()()()()()()()()()()()のに、気絶させられた。

 目撃証言では2人しか見えなかった、という事はピーターがやった可能性もある。

 

 もしくは死の淵でピーターが対抗、もしくは何かしらの呪文を弾き返す守護の魔法。

 

「ピーターはシリウスに魔法を使えない!負けるって、本人もよく分かっている…!」

「そうじゃ、そうなんじゃよ」

「絶対シリウスが防ぐ。死の呪いだったとしたらシリウスは今頃死んでた。気絶で済むなんてより一層おかしい」

 

 可能性として考えられるのは『新たな呪文を開発した』という事。

 

「まって………まさか……!」

 

 常人より頭の回転が早いのが仇となる。真実に、気付いた。

 

「ピーターは…──闇側だった?」

 

 信じられない。信じたくない。

 だけど納得出来る。

 

 ダンブルドアは優秀な教え子に同情するよう目を閉じた。

 

「そんな、嘘だ、ワームテール、なんで…! 信じたくない、僕らは一緒に、ずっと一緒にッ!」

「ジェームズ。今シリウスをアズカバンの外に出すと非常に危険なんじゃよ。……ピーターの使った魔法に心当たりが無い、ということは闇側の何か大事な秘密なのやもしれん」

 

 それがただ『自分の身代わりを作ろうとして失敗した』結果だとは知らない。

 

「だから、シリウスをアズカバンに…?」

「そうじゃ、1番敵が近付かず、誰もが嫌う。良いか、秘密の守人が消えてないという証拠はお主らがよく分かっておる」

「え、えぇ。守人は生きてる。どこかで。今だに忠誠の術が掛かってますから……」

「隠れるのじゃ2人共。ハリーを連れて、奴らの目が届かぬ所に」

「そんな…ッ!?」

 

 ジェームズは連続した衝撃に思わずふらつく。

 病み上がりと言えばそうなのでダンブルドアは彼を大人しく座るように指示する。

 

 僕は戦える。

 

 そう目が語っている。

 

「(すっかり父親になったのぉ)」

 

 ダンブルドアは自慢の髭を撫でながら微笑み生徒の成長を素直に喜んだ。

 

「マグルじゃ」

「マグル?」

「リリーや、酷なことかもしれんがペチュニアの傍でマグルとして過ごすんじゃ。せめて、ハリーが入学できるほど成長するまで」

 

 ペチュニア・ダーズリー。リリーと同じ家で生まれ、姉妹で育てられてきた。しかし彼女とは魔法の有無や性格などでいつの間にか疎遠になっていた。

 

 狼狽えながらも数秒後にはしっかりとした視線で頷く。ろくに護れない自分と、抵抗すら出来ない子供。

 身を隠す方がずっといい。

 

 少なくとも友人に裏切られた可能性が高く、若干の人間不信も否めない。

 

「あ、ダンブルドア先生…」

「なんじゃい?」

「……『あの人』には、子供がいるんですよね」

「なんと…! 隠していたが気付いておったか」

 

 なんのこと?とジェームズが首を傾げる。ここは母親の勘というものなのだろう。

 

「これから、見てこようとは思っておる」

「『見てくる』?」

 

 その微妙な言い方に疑問符が浮かぶ。ダンブルドアは少し緊張した面持ちで子供の居る場所を答えた。

 

「アズカバン」

 

 そんな、とリリーは口を塞ぐ。先日一斉に捕えられた事は知っていたが、子供まで捕らえていたとは。

 その視線に混乱は見えたが、軽蔑などの悪感情は見えないことにダンブルドアはホッとする。

 

 リリーとジェームズは気付いていない。

 その子供が我が子と同じ歳だと。

 

「……シリウスをどうかよろしくお願いします」

 

 ジェームズは頭を下げて頼み込む。

 それに習ってリリーも頭を下げた。

 

「今は出せんが……近い将来、出せるかものォ」

 

 お茶目なじいさんは本音を隠して2人にウインクしてみせた。

 

 

 

 ==========

 

 

 

 見つけてしまった。強力な闇の魔術が掛けられた痕跡を見つけてしまった。

 

 

 ああ、本当に。

 彼女で良かった。

 

 ──ハリーを殺さなくて済む。殺すために生かすなんて事をしなくて。

 

 

 残念だ。本当に残念だ。

 

 生き残った男の子として称えられたであろう男の子の比肩する証がこの子で。

 予言は完璧に意味をなさなくなってしまった。

 

 ──邪魔にしかならない。

 

 

 ダンブルドアはせめぎ合う2つの感情を押し留め目的の人物の牢獄の前に立ち名前を呼んだ。

 

「シリウス」

 

 寝ぼけ眼で鎖に繋がれたシリウスがぼんやり顔を上げると、そこには看守では無く1人の老人の姿が薄明かりに照らされていた。

 

「……ダンブルドア、先生」

 

 たった数日で憔悴しきったシリウスがくしゃりと顔を歪めた。

 

「俺…ジェームズを助けようとしたピーターの邪魔をしちまったんだ…」

「(気付いておらんのか、ピーターの裏切りと)」

 

 ダンブルドアは心の中で算段を練る。

 ややあって口を開く。

 

「のぉシリウス、儂の頼みを聞いてくれんか」

「頼み、だと?ハッ、親友殺しの汚名を被った囚人に何が出来るってんだ…ッ!」

 

 自虐気味に鼻で笑う。

 ダンブルドアは黙って首を振った。そんなことないと諌めるように。実際それが真実であり自暴自棄になっているだろうと判断をくだす。

 

 シリウスが『ジェームズとリリーが死んだ』と思っている、と気付けなかった。

 

 世間は親友(ピーター)だが、自分は親友(ジェームズ)殺しの名を被っていると、それならダンブルドアは分かってくれるだろう?と。

 

「実はのォ、ヴォルデモートには娘が居る」

「……は!?」

「しかもここにじゃよ」

 

 驚愕の表情と感情が見て取れる。ダンブルドアは愉快そうに髭を撫でながら笑った。

 

 一方シリウスは困惑しまくりだ。

 

「世間ではお主が『ブラック』だと思っておるからの」

 

 ブラック家とはイギリス最古の魔法家系の一つであり、事実上イギリス魔法界の王家とされている。

 

 『純血よ永遠なれ』

 

 家訓にそうあるように純血主義だ。

 今ここにいるシリウス以外。

 

 そして殆どが死喰い人や闇の魔法使い達と血縁関係を持っている。

 

「……ダンブルドア、それってつまり」

 

 ホグワーツ魔法魔術学校で学生時代、シリウスはジェームズに続き次席。

 目に鋭さが加わる。

 

「奴の娘を警戒していて欲しいのじゃ」

 

 ざわりと災厄が顔を覗かせる。シリウスの表情は対ヴォルデモート組織、不死鳥の騎士団に所属していた頃と全く同じだ。

 ピリピリと張り詰めた空気、その2人だけ放つ空気が異質であった。

 

「アンタは、俺を『ブラック』として娘に取り入り、もしもの時止める立場に居れと言うんだな」

 

「(シリウス、儂の頼みはもっと残酷なのじゃ)」

 

 悲しげにダンブルドアは笑った。

 

 彼は『英雄』を育てる。自分の教員人生で最大の失敗である『生徒』を止めるために。

 ─それには少しばかり『過保護な名付け親』は必要無い。

 

 目の前の男を『囚え』『利用』する。

 

 『生徒』を止める武器の1つとなる様に。

 

「強力な闇の痕跡を見つけたのじゃ、あやつの娘の心臓に。破壊されたヴォルデモートの魂の一部がひっかかっておる」

「なるほど、いつ利用されるか分からない訳だ」

「……そうとも言うな」

 

 本音を言えば──ヴォルデモートを殺すために娘の方を殺す武器となってもらう。

 

 今殺すのはダメだ。

 ヴォルデモートが分霊箱を使っていると仮定してみると答えは出てくる。彼の魂の一部(どうぐ)が破壊された瞬間、分かってしまう。

 

 つまり、『娘』が死を迎えた時が戦いの火蓋が切って落とされる。

 

 『帝王』や『娘』に対抗しうる『英雄』を育てるまで生かしておかなければならない。

 

 

 残酷だ。非情にならなければ、止めなければ。例え後世にて自分が悪だと罵られようとも。

 

「親友殺しにはちゃうどいいかもしれないな」

 

 泣きそうな顔で笑うシリウスは共に残酷になれるだろうか。

 

 いつか告げねばならん。

 

 ──ヴォルデモートの娘を殺すのだ、と。

 

 

 

 

 

 後に親友が生きている事やヴォルデモートの娘が名付け子と同い年だと知り発狂するだろう。それはまた未来の話である。

 

 世界の忌み子は近くのフロアで比肩する証を持ち眠っていた。

 着々と死亡フラグが建設されている事に気付かない小さな狐は、明日も災厄のイタズラをその身に浴びるだろう。




ダイジェスト
ジェームズ「ピーターが裏切ってシリウス冤罪。シリウス守るために事実は黙ってマグル生活!」
リリー「マグルかぁ……夫が不安」
ダンブルドア「(予言無いかもしれないけど英雄(ハリー)を育てる準備)」

シリウス「ジェームズとリリー死んじまった?マジで?ピーターが止めようとしてくれたのに?やべー」
ダンブルドア「Youちょっと災厄と協力してみなYO!」
シリウス「スパイってところかァ」
ダンブルドア「(ついでに良いタイミングで殺して欲しいな☆)」

災厄「リィンさんこんにちはー!!こっそり爆弾仕掛けてあげますねー!!(大声)」
リィン「スヤァ…」

原作キャラからのコメント
ハリー「えっ、僕偽物の英雄でっち上げってこと?」
シリウス「えっ、俺闇の魔法使いのフリするの?牢獄で?無駄じゃね?ただ閉じ込めておくための体のいいセリフ?だけどダメ押しで利用するってこと?」
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