3度目の人生は魔法世界で   作:恋音

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監獄生活編
第8話 まさかという道は必ず転ぶ


 

「かんぱとうりゃいッ!」

 

 ハロウィンから数日、アズカバンという例の監獄に入れられた1歳と半程の『冬』

 

 もう一度声を大にして言わせてほしい。

 

 冬ッ!

 

 牢屋の中は異様に空間が広くひどく殺風景で埃まみれ、そして窓から容赦なく吹き付ける風。

 空間に留まる空気は全くない。寒い。

 

 海の音は聞こえ、ここに来てからずっと窓柵の外に見える空がどんよりと曇っている。……海風と雪のダブルコンボなのだろう。いや、雪は降っていないからまだマシか。

 

 お情け程度の薄い汚れた布とも言い難い何かに包まって寒さをしのぐ。

 

 子供体温で高くてよかった。確実に死ぬ。

 いや、そもそも子供だと抵抗力の関係で風邪ひいたらぽっくり逝く。

 

 風を防げる何かさえない。

 

 

 ……これ、下手すりゃ風の通りが限定されているから余計寒くない?

 

 え、死ぬ。

 

「にゅぎゃぁあーーーッ!」

 

 ご近所さんはどうやら居ない模様で大声を出しても文句を言われた試しがない。とにかく、体温を上げて体力を付けて抵抗力付けないと…!

 

 ガチめに死ぬ!餓死も凍死も両方辛い!

 健やかに育って清らかに死にたい!

 

 事故死とか餓死とか自殺とか嫌すぎる。

 

 ここに来て3日。

 装備:布(以下)+囚人服

 常備品:水質の悪い水+カチカチのパン(カビ)

 

 私はどうして死んでないのか、そこが疑問で堪らないよパピー。君の血筋かなァ?

 

「んぬぬぬ…」

 

 死ぬことは絶対嫌という前提はあるけど世の中には死んだ方がマシな目ってあるからなァ。

 もっと人生楽しみたい。平和に過ごしたい。

 あと、時空の狭間に行きたくないのもある。

 

 世知辛い。

 

──ゾワッ

 

「……ッ!」

 

 背筋が凍るような冷たさ。

 吹き抜ける風と同時に背中に虫が這う様なゾワゾワとした不快感が襲う。

 

 布の中でぎゅっと体を丸める。

 少しでも素肌が空気に触れる面積を小さくしないと本気で死ぬ。

 

 ぞくりぞくりと背筋は危険信号を発している。

 

 

 あ、やばい、泣きそう。

 

 どうしようもない孤独とか訳の分からない物への恐怖とか。触れる肌が無いこととか。

 寂しい。

 

 まだ3日、もう3日?分からない。

 

 ただ一つ確実に分かることはある。

 扉の向こう側にやっと進展があった。そこには奇っ怪な物体。

 

 格子の奥、廊下に何かがいた。

 

「──ヒュッ」

 

 恐怖で喉から詰まった空気の漏れる音がする。

 こんな追い詰められる展開は望んでなかったのでパニックに陥る。

 

 来るな、来るな。

 

 願いは虚しく何重にも掛けられた鎖と鍵が外れる音がした。

 

──ゴトン…

 

 魔法で何か対処が出来ないか?

 記憶を探ろうにも混乱して集中出来ない。

 

 そうこうしている内に何かが入ってきた。

 

 その姿はこの世の物と思えない程おぞましく醜い形をしていて、どこがどこ部位なのかも分からない。

 言葉にするのが難しい形状なんて初めてだ。

 

 まるで水の中を浮遊する墨汁の様。

 

 あれは本当に生物?

 疑えばようやく分かった。

 

 これ、吸魂鬼(ディメンター)だ。

 この世で最もおぞましい生物。

 

「………ッ」

 

 必死に寝たフリをする。

 落ち着け、死にはしない。私はまだ死ぬわけない。そう思い込め。

 

 扉を開けたということは吸魂鬼には物体として存在する。壁を通り抜けるという事は出来ない。

 そして鍵を空けるという行動は理性も考える頭も存在するということ。

 

 もしも一連の流れがインプットされた行動だとどうしようも無いけど。

 

「う……ァ……」

 

 頭がズキズキと痛む。

 ゾクゾクと背中に寒気が走る。

 

 世界が回る。

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

 夢を見たような気がする。

 独りぼっちで布団に包まって神様にお願いするんだ、「助けて」って。

 何も信じられないなら支配してしまえばいい。

 

 孤独は恐ろしく、人を壊す。

 

「……ん、ぅ」

 

 ぼんやりと目が覚める。寒い事には変わりないけど先程よりいくらか暖かい。

 

 寒いから、死んでない。

 

 ズビッと鼻を啜る。ズキンと頭が痛くなった。

 あー、これ風邪だ。背筋の寒気も頭痛も典型的な風邪の症状だ。

 よくよく考えると、あの極寒の状況で服もまともじゃなく少し大きめの囚人服。風邪引かないわけない。

 

 私は馬鹿じゃなかった、それで良かったって事で完結!

 

 看病などある訳無いしどうするかと思いながらぼんやりと重たい瞼を開いた。

 ───…コンマレベルで閉じた。

 

 凄い、世界新記録の速さかもしれない……。

 

 頭もバッチリ覚めた。ついでにトラウマにもなっただろうな。

 

 こちらを見てい無いのが幸いだが、恐怖の根源である吸魂鬼が10匹位同じ空間で(たむろ)してた。

 これは子供じゃなくても泣くレベル。

 

 えっ、何、私殺されるの?

 じゃなんでこんなに私の上に布が沢山あるの?

 

 え、なんで?

 

 あっ、無理。こっち近づく気配がする。おぞましい所の話じゃないよピーター。これは気配を隠す気が全く無い殺戮兵器(りふじん)の感じ。

 

 分かるか、分かるか?

 分からねェだろうな畜生ッ!

 

 あ、やばい、泣きたい。

 泣きそうなんじゃなくて、泣きたい。

 

 数秒だったか数分だったか。

 近くで気配はするのに動く様子を見せないままの吸魂鬼が居る空間に音が生まれた。

 

 

「ナァ、寝テル?」

 

 は?

 

「寝テルミタイ、寒ソウ」

 

 ひ?

 

「絶対コレ風邪ダヨナ」

 

 ふ?

 

「風邪トカ……ナントカナラナイ?」

 

 へ?

 

「俺ラ魔法使エナイカラ、コレ以上無理」

 

「ほわぁああッ!?」

「「ウワッ!?」」

 

 理解出来ない情報に起き上がると吸魂鬼2匹は悲鳴を上げながらお互いの手を握りあった。

 

 んん!?なんで!?

 

「起キテタ!」

「聞カレタ!」

「ぎぃえええ!?喋るした!喋るしたァ!?」

「「キェェェェアァァァシャベッタァァアア」」

 

 なんでぇぇえええ!?

 喋れるの!?そのビジュアルで!?

 は!?なにやってんの!?この状況は何!?

 

「まつ、ま、まっ、まつ!まつ!」

「待テ、ジャナィノカ!」

「まてするしたじょろんぼ!」

「ジョロンボ!?」

 

 混乱が抜けきらない中1匹の吸魂鬼が近付いて来て混乱に極みがかる。

 口!口怖い!目!無い!黒い!怖い!不気味!

 

「ぴぎゃぁあああッ!」

「ピギャー、ジャナクテ……ッ!」

 

 SAN値直葬。

 あ、意識落ちる。

 

 

 

「どぅあわあああっ!?」

「起キテモソレカ!」

 

 

 夢みたいだけど夢じゃなかった。

 

 

 

 ==========

 

 

 

 混乱に混乱を重ねて数時間経った。

 結果として吸魂鬼の皆さんが布を被るという事で事態は落ち着いた。

 

 私のせいだよね、ごめんなさい。

 

 えっ、これ私のせいなの?

 

「アーアー、コンニチハ」

「こんにゅいあ」

「ァ、ソコハ子供」

「で、でめんちゅあー?」

「ソウ、吸魂鬼。怖クナイヨ」

「ふちゅに、こわきぞ」

 

 吸魂鬼が物理的な質量を持っているなら拳でぶん殴れる。魔法も効くと信じたい。少なくとも瓦礫を作れば攻撃出来る。

 すごく脳筋な事を考えて落ち着かせた。

 

 力技過ぎる納得の仕方だけど。

 

「あよ、ぬの、あいあと」

「布?ドウイタシマシテ……」

 

 ゴソゴソと布に丸まりながらお礼を述べる。

 布の中で石の欠片を握りしめ視線を向けた。

 

「なに、なにぬえ、たすく、たしゅける?」

「『ドウシテ助ケタ』?」

「それ、ぞ」

「熱出シタカラ流石ニ、ナァ?」

 

 会話を出来る吸魂鬼は他の吸魂鬼に同意を求める。すると他の吸魂鬼の1部も同意した。

 残りの吸魂鬼は被った布をバサバサと動かすだけ。あ、頷いてるのか。

 

 どうやら話せる吸魂鬼とそれ以外が居るが、言葉は分かる上に思考能力は大差ない様。

 

 伝聞と大分イメージが違う。

 

 死喰い人は世間的に悪。吸魂鬼もどちらかと言えば悪。

 怖いけど優しいぞ?なんでだ?

 

 私の疑問が伝わったのか先程まで受け答えをしていた吸魂鬼が答えてくれた。

 

「エット…───」

 

 語ってくれた言葉は予想以外の衝撃だった。

 

 まず吸魂鬼というのは不生不死。

 生まれた事も無ければ死ぬ事も無いという理解出来ない存在だった。

 

 どう言った経緯で『吸魂鬼』が出来たのか。

 

 答えは『変化した』だった。ここは吸魂鬼自身分かってないらしいので割愛。

 神や堕天使の仲間と考えるのがいいだろう。

 

 無性なので分からないが口調的に『男』という扱いでいかせてもらう。

 

 彼らは『平和や幸福を奪う』という事に違いは無かった。無くても支障は無いみたいらしいから感覚的に高級料理なのだろう。絶望を与えるとかそういうのは知らん。

 それと『魂を取る』というのはデマらしい。

 人間の魂と身体を乖離(かいり)させる()()とか。

 

 はったおすぞ。

 何が乖離させるだけだ、お前らの常識が乖離してるんだろうが。

 

 分かっていたけど、うん、常識は疑います。

 

「……ん?なにゆえ、わたし、とるない?」

 

 吸魂鬼の傍に居ると無条件で少しずつ奪い取ってしまうという『平和や幸福』に何故私が該当しないのか。純粋に疑問に思い伝える。

 すると決定的な爆弾が落とされた。

 

「平和ト無縁」

「幸福ハ絶望ノ前触レ」

「災厄ガ染ミ付イテル、俺達ト同等」

 

 一周まわって殺意しか湧いてこない。

 つまり『平和とか幸福とか取ろうと思っても取るべき物が存在しない、これからもなァ!』って事ですよね?

 彼らは平和や幸福以外奪い取れないから、『奪われない』=『そんなもの無い』という事かな?

 

 

 ……ちょっと堕天使さん私とお話しよっかー。

 

 私の魂に染み付いてるらしい【災厄吸収】について事細かく説明しやがれド畜生。

 

「……まァ、なっとぅく」

「不本意ソウ」

 

 吸魂鬼無効化とでも考えておこう。

 うん、それが有ったから私は無事こうやってコミュニケーションが取れるし生き延びれたんだから結果オーライ。……うん、オーライ。

 

「…──ふかのうぞぼけええええ!」

「ャッパリヵ」

 

 それが無かったらそもそもこんな事態に陥らなかっただろうがドアホ!

 

「落チ着ヶー落チ着ヶー。熱上ガルゾ」

「きゅう……」

 

 グラグラと視界が揺れる。

 ダメだ、体調やばい。

 

 ひとまず予想外の看守を意図せず攻略出来たのは良かったとだけ考えておこう。

 




誰がこの展開を想像しただろうか。
私の中で不生不死は神様の1種だと考えている。

リィン
…災厄に振り回され軽率に胃を痛め精神的な死を迎える。物語はまだ始まらない。知ってるか?コレ、序盤なんだぜ?言うならプロローグ段階だぜ?

吸魂鬼
…はるか昔に造られた存在。幸福や平和などの感情のみ奪える、孤独の存在。この世で最もおぞましい生物。実は喋れる。



魔法の言葉は〜?
\捏造設定〜!/

決め言葉は〜?
\キャラ崩壊〜!/

合言葉は〜?
\流石は災厄〜!/

作者の得意技は〜?
\予想の斜め上〜!/
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