3度目の人生は魔法世界で   作:恋音

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第9話 1番の課題が発音だということをまだ知らない

 最低限の看病だったが無事熱も下がり、改めて現状を色々把握することが出来た。

 

 私が居るアズカバンはとにかく寒い場所。吸魂鬼が看守をやっているせいか脱獄する気力も無い人間が多い。そして魂を取られて人が結構簡単かつ定期的に死(別名:魂と肉体の乖離)を迎える。

 ……お巫山戯がすぎるぞ吸魂鬼。怖い。

 

 私は世界で1番脅威の闇の帝王ヴォルデモートの娘として『生まれた』から捕まった。

 世界とは実に理不尽だ。

 

 吸魂鬼は私が珍しいタイプの人間だから特別に味方してくれるらしい。将来私が大人になったら『あの時お前は泣き喚いて』って懐かしい話をして弄るんだとか。残念だったな、お前らの顔はいつまで経っても泣く。

 

 そして最後。

 驚く程やることがない。

 

 いや、これ本当に重要。

 

 ……『動物』を壊す方法を知ってるか?

 答えは無だ。虚無だ。暇だ。

 

 人間暇になると精神から壊れてしまう。死活問題だ。監獄の中にいる人間にはなるべく関わらないようにと言われていたが吸魂鬼に話し相手になってもらうとか私が簡単に死を迎える。もちろん精神的に。

 

 この世界、私の視界が特にハードモード。

 

 お化けとコンニチハが苦手と言うか無理って言ってんじゃん。やめろよ世界。世界を終わらせるぞコノヤロウ。

 

「ぬぁ……」

 

 吸魂鬼は実に便利な存在で私がどこにいても大体の場所はわかるらしい。それの理由が災厄。

 微かに感じる疫病神の気配を辿るらしい。

 

 やだ、吸魂鬼怖い。

 

 つまり私は1人牢屋の中で暇を潰すことをしなくてもいいということ。

 アズカバンを体力作りも兼ねてお散歩します。

 

 牢屋の外に出る方法はもちろん魔法。杖が無くても魔法が使えるっていいね。

 

 1度父に倣ってピーターと一緒に自分を開発して見たが見事失敗した。気にしないことにした。

 

「へぷしっ」

 

 気温が低くて思わずくしゃみをする。

 

 今いる廊下はもちろん寒いのだが、私の牢屋は余計に風が酷くて体感気温が低い。

 

 風邪が治ったからといってこれから引かないという証拠はないむしろ引く可能性の方が高いだろう。なぜなら、ここは世界で1番の監獄だから。

 さらに寒くなる気温はもちろん、感染性の病気、死喰い人の拠点よりも埃にまみれた環境による病気の悪化など。

 ……正直めちゃくちゃ怖い。

 

 物理的に来てくれたら対処のしようはある、だけど医療知識がない私にとって病気は困る。

 

 だから体力作りに繋がるのだ。

 

 どうあがいても死と隣り合わせで人生怖い。

 怖がってばっかりだな。

 

 うん、とにかく散歩だ。散歩をしよう。

 

 私が散歩をすることで手に入れるメリット。

 ・アズカバンの作り把握できる

 ・体力作り

 ・情報

 

 一番最後は特に大切で、私の中では『情報こそ生き延びる術、生き残る術』だと考えている。

 実際、私は何も知らなかった。世界が思う父の脅威と出生に関する罪。

 

 生まれたこと自体が罪だなんて知らなかった。

 その知らなかったが通用しないのが世界だ。

 

 こうなるとどこからどこまでがアウトでセーフか私の中の常識とすり合わせる必要がある。

 本当に生きていけるのか。突然私が死刑になって命を落とすことはないのか。

 

 生ぬるい考えじゃきっと生き残れない。情報や弱点を貪欲に手に入る。

 

 

 

 ……えっ。監獄の中で?

 

 無理だね(断定)

 

「ぴぎゃッ!」

 

 覚束無い足取りでは段差のある床に躓く。

 大人ではそこまで気にならないサイズかもしれないけど1歳半程の子供には辛い段差だ。

 

「うう……」

 

 熱が上がってきました。

 劣悪な環境に加えて体力作り中の体力不足。

 

 私はべちょっと転び地面に寝転んだままになる。動けない。しんどい。

 精神と体力に負荷がかけられすぎてる。

 

 床で寝てやるぜェ?簡単に死ねるぜェ?

 

「きゃっかぁ!」

 

 いやいやいやいや、シャレにならん。

 くっ、危うく敵の目論見通りになる所だった。

 

 敵は多分『この世界』と『人間』で望むことは私の『死』だろうな。

 

 直接殺そうとしないのは疑問だけど。

 

「誰だ…?」

「ピギャッ」

 

 低い男の声が聞こえて思わず飛び起きる。

 声のする方向から現在地真正面の牢屋で確定なんだけど。あるんだよ、目が、扉の鉄格子の隙間に光って………。

 

「ビヂャアッ!」

「なんでこんな所にガキが……」

 

 恐る恐る聞いてみた。

 

「みめ、ひと?」

「いやそこでその質問が来るのはおかしいだろ」

 

 見た目が人かどうか、これ大事。父は人じゃない。あと吸魂鬼もキツイ。

 

「生物学上は人じゃね?」

「ぎゅるんぴょ」

「なんだよそれ」

 

 まとも?まともな見た目?大丈夫?私のSAN値直送しない?

 この際種族が人間じゃなくてもいいから目に優しい原型にして欲しい。

 

「どうすりゃいいんだこれ」

「…………なみゃえ」

「は?」

「なみゃえ、は」

「名前か?」

 

 たどたどしい発音だけどきちんと言いたい事が伝わった様だ。

 しばらく時間が空いたが相手は答えてくれた。

 

「シリウス・ブラック……」

「ひぎゃん!」

「な、なんだよ」

 

 めっちゃ聞いた事あるーー!

 えっ、なんで?なんでここにいるの?え、ジェームズさんやピーターと学生時代仲良かった人でしょ?なんで?悪いことしたの?なんで?

 

「おじしゃん」

「おじッ……せめてお父さんレベルだろ」

 

 うちの父年齢不詳だけどシリウスさんよりは年上だよ。どちらかと言うとお兄さんだね。

 

「しぃうしゅしゃん」

「おう」

「なにゆぇ、いる?」

「……間接的に親友殺したから」

 

 よく分からんがジェームズさん死んだの?

 この人の親友ってジェームズさんだよね?

 

 うん、わからんこと多すぎ。

 

「おじしゃん」

「シリウスさん」

「おじしゃん、わたし、そこはいる、よき?」

「んー、っと。入っていいか?いや無理だろ」

「おーけー?」

「……出来るんなら──」

 

 〝開け(アロホモーラ)

 

「──な……は?」

 

 ガチャン、と音を立てて鍵が開いた。

 

「いやいやいやいや!?なんで?鍵は!?」

 

 おじさん、自分が住んでるここは魔法使える人間が居るってことを忘れてないか?

 鍵のかかった部屋に入ること程度造作もない。

 

 子供用ベッドの鍵を何度開けて脱走したと?

 

「なんで入ってきたんだよ!」

「めっ」

「えー…何がダメなんだよこれ……」

 

 脱走したら脱走したで吸魂鬼が鬼の形相でキスを迫りに来るから安心して欲しい。どこが安心できるかは知らないけど。

 

「わたし、おなにゃぇ」

「はい…」

「りぎん」

「リギン?」

「りみぃん…」

「リミン?」

「り、り……。ひゃつおんふかのー…」

「なんだこれ、なんだこれ」

 

 私の名前って発音するのこんなに難しかったかな。謎でござる。

 ……自分の名前なんて言ったこと無いや。

 

「おじしゃん」

「シリウスさん、だろ」

「おじしゃん、よぶなみゃえ、付けるして?」

「は?えーっと……呼び名を付けろ?」

「ぴょ!」

 

 いい人そうだし、どうせここには体力作りとして通うだろう。名前に特に拘り無いからつけて欲しい。

 その意味を込め重たい頭を縦に振るとシリウスさんは考え出した。

 

「ぴー」

「ぴぎゃん!?」

 

 ぴーぴー言ってるからそうなったの?

 ハハ、なんだかピーターと被るなぁ。

 

「やめよう、俺にダメージが来る」

「ぴー…」

 

 私にも来ました。

 

「あ、動物にしようぜ。俺の親友は動物由来のあだ名使ってたんだ」

「どーびゅ、ヂュ」

「後半の発音酷い」

 

 呆れ果てた目でモゴモゴ喋る私を見る。

 動物って言ってもなぁ、果たして私の知識と同じような動物がいるか分からないし。

 

「おじしゃんは?」

「あ?俺はパッドフットって言われてた」

「ぱ…どふー、と。どふぃー?」

「なんか嫌なんだけど」

 

 長いんだよあだ名が!本名より長いって!呼べないじゃん!短縮するしか無いじゃん!

 ……シリウス・ブラックの『ブラック』から取ってもいいんだけど。

 

「なりば、クロ」

「どこの言語だ……。かっこ悪いから却下」

 

 日本語ですけどクッッソわがままな坊ちゃん。

 流石ベラの親戚!ブラック家はロクな人間が居ないと見た!

 

 じゃあ私の呼び方考えてくれよ!本名が発音できないって私ヤバい!すごくヤバい!テンションもヤバい!

 

「……猫?」

「にゃん」

「犬?」

「わん」

「ハムスター」

「にゅ!?…みょ、け、へ、へけー!」

「ブハ…ッ! わりィからかい過ぎた」

 

 無茶振りでも頑張った私を褒めてくれていいんだよ?ハムスターに鳴き声ってあるの?チュー?

 

 ツボにハマっていたのか、しばらく笑い転げた後、私の顔に手を置いてじっくり観察し始めた。

 

「あー。金毛に黒目、か……」

「け、やぁー!」

「……金髪。ん?お前の目……若干赤みがかってるな。あ、暗くしたら赤く見える」

 

 毛って言い方なんか嫌だと主張したら伝わった様で一安心。しかし衝撃の新事実が知らされた。

 

 光の中では黒くて、闇の中では赤い瞳。

 そういえばパパ上の目は赤かったかなぁって思い出しました畜生破滅フラグかよ。

 

「……なぁおい」

「わにゅ?」

「闇の帝王って知ってるか?」

「んぱぁ」

「………嫌な予感がする」

 

 青ざめた顔でそう呟いた。

 私の思い至った考えと類似しているようだし、赤目というのがどう考えてもアウトな事に変わりないという確認と同意だった。

 

「お前の『んぱ』って。父親の意味か?」

 

 わぁ!胃が痛いよ!わたし、目は黒で通す!

 使えるかもしれないけど精神負担的に黒で通す事にするよ!

 とりあえず助けて欲しいな!

 

「うぬん」

 

 少し考え私は首を縦に頷くと、目の前の頭は力を失った様にフラフラ揺れた後ガンッと音を立てて頭を地面にぶつけた。

 

「き…」

「きぃー?」

「聞いてねぇぞダンブルドアぁぁあッ!!!」

 

 ダンブルドアって、誰?




何も解決してない。呼び方とか絶対忘れてる。
ただこのワンコは目の前の幼女の姿に度肝抜かれてるだけ。
魔法の言葉は『帝王の娘だから』で乗り切る気満々小娘はシェアハウス()の相手と出会った。

メタ的な理由→呼び名が決まらなかった。
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