暗殺教室~28人の暗殺者と1人の戦争屋~ 作:BIGBOSS0514
「あー、今日から来た、外国語の臨時教師を紹介する」
朝のホームルームで烏間先生は困惑しながら、俺達に言う。
まぁ、当の俺達も困惑してるのだが。
というのも、紹介された女教師が・・・殺せんせーとめっちゃベタベタしてるのである。
なんでこうなった・・・。
「イリーナ・イェラビッチと申しますぅ~皆さんよろしく!」
「すっげえ美人・・・」
「おっぱいやべぇな~」
男子が女教師の美貌に感嘆の声を漏らす一方で、
「・・・なぜベッタベタなの」
「・・・イラッとするわ~」
女子の冷ややかな声も聞こえてくる。
「本格的な外国語に触れさせたいとの、学校の意向だ。英語の半分は、彼女の受け持ちに文句ないな?」
烏間先生が殺せんせーに言う。
「仕方ありませんねぇ・・・」
「なんかすごい先生来たね~、しかも殺せんせーにすごい好意あるっぽいし・・・」
茅野と渚が話をしている。
「でもこれは暗殺のヒントになるかもよ?タコ型超生物の殺せんせーが人間の女の人ににベタベタされたても戸惑うだけだろうし・・・いつも独特の顔色を見せる殺せんせーは戸惑うときはどんな顔か、だね」
(ま、まぁ相手の動揺を悟る手段としては有効だろうな・・・さて、先生の反応は・・・?)
みんな殺せんせーに注目するが・・・顔をピンクにして・・・デレていた。
「いや、普通にデレデレじゃねえか」
「何のひねりもない顔だね・・・」
「う、うん。人間もありなんだ・・・」
みんな口々に突っ込む。
「ハァ~、見れば見るほど素敵ですわぁ~、その正露丸みたいなつぶらな瞳、あいまいな関節・・・私、虜になってしまいそう~」
「いやぁ~お恥ずかしい~」
殺せんせーは完全に女教師に気を許していた。
「騙されないで・・・殺せんせー」
「・・・そこがツボな女なんていないから」
女子は殺せんせーの事を嘆いていた。
(ん、待てよ。この女の顔・・・以前どこかで見たことがあるな・・・)
俺が女教師に見覚えがあると思ったと同時に、みんなもこの女が只者じゃないことを薄々感じ取っていた。
午前中の授業が終わり、昼休みとなった。
俺達は、殺せんせーとサッカーボールをパスをしながら暗殺を組み込むという(ある意味)高度な遊びをしていると、
「殺せんせぇ~」
校舎からあの女教師、イリーナがこっちに、いかにもぶりっ子のやりそうな走り方でやってきた。
「殺せんせぇ~烏間先生から聞きましたわぁ~すっごく足がお速いんですってね!」
「いやぁ~それほどでもないですねぇ」
相変わらず殺せんせーはデレている。
「お願いがあるのぉ~一度本場のベトナムコーヒーを飲んでみたくってぇ~、私が英語を教えている間に買ってきてくださらない?」
「お安い御用です、ベトナムにいい店を知ってますから!」
そう言うと、殺せんせーは昼休み終了のチャイムがなったと同時にマッハでベトナムに飛んで行ってしまった。
「で・・・えーと、イリーナ・・・先生、授業始まるし・・・教室戻ります?」
磯貝がイリーナに尋ねると、
「授業?各自適当に自習でもしてなさい」
・・・先程とは全く違う、明らかに別人のイリーナがいた。
「それと、ファーストネームで気安く呼ぶのやめてくれる?あのタコの前以外では教師を演じるつもりもないし。イェラビッチお姉様と呼びなさい」
彼女は取り出した煙草に火を点けながらそう言った。
(あ、コイツ紙巻派か・・・)
そんなどうでもいい事を思う俺と、もう一人を除くみんながこの状況に戸惑う中、
「で、どうすんの?ビッチ姉さん「略すな!」アンタ殺し屋なんでしょ?クラス総がかりで殺せないモンスター、ビッチ姉さん一人で殺れるの?」
・・・この状況に呑まれなかったもう一人であるカルマが、イリーナを挑発する。
「・・・ガキが。大人には大人の殺り方があるのよ。潮田渚ってアンタよね?」
突然呼ばれた渚は困惑するが、次の瞬間、渚はイリーナに・・・キスされてた。
「後で教員室にいらっしゃい。アンタが調べた奴の情報、聞いてみたいわ」
イリーナのディープキスを受けた渚は放心状態になり、その場にくずおれた。
「その他も有力な情報持ってる子は話しに来なさい。いいことしてあげるわよ、女子には男だって貸してあげるし。技術も人脈も全てあるのがプロの仕事よ。ガキは外野でおとなしく拝んでなさい。あ、そうそう。あと、少しでも私の暗殺の邪魔したら・・・殺すわよ」
いつの間にか、イリーナの後ろには重そうな荷物・・・おそらく銃火器を抱えた屈強そうな男達3人が控えていた。
この時、クラスの全員がイリーナはプロの殺し屋ということ、そして、嫌いだということを認識したのだった。
午後の最初の授業である英語は、イリーナの言う通り自習になっていた。
当の本人は、椅子に腰掛けてタブレットをいじっている。
大方、殺せんせーが帰った後に仕掛ける暗殺プランの確認でもしているのだろう。
ふと、渚の方を見たイリーナがウインクをする。
それを見た渚が身震いしたのを見て、
「・・・さっきのキスがそんなに良かったのかい?」
「違うよ!!!」
俺は渚をからかってやった。
いかん、渚弄り・・・ハマりそうだ。
「なぁ、ビッチ姉さん~授業してくれよ~」
「そうだよ~ビッチ姉さん~」
「ここじゃ先生なんだろ~ビッチ姉さん~」
みんなが口々にそう言うと、
「あ~~~~~~!!ビッチビッチうっるさいわね!!まず正確な発音が違う!!アンタら日本人は、BとVの区別もつかないのね、正しいVの発音を教えてあげるわ。まず、歯で下唇を軽く噛む、ほら!」
俺とカルマを除くみんながイリーナに従う。
「そうそう、そのまま一時間過ごしてれば静かでいいわ」
(((((なんなんだこの授業)))))
全員が彼女に殺意を覚えたその時、俺はイリーナの事を思い出した。
「・・・あんた、ここの副担知ってるか?」
「はぁ?ここの副担任って・・・烏間じゃないの?」
イリーナは呆れ気味に俺に言う。
「実はもう一人いてだな・・・千賀正信という男が」
その名前を出した途端、彼女の表情が一変した。
「!?・・・廊下に出なさい、話をしましょ」
イリーナに促された俺は、みんなに驚きの視線を向けられながら廊下に出た。
「で・・・何でアンタがあの男の事を知ってるの?彼はどこにいるの?それと、アンタもよ。何者なの?他のガキ共とは明らかに違うわよ」
廊下に出ると腕を組んで壁にもたれかかったイリーナが俺を尋問した。
その声色と表情は、明らかに俺を警戒している。
まぁ、それもそうだ。
会ったことのない人間が自分の事を知ってるなど、警戒して当然だ。
「俺は、”ネメシス”のメンバーだ。千賀は同じチームメイトだ。俺達は、日本政府と国連からの依頼で殺せんせーを暗殺しに来た。まぁ、あいつは別件でウチのボスから呼び出されて今日は居ない。アンタの事はあいつが自衛隊のPKOで派遣された時に書いていた日記にお前の名前があったからまさかとは思ったが」
”ネメシス”という単語に眉がピクリと動いたイリーナだったが、千賀もそこにいるということには流石に驚きを隠せなかったようだ。
「あいつ・・・”ネメシス”だったのね。それと、アンタも同業者って訳ね・・・で、何?アンタは私の暗殺を邪魔する気?」
「まさか、そんな野暮な事はしねぇよ。ただ、俺のクラスにああ言う態度を取られるのは気に食わないだけだよ」
「何よ、聞くとここのガキ共って落ちこぼれ集団って言うじゃない。無駄な勉強するより私に協力した方がよっぽど有益じゃないの?」
ガタンッ・・・教室から音が聞こえた。
恐らく、みんな盗み聞きでもしているのだろう。
教室からかすかにみんなの殺気が漏れている。
「そうとも限らんさ、アンタは努力して色々克服したから今のお前があるんだろ?それと同じさ。みんな何かしら克服したくて、努力はするものさ」
それを無視して俺は反論する。
「・・・私とガキ共を一緒にしないで」
イリーナは胸の谷間からデリンジャーピストルを取り出し、俺に突きつける。
その瞬間、俺は即座に上半身だけ捻ると同時に銃を握っているイリーナの腕を捕らえ、射線を逸らした。
「・・・お前がプロと主張するのは一向に構わないし、俺達と無理に暗殺に関わる必要はない。お前の気持ちも少しは分かる。だがな、ここにいるクラスの連中は普通の生徒を演じながら、ターゲットである教師の教えを生かし、柔軟な暗殺計画を練る・・・少なくとも奴の暗殺に関しては間違いなくプロと言えるだろう。決して落ちこぼれなんかじゃない。だから・・・これ以上みんなを見下すな」
そう言った時、俺は一瞬だけ殺気を放った。
効果は、それだけで十分だった。
イリーナは、自分が今受けた凄まじい殺気をまだ処理できてないようで、完全に体が硬直している。
そんなイリーナを尻目に、俺は教室へと戻った。
教室へと戻ると、みんなが俺の方を見ている。
「隼人・・・ありがとう」
磯貝が口を開く。
「ん、何が?」
「お前、さっき俺達の事を擁護してくれて・・・」
「礼を言われることじゃないさ。それに、仲良くしてくれるみんなの事を悪く言うのに少し腹が立ったからね~」
その後、クラスの雰囲気はさっきのムードから一変し、一気に和んだものへと戻った。
その中で、渚とカルマだけが釈然としない表情をしていたー。
五時間目の体育は射撃訓練だった。
みんなが烏間先生の指導を受けている時、三村が何かに気づいた。
「おいおい、マジか!二人が倉庫にしけ込んでくぜ!」
みんな振り返って、その姿を視認する。
「な~んか、がっかりだな~。殺せんせーあんな見え見えの女に引っかかって」
菅谷がぼやく。
「烏間先生、私達あの人のことを好きになれません」
片岡がみんなの気持ちを代弁する。
「すまない、プロの彼女に一任しろとの国の指示でな・・・だが、わずか一日で全ての準備を整える手際、殺し屋として一流なのは確かだろう」
烏間先生がすまなさそうに言う。
(まぁ、それはそうだが・・・果たしてどこまでやれるか・・・)
二人が倉庫に入って程なくして、けたたましい銃声が鳴り響いた。
(実弾を使ったのか!?あいつに実弾は効かないはずだが・・・はぁ、やはり俺の読みは当たったか・・・)
一時して銃声が鳴りやむと、今度はヌルヌル音とイリーナの嬌声が聞こえてきた。
(・・・何してんだよ、あのタコ)
「めっちゃ執拗にヌルヌルされているぞ!」
「行ってみようぜ!」
岡島と前原が真っ先に反応し、倉庫に駆けていった。
みんなも後を追うと、丁度倉庫からいつもと何ら変わりない殺せんせーが出てきた。
「殺せんせー!」
「おっぱいは!?」
(おい何てこと聞いてんだ岡島・・・)
「いやぁ~もう少し楽しみたかったですが、皆さんとの授業の方が楽しみですから」
「中で何があったんですか・・・?」
渚がそう言った時、倉庫から・・・昔ながらの体操服を着て、惚けた顔のイリーナが出てきた。
「・・・まさか・・・わずか一分であんなことされるなんて・・・肩と腰の凝りをほぐされて・・・オイルと小顔と琳派のマッサージもされて・・・早着替えさせられて・・・その上まさか・・・触手とヌルヌルで・・・あんなことを・・・」
そう言ってイリーナはその場でくずおれた。
(((((どんなことだ!!!)))))
「・・・殺せんせー何したの?」
渚が殺せんせーに聞くと、
「さあねぇ、大人には大人の手入れがありますから」
悪い大人の顔をして質問をはぐらかした。
「さぁ、教室に戻りますよ!」
「「「「「は~い」」」」」
殺せんせーに促され、みんなは教室に戻っていった。
みんなが去った後、俺はイリーナの下へ行った。
「・・・見事にしてやられたな」
「・・・何よ、冷やかしにでも来たの?」
「まぁ、そんなところだ」
「なっ・・・!?」
「まだガキの俺達の方が奴にダメージを与えられてたし、俺達は暗殺業の他に学業もこなしてるハンデ付きだぞ?」
「・・・何が言いたいの」
「クラスのみんなでもアンタは他の場所ではプロの殺し屋というのは分かる、それも一流の。だが、ここは”暗殺教室”だ。さっきも言ったが、ここでは暗殺者と教師を両立できない限り、ここでは最もプロとして”劣っている”」
「・・・くっ」
さっきの失敗の事もあってイリーナは悔しそうな表情を浮かべている。
「ここで暗殺を続けるなら、まずみんなに非礼を詫びろ。みんなの事を下として見ないことだ。納得いかないなら、あの男に相談したらどうだ?」
そう言うと俺は、後ろを顎でしゃくる。
イリーナは怪訝な表情で振り返ると・・・
「・・・イリーナ、久しぶりだな」
千賀が立っていた。
イリーナ回も2回に分けます()