原作:やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。
タグ:転生 クロスオーバー 俺ガイル 比企谷八幡 俺三○○人 クロスオーバー 「異世界転移したら三〇〇人になりました。~スライム移植から始まる自己増殖ライフ~」 やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。
比企谷八幡は小説投稿サイトでweb小説を読んでいた、
そして、気がついたら……え、俺が三○○人!?
この短編は、投稿サイト「小説家になろう」でうっかり面白い作品を見つけて、俺ガイルとクロスしてみたくなって書きましたw
「異世界転移したら三〇〇人になりました。~スライム移植から始まる自己増殖ライフ~」
https://ncode.syosetu.com/n6091fb/
※サキサキの誕生日は個人的に祝いたいだけで、本編とは関係ないのですゴメンなさい☆
やはり俺が300人いるのはまちがっている。
俺──比企谷八幡はベッドに寝転んで、目覚まし機能付き携帯電話、すなわちスマホの画面を見ながら、おやすみ前のひと時を過ごしていた。
「──なんだこれ、超おもしれぇ」
今読んでいるのは、web小説サイトで見つけた、とある作品だ。
昨日から投稿を始めた作品らしいのだが、これが本当に馬鹿らしくて面白い。
内容は、異世界に転移する時にスライムと融合させられて、主人公が三○○人に増殖してしまうという、荒唐無稽な話だ。
「くくっ、よりによってワラビモチ。共食いかよ」
今は食事シーン。三○○人の主人公と、主人公を召喚してスライムを混ぜた張本人が、みんなでワラビモチを食べている。
うっかりその光景を想像してしまい、ツボに入ってしまった。これは材木座にも教えてやらなきゃだな。
お、もうこの話は終わりか。次のページを──
──突然の出来事だった。
気がついたら、俺……いや“俺たち”は奉仕部の部室にいた。
しかし、おかしい。吸い慣れない空気と、見覚えの無いデザインの机と椅子。
そして何より、俺を囲む俺、すなわち比企谷八幡の群れ。その群れは、未だ増え続けているのだ。
なんだこりゃぁああああ!?
混乱して叫んだ瞬間、部室のドアが開いた。
「やっはろー……って、ええっ!?」
未だ増殖中の俺の群れが、一斉に視線を向ける。
「「「なんだ、由比ヶ浜か」」」
「な、な、なんで、なんでヒッキーがいっぱいいるの!?」
あ、またひとり増えた。
「「「いや知らねえって。気がついたら増えてたんだよ」」」
「みんなでいっぺんに喋った!?」
ったく、うるさい奴だ。これから状況を把握しなきゃいけないって時に。
「「「あー由比ヶ浜、ちょっと静かにしてくれ」」」
「ヒッキーたちの方が声大きいからねっ!?」
そりゃそうだわな。いくら俺がコミュ障だからって、こんだけ大勢で一斉に喋ったら、うるさいに決まってる。
由比ヶ浜の的確過ぎるツッコミで声がピタリと止んだ。
あ、またひとり増えた。
「ヒッキーが……ヒッキーを産んでる……」
口をぱくぱくさせて驚いている由比ヶ浜の背後、再びからりと部室の扉が開く音がした。
「ごめんなさい、遅くなってしま……っ、た」
「ゆ、ゆきのん!?」
俺の群れに遮られて見えないが、声の主は、奉仕部の部長である雪ノ下雪乃だろう。
「ヒッキーたち! ゆきのん白目むいて倒れちゃった!」
* * *
「──で、説明してくれるかしら。比企谷くんども」
「「「俺に解る訳がねえだろ」」」
雪ノ下が気づくまでの間で、俺は三○○人に増殖していた。さすがに部室には入りきらないので、二○○人ほど廊下で待機させてある。
「大勢で同じ顔で、一斉に喋らないでくれる? 気持ちが悪いわ。それでなくても常日頃から目が気持ち悪いのだから」
まあ、俺が三○○人いたらキモいよな。しかし最後の罵倒はいらんだろ。
しかし、どうしたものかね。
これじゃ部活どころの騒ぎじゃない。いや、依頼人が来るアテは無いんだけどさ。
「ぎゃあああああ!」
お、廊下から響いてきたのは、顧問のアラサー独身女教師、平塚先生の声か。
勢いよく扉が開いたと思ったら、廊下の俺の群れをかき分けて、血相を変えた平塚先生が飛び込んできた。
「説明しろ比企谷ぁああああ」
腰だめに拳を引く平塚先生に、教室内の俺が一斉に身構える。
が、ファーストブリットもラストブリットもやって来ない。
「うううっ、数が多過ぎて、どの比企谷に鉄拳を浴びせたらいいのか……」
お。そういえばそうか。本体である俺が“俺の群れ”の中心にいれば、安全だ。
しかし、増えても俺は俺。思考は全員一緒らしく、俺を押し退けて俺が俺の方へ次々とやってくる。俺の大バーゲンだな、まるで。
「「「お、おい、やめ……あ」」」
「こうなったら、手当たり次第だ。歯を食いしばれ比企谷ども。抹殺のォオオオ……」
どんどん前に押し出されて……あ。先頭に押し出された。
「ラストブリットォオオオ」
あはれ、俺本人を含む数人の俺が吹き飛んだ。
「──で、この乱痴気騒ぎは一体なんなのかね」
「そうだよヒッキー、たち?」
「はあ、私は三○○人も更生させなければならないのかしら……」
ちょっと雪ノ下さん。一人だけ質問じゃなくて愚痴になってますよ。
とかなんとか愚考するも。
「わからねえよ。大体、さっきまで自分の部屋でなろう読んでた筈なん……あ」
これ、あの小説と一緒だ。
つまり俺は、スライムと融合して──いやあってたまるか、そんな奇跡。
「あ、でもさ。考えようによっては、ラッキーじゃないかな」
「この男が増えたことが、なぜ幸運なのかしら。このままでは日本は破滅よ」
何故かテンションの上がる由比ヶ浜に、雪ノ下はこめかみを押さえながら首を振る。
「だってさ、こんだけいるんだもん。ゆきのんとあたしで、シェアしちゃえば……いいんだよ」
おい待て由比ヶ浜。何故最後吐息まじりになった由比ヶ浜。
ええい、こっちを見るな頬を染めるな向こうの俺を見るな俺を見ろ……じゃなくて。
「……ね、ヒッキー。いいでしょ」
由比ヶ浜が上目遣いで見つめるのは、俺本体の三人向こうの俺だ。ニアピン賞だ。惜しかったな。
しっかしこいつ、たくましいな。どんだけ非常識な現象なのか、解っているのかね。
ふと、顔を上げた雪ノ下と視線がぶつかった。困ったような、判断を委ねるような、そんな表情。
それは、あの時の、顔。
「──わかった。さすがにこの人数だと、いくら俺でも鬱陶しい。一人と言わず百人くらい持ってけ」
うっかり吐いてしまう。途端、周囲の俺どもがザワザワと話し合いを始め、ジャンケンを始めてしまった。
あいこでショッ。
あいこでショッ。
あいこで──って、気づけよ俺共。
思考が同じなんだから勝負がつく筈ないだろうが。
「──なあ、比企谷」
背後を俺に囲まれた平塚先生が、普段とは違う、弱々しい顔を向けてくる。
「私にも……貸してもらえるか?」
「いや理由が分からないんですけど」
特にその、頬を染めてしなやかな黒髪の毛先を指でクルクルと遊ぶ理由が、まったく分からん。
「わ、私だって、独り寝は……寂しいんだよ」
うわー、乙女だ。乙女がいる。だいぶクセが強いけれども。
「──分かりました。好きなだけ持ってってください」
「い、いや。一人でいいんだ。初めてで複数は、その……ハードルがだな」
何の話でしょうか平塚先生。ここは部室で、あんた高校教諭だろ。
ほら見ろ、またジャンケン始まっちまった。
「──とにかく」
おもむろに雪ノ下が立ち上がる。
「これでは正常な部活動は不可能ね」
正常な部活動。たまに来る依頼人が現れるまで、読者したり紅茶飲んだり。
あらためてだけど、それ正常なのん?
「ねえ、比企谷くん」
俺の群れの中を、雪ノ下が近づいてくる。他の俺には目もくれず、俺の本体に向かって。
思わず息を呑む。どうして雪ノ下は、俺が本体だと分かるのか。
雑考の間に、眼前まで雪ノ下は近づいていた。
「おまえ……なんで」
本体が俺だと分かったのか。
途切れた疑問は、雪ノ下の微笑によって解を得る。
「以前にも言ったはずよ。私は、貴方を、知っている」
心臓が、ひとつ脈を打つ。そのたった一度の拍動は熱く、強く。あっという間に血液を体内に循環させ、同時に熱を運ぶ。
「あなた、この状況をどうしたいと思っているのかしら」
その言葉には、いつもの険はない。柔らかな声音は鼓膜を、脳を、心を揺さぶる。
「お、俺……は」
願いは分かっている。
こんな馬鹿げた状況から脱却することだ。しかし、それを口にしてどうなる。
いくら目の前の少女が成績優秀の万能超人でも、この事態の収拾など不可能なことだ。
分かっている。
解って、いる。
なのに。
何故、俺は言葉を発しようとするのか。いや、正確には、俺ではない。俺の中の、もっと奥底の、なにか。
それが、言葉を、想いを伝えたがっているのだ。
「俺は──」
「ヒッキー、大丈夫。大丈夫だから」
気がつくと、由比ヶ浜も目の前に立っていた。潤んだ瞳で俺を、俺だけを見つめるその少女は、誰よりも真実を願う。
分身なんて要らない。
まやかしや欺瞞なんて、いらない。
俺は。俺は──
「──俺は、本物が……ほしい」
その瞬間、俺の意識は光に落ちた。
* * *
眩しい。
まだうまく開かない目を擦って、重い身体を起こす。
胸の上から、ポトリと何かが落ちた。スマホか。
──そうだ、どうなった。
周囲を見回すも、何処にも他の俺の影はない。
「──ふう、夢か」
俺が三○○人になったのは、夢。その現実に安堵する。
「お兄ちゃん、まだ寝てるの?」
部屋のドアの向こう、妹の小町が制服姿で睨んでいた。
ああ、夢でよかった。本当によかった。
つつがなく放課後を迎えた、奉仕部の部室。
由比ヶ浜は携帯をぽちぽちといじり、その向こうで雪ノ下は文庫本に目を落としている。
俺は、スマホで昨晩のweb小説の続きを読んでいた。
三人の前には、まだ湯気の立つ紅茶。
ああ、まったくの日常。
会話もなく、何もない。
差し込む夕日の暖かさと、紅茶の香り。
平和だ。
「せんぱーい、助けてくださいよぉ〜」
ノックもせずに部室に飛び込んできたのは、一年後輩の生徒会長、一色いろは。
これも、日常の一部だ。
スマホを置くと、由比ヶ浜は携帯を閉じ、雪ノ下は文庫本を伏せて紅茶の用意を始める。
「せんぱーい、やばいんですぅ」
「そうか、なら断る」
やばいなら関わりたくない。なんなら働きたくない。
働いたら負け。家訓である。嘘である。
ぶーぶー騒ぐ一色を横目に雪ノ下を見やると、溜息混じりの微笑が零れた。
しゃーねぇなぁ。
「とりあえず、用件を伺えるかしら」
紅茶の注がれた紙コップを一色の前に置いた雪ノ下が問う。まあ、大方生徒会のなんちゃらでアレがそうなのだろう。
そんなもん、ロジカルシンキングで論理的に考えれば解決するだろうに。なあ玉縄パイセン。
「えっとぉ、明日なんですけど、先輩をお借りしたいんです」
おい、ちょっと待て。奉仕部は部員の貸出しサービスはやってないぞ。それに。
「明日は……用事がある」
「えー、そうなんですかぁ?」
先輩に用事なんてあるんですか、みたいな言い方はやめてね。
「そ、そーそー、明日はヒッキーは用事があるんだよ」
おい待て由比ヶ浜。
お前がそういうことを言うとだな、立つはずのない波風がだな。あ、ほらもう。
「先輩……明日は結衣先輩とお出かけですかぁ。そうですか。そうなんですか」
こっわ。いろはすこっわ。
なんでそんなに冷たい目が出来るのん?
ふと別の方向からも冷気を感じて、振り向く。
あ、あれ?
雪ノ下……さん?
「あら比企谷くん、明日は私と部の備品を買いに行く筈ではなかったかしら?」
「は? ──あ」
やっべ、忘れてた。
「備品の買い出しなら、雪ノ下先輩だけでも大丈夫ですよね、せんぱい」
「あら、比企谷くんは奉仕部の大事な備品よ。備品が備品の買い出しに行くのは当然じゃない」
「ダメだよっ、明日はヒッキーとパセラでハニトー食べる約束してるんだからっ」
三人の美少女の視線が火花を散らす。やがてその視線は俺に……え、俺!?
「せんぱい、明日は誰とお出かけするか決めてください!」
「ヒッキー、信じてるからね」
「比企谷くん、部長命令よ」
「「「さあ、誰を選ぶの」」」
あー、俺がもっとたくさんいたら良かったのに。
──三○○人とかはいらんけど。
ご無沙汰しています、エコーです。
最近ツイッターやら別サイトやらに入り浸っておりました。
あと、書き出し祭りという書籍化作家さま主催のイベントで、120作品中で第4位になりました♪
……と、無駄話はこのくらいにして。
実は今回、俺ガイルとクロスした作品、
「異世界転移したら三〇〇人になりました。~スライム移植から始まる自己増殖ライフ~」は、
知り合いが「小説家になろう」で書いている作品です。
ひいき目ナシに面白いので、よかったらぜひご一読を♪
https://ncode.syosetu.com/n6091fb/