ソード・ワールド2.5(sw2.5)リプレイ風オリ主小説 蛮族退治はもう古い!? アルフレイムに響けあたしの平和な歌声!   作:すー2018

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4ばんめのぼうけん「ドノンⅣ世の御前で歌を披露しよう!」

「こんにちは、バケットさん! この間はウルフの件、ありがとうございました!」とあたし。

 

「いやいや。ちょうどそのウルフ……おっほん、大きな犬がですな、いよいよステージデビューも間近になりましてな。

 

せっかくですから、練習風景にはなりますが、ピコさんたちにも楽しんでもらおうと考えて、こちらにお邪魔したのです」

 

「わあ! あたしたち、ショーを見られるんですか!?」

 

あたしの問いに、バケットさんはニコニコと笑って頷いた。

 

 

あたしたちは、マカジャハットの町に並ぶ劇場や美術館の通りを抜けて、一番奥の広場に建てられた、大きなテントに案内された。

 

テントの入り口の前では、画家さんたちが風景画や似顔絵を飾って、売りに出していた。

 

テント脇には吟遊詩人や踊り子さんたちもいて、それぞれ演奏や歌、踊りを披露している。

 

「彼らは、ああしてステージに立つための練習も兼ねているのですよ」と、バケットさんが言った。

 

 

 

テントの中に入ると、暗いところにたくさんの観客席が並び、その奥に光の当たったステージがあった。

 

パンパン、とバケットさんが手を叩くと、ステージに立っていた人たちが奥に引っ込む。そして、例のウル……大きい犬たちが出てきた。

 

側に、調教役らしい人が大きな丸い玉をふたつ、ステージに持ってきた。

 

「さあ、ご覧ください! 大きな犬たちの玉乗りです」

 

バケットさんがそう言うと、ステージに吟遊詩人が現れて、軽快なテンポの音楽を奏で始めた。たたたたん、と、練習風景とはいえ盛り上がる雰囲気。

 

大きな犬たちが、ぴょんと玉に乗り、後足だけで玉の上に立ちあがった。

 

「わあー!」

「すげえ……」

「楽しいのう」

「よく仕込んだわね」

「ステージというのは初めて見たが、悪くないものだなあ」

 

みんなで口々に感想を言い合う。

 

と、そこへ。

 

パチパチパチ、と拍手が響き、あたしたちとバケットさんは振り向いた。

 

そこには……なんと、このマカジャハットの女領主、イェキュラさまが立っていたんだ。

 

 

イェキュラさま。最近、マカジャハットの先の王が急に亡くなってしまって、王妃だったイェキュラさまが女王として即位したばかりと聞いている。

 

最初は「愚女王」とか「娼婦王」とか、国の外でも中でも、さんざんに言われていたけど、めきめき実績を出して、今はブルライト地方の「西の魔女」とさえ呼ばれているんだって。

 

そのイェキュラさまが、直々に、どうしてこのバケットさんのテントに……!?

 

「楽しいショーになりそうね、バケット」

 

イェキュラさまが蠱惑的な微笑みを浮かべた。

 

「これは……このようなところへ、ようこそ」と、バケットさんがかしこまってお辞儀する。

 

「用件を言うわね。今日は、あなたの人づてを使って、ラージャハ帝国のドノンⅣ世陛下と交渉がしたいと思ってここへ来たの」とイェキュラさま。

 

「……確かに、私はドノンⅣ世陛下の親戚でございますし、そろそろラージャハでも公演をと考えていたところではございますが……一体どのような内容ですかな?」

 

「これよ」

 

イェキュラさまが、すっと片手を上げると、侍女らしき人が静々とあるものを捧げて持ってきた。

 

何だろう……? ふつうのピアスみたいだけど。

 

「あれは、<通話のピアス>じゃな」とザム爺が言った。

 

「一対でセットになっておってな。どんなに遠いところで離れていても、このピアスで通話ができる優れものじゃ」

 

 

「そうよ。これで、ドノンⅣ世陛下とわたしの間に、領主どうしホットラインを作りたいの」

 

「なるほど……国と国のトップの友好を深めたいということですな」とバケットさん。

 

「お願いできるかしら。どうしても貴方の力が必要よ、バケット」とイェキュラさまが懇願した。

 

「イェキュラさま……ああ、そんな瞳で見つめられると困りますな。分かりました。……面会をお願いしてみましょう」と、バケットさんが了承した。

 

「行き帰りの道のりは、砂上船を使ってね。護衛も、ちょうどいい方々がここにいるのじゃないかしら」

 

「ええ……あたしたちですか!?」

 

あたしは、急に話を振られてびっくりした。

 

「そうですな……急な話で申し訳ないですが、ピコさんたち、これも何かの縁。ラージャハ帝国までの、念のための護衛をお願いしても良いですかな?」

 

「まあ……今のところ何の依頼も受けてねーし……いいんじゃねえか? 砂上船に乗れるなら、あんまり魔物の心配もない、気楽な旅になりそうだぜ」と、リオン。

 

砂上船というのは、砂漠を駆ける魔船艇のひとつで、富裕層がよく使っている交通手段だ。ふつうならラクダで日数をかけてジニアスタ闘技場の北のカスロット砂漠を越えていかなくちゃいけないんだけど。

 

やったね、これで楽ちんに移動して、ラージャハ帝国に住んでる友だちのコボルドにも、会えるかも!

 

「そう、このお願いをあなた方にするのはですな、ピコさんの吟遊詩人としての腕前を見込んでのことでもあるのです。

 

マカジャハットを拠点とし、常設テントを設けている我々は、ここのショーで手一杯ということもありますし、ぜひ、ラージャハ帝国では、ピコさんの演奏と歌を披露してもらいたいのです」とバケットさん。

 

わーい! バードとしては、これは引き受けなくっちゃだよね!

 

「わっかりましたあ。護衛兼、吟遊詩人としてのお仕事、喜んで引き受けますー!」

 

あたしはガッツポーズを決めた。

 

「ピコが乗り気なら、わたしもいいわ」とナナ。

 

「今回、俺はショーのスタッフでもやるかなあ」とロッド。

 

「ラージャハという未知の場所に、砂上船で安全に行けるなんて、良いのう!」とザム爺。

 

「あらあら、話がまとまったわ。良かったわね、バケット」

 

イェキュラさまが微笑んだ。この方、本当に綺麗だなあ。あたしだって、ちょっとドキドキしちゃうよ。 

 

そんなわけで、あたしたちは護衛兼ショーのスタッフとして、ラージャハ帝国に向かうことになったんだ。

 

 

◇   ◇   ◇

 

 

ラージャハまでの道のりは快適だった。ジニアスタ闘技場までは馬車で行き、そこから北の、カスロット砂漠に入るところで砂上船に乗り換えた。

 

バケットさんとあたしたちを乗せた砂上船は、灼熱のカスロット砂漠をぐんぐんと、とても速いスピードで北上して、ラージャハまで着いた。

 

オアシスの上に建てられたラージャハは、周りをぐるりと堅固な壁で囲まれていた。門ではバケットさんが公演とイェキュラさまの使者として来たことを伝えると、難なく街の中に入れてもらえた。

 

お城までは、てくてくと歩く。街の通り、歩いているひとたちをよく見ると、コボルドとか、穢れを持っているために、人族からは忌み嫌われているというナイトメアが、普通にいる。

 

「蛮族やナイトメアが街の中に……?」とロッドが驚いた。

 

「皇帝陛下のドノンⅣ世が、実力で物事を判断するという話ね。蛮族で重用されている者も少なくないと聞いていたけど……本当だったのね」とナナ。

 

「ふーん……そのドノンⅣ世ってのは見る目があるんだなあ」とリオン。

 

「なるほどのう、珍しいものが見られたわい」とザム爺が言った。

 

お城に着くと、バケットさんを先頭に、あたしたちは謁見の間に通された。質の良い調度品である椅子に腰かけた、ひとりのドワーフが、威厳をもってあたしたちを見ている。

 

銀色の髪や髭と瞳に、鈍い灰色の肌。"黒鉄大砲"(ドノン・カノン)とも呼ばれる、ラージャハ帝国の皇帝陛下……ドノンⅣ世だ。

 

周りには、屈強そうな人族や蛮族が控えている。

 

「久しいな、バケット。貴様の、興業のほうはうまく行っているのか?」

 

「おかげさまで」

 

「しかし儂の親族である貴様を使者にたてるとは無礼ではないか? 「西の魔女」は我らに喧嘩を売りに来たのか? そうであれば容赦なく攻め入るぞ!」

 

ドノンⅣ世が自国の武力をちらつかせる。

 

うわあ、いきなり戦争のお話!? このドノンⅣ世ってひと、とっても怖いよう!

 

あたしは、すがるようにバケットさんを見た。

 

バケットさんは慣れた様子で「まあまあ」とドノンⅣ世をいなした。

 

「その逆ですよ、叔父上さま。本日は、友好の証として献上品をひとつ、お持ち致した所存でございます」

 

バケットさんがあの<通話のピアス>を捧げ持った。

 

「イエキュラさまは、要衝ラージャハ帝国と、さらなる友好関係にありたいと申しております。その友好の証に、こちらの<通話のピアス>を、どうぞお受け取りいただきたく存じます」

 

「ふん……」

 

ドノンⅣ世がピアスを受け取る。そろそろと耳に当てると、イェキュラさまの声が響いた。

 

<こんにちは、ドノン皇帝陛下。この度の使者を送りつけましたこと、皇帝陛下の寛大なお心で、どうぞお許しくださいませ>

 

「用事は何だ?」とドノンⅣ世。

 

<このピアスで、わたくしと陛下の間にホットラインを築き、わたくしという存在を、人づてに聞いた話でなく、直接お見知りおき頂きたいのでございます>

 

「そうか……貴様はナイトメアだったな。領主となって手腕をふるうには、いささか苦労もしただろう」

 

ふっ、と少しだけドノンⅣ世の顔が緩む。

 

<友好の証に、わたくしのマカジャハットでも、蛮族を試験的に受け入れようと計画致しているのです。

 

すぐに貴国のように蛮族やナイトメアが街を闊歩する、という訳にはまいりませんが、試験的に、料理の腕が良いという蛮族達を、冒険者ギルドで雇ってみたいと考えております>

 

「ふむ……」

 

<友好の証として、料理の腕の立つコボルドをすこし、マカジャハットに送ってはいただけませんか……?>

 

「なるほどな。面白い!」

 

ドノンⅣ世は破顔した。なんだ、笑うとお茶目なおじさんドワーフだ。

 

「良かろう。我が国と貴様の国マカジャハットの友好の証、確かに受け取った! わっはっは!」

 

ああ、良かった。最初はどうなることかと思ったけど、結果オーライだね!

 

「こほん。交渉成立ですな。……つきましては叔父上さま。ここにおります吟遊詩人の歌などいかがでございましょう」

 

バケットさんがあたしを指す。うう! ものすごーく緊張するけど、皇帝陛下に聞いていただけるのは光栄だよ!

 

ドノンⅣ世がうなずいて聞く体制に入る。

 

あたしは、手元のリュートを奏でる。

 

「聞いてください……『めしうま』の歌!」

 

そして、歌い始めた。

 

 

   めしうま! 酒うま! みんな仲間!

 

   メシウマ サケウマ ワレ ナカマ!

 

   人族も蛮族も、歌って踊って騒いじゃおう!

 

 

   めしうま! 酒うま! みんな仲間!

 

   メシウマ サケウマ ワレ ナカマ!

 

 

歌に、汎用蛮族語と交易共通語を混ぜてみたよ!

 

陽気な調べに、周りに待機する人族や蛮族の人たちが、こっそりとリズムをとっている。

 

「わっはっは! 吟遊詩人よ、なかなかいい根性をしているな!」

 

最初の攻撃的な雰囲気はどこへやら、とっても和やかになって、交渉はは終了したんだ。

 

 

◇   ◇   ◇

 

 

交渉を無事終えて、あたしたちは数日間、あたしの歌と演奏がメインの公演を行った。

 

パーティのみんなは、裏方のスタッフとして、あたしの出演を手伝ってくれた。

 

街のひとの反応は上々だった。あの「めしうま」の歌のサビを一緒に、コボルドを始めとした蛮族と人族が歌う場面もあって、あたしも、この街がすっかり気に入った。

 

蛮族だって、仲良くしたいっていうひとたちがいるなら、それは受け入れたっていいと思う!

 

敵対的な蛮族も多くて、人族があちこちで苦しみ、あたしたち冒険者に討伐の依頼をしてくることもしばしばあるのは分かってるんだけど……。

 

甘いかもしれないけど、いつか、歌でみんなが仲良くなれたらいいな。

 

 

そうして、公演の期間が過ぎ、マカジャハットに帰ることになって。

 

ドノンⅣ世から命を受けたコボルドが五匹、砂上船に乗ることになった。その中には……。

 

「ピコちゃん! 元気だった……?」

 

慣れた交易共通語で話しかけてくる、二足歩行の犬のような姿の、そのコボルドは。

 

あたしの友だち、コボルドのワフーだった!

 

「わあ……久しぶりだね、ワフー!」

 

あたしとワフーは喜んで抱き合った。

 

「ピコちゃんがお世話になっているっていう、冒険者ギルド「月明かりの夜亭」で料理してもいいってお許しが出たんだよ! これからよろしくね」

 

ワフーは背負い袋にフライパンをぶら下げて、砂上船に乗り込んだ。

 

 

「蛮族といっても、友好的なやつもいるんだなあ。勉強になったぞ」とロッド。

 

「料理上手に悪いやつはいねーんじゃね? めしうま、酒うま~♪」とリオン。

 

ああ、あたしの歌覚えてくれたんだね!

 

「敵対的な蛮族が多いんだから、すこしでも協力的な蛮族は受け入れるべきよね」とナナ。

 

「蛮族とは戦うしかないと思っておったが、新しい時代が来とるのかもしれんのう」とザム爺が言った。

 

そうして、みんなで砂上船に乗り込んで、また快適な旅をして帰ってきたんだけど……。

 

最後の日、砂漠のほとりに近づいて、砂上船の速度が落ちたとき。

 

船の前に、砂煙をたてて魔物が現れたんだ!

 

それはサンドウォーム! 砂の中にうごめく、巨大な蛇みたいな生き物だ。こっちに近づいてくる……!

 

「みんな! 戦闘態勢だよー!」

 

あたしたちは、戦いに備えた。

 

 

◇   ◇   ◇

 

 

サンドウォームを倒して、五つの<剣のかけら>と砂虫石という綺麗な石を手に入れたあたしたちは、無事、マカジャハットに戻ってきた。

 

「みなさん、本当にお世話になりました。これがお礼です」

 

マカジャハットの常設テントに戻ったバケットさんから、ひとり1500Gの報酬を頂いた。

 

相場としては、あたしたちのレベルだと、あと500Gくらいもらうのが妥当なんだけど。

 

砂上船に乗せてもらったし、皇帝陛下の御前で歌わせてもらえる光栄な場面も作ってくれたし、あたしは大満足!

 

スタッフとして働いたパーティのみんなも、楽しかったと言ってくれているから、OKだよね。

 

そして……。

 

「初めまして、マチルダさん! ぼくがコボルドの料理人ワフーです」

 

「あらあら。イェキュラさまからお話は伺っているわ。ワフー君。これからうちのコックとして、よろしくお願いね」

 

マチルダさんが、快くワフーを受け入れてくれた。

 

うう……あたしたちグラスランナーには、故郷っていうものがあんまり無いんだけど……。

 

このマカジャハット、すごくお世話になっているし、友だちのワフーも来たしで。

 

町が好きになっちゃった。これが故郷っていうものなのかなあ?

 

 

さてさて、これで、今回の冒険はおしまい。

 

成功したし、ラージャハの街にも行けたし、うん、すごーく楽しかったー!

 




オリジナル設定

マカジャハットでバケットが設営している総合芸術団のテントという設定はオリジナルのものです。

ドノンⅣ世とイェキュラがトップ同士の友好関係を結ぶ、というストーリーはオリジナルのものです。


ワフー……ピコの友だち。料理人としてラージャハ帝国で活躍していたコボルド。

イェキュラがマカジャハットにコボルドを受け入れる、というストーリーはオリジナルのものです。
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