ソード・ワールド2.5(sw2.5)リプレイ風オリ主小説 蛮族退治はもう古い!? アルフレイムに響けあたしの平和な歌声!   作:すー2018

8 / 13
3ばんめのぼうけん「画家さんを護衛しよう!」

「おはようございます、皆さん。昨日はよく眠れましたか?」

 

ハイルアートさんがにこにこしながらあたしたちに聞いた。

 

「はーい。この「月明かりの夜亭」のごはん、おいしいですねー」とあたし。

 

「お口に合うようで良かったです。実は……僕からの依頼があるのですが、聞いていただいてもいいですか?」

 

「何ですかのう? また冒険のお話ですかな」と、ザム爺が目をきらきら輝かせた。

 

「はい。僕はブルライト地方の、街の絵をよく描くんですが、今回は趣向を変えて、自然の風景画を描いてみたいなって考えているんです」

 

「ふむふむ」とリオン。

 

「そこで、とても美しいと言われているファーベルト平原の、菜の花の一種であるパマナが一面に咲いているところをスケッチしてみたいんですね」

 

「ファーベルト平原か。ここマカジャハットからだと、東のジニアスタ闘技場を抜けて、そこから南東のハーヴェスを通って、さらに南東か。ちょっと遠いところにあるな」とロッドが言う。

 

「美しいところっていうけれど、魔物もたくさんいて危険なところでもあるわね」とナナ。

 

「そうなんです。そこで、何かのご縁かと思って、行き帰りとファーベルト平原に滞在している間の護衛を、皆さんにお願いしたくて」

 

「なるほど……。どうする、みんな?」

 

あたしは聞いた。

 

「オレたち、すこし力もついてきたし、いいんじゃねーか? あ、もらうもんはきっちりするのと、無茶苦茶に強い魔物が出たら逃げるけどな!」とリオン。

 

「ジニアスタ闘技場と、ハーヴェスを通るのね……」

「どしたの、ナナ?」

「親に会えるけど、どうしようかなと思って」

「あ……花形決闘士の!」

 

そっか。ナナはハーヴェスにある家を出てきたんだもんね。

 

「親にはのう、会えるときに会っておいた方が良いぞい」とザム爺が諭した。

 

「そうね……じゃあ、ハーヴェスでは、うちの実家に泊まる?」

「うん。そうしてくれると、助かるよ! ナナの親御さんにも会ってみたいしね」

 

「決まりだな」とロッドが言った。

 

「ありがとうございます! 報酬は、ひとり1500G。先に<魔香草>をひとつづつと、往復分の保存食すべてをお渡ししますね。行く先々の街での滞在費も、こちら持ちでいいですよ」

 

話がまとまったと思うと、マチルダさんがやってきた。

 

「また出かけるの……?」

 

マチルダさんは心配そうだ。

 

「大丈夫だよ、母さん。今回はこちらの護衛も付いているし」

 

ハイルアートさんが言う。

 

「まあ……息子がまたお世話になるわね。よろしくお願いするわね、みなさん」

 

「はーい! 出来る限りのことはしますね!」とあたしは答えた。

 

冒険の支度をして「月明かりの夜亭」を出る。

 

マチルダさんは町の門まで見送りに来た。

 

「……気を付けて」

 

そう言って、マカジャハットを出るあたしたちを、マチルダさんはいつまでも見送っていた。

 

 

◇   ◇   ◇

 

 

数日かけて、あたしたちはジニアスタ闘技場に着いた。幸い、魔物や盗賊なんかの襲撃はぜんぜん無かった。

 

マカジャハットからジニアスタ闘技場まではひとがよく通る道があるから、素直にそこを通ったことが良かったのかもしれない。

 

この調子なら、たぶんハーヴェスまでも、楽勝で行けちゃいそうだね。

 

あたしたちはハイルアートさんのことを「ハイル」と呼ぶようになった。数日野外でキャンプして、行動をともにしていれば、自然と連帯感も出てくるよね。

 

ジニアスタ闘技場の入り口は、人だかりでごった返していた。

 

「あ……そっか。今日は、ちょうど満月の日ね」とナナ。

 

「満月の日か。決闘大会がある日だな」とロッド。

 

「面白そうじゃねえか」とリオン。

 

「中を見て見たいのう」とザム爺が言った。

 

 

「あ……ナナお嬢様!」

 

闘技場の入り口に近づくと、受付のひとりがナナを見て叫んだ。

 

「久しぶりね」とナナが応じる。

 

「お母様の試合を見に来たんですね! どうぞどうぞ、こちらへ」

 

受け付けの人が闘技場の中を指した。

 

「……んーと……えーと……あのね、ハイル」

 

いつもよりも歯切れがすごく悪い口調で、ナナがもじもじとした。

 

「何でしょう、ナナさん」

「ちょっとお願いがあって。いいかしら」

 

ハイルにナナが耳打ちする。

 

「えっ……そんな役、僕なんかでいいんですか!?」

「お願い!」

 

ぱん、と顔の前で手を合わせるナナ。

 

「……分かりました。お役に立てるなら」

 

ハイルは了承したみたいだった。うーん。何だろう……?

 

「どうぞ、お嬢様! こちらへ」

 

受け付けのひとの声がする。あたしたちは急いで追いついた。

 

 

暗い通路を抜けて、明るいところに出る。ワアアア、と大歓声が響いた。闘技場は円形になっていて、観客席がぐるりと円を描いている。

 

その真ん中が、決闘士(グラディエーター)の戦う場所で、観客席からよく見えるようになっていた。

 

決闘士たちが使うエリアの方に、あたしたちは案内されたようだ。

 

「さあ、もうすぐお母様の出番ですよ……!」と受付の人がナナに言った。

 

ワアアア、と再び大歓声。

 

闘技場に、ひとりの女性のリカントが現れた。猫耳としっぽはナナと同じだ。凛とした佇まい、隙の無い身のこなし。実力者という雰囲気が、全身からにじみ出てる。

 

「さあ、いよいよジニアスタ闘技場随一の花形決闘士、アンナの登場です!」

 

闘技場にアナウンスが響き渡った。

 

「ええ……あれがナナのお母さん?」

 

あたしはナナに聞いた。

 

「……そうよ。わたしのお母さん」と、ナナが複雑な表情で母親を見て、答えた。

 

「こんなに近くで試合が見られるなんて、ラッキーだぜ」

「ナナのおふくろ様は強そうじゃのう」

「俺も観客じゃなくて、決闘士として参加してみたいものだなあ」

 

リオンとザム爺、そしてロッドが話していた。

 

そうこうするうち、試合が始まった。ナナのお母さんの相手は、ちょっと強そうな、金属鎧と剣を身につけた男の人だった。

 

カアン、と試合開始の鐘が響き、戦いが始まった。

 

「……せいっ」

 

優雅とも言える素早い体の動き。ナナのお母さんは、相手を軽々と、投げ飛ばした。そして、飛び上がって相手を踏みつける。

 

男の人が反撃をするけれど、ひらりとかわす。

 

そして、今度はパンチを二回。フットワークがものすごーく軽い。

 

うう、あたしは、戦いなんて大嫌いだから、試合もあんまり見たくなかったんだけど……。

 

こうして間近で見てると、なんか、こう、高揚してくるものがあるね!

 

「頑張れー!」

 

いつしか、あたしはナナのお母さんを大きな声で応援していた。

 

ガツン! と、男の人が膝をつく。よろよろと片手を上げた。

 

「試合終了! ……アンナの勝利ー!」

 

アナウンスに、観客の大歓声が沸いた。

 

「お母さん……!」

 

ナナが呼ぶと。

 

「ナナ……! 何だい、来てたのかい」

 

ナナのお母さんが、にかっと笑った。

 

 

◇   ◇   ◇

 

 

ジニアスタ闘技場を出て、あたしたちはナナのお母さん、アンナさん専用の馬車に乗せてもらって、ハーヴェスまで到着した。

 

馬車で行けると早くていいね! お金が馬鹿にならないから、まだまだあたしたちは野宿しながらの、のんびり旅になっちゃうけど……。

 

最近は、アルフレイム大陸の北西に位置するドーデン地方の、キングスレイ鉄鋼共和国の首都キングスフォールと、ジニアスタ闘技場の北、カスロット砂漠の向こうにあるラージャハ帝国の"砂漠要塞"と呼ばれる帝都と、鉄道がつながったそうだね! 

 

魔動列車という乗り物が線路の上を動くんだって。

 

魔動列車って、馬車よりも、もっと速いんだろうなあ。

 

 

ハーヴェスの中心街に建った、大きなお屋敷にあたしたちは通された。

 

自己紹介は馬車の中で済ませていた。

 

お屋敷の大きな食事用の広間で、豪勢な食事を取りながら、あたしたちは歓談していた。

 

ふとアンナさんが思いついたように、ナナに聞いた。

 

「それで? 例のことは出来たのかい?」

 

例のこと? 何だろう。

 

「ええ。……こちらが、わたしの恋人のハイルです!」

 

「お世話になります」

 

ハイルがぺこりと頭を下げた。

 

えええ!? いつの間にそんなことになっちゃってたの!?

 

びっくりした表情を何とか飲み込んで、あたしはしげしげと、ナナとハイルを見た。

 

ナナ以外の、仲間もみんな、不思議そうな顔をしてる。

 

「画家だったっけ……? 軟派だねえ」

 

ふうん、とアンナさんが値踏みするようにハイルを見る。

 

「もっと、こう、強いひとを選ぶと思ってたんだけどねえ」

「母さん……! ハイルはとっても良い人なの!」

「はいはい。だけどあんたたちが結婚するなら、私はハイルの義理の母親だ。ちょっとくらいの小言、我慢しなさい」

「もう……だから帰ってきたくなかったんだ」

 

ナナが顔を真っ赤にしてる。怒ってるのか、ハイルのことを言われて恥ずかしいのか……きっとどっちもなんだろうな!

 

「分かった分かった、この話はもうおしまい。

 

で、ファーベルト平原に行くんだって? あんたたちだけでかい」

 

「そうですー」とあたしはアンナさんに答える。

 

「あそこにはたくさんの魔物がいるんだよ! ……そうだ、ちょうど今月の試合も終わったことだし、私が付いて行ってあげる」

 

「ええー、本当ですか? そうしてくださると、とっても助かります!」とあたし。

 

あんなに強いアンナさんが協力してくれたら、平原の魔物なんてへっちゃらになるよ!

 

「冒険に出るのは久しぶりだから、楽しい旅になりそうだ! よろしく、ピコちゃん。それにパーティのみんなもね。わははは!」

 

アンナさんが豪快に笑った。

 

 

◇   ◇   ◇

 

 

ハーヴェスから南東へ、あたしたちは再びアンナさんの馬車で送ってもらった。

 

視界に広がってきたのは……辺り一面、黄色い花が咲いた幻想的な光景!

 

"黄色い絨毯"と称される、ファーベルト平原だ。

 

「うわあー、綺麗!」

 

あたしは歓声をあげた。

 

「本当に美しいですねえ……来て良かったです」とハイル。

 

「絵を描き上げるにはどのくらい日数が必要なんだい」とアンナさん。

 

「そうですね、三日もあれば」

「分かったよ。あんたの周りは、私たちが守る。存分に絵を描いたらいいよ」

 

そうして、あたしたちは、アンナさんが持ってきてくれた大きなテントに入って、三日を過ごすことになったんだ。

 

 

一日目は、平和に時が流れた。朝から晩までハイルはスケッチに夢中だった。

 

 

そうして、二日目……。

 

ガサガサと音がして、何かが近づいてきた!

 

黄色い花々の中から出てきたのは……。

 

ダンシングソーン! 二体も!

 

人の高さほどもある、動く茨だ。茎に無数の棘が付いていて、それで攻撃してくるという。

 

魔物としての強さは、あたしたちと同じくらいだ。

 

「なんだい、これなら私が出る幕も無いねえ」

 

アンナさんがすっと身を引いた。えええ!? 戦ってくれるんじゃないの!?

 

「さあ、鍛えるのにちょうどいいだろ? あんたたち頑張ってね!」

 

アンナさんがにかっと笑った。

 

 

戦闘は、どうにか、あたしたちの勝利で終わった。トゲトゲが痛い痛い。この間もらったヒーリングポーションをここで使っちゃった。

 

二日目はその襲撃だけだったから良かったけど……アンナさん、ひどい! ナナが家を出たのも分かる気がしたよ。

 

夜は見張りを交代しながら眠り……。

 

 

そして三日目。

 

 

出てきた魔物は……。

 

大きなムカデ! あたしもザム爺も知らない魔物だった。顎と脚とが別々に動いて、それぞれが攻撃してくるみたい。

 

「こいつは……腕が鳴るねえ!」

 

アンナさんが喜びの表情を浮かべて、真っ先に攻撃体勢に入った。

 

 

 

……戦いは大変だった。だって、この大きなムカデ、とっても素早くて、攻撃が当たりにくいし、顎にあった毒攻撃にやられると大打撃をくらうし、防御は固いし、複数の脚に攻撃されるしで。

 

みんな<ヒーリングポーション>と<魔香草>は使い果たし、ザム爺の、光属性の妖精魔法[プライマリィヒーリング]で回復したり、あたしの、呪歌のあとに使えるようになる[終律:夏の生命]という演奏で回復したり。

 

リオンの真語魔法で使える攻撃呪文[エネルギー・ボルト]や、相手の物理攻撃を下げる[ブラント・ウェポン]も大活躍。

 

だけど、アンナさんがいなかったら、どうなっていたことやら。二日目にぶっちしたときは腹が立ったけど、アンナさん、自分よりも弱い相手には興味を示さないところ、すごく紳士的なのかもしれないね。

 

「みなさん、ありがとうございました。おかげで、このスケッチブックを元にして、素晴らしい絵が描けそうです」

 

三日の日程を終えて、戦闘の時は、隠れてもらってたハイルが礼を言った。

 

日も暮れ始めたし、撤収の準備を始めた、そのとき。

 

「あれ、見ろよ……!」とリオン。

 

見ると、どこまでも続くパマナの黄色い花の向こうに、バサバサと音をたてて飛んで行くたくさんの真っ黒な大きい鳥。そのはばたきに、パマナの花が散って、とても幻想的!

 

「この光景……素晴らしいですね。言葉にならないくらい」

 

見惚れた表情を浮かべて、ハイルがぽつりとつぶやいた。

 

 

◇   ◇   ◇

 

 

あたしたちは馬車に乗って、ハーヴェスまで戻ってきた。ここでアンナさんとはお別れ。

 

「ナナ。ハイルは私の好みとはちょっと違うけど、大切にするんだよ!」って、アンナさんは含み笑いをして去っていった。

 

ハイルが報酬のことを話したけど、アンナさんは「ひよっこたちで分けなさい!」と断ってた。

 

太っ腹で面倒見のいいとこもあるけど、アンナさんを親に持ったナナは大変だと思う!

 

 

「はあ……」と、ハーヴェスを出た後にナナが大きくため息をついた。

 

「本当に、あんなこと言ってしまって良かったんでしょうか……?」とハイル。

 

「えー、なになに?」

 

あたしは聞いてみる。

 

「こ、恋人が僕だなんていう嘘を……」

「ええ! あれ、嘘だったのー!?」

 

あたしも、ナナを除いたみんなも驚いた。

 

「ありがとう、ハイル。大助かりよ。家にいたときに、母さん、お見合いしろしろってうるさくって。家を出てくるときね。今度来るときはお婿さん候補を連れてくるから! って宣言しちゃってたんだよね」

 

「ああ、それでパーティを作る時に、お婿さんが見つかるといいなって言ってたんだな」とロッド。

 

「ごめんね、ハイル。変なことに付き合わせちゃって」

 

「いえいえ。ナナさんの恋人役、なかなか楽しかったですよ。このまま恋人役を続けてしまってもいいかもしれないって思っちゃいました」

「ええっ!?」とナナ。

「じ、冗談! 冗談です! すみません、変なこと言っちゃって」

 

ハイルは顔を真っ赤にしてうつむいた。

 

「んー。ナナ、このままハイルとらぶらぶになっても、いいと思うよー?」とあたし。

「こら、ピコ! 言い過ぎ。ハ、ハイルが困ってるじゃない」

 

んん? あれ、こっちも、もしかして脈あり……?

 

「ふぉっふぉっふぉっ。若いというのは、いいのおー」と、のんびりとした調子でザム爺が言った。

 

 

ハーヴェスからジニアスタ闘技場、そこからマカジャハットまでの帰り道を、あたしたちはまた野宿しながら帰ってきた。

 

うん、ベッドで眠れるのは何日ぶりだろう! 毛布で毎日、見張りを交代しつつの仮眠は大変だったよ。

 

そうして「月明かりの夜亭」に戻って、約束通りの報酬ひとり1500Gを受け取った。

 

 

これで、3番目の冒険はおしまい。今回は大成功で良かった。

 

いろんな場所も巡れたしね!




オリジナル設定

アンナ……ジニアスタ闘技場の花形決闘士。ナナの母親。ハーヴェスに居を構え、月に一度のジニアスタ闘技場で行われる決闘大会に出場している。レベルの高いグラップラー。

娘のナナを放任主義で育てたのに、彼女が年ごろになると、いい人と見合いをするように圧力をかけたため、ナナは家を飛び出して冒険者になった経緯がある。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。