原作とは別の恋愛があったという話。

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シャルはかわゆす


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星々が煌めく夜。

 

とある敷地の一角で一組の男女が互いに抱き合っていた。

 

「何故離れなければならないの!?」

 

男に抱きついている女子生徒は涙声で叫んでいた。偶然通りかかった者がいれば何事かと思い、近寄ってくるのではないかと思われるほどの声量である。

 

「家の事情じゃ仕方ないさ。それはお前が一番理解しているはずだ」

「それは、そうだけど…」

「なら、勤めを果たしてからもう一度会いに来ればいいだけの話だ。簡単だろう?」

 

上目遣いで見る女子生徒の眼には穏やかに微笑む最愛の男子生徒が映る。その笑顔は何物にも代え難い優しさに溢れており、それを見れなくなると思うだけで女子生徒の胸が締め付けられるように痛む。

 

「貴方は辛くないのですか?」

「辛いさもちろん。でもご両親を納得させるためには言うことを聞かないとダメだって言い出したのはシャルだろう?」

「むむむむむ」

 

シャルと呼ばれた少女は拗ねた顔をしながら男子生徒の胸に強く抱きつく。

 

「浮気したら怒る(殺す)からね?」

「おい待て、今恐怖な単語を含まなかったか?」

「なんのことでしょうか」

 

本人は何も言ってませんよとばかりに舌を出して微笑む。その美しい笑顔にやられたのか男子生徒は伸ばしかけた腕を済んでのところで止める。

 

「どれくらいの期間になるのかわかりませんがよろしいですか?」

「やるべきことをやるならいつまでも」

「光が…」

「闇が…」

「「共にあらんことを。たとえ汝の命が朽ち果てようとも、願わくば近し土地にて眠らん」」

 

流星が一つ光り輝いた頃には白い制服(・・・・)を着た女子生徒と黒い制服(・・・・)着た男子生徒は背を向け、自分のあるべき場所に戻って行った。

 

 

 

 

 

これが後世に伝えられる2つの伝説のうちの1つの始まりであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ダリア学園》

 

それは2つの国が共に学ぶ寄宿学校の名称である。

 

黒犬の寮(ブラックドキーハウス)白猫の寮(ホワイトキャッツハウス)は敵対国家同士であるが故に毎日ほんの少し、ちょっとしたことで喧嘩を始める。

 

どんな些細なことでも喧嘩に発展するという頭を抱えたくなる事態が今日もあちらこちらで起こっていた。

 

 

 

「今日という今日はやってやるぜホワイトキャッツさんよぉ!」

「言うじゃねぇかブラックドキーがよぉ!」

 

窓の外から毎日恒例というか毎分恒例と言いたくなるような怒号が聞こえてきた。本を読みながら寝落ちしたのだろうか顔に外国語の本を乗せた青年が動き始める。

 

「…ふぁふ。珍しく今日は朝一からないと思っていたが早とちりだったか?」

 

黒犬の寮にある2階の談話室に置かれたソファーで寝転んでいた彼は顔から本をどかして欠伸して座り直した。背後にある窓から上半身を捻って覗き込むと黒と白の制服を着た生徒たちが乱闘を開始している。

 

さすがに男子生徒が女子生徒を相手にしてはいないようだが、男子生徒の場合は1人を複数で狙いを定めている輩もいる。

 

だが青年がそれを指摘することはなかった。何故ならどちらの男子生徒も同じように3人が1人に狙いを定めているのだから。

 

「ほんと、毎度毎度喧嘩してられるな。そう思わないか藍瑠(あいる)?」

「そのようなことで一々俺に話しかけるな。時間の無駄以外に他ならない」

 

こちらを見ずに眼鏡を押し上げながら参考書を読み続ける従兄に苦笑をもらす。筆記試験において他を寄せ付けない圧倒的な成績を残し続ける彼には誰も逆らえない。

 

それは「裏番」と呼ばれる彼でさえ例外ではない。

 

「いいのか?放っておいて」

 

続けて話を振るとため息をついて参考書を閉じ、眼鏡を、外してこちらを見てくる。

 

「言いたくないなら言わなくていいけども」

「怪我をするのは当事者だ。第三者に迷惑がかかるようであれば止める」

「いや、学校で喧嘩する時点でもう色々あちこちに迷惑かけてるけどな」

 

実際、彼らが喧嘩すると学校の物品が何から何まで破壊される。破損で済む場合もあるが大抵は修復不可能なところまでくることもある。

 

生垣や庭であれば業者に頼めば即再生は可能。その料金は学校が支払っているが学校が払う金は両国から送られているので実質的に学校が負担する賠償金はゼロだ。

 

だから喧嘩が起こっても物品が破損しても大事にはしないのだろう。したところで反省会が終わればバトルロイヤルが始まるのだから意味はない。

 

「どこへ行く?」

「教室」

「早くないか?」

 

立ち上がった藍瑠に聞くとすんなり答えた。

 

今は8時。始業時間は8時半からなので今から行くのはさすがに早すぎるのではないかと思ってしまった。

 

「ここにいては集中したくてもできん。ならば然るべきところに行ってやる」

 

そう言うと参考書片手に談話室から出て行った。やれやれとため息を吐きもう一度窓から外を見ると、友人の犬塚 露壬雄(いぬづかろみお)がスコット・フォールドへと突っ込んで行くところだった。

 

中等部に在籍していた頃は露壬雄とタッグを組んで最強タッグと呼ばれるようになるまで喧嘩を続けた。

 

味方からは頼りにされ、敵からはおそれられ、教師陣には問題視されるという謎な時期を思い出す。

 

だが高等部に入ってからは生活が一変した。

 

彼女に出会ってから…。




更新は作者もわからない


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