ようこそ天才作家のいる教室へ   作:枝豆%

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 ──鳥は卵の中からぬけ出ようと戦う

 

 卵は世界だ

 

 生まれようと欲するものは…

 

「一つの世界を破壊しなければならない」

 

 

 

 

 

 

 

 

【ヘルマン・ヘッセ】

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 黒髪の眼帯を付けた青年は、新しい制服に袖を通して華々しく飾られてある校門を抜けた。

 片手には文庫本サイズの小説が握られている。

 ブックカバーを付けているからか何の本を読んでいるのかは不明だが。

 

 ふと文庫本から目線を外し、これからの学び舎である校舎を一望した。

 

 「「今日からここに通うのか」」

 

 自分の声と誰かの声が重なった。

 声がした先を見ると、同じ制服をきた茶髪の男がたっている。

 

 「……」

 「……」

 

 彼らはどちらも口が達者な方ではない。それ故の沈黙である。

 しかし茶髪の男はその沈黙を先に破った。

 

 

 「悪い、変な空気にしたな」

 

 悪い、と言っておきながらそんな顔色は1つとして出ていない。

 声音からして全く気にしていないか、それともポーカーフェイスなのか…恐らく今回は後者だろう。

 

 「全然、僕もごめんね被せちゃって」

 

 しかし黒髪の眼帯は苦笑いというような、愛想笑いのようなものをして頭に手をやった。

 

 「オレは気にしてないぞ」

 「じゃあ問題ないね」

 「そうだな」

 

 

 入学して初めての会話が、思ったよりも奇妙な繋がりとなり複雑に絡み合うとは、いくら『造られた天才』や『天才作家』であっても途方もない道筋は見えていなかっただろう。

 

 

 「オレは綾小路 清隆、クラスはDだ」

 「僕は高槻 琲世。僕もDクラスだよ」

 

 他愛もない挨拶を済ませる。しかし、ここで別れるのは距離を置く様にもなるし、しかし一緒に行こうと言うことも高槻には出来ない。

 

 

 何故なら今までボッチだったからだ。

 

 

 

 

 

 「──ねぇ、ちょっと」

 

 

 そんな微妙な雰囲気を凛とした声が通り過ぎた。

 僕も、そして綾小路くんも声を出した彼女に目を向ける。

 

 そこには腰まで伸ばした綺麗な黒髪。発する声同様に凛とした少女がそこにはいた。

 

 「呼ばれてるぞ」

 「いや、僕知らないんだけど」

 

 綾小路くんからの援護射撃もあったけど、どうやらそれがお気に召さなかったのか先程とは違い少しだけ怒気を孕んだ声で少女は再度問う。

 

 「あなたじゃないわ、茶髪のあなたよ」

 「…オレか」

 

 君しかいないでしょ。

 

 「バスの中で私の方を見てたけど…なんなの?」

 

 美人だったから綾小路くんは見入っちゃったのかな?

 そんな可能性も十分にありえる。

 

 

 「あー、悪い。アンタもオレと同じで席を譲る気無さそうだったから。ああいうことに関わりたくないよな。そう言えば高槻も譲る気なかったな」

 

 まず同じバスに乗っていたことも初耳だし、本を読んでいたから他のことなんて考えてなかった。

 そっか、そんなことになってたんだあのバスの中。

 

 「ごめん、本読んでたから気付かなかったよ」

 

 「アンタもそんな感じか?」

 

 

 

 「──一緒にしないで」

 

 

 それは酷いぞ。心が傷つく。

 

 「私は信念を持って譲らなかったの」

 

 いや、それ…僕より酷くね?

 

 ポーカーフェイスだけど、綾小路くんも同じことを考えているに違いない。

 

 「用がないならいいわ」

 

 

 そう言って黒髪の女の子は足早に去ってった。

 残されたのは野郎二人。

 

 「教室に行くか」

 「そうだね」

 

 初めての環境でできた知り合いと少しだけ情が深まったところで、先程には叶わなかったであろう二人で教室に向かうという如何にも簡単なことをすることが出来た。

 

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 「席、近いな」

 

 綾小路くんのセリフに僕と約一名体が強ばった。

 言わずもがな校門で遭遇した黒髪の子だ。

 

 「嫌な偶然ね」

 

 彼女は一度も目線を本から外すことなく、綾小路くんと次いでに僕へ皮肉を言った。

 

 少しだけ綾小路くんは目を閉じたが、彼女と席が隣なら致し方ないだろう。

 頑張れ、綾小路くん。

 

 ちなみに僕は少しお怒り気味の彼女の前の席だ。

 今は振り返っていない…べ、別に彼女が少し怖いとかそんなんじゃないぞ。

 

 そんな水面下の戦いをしていたら、爽やかなイケメンが立ち上がって一つ案を出した。

 

 

 「みんな、ちょっといいかな?」

 

 視線がイケメンくんに集まった。

 けれど彼は物怖じすることなく、普段の声音で言葉を続ける。

 

 「今から皆で自己紹介をして、一日でも早く友達になれたらと思うんだ」

 

 彼はこういった人前で話すことに慣れているのだろう。

 更に人をまとめようとしている点、リーダー気質なのかも知れない。でも、臭いな。うん、青臭い。

 

 

 けど、思ったよりも好印象だったようだ。

 これがイケメンに限る、という言葉の由来なのかも知れない。彼に続くようにクラスの前の席にいる女子達は賛成した。

 男性陣からの印象も上々。うん、彼がこのクラスを掌握するのもそう遠くないな。

 

 「じゃあまずは僕から、平田洋介。気軽に洋介って読んで欲しい。趣味はスポーツ全般でこの学校にはサッカー部に入る予定だよ。皆、よろしく!」

 

 

 インターネットからコピペしたのかと疑われるほど模範的な自己紹介だった。

 一言で言うと詰まらない。

 

 面白みに欠けている。僕が求めていた奇抜な自己紹介ではなかったにしろクラスからの評価は非常に高く、席順ということで自己紹介をまわしていくる

 

 

 順番が回り、左後ろの席である綾小路くんに順番が回ってきた。

 無表情に立ち上がり、何か面白いことをするのかと思ったが……なんだろうか。

 

 こういうのを惨敗というのかな。

 僕もこれから話す時は「あー」や「えー」などを頭につけないよ心掛けよう。

 

 

 「哀れね」

 「やめたげて」

 

 綾小路くんにこれ以上追い討ちをかけないで、LIFEはもう赤ゲージだよ。




評価高ければ続けます。
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