落ちないように頑張ります。
悪とは何か?──
──弱さから生じるすべてのものである。
【ニーチェ】
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少しだけ自己紹介をしよう。
僕は『高槻 琲世』高校1年生だ。そして裏の顔とでも言うのだろうか、僕にはもう一つ紹介しておかなければならないことがある。『高槻 泉』というペンネームで小説家として活動していることだ。
中学生の時にお金に困っている時に応募してみればなんと偉い人の目に止まったとか。
それからトントン拍子でデビュー。そんなサクセスストーリーをつい数カ月までしていた高校生だ。だけどファンが増えればそれと逆な人達も出てくる。光あるところには影があり、影なくして光在らず。
その言葉通りに色々と面倒なことがあった。
詳細は省くが、一度だけ襲われそうになった時に返り討ちししてしまった。それもかなりの重症を負わせて。
正当防衛が認められたが、学校にまで広まっており僕に居場所は元々なかったが、苦でなかった居場所は居たくない場所に変わった。
そんなこんなで僕はこの学校に来た。
学力や体力や協調性。恐らくこの学校ではテストの結果以外にも採点している節がある。
そして、これは僕の確証のない予想なんだけど。
この学校への入学条件は社会に潰されてしまう可能性がある金の卵。それが恐らく入学条件だ……いや、忘れてくれ。本当に確証も根拠も何も無いんだ……でもそう思わずにはいられない。
僕に友達ができた。
僕に友達が出来た。
大事なことだ、もう二三度くらい言いたいところだが堪えよう。
名前は『椎名ひより』Cクラスの生徒だ。
Dクラスにはいない感じの雰囲気を持った子。不思議な雰囲気が出ており趣味は読書。
きっかけはつい昨日のこと。図書室で本を探している時に声をかけられた事が始まりだ。
文だけで見ると逆ナンのように聞こえるかもしれないが、違うとだけ言っておこう。
あの子はとてもいい子だ。
気遣いができるし、何より本の話ができる。僕も書く方を仕事にしているけど読む方も書くと同じくらい好きだ。
僕が書いている作品は全て読んでくれていたみたいだし、その時僕が読んでいた『ツァラトゥストラはかく語りき』も読んだことがあるだとか。
この作品は僕のお気に入りの作品だ。
詳しくは伏せるが、僕はこの作品が無限ループものの祖と思っている。いや、掘り下げればもっとあるのかもしれないが僕にとってはこれがいい。
話がそれたな、何より僕と彼女は気があった。一言で言えばそうだ。
同じ趣味を持ち、違うジャンルまたは同じジャンルの本が好きで趣味の話が好き。
多分だけど僕も、そして彼女も趣味を話す相手が今までいなかったのではないだろうか?
少なくとも僕は初めてだった。あそこまで楽しく長く話したのは初めてだった。
それは今まで溜めていたものを吐き出すくらいの行為だったに違いないだろう。
だが僕達は、いや僕はまだ話し足りない。
それこそずっと一緒に話したいくらいに…。
「高槻」
教室で放課後を迎え、僕が図書室へと早足で向かおうとした時。斜め後ろの席の茶髪の青年、綾小路くんに呼び止められた。
「どうしたのかな?」
「堀北主催の勉強会なんだが教える側として参加してくれないか?」
………あー、そうか。なるほど。彼女はその道を選んだんだね。
でもそれなら綾小路くん、それは彼女が許さないよ。
「必要ないわ。私一人で充分よ、元々櫛田さんも呼んでないわ。綾小路くん、私の邪魔をしないでくれるかしら」
「そう言われてもだな、このままだとおま──」
「じゃあ、帰っていいかな?」
「待ってくれ高つ「ええ、さようなら」…堀北……」
二人でイチャイチャ…は違うか。堀北さんと綾小路くんは非常に仲良くこの後も勉強会をするんだろう。
うん、そうに違いないな。
スクールバッグに教材を詰め込み、教室をあとにした。
向かう先は言わずもがな図書室だ。
手動のドアを開けて図書室を見渡す。
まだCクラスはホームルームが終わっていないのか、椎名はまだ来ていない。
「高槻くん、こんにちは」
と思ったの束の間、僕に背後から声を掛けてきたのは先程までの僕の待ち人『椎名ひより』だった。
どうやら彼女は図書室のみステルス機能を搭載しているらしい。
文学少女を隠すなら本の中。とでも言うのだろうか。
「こんにちは椎名さん、早いね」
「もしかしたら高槻くんが来てるのかと思うと、いつもより早く来てしまいました」
言葉だけ聞くと告白されてしまうのかとも思える。
だがこれは違う、それは作家である僕でなくても『そういうこと』では無いことくらい分かるだろう。
「僕も急いで来ちゃったよ」
「似たもの同士ですね」
その言葉に僕は激しく共感した。
僕も、そして彼女も友が。いや読書仲間が他にはいない。だから今まで溜まっていたものを吐き出し、そしてその時間を共有したい。
その一心が僕達をここへと運んだ。
テストがすぐそこまで迫っているにも関わらず、僕達2人は読書を始める。
僕は頭が良くはないが、椎名さんはかなりいいらしい。それこそ成績上位者に食い込んで行くほど。
少し本に関しての雑談を混じえ、僕達は読書をする。
昨日からしか通っていないから、図書室のことは詳しくないが少なくとも昨日よりは生徒が増えている。
それは読書をする為ではなく、テスト勉強をする為だ。
だからというのだろうか、昨日ほど楽しく話せない。
いや、語弊があるな。大声を出せないが正しいな。勿論叫んだり、周りに迷惑をかけている訳では無い。
だがテスト前の学生達にとっては雑音だろう。
「高槻くん」
彼女も同じことを考えていたようだ。
つまるところ居心地が悪い。僕の至福の時間にピリピリした雰囲気を持ち込まないで欲しい。
「そうだね」
軽くアイコンタクトをして図書室を二人で出た。
今はカフェもファミレスも図書室同様に多くの学生が屯しているだろう。
「テスト期間が終わるまでは、お預けだね」
たかが一週間、されど一週間。
今までの人生で最も長いテスト期間になるのは間違いないだろう。
「もしよければなんですが…」
椎名さんが言葉を投げる。
それは返答を求めたものではなく、ただ空白を起きたかっただけの言葉。
「一緒にテスト勉強しませんか?」
どうやら僕はボッチからリア充へとジョブチェンジするかもしれない。
作者は思うんですよ。リア充は付き合っている人だけでなく、異性と勉強会とかしている人のことも指すと。