ようこそ天才作家のいる教室へ   作:枝豆%

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「さ、ハーメルンで日刊ランキング上位で初めて見るやつ読も」
って感じで開いたらまさかの5位。

( 'ω')ファッ!?

ってなったけど上位10位で赤バーになってないのがこれだけ。

(/-\*) ハズカシイ


2ー4

 

 

 

 

 

 

 学校が終わり放課後となった時、櫛田さんが皆に過去問を配った。

 櫛田さん曰く去年も中間テストで前年度と同じ過去問だったとか。

 

 でもおかしくないか?

 櫛田さんは皆と友達になりたいとは言っていたが、この数ヶ月でできた友好関係と言えばDクラスと多く見積ってもその他の一年のクラス位だろう。

 まだ二年なら関わりが万が一位なら有り得るかもしれない。でも彼女は3年の先輩(・・・・・)と言った。なら…。

 

 

 櫛田さんじゃないな。

 彼女にそんな伏線はなかった。策を打っていたわけでもなかった。彼女は人心掌握には長けているが頭が回る方じゃない。

 

 なら、誰が?

 

 

 堀北さんか?

 ──いや、彼女は勉強をさせて学力を上げるという王道以外の方法を取ろうとしなかった。除外。

 

 となれば平田くん?

 ──彼もまた王道に拘っていた、でも確か部活に入っていたな。となれば有り得なくはない。でも櫛田さんに渡す理由が全く見つからない。保留。

 

 他はないな。今出てくるのはこれくらいか?他のクラスも考えられるけど、ポイント変動のSシステムの話を聞いて直ぐに仲間内で争う人も少ないだろう。まずは自分のクラスが大事だと思うし。

 

 

 「分からないなぁ」

 

 「何がだ高槻?」

 

 独り言が漏れてたか。いや思考が漏れたというのかな。

 というか席が近いとはいえDクラスの男子は綾小路くん以外話したことないな。

 

 「考え事だよ。誰が過去問持ってきてくれたのかなって」

 「?櫛田だろ」

 

 「そうだね、櫛田さんだね」

 

 可能性は低いかもしれないけど、何気にDクラスのある意味トップ達に関わりがある綾小路くんも保留にしておこう。

 もしかしたら……いや、薄いかな。

 

 でも僕は知っている。薄い黒色ほど気味の悪く、目立ち、使いやすい登場人物はいないということを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──すいません。今日はクラスの方で用事があるので勉強会は出席出来ません。

 

 

 椎名さんからメールが届いた。

 テスト前日だったので詰め込んでおきたかったみたいだが、クラスの方で用事があり勉強会は中止となった。

 過去問を見せあって進めようと思ったが、一人でしくしくとすることが決定した。

 

 

 カバンから櫛田さんから貰った過去問を見ながら、椎名さんが勉強会で使っていたプリントやらを見て自力で何とか解いて、それを暗記した。

 

 

 

 やれることは一二時間で終わったので、最近ご無沙汰だった仕事の方を始めようか。

 僕は机に座りパソコンを開けた。

 この学校は外部との接触はできる限り絶たれる。それは逆に言えば完全には絶たれないとも言える。

 それはある程度しかメディアに晒されない。だから僕はこの学校への進学を選んだ。

 

 ちょうど昨日までは二つのシャーペンが紙を撫でる音が響いていたが、今日はキーボードを叩く音しか聞こえない。

 この当たり前だった行為を少し寂しいと感じた僕は、僕なりにこの学校で得るものがあったのだろう。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 テストは櫛田さんが持ってきたテストと一言一句違わず出題された。欠点組だった人は勿論、テスト範囲が変更されて赤点(退学)が頭によぎった人は、ほっと一息ついていたり喜んでいたりと様々だ。

 特に目立って喜んでいたのは、Dクラスの問題児である須藤くんを初めとする赤点組だったとか。

 

 でもその嬉しみは糠喜びに過ぎない。

 本当の結果が出るのはテスト返しまで、大方今の喜びは櫛田さんが持ってきた過去問が的中したことにだろう。

 

 英語のテストが始まる前に綾小路くんから声をかけられたけど、堀北さんに割り込まれて話は途中で遮られた。

 僕の筋書き(予想)が合ってたら言われることは分かっていたけど、プライベートポイントより優先することがあったのでやめた。

 だから僕は英語のテストを手を抜くことなく終わらせた。

 

 

 大体そんな感じでテストは終わり、静かになった図書室へと向かった。

 

 

 

 

 

 「高槻くん、お久しぶりです」

 「久しぶり、っていっても数日だけどね」

 

 久しぶりだと言ったものの、最後に会ったのは一昨日。久しぶりと言うには些か短すぎる気がする。

 でも一瞬でも、僕もその意見が出たということは僕の中で彼女は欠かせない生活の一部となっているのかもしれない。

 

 「椎名さんのおかげで何とかなったよ」

 「それは良かったです。…これ、前に言ってた私のオススメの本です」

 

 渡された本は、やはりと言うべきか椎名さんから度々口にしていたアガサ・クリスティの作品だった。

 本のタイトルは『春にして君を離れ』。

 

 

 「クリスティか….」

 「その本はクリスティでは珍しくミステリーでは無いんです」

 

 「へー、クリスティはミステリーっていう固定概念があったよ」

 「私もそうでした…でも」

 

 「──この話は私には向きませんでした」

 

 

 オススメの本と言ったにも関わらず、自分に合わなかった本を渡されたのか…。

 

 

 「でも高槻くんなら好きだと思います」

 「僕が?」

 「はい。高槻くんと話した時からこの本が頭に過りました」

 

 登場人物に似てる人がいるのか?

 

 「だから是非読んでください」

 「…そっか、ありがとう」

 

 椎名さんから渡された本を受け取る。

 何故これを渡されたのかは分からない。でも彼女に悪意はないことは分かってる。

 

 理解は出来ないけど納得はした。

 胸にストンと落ちる。

 渡されたものを。

 

 

 ────この本を僕は知っている。

 

『───ただいま、寂しかったでしょ』

 

 

 

 

 

 誰かにそう言われた気がした。


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