若様「おいおいおい死んだわオレ。これならインキュベーターと契約して魔法少女になった方がまだマシ」
苦労さん「さぁ、目も眩むほどの輝きを見せてくれ!(嬉々」
若様「コイツ、キュゥべえよりヤベー奴だったわ(白目」
こんな感じの前回までのあらすじ
新イベ報酬は脱臼ちゃんかー。魔族属性のアタッカー、配布不知火ママンしかいないからありがたやー。
そして、新しいガチャは紫か。奥義が2万くらい叩き出すらしいけど、問題はエロだよ。イチャエロじゃないらしいんだが……うーむ、迷う!
それにしても、マップイベは随分とやりやすくなったなぁ。金塊もボロボロでるしありがたいんじゃ~
では、短いですが本編をどぞー!
「おはよう、小太兄」
「おう、おはようさん」
「寝れては、いるようだな。アレだけ取り乱していたのに大したものだ」
「その話はするんじゃねぇ。やる事山積み過ぎて頭おかしくなりそうなのを、オレが苦労するという事実だけを切り離して、切り抜ける方法を考えてんだよ。またゲロ吐くぞ」
「「…………」」
淫魔の経営する娼館にして拠点「ドリーム」への潜入、平行世界・別次元の紫の救出、舞い戻ってきた弾正と一味との遭遇、ナディアとの接触と協力要請。
怒涛の一日から開けて翌日。
陽の光も差し込まない地の底にある廃娼館の内部で小太郎とゆきかぜ、凜子は朝の挨拶を交わした。
彼の表情は健康そのものであったが、目が死んでいる。
無茶苦茶な言動でもある。これから彼がやらねばならない事は山ほど存在しており、他人に投げられない部類も多く存在しているにも拘わらず、苦労するという事実だけを切り離して考えるなど、どういった思考作業なのか。
とは言え、肉体や能力面は兎も角として、精神面や思考面では人間から掛け離れている事は二人も重々承知している。戦闘時のみならず平時においても苦痛、快楽と言った肉体の反応を、精神と思考から完璧に排除できる彼の事、想像は付かないが不思議とは思えなかった。
まるで、一族郎党が死に絶えたが如き重苦しい溜め息を吐く小太郎であったが、その足取りに変化はない。やるべき事はまだまだあるからだ。
三人が向かったのは、ナディアが異能によって快癒させた
常人ならば疾うの昔に廃人となっているレベルの投薬をされていたと言うのに、もう目を覚ましたらしい。
彼女の忍法は“不死覚醒”。頭部と心臓を同時に破壊されなければ決して死なない肉体と、副次的な効果として魔族にも劣らない驚異的な再生能力と身体能力を得る。
それらを鑑みても凄まじいの一言だ。肉体は兎も角、精神の立て直しを行ったのは、他ならぬ紫自身の力なのだから。
ゆきかぜと凜子があちら側の紫の回復に舌を巻き、此方側の紫も同様の凄まじさがあると知っている小太郎は呆れ返りながらも、彼女の休む部屋の前に辿り着き、扉をノックした。
「…………どうぞ」
やや力がないながらも、警戒心の消え去っていない許可の声に、三人は静かに部屋へと入った。
紫は状態のいいまま残っていたバスローブを身に纏い、ベッドの上で上体を起こしている。
声と同様に、視線にもあからさまな警戒の光を宿していたが、助けられたという事実があるためか、或いは自らの置かれた状態故にか、辛うじて敵へと向けるそれではなかったが、決して味方へと向けるそれでもない。
ゆきかぜと凜子は、僅かばかりに居心地が悪そうであった。それもそうだ。二人の知る紫は厳しくも優しい教師だった。そんな視線を向けられた事など一度たりとてなかっただろう。
「まずは、礼でも言った方がいいのか……?」
「いや、特にいらねー。こっちも成り行きと見捨てられない理由があっただけだからな」
「見た所、対魔忍であるようだが……何処の部隊だ。少なくとも、ふうま 小太郎という名に聞き覚えはない」
「まあ、話すなら、その辺りから説明していかなきゃならんか。オレ達は新設された独立遊撃部隊だ」
「独立、遊撃部隊……やはり、聞いた事がないな。本当に、対魔忍なのか?」
専用の装束を持とうとしない小太郎は兎も角、ゆきかぜと凜子の装束と装備を見れば対魔忍と一目で分かる。
しかし、彼女の次元には“ふうま”という忍びの家系自体が存在していないのか。不信感は増していく。
尤も、小太郎にとっては僥倖だった。
此方側ではふうま一門は一度は対魔忍と日本政府に対して反旗を翻した裏切り者。あちら側でも似たような行為に出ていても不思議ではない。
明確に裏切り者として認識されるくらいならば、始めから存在しておらずに不信感を持たれる方がまだマシと言うものだ。
「そうだな。後ろの二人の名前なんだが、背の小さい方が水城 ゆきかぜ、刀を持っている方が秋山 凜子という」
「いや、待て……二人は私も知っている。だが、年が……」
「そうか。そっちの二人は幼いのか……ということは、次元だけじゃなく、時間も飛び越えているのかもしれないな。次元移動は時間軸の移動も含まれる」
「次元移動だと……?」
核心を突く一言に、小太郎は顎に手を当てながら考え始め、紫は驚きから目を丸くした。
ゆきかぜと凜子だけを連れてきたのには理由があった。
あちら側の紫がどのような立ち位置であったかは分からなかったが、対魔忍が存在している次元であるのならば、此方側とも共通項がそれなりに多いと判断していた。
そして、八津家は井河傘下の下忍の家系。井河家と同盟関係にある水城、秋山家の娘とも面識があって当然だろう。事実、此方側の紫は、ゆきかぜと凜子が五車学園に入学する以前から知っている。
災禍と紅を連れてこなかったのは、自身と同じくふうま一門であり、紅に至っては対魔忍の宿敵であるブラックの娘。
あちら側に二人が存在し、なおかつ立ち位置が如何なるものかは分からなかったが、最悪の場合は敵対視されかねないが故の気遣いであった。尤も、全ては杞憂に終わったが。
自らを取り巻く状況が複雑かつ抜き差しならないものであると気付き始めた紫の表情は険しくなっていく。
それを見抜いた小太郎は滔々と次元侵略者について語り始めた。前置きを用意したのは、次元侵略者の持つ技術、能力が凄まじい故に全くの法螺話として受け取られかねなかったからだ。
「――――と言った所だが……どうだ? 信じるか?」
「俄に信じ難い……信じ難いが、貴様が語った次元侵略者の特徴は確かに一致している。信じざるを得ない」
「話が早くて助かるよ。それで、どういう経緯であの淫魔どもに捕まっていたんだ?」
殊の外、あっさりと小太郎の言葉を信じた紫は、苦々しい表情で語り始める。
元々、紫は対魔忍内部の失踪者に関して調べていたらしい。
奇妙だったのは、対魔忍を抜けようとしたにせよ、何らかの組織によって拉致されたにせよ、証拠や理由というものが存在せず、失踪者も性別、年齢にも統一性というものがなかった事か。
手掛かり一つない状態では紫も調査のしようがない。其処で、失踪者それぞれが最後に目撃された地点に何かが残されていないかを探るべく、虱潰しに回っていたところ、奴にであった。
始めの内は親切に話し掛けてきたようではあるが、警戒心の強い紫が人型の頭足類といった見た目の次元侵略者を信用する筈もなく、すぐさま戦闘に発展した。
其処で次元侵略者は脳改造でも施したのか、はたまた洗脳でもしたのか、失踪した対魔忍を使って紫を追い詰めようとしたが、結果は惨敗。
元々、紫の戦闘能力は群を抜いている。並の対魔忍が何人集まろうが、剛力無双の前には分が悪い。
焦った次元侵略者が何事か呪文を呟くと、周囲の景色が歪んでいき、気がつけばこのヨミハラへと転移していたようだ。そして、紫が状況を正しく認識するよりも早く、淫魔に囲まれてしまったようだ。
「手掛かりなし、か。残念……まあ、余り期待はしていなかったが」
「…………助けて貰った上で、このような事を聞くのは心苦しいが、私が元居た次元に戻る手立ては……」
「今の所、オレが思いつくのは三つだな。但し、どれも可能性は低い」
「詳しく聞かせてくれ」
「一つは、米連で研究されているらしい魔界への門を開く技術を利用して次元間を移動する事だが、この技術自体まだまだ未完成で安定もしてなけりゃ、これに反対している部門や組織も多い。何より、元々お前の居た次元の座標が分からん以上は現実的じゃない」
「――――もう一つは、私、か」
「そ。空遁の術は空間を操る。極めれば次元移動も可能になるかもしれんが、それは十年二十年先の話だ。それに、これも米連の研究と一緒で元の次元の座標が分からん以上は期待薄だわな」
「ならば、最後の一つは次元侵略者を捕まえる、か?」
「ま、それが一番安定して帰れる方法だろうよ。次元移動に関しては奴等が抜きん出ているのは事実だ。確実性も安定性もベストだ。但し――――」
「奴等の目的が分からん以上は、捕まえようにも居場所を掴めない、か」
「目的はこっち側の侵略だろうがね。ただ、やり方と何処で始めるかが分からん以上は同じことだ」
冷静かつ冷徹に、自分の知りうる範囲の可能性を提示する。だが、どれもこれも可能性がある、というだけの話であって現実的とは言い難い。
見る間に紫の表情は蒼褪め、沈痛な面持ちとなっていく。己の愛した者にはもう二度と会えず、生まれ育った土地へと帰れない。
如何に此方側がよく似た世界であろうとも、決して同じではない。いや、似ている分だけより郷愁の念を刺激される事は間違いない。それは、どれだけの苦痛と懊悩を湧き起こすのか想像もできない。
ゆきかぜも凜子も掛ける言葉が見つからない。自分がその境遇に置かれた時に、どうなってしまうのか全く想像できなかったのだ。
そんな中、小太郎だけは顔色一つ変えていない。彼だけは、どんな世界に叩き落とされようが、変わらずに生きていくだけの恥知らずさと強かたさを持っていたからだろうか。
「其処で、オレから一つ提案がある。オレ個人の護衛にならないか? 見返りとして、こっちで生活していく上で必要なものを全て用意する」
「…………随分とお優しい事だな」
「信用できないか? まあ、当然だな。とは言え、こっちとしてもこのまま放置は好ましくない。かと言って、タダ飯食わせてやるほど慈善家でもない。ギブアンドテイクなら、オレの妥協点としては上々だ」
「成程、お前のような奴に優しくされても気持ちが悪いからな。その提案、乗らせて貰おう」
彼にしては随分と甘い提案であるが、それも無理はない。
このまま紫を放り出せばどうなる事か。ただ野垂れ死んでくれるならばまだいい。元々、別次元の存在だ。死んだ所で痛くも痒くもない。
問題は淫魔がそうしたように、この紫が対魔忍と敵対している組織の手に堕ちた場合。
とんでもなく強く死に難い対魔忍が敵に寝返るだけで悪夢的だと言うのに、その上、それが
使い方によっては、此方側の紫に罪を被せる事も可能だろう。何せ、DNAやら個人を示す全てが同一なのだから。アサギの側近である紫が動けなくなれば、ただでさえ人手不足でガタガタの組織構造が完全に崩壊しかねない。
その上、紫の肉体は非常に特殊だ。あの桐生が目を付けるほどである。
米連に彼女が回収されようものならばどうなる事か。単なる洗脳、改造程度であればマシな方。もし万が一、不死の秘密が暴かれた上でクローニングで量産されて不死の軍勢が完成、などという事態に発展すれば目も当てられない。世界のパワーバランスが完全に狂う。
ならばいっそ、自身が不利益を被ったとしても監視と保護を兼ねて自分の手許に置いておいた方がまだマシである。
その辺りに関しては紫自身も気づいていたのであろうが、常に負の感情が浮かんでいた紫の顔が、明るく綻んでいた。見知っているようでまるで知りもしない世界を孤独に彷徨わずに住む安堵があったのであろう。
彼女の表情の好ましい変化に、ゆきかぜと凜子もほっと息を吐いた。
自分達の知る紫とは別人とは言え、顔と性格が似ているだけでも同情や共感してしまうのが人間という生き物なのだから。
ベッドの横に立つ小太郎も珍しく笑みを浮かべ、手を差し出す。
その意味を察した紫は、呆れたような笑みを刻みながら、その手を取った。
「「…………っ?!」」
ある意味で、美しい光景であっただろう。
何せ、異常な偏執狂と堅物の少女が手を取り合ったのだ。だが、それも其処までであった。
――――小太郎が紫の視界の外側から、新たに調達したS&M M500ESで彼女の頭部目掛けて引き金を引いたのだ。
如何に強靭な肉体を持つ紫と言えど、無防備な状態で.500S&Wマグナム弾を放たれれば為す術はない。何せ、一般市場で出回っている拳銃弾の中では最強の威力を誇る代物だ。
.44マグナムは勿論の事.454カスール弾や.50AE弾すらも凌ぐ威力を生み出す弾丸は紫の鼻から上を全て吹き飛ばし、脳漿と頭蓋をベッドや壁、小太郎の顔面にぶち撒けさせた。
ゆきかぜと凜子は驚愕と疑問から声も出す事も、指一本も動かす事も出来ずに居た。
当然だ。如何に小太郎とは言え、こんな凶行に及ぶなど想像すらしていなかった。
確かに、死んでくれた方が余計な苦労を背負わずに済むだろうが、いくらなんでもこれは二人の許容範囲を越えている。
「なっ――――何をしているんだお前はっ!!」
「――――小太兄、説明して」
気が狂ったとしか思えない小太郎の行動に、硬直から開放された凜子は声を荒げながら、愛刀の石切兼光に手を掛けた。
対し、ゆきかぜは酷く静かな口調で告げていたが、周囲では放電現象による火花が散っている。
どちらも、小太郎の返答次第では殺害も辞さないだろう。
どれだけ愛した相手であろうが、許してはならない行為がある事を知っている。愛しているからこそ、手に掛けねばならない場合もある。
何よりも、小太郎は彼女達と交わした“私達の好きになった小太郎でいる”という約束を一方的に破ったようなものだ。殺されたとしても文句の言える立場ではない。
「待て待て、これは治療だ。摘出手術」
「言うに事欠いて、どんな戯言だ、それは!」
「だから、イブだよ。コイツの頭ん中にはイブが埋め込まれてるの忘れたか?」
二人が本気である、と察した小太郎はM500ESを投げ捨て、血と脳漿で塗れた顔を拭いながら弁明する。
その言葉に、二人はあ、と気の抜けた声を漏らし、その様子に取り敢えず殺される心配はなくなったと小太郎は息を吐いた。
娼館ドリームで発見したイブは個数から使用された痕跡があった。あの場において使用される人間なぞ、紫を置いて他にはいない。
そして、イブの効果は現状不明。何時までも頭の中に埋め込まれていては、紫一人が苦しむならまだいいが、部隊が崩壊するような結果を招けば目も当てられない。
「だ、だがな、いくらなんでもこれは……この街の魔科医を捕らえてくるとか、他に何かあっただろう!」
「魔科医なんぞ信用できるか。桐生ですらアレだぞ。裏切るに決まってんだろ。どうせ頭を吹っ飛ばしたくらいじゃ死なねーんだ、いいじゃん」
「いいじゃん、って、お前と言う奴はぁ……!」
全くというほど悪びれる様子すら見せない小太郎に、凜子は怒りの振り下ろしどころを見失っていた。
小太郎の判断は正しい。
その経緯――不知火にも使われようとしていた事を鑑みれば、イブが人の人格に何らかの影響を与える洗脳装置と見るのが妥当だろう。
ヨミハラの魔科医が信用できないというのも頷ける。魔科医など、人格に問題があるが故に人倫に悖る魔界医療の道を志した者が大半なのだから。
そして、紫は頭部と心臓を同時に破壊されなければ決して死なない。事実、頭部を失った状態であるにも拘わらず、既に再生が始まっている。
確かに、イブの摘出に関して言えば、紫という前提が必要であるが、最短最速かつ最も楽な手段である事は疑いようはない。
「小太兄、どうせだったら死んでくれてもいいんだけどなぁ、って思ってたでしょ?」
「さぁーて、何の事やら」
「思ってたでしょ?」
「知らんなぁ」
「思ってたよね?」
「随分、噛み付いてくるじゃないか、ゆきかぜ。まあ、当然だけど」
「じゃあ、認めるんだ。ふ~ん」
「アレ? ゆきかぜさん? どうしたの? すげーバチバチ言ってるよ? 目がすげぇ怖いんだけど? ちょちょちょっ!」
「小太兄みたいな外道な事すぐにやっちゃう人には
「あがががががががあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっ!!!」
娼館の一室に、凄まじい電撃と悲鳴が連続した。
普段、小太郎を全肯定するゆきかぜであるが、小太郎が越えてはならぬ一線を越えた時に最も怒りを露わにするのは彼女だ。
正義感故にではなく、小太郎が後戻りできないところに行ってしまうのを止めるためだ。随分と重い愛であるが、紫という少女の安堵を踏み躙り、ゆきかぜ達の愛と約束を軽んじた彼には当然の罰であっただろう。
はい、という訳で、若紫とあっさり協力関係を築く&若様あいかわらず容赦がない&一番怒らせると怖いのはゆきかぜ、の回でした。
このゆきかぜはぶっちゃけ愛が重い。ヤンデレ一歩手前なんだよなぁ。若様が裏切ろうもんなら、地の果てまで追っかけてくるタイプ
なお、殺しはせずに引き摺って生き地獄へと引き戻すので、優しいよなぁ(白目