ひゃっはー! 投稿じゃー!
以前は長めに書いて週一投稿してましたが、これからは短めに書いて週数回投稿に変えていこうと思います。
ところで、ばん!先生の新デザキャラ穂稀なおちゃんはいつ登場ですか??? ばん!先生の絵、好きなんだよなぁ。
草木も眠る丑三つ時。
月と星のみが煌めく漆黒の夜空に浮かぶ雲の合間を縫うように、誰にも気取られることなく一つの物体が飛行していた。
軍の保有する戦闘機よりも大きく、かといって輸送機よりは小さい飛行物体。
両の翼の中程にはリフトファンが内蔵され、機体の後部には二基のジェットエンジンが搭載されている。
とは言え、その姿を目にするものはいない。日本の持てる最先端技術の全てを用いて生み出されたステルス及び光学迷彩によって地上の人々は勿論のこと、衛星軌道を周回するスパイ衛星ですら同様だ。
この機体は、より安全な人員・貨物輸送を目的として設計・開発された次世代型
当初は自衛軍のヘリコプターの後継となるべく開発が進められていたが、コストがかかりすぎるという理由で開発コードすら与えられずに計画は頓挫。
数少ない試作機は極秘扱いのまま日の目を浴びる事なく破棄が決定していたのだが、山本長官はこれに目をつけた。
対魔忍は少数精鋭の戦闘集団。
一つの任務に当たる部隊員の数は自衛軍のように多くはなく、特殊部隊の運用に近い。
また自前の輸送部隊を持ち合わせておらず、五車から離れた任務地への移動には自衛軍の一部と連携を必要としている。
より緊急性のある任務、より危険性が高く失敗の許されない任務に対魔忍を送り込むには、これほど適した輸送機は他には存在しない。
こうして、試作機のいくつかがパイロット共に対魔忍へと与えられる運びとなった。
その内の一つは元自衛軍出身の対魔忍が大多数を占め、操縦可能な人員を要する九郎隊が独占している。そして、この一機は独立遊撃部隊を立ち上げるに当たり、小太郎がアサギへと求めた必要な物資の一つでもある。ただでさえ甘いというのに、身内に対しては更にダダ甘な上、小太郎に大きく期待しているアサギがこの要求を断る筈もなく。
このような特別待遇は他の者から不興を買いそうなものだが、最強たるアサギに逆らえる者など居る筈もない。一睨みされただけで縮み上がる始末。
お陰で、小太郎は機体の存在を知る者からは無駄なヘイトを買ってまくっているのだが、何処吹く風のオール無視。寧ろ、はー? ウチの部隊が一番成果上げてますがー? 何か文句でもー? と言わんばかりである。
結局の所、自分に向けられる感情の大半はやっかみと嫉妬に過ぎないと分かっているのだ。相手にしているだけ無駄と斬り捨てている。そんなことだから、ヘイト緩和のためにアサギから何でもかんでも仕事をぶん投げられるのであった。
「ひゅー! いいねぇいいねぇ、最新鋭機は! しかも試作段階で開発中止の代物とか!」
「はしゃぐな」
「そうは言うけどさー! これでテンション上がらないとかないよ!」
そのコクピットでは、部隊長の小太郎とパイロットの下忍が会話を交わしていた。
大食堂から連れ去られた小太郎は校長室にてアサギより正式に任務を言い渡された後、桐生特製の栄養剤をぶち込まれて、一日経った今は何とか平時の状態へと戻っている。
しかし、その顔は渋面も甚だしい。これから挑む任務が死ぬほど嫌だ、という感情が顔面から漏れ出している。
対象的に、パイロットの下忍は陽気そのもの。年の頃は30前後であろうに、新しいおもちゃを与えられた子供のようなはしゃぎっぷりで20代に見える。
彼もまたふうま一門の出。但し、災禍や天音のような長い付き合いではなく、ふうまを売り払った後に出会っている。
元々、固有の忍法も扱えず、弾正の反乱時には捨て駒として。奇跡的に生き残った後は、対魔忍の下の下として戦闘も生活もギリギリのところで生き延びてきた。戦闘能力や忍法の強力さこそが評価の第一基準である対魔忍において、彼のような存在は何時死んでもおかしくはなく、元ふうまなど死んでも構わないと多くの者から認識されている。
自身は捨て駒にした弾正や軽んじる対魔忍に憎しみを抱いたことはなく、境遇が似ていながらも弾正の息子である小太郎に共感や反感を抱きもしなかった。
特段の忠誠はなかったが、仕事だから、そういう家に生まれたからという理由だけで戦ってきた。忠誠がない故に弾正に不満もなく、裏切るという思考が存在しない故に粛々と命令に従うだけ。
いつかは死ぬ日が来るのだろうが、それも仕事の内。その日が来るまでは何時も通りに任務を熟し、その瞬間が来れば喚き散らさずに死を受け入れるだけ、と考えながら生きていた。忍法は使えずとも、忍らしい精神性を生まれ持っていたのだろう。
転機となったのは、とある任務を小太郎と共に当たる機会を得た時。
内容はよくあるもので、魔界から持ち込まれた危険物の奪取ないし破壊を目的とした輸送車の襲撃作戦。
だが、何処からか情報が漏れていたらしく、部隊はあっさり壊滅。指揮官は真っ先に死ぬわ、部隊は混乱の果てに四分五裂となる目も当てられない始末。
しかし、指揮官が死亡したことで自由に行動できるようになった小太郎と終始冷静だった彼だけは、対魔忍の殲滅を楽しんでいた敵を尻目にこっそりと輸送車を奪取。
尤も、敵も簡単に逃がしてくれる筈もなく、壮絶なカーチェイスが始まった。
『お前さぁ、飛び道具とか持ってる?』
『持ってないですよ。持ってても使えないし、忍法もからっきし』
『じゃー、いいや。運転しててくれ。オレは屋根に登って射的ゲームしてくる。逃げられれば逃げよう。ダメだったら輸送車ごと吹っ飛ばそう』
『それ以外に道はなさそうですしねぇ』
『アクセル緩めなくていいからベタ踏みで』
『車の運転とかこの歳になってもしたことねぇんだけど、頑張りますよーっと』
当初は二人とも逃げ切れるなどと考えてはおらず、小太郎はやばくなったら荷物だけ壊して一人で逃げようと考え、彼は彼で死んだら死んだでその時だな、と気軽に考えていた。
己の命と日本の命運が掛かっているというのにゆるゆるふわふわながらも覚悟だけがガンギマリした思考でアクセルを思い切り踏み込んだ瞬間、彼の眠っていた才能が一気に開花した。
ハンドルを握っただけで感じ取れる路面の状況とタイヤの食い付き。ペダルから伝わってくるエンジンの息吹。車両と己が一つになったかのような一体感。
まるで鉄の塊を操っているのではなく、一つの生き物と共に進むかのような奇妙な感覚に、彼は生まれて始めて高揚というものを覚えた。
『お前に生命を吹き込んでやる――――!』
『おぉ! すげー! この車でこのカーブをこのスピードで曲がれんの! あははははは! 追手が勝手にスピンしてクラッシュしてるぞ! あっ、車の外に放り出された! あははははは!!』
『ひゃっはーーーーーーーーーーーーー!!!』
『いいぞぉ! もっとだ、もっとやれ!』
結果、部隊は二人を残して死亡。
目的の危険物は無事に五車へと持ち帰られ、映画さながらのカーチェイスを繰り広げたにも関わらず、彼の才能と小太郎の援護によって民間人の死亡者はゼロで幕が引かれる形となった。
その後、忍法は使えずとも類稀な才能を持つ彼に目を付けた小太郎は数少ない正式な家臣として迎え入れ、目につく成果も上げていない下忍が一人というだけあって特に反発もなく、あっさりと認められた。
そして、今や忍法とは異なる運転という技能を開花させた達人として、対魔忍内部で広く知られている。
車両は勿論のこと、船舶、航空機でさえ手足のように自在に操り、彼に運転・操縦できないものは地球上に存在しないとまで言わしめ、忍法では至れぬスーパーマルチドライバー。
九郎など血涙を流しながら部隊にくれと土下座するレベルであり、アサギ・さくら・紫といった三女傑が任務に赴く際には自衛軍ではなく彼が必ず指名されるほどだ。
「しっかし、連絡の取れなくなった部隊の捜索と救助。それも伝説の魔女エウリュアレーが関わってる可能性がある、なんてねぇ」
「………………」
「しかも、紫藤家のお嬢様に問題児二人抱えてとは。若さ、どういう星の下に生まれてんの?」
「オレに聞くな、オレに」
当主と臣下の関係だと言うのに、随分と砕けた口調だ。敬語など欠片もない。
小太郎自身が形式張った話し方を嫌っており、他家の前でさえなければ何の問題もないとしている。尤も、災禍や天音は決していい顔をしていないが、小太郎も彼も何処吹く風である。
機体がこれから赴くのは東京キングダム。
骸佐による反乱、二車家総出の離反。そして、五車を去った彼等が新たな拠点とした地。
龍門の襲撃と縄張りをそっくりそのまま奪い取った骸佐達は急速に勢力を拡大させ、混乱が巻き起こる――――ことはなかった。
彼等の動きは迅速であり、圧倒的な力による鞭と懐柔による飴によって、東京キングダムの一角を瞬く間に支配した。それを可能としたはの二車家幹部という戦力よりも、寧ろブレーン役を務める鉄華院 カヲルの存在が大きい。
恐らくは骸佐が反乱を決意した瞬間から、カヲルは既に動いていたのだろう。
彼女は正義や誇りを重んじはせず、小太郎と同じく合理と利益を良しとする女性である。二車のためであれば、どれほど手を汚そうとも、どれほど外道の誹りを受けようとも意に介さない。
東京キングダムの情報を独自に収集し、二車の戦力で迅速かつ最短でありながらも最大限の結果を手に出来る相手を選び、各組織の対立構造を把握することで突然現れた新参者を前にクズどもが手を組めないように立ち回る。彼女がいなければ、不可能であっただろう。
こうして背徳と混沌の街は仮初の安寧と新たな支配者の登場を受け入れたはずであったが――――再び、争乱の気配が顔を覗かせた。
それこそが魔女“エウリュアレー”の出没情報である。
エウリュアレーは古代から魔界を彷徨う神格の魔族。古の神々の呪いによって両腕を失いながらも、数々の伝説を残す魔界のビッグネーム。
その生きる目的は不明――――いや、明確な目的などなく、ただ生を楽しんでいるだけなのか、気まぐれに人界へとやってきては、災厄と混沌を齎すトリックスター。
関西の廃棄都市にして魔界都市であるアミダハラに根を下ろし、隠棲していた筈なのだが、何の前触れもなく、東京キングダムでその姿が目撃された。
これに色めき立ったのは東京キングダムの住人や犯罪組織だ。
伝説の魔女の力は絶大。協力関係を築いてもよいし、何なら彼女の持つ魔術の秘奥を奪えたとするのなら、パワーバランスは彼女と彼女の力を手にした者へと一気に傾く。
その結果、対魔忍にしてみれば考えたくもない事態を招く危険性がある。東京キングダム内部で小競り合いをしている内ならばまだいいが、本土にまで手を伸ばし始めれば、日本全体が闇に飲まれかねない。ただ現れただけでこれだけの警戒と危機を招くとは、トリックスターの名は伊達ではない。
これを危惧した山本長官とアサギは騒乱の兆候を探るべく調査部隊を送り込んだのであるが、唐突に連絡を絶った。
エウリュアレー本人による襲撃か、些細なミスによって犯罪組織に捕らえられたのか。いずれにせよ、黙ったままでいるわけにはいかない事態である。
こうして独立遊撃部隊の派遣が決定された。
なお独立遊撃部隊のメンバーは小太郎を除いて全員別の任務についており、実質彼一人きりである。
災禍か天音を、最低でも凜子だけは連れて行かせてくれ、と懇願した小太郎であったが、アサギはにっこり笑顔で日本人らしからぬハッキリとしたNOを口にした。
高度な魔術を行使できるエウリュアレーに対して有効打の与えられるであろう三名の同行を拒否され、絶望のどん底に突き落とされたが、流石に一人ではどうにもならないと分かっているアサギは、独立遊撃部隊以外から三名の対魔忍を付かせたのだが…………
それがまた小太郎を絶望のどん底から更に底まで突き落とされる羽目になった。絶望や不幸に底などないのだ。
「おっと、見えてきたぜ。日本の掃き溜めだ」
「廃墟地区に回せ。お前の腕とこの機体なら何処でも着陸できる。その後は上空を旋回待機。エンジンも最新型で燃費もいい、燃料の心配はしなくていい。ピックアップポイントはこっちから指示する」
「アイサー、了解。やばくなったら何時でも呼んでよ。コイツごと突っ込んでやるから」
「信じちゃいないが頼りにしてるさ」
「ふはっ、らしいねぇ」
ヘッドセットなしで会話が可能な静粛性を誇る機体の内部で、まるで日常の会話のような軽口が交差する。
されど、彼の口にした言葉は全て本心だった。相変わらず、特段の忠誠はない。元々、そのような性分には生まれついていないのだろう。
だが、自らの役割を見誤る男でもない。やれと言われれば必ず実行し、死ねと言われれば躊躇なく死ぬ。開花した才能や技能は兎も角として精神性は忍そのものであり、かつてと何ら変わりはない。
違いがあるとするのなら、ただ一点。弾正や対魔忍そのものに向けたことのなかった好意と感謝がある。思いもよらぬ出会いであったとは言え、開花した才能を伸ばせたのは小太郎の下についたからこそ。
陰日向に生きる対魔忍は富や名声に縁がなく、求めるものは一つに集約される。孫悟空が三蔵法師を求めるように、自らの才能を有用に扱う者と場。少なくとも、彼にとって小太郎は命を預け、使わせるに足る人間であった。
気軽な口調に相反する命すら含めた覚悟に、置かれた白目を剥きたくなる現実を前にして、小太郎は珍しく笑みを浮かべた。
口から出てきたのは実に彼らしい言葉であり、男が自らの信念や義侠心にのみ準じて生きて死ぬことを許されていた古い時代の
「さて、と。しかしまあ――――」
エアラインベルトを外し、コクピットの座席から立ち上がる。
コクピットの後部には分厚い金属の扉があり、それを開けるとそのまま貨物室へと繋がっている。
貨物室は二十人ほどを収容できる広さがあり、両の壁には開閉式の簡易折り畳み椅子が取り付けられていた。
積荷は、アサギの選出した三名の対魔忍。
「――――ふんっ」
一人は鬼崎 きらら。
五車の制服とは打って変わって、露出度の高い専用の対魔忍装束を纏った姿はいやに扇情的だ。
足首からふとももまで、手首から肩までを蒼と白を基調とした布地で覆っているが、胴体はほぼ露出していると言っても過言ではない。
際どい切れ込みのレオタード型であるが、胸から上はビキニのような有り様。いくら強靭な素材で出来ているとは言え、作成者の正気を疑う仕様である。
彼女は小太郎の姿を確認するや否や、露骨に嫌悪と不快感で顔を歪めると、視界に収めていることすら気に入らないのか、そっぽを向く。
「小太郎、身体の方は……やっぱり、私達だけで」
「問題ないよ。桐生特性の栄養剤をぶち込まれたからな」
「……………………そう」
一人は紫藤 凜花。
彼女の専用装束も露出度が高い。
白と黒を基調とした色合いであったが、鳩尾から下腹部までが大胆に露出した装束は女子プロレスラーのような華やかさがある。
きららとは対照的に、凜花の表情は一心に小太郎の身を案じる心配で染め上げられていたが、小太郎自身の言葉にあっさりと提案を引っ込めて俯いてしまう。
普段の自信に満ちた彼女とは全く異なる態度に、思い当たる節はあるのか小太郎は頭を掻いたが、解決策がないのか、今は時間がないのか、互いに口にしたい言葉を飲み込んでいるようだ。
「ねぇ、今からでも任務を中止にできない? 私は忍法は……」
「できるか。アサギ校長直々の命令だ。オレ達に拒否権はないし、放って置いたら何が起こるか分からん。分かってるだろ?」
「…………」
最後の一人は、獅子神 自斎。
灰色の髪に、凜子に劣らぬ女性らしい脂肪のついた豊満な肉体。何よりも、顔半分を覆う仮面が特徴的な少女だ。
彼女もまた肌の色が目立つ露出度であり、凜花と同等と言った所。ただ、背中に背負った剣からも分かるように剣客対魔忍であるらしく、鎧武者を連想させる肩当てと胴当てを装備している。
きらら同様に彼女もまた今回の任務に不満を持っているようだ。もう任務は始まろうとしているにも関わらず、今からでも遅くはないと言いたげである。
但し、彼女の場合は不満ではない。根本にあるものも小太郎への嫌悪ではなく、自身に対する不安であった。
(男嫌いで男からの命令違反の常習犯と単独任務しか受けない上に自分の忍法も制御できない問題児二人。唯一の希望は凜花だが、こいつはこいつで…………はぁ、大したメンバーだよ全く、嬉しくて涙が出そうだ)
ところで、今回の輸送機のペットネームを誰か考えてあげて下さい。自分は軍事に弱いから違和感ない名前が思いつかんのじゃ。
新型機のペットネームはどれがいいですか? 感想の中から作者が独断と偏見で選びました。地獄へお届け(デリバリーヘル、略してデリヘル)は色々な意味で面白すぎるので出禁で
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白兎(いつも忙しそうなので)
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夜梟(機体の静粛性能から)
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影狼&蜃気楼(苦労と九郎で)
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飛梅(完全和製)
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蜂鳥(ホバリングとそれなりの速度から)