まあ、内容はお察しの通り、章にあるように不知火ママンがメイン。
の筈なのだが、どうなる事か。
一つだけ言えるのは、まさしくカオス! 苦労さん、頑張りすぎだ! ということだよ!
あ、後、ゆきかぜパパンの名前も勝手に決めました。公式ではないので悪しからず。
では、どぞー!
さあ、苦労が押し寄せてくる時間だぞぅ
「…………んん……すやぁ……」
「もう、水城さんったら今日は一日中居眠りだなんて」
「仕方ないですよ。ほら、例の部隊の話もありますし……」
「全く…………ふうま君、部隊長なら責任を以って水城さんを送り届けてね」
「へいへい、了解しましたよ」
「じゃあ、お願いしますね~」
「ちょ、ちょっと、前園さんっ」
茜色の夕日が差し込み、優しく教室を照らしていた。
机に突っ伏して眠るゆきかぜのだらしなさに、クラス委員長である氷室 花蓮は憤りの視線を向けている。その間に割って入り、ゆきかぜを庇ったのは副委員長の前園 桃子。
花蓮は頑固な程に真面目で、桃子は適度に気の抜けた少女故に、二人は相性の良いコンビであった。
部下の失態は隊長の責任と花蓮は言外にゆきかぜへと釘を刺すよう声色で語っていたが、小太郎は何処吹く風であった。
もう一言口にしなければ気が済まない、と花蓮は口を開こうとしたが、桃子に背中を押されて教室の外へと連れ出していってしまう。
桃子は対魔忍として戦う事に恐怖はあっても逃げ出しはしない。しかし、仲間同士での争いは嫌う。彼女なりに気を遣っての行為であり、花蓮の説教は長くなるのを知っていた故でもあった。
本日の日直当番は花蓮、そのまま職員室に日誌を提出するのだろう。
遠ざかっていく二人の足音と気配を確認しながら、小太郎はちょうどいいとばかりに眠り扱けたゆきかぜに視線を向けた。
「………………」
「――――っ!」
何を思ったのか、少なくとも“ふうま 小太郎”として振舞っている際には肌身離さず武装しているColt Single Action Armyへと手を伸ばす。
座った状態から椅子を跳ね飛ばして立ち上がり、ゆきかぜの丸くなった背中へ殺気すら伴って持てる最高速で銃口を向ける。
対するゆきかぜもまた唐突だった。
小太郎が膝に力を込めた瞬間――いや、殺意を抱いた瞬間、真横に跳ねていた。まるで獲物に狙いを定めた獣の如き、恐るべき瞬発力。
虚空に身体を投げ出す勢いで地を蹴ったゆきかぜは、空中で姿勢を制御して廊下側の壁へに着地するや、跳ぶ直前に鞄の中から取り出したライトニングシューターを小太郎に向けて構えてのけた。
「いいね、感度良好。問題無しだ」
「ふぎゅっ――――ちょっとぉ、小太兄ぃ!」
両者の射線と視線が交差し、僅かコンマ数秒にも満たない睨み合いの末、小太郎は納得したように構えを解く。
すると壁に着地していたゆきかぜは重力に引かれて教室の床へと落ち、不機嫌に抗議の声を上げた。
完全に眠った状態からでも自身を脅かす気配と殺気を感じ取る五感。
今、超反応を見せたゆきかぜは元より、他の二人にしても生まれながらに優れた感覚器官を有していた。しかし、十全には扱えておらず、開花していなかった。
これを強制的に開かせるため、小太郎は日常の中で彼女達を常に脅かした。
初めは周囲には悟られないように焦点を絞った殺意を彼女達だけに向ける。
それを感じ取れるようになれば、周囲の視線が外れた一瞬に、命に危険が伴う攻撃に及んだ。
すれ違いざまに鳩尾へ向けての拳打。訓練中に背後から後頭部に向けての飛び膝。一人になったところで気配を殺して忍び寄っての首締め。離れた距離からの投石。
どれもこれも暗殺と呼べる手段であり、小太郎が手加減を誤れば、彼女達が対応を誤れば、死に至りかねない暴挙だ。
しかし、暴挙も数を重ねれば日常となり、苦痛を伴う訓練は、伴わない訓練に比べて遥かに効果が高い。
日常的に命を危険に晒される事によって花開いた彼女達の五感は、既にあらゆる殺意や悪意を鋭敏に感じ取る。下手な不意打ちや搦手なぞ容易に対処し、遠距離からの射撃にも対応して見せるだろう。
その領域に至るまで、小太郎が何年掛かったことか。
過去に踏破した地獄の道程を容易かつ短期間で駆け抜けた彼女達には、さしもの彼も惜しみない賞賛を送る他ない。
「これでようやくスタートラインだ。これから伸びるぜ、お前等全員」
「これでぇ……? 今まで受けてきたどんな訓練よりも厳しかったんだけど」
「それだけ甘っちょろい訓練だったってこと。対魔忍の訓練なんぞその程度さ」
「そういうこと言うから嫌われるんだからね、もう」
二人は自分の跳ね飛ばした椅子や机を元の位置に戻し、中から溢れた教科書を仕舞い直す。
小太郎の言動は普段から歯に布着せぬ苛烈なものばかりだ。
勿論、ゆきかぜはそれが彼なりに言葉を選んだ上での言葉だと知っているが、自分の好きな相手が皆に嫌われるのは胸が締め付けられる。
少なくとも、彼は仲間の最も大切にしている部分を笑う事はなく、安易に全てを否定はしない。
あくまでも問題点を提示し、指摘しているだけなのだ。ただ、対魔忍は我が強く、頭が固い。言葉がより苛烈になるのも無理はないが。
自分を気遣うゆきかぜに、百年早いと言いたげであったが、小太郎は力なく笑って頭を撫でた。
彼としても気遣われて悪い気はしない。そんな気持ちを伝えたかったのだろう。
言葉にしなかったのは、言の葉の力が絶大である事を理解しているからであり、また言葉にした時点で元の感情から乖離したものとなるからだ。
感情を言葉にするのは容易い。歓喜、憤怒、悲哀、悦楽。当て嵌めようとすればいくらでも当て嵌められる。しかし、感情がそのまま言葉になるかと言われれば、それはまた違う。
小太郎の口にした歓喜とゆきかぜの口にした歓喜では、意味合いも抱いた感情も微妙な差がある。言葉にした時点で削ぎ落とされた部分もある筈だ。
自分を愛していると口にした女に、それはどうにも不誠実に感じ、行為によって胸の内を伝える事にした。
ゆきかぜはそんな胸の内を感じ取ったのか、嬉しくて堪らないと言わんばかりにふるふると震え、目尻を垂れ下げてふわりと微笑んだ。
「今日は早めに切り上げる。帰ろうか」
「訓練は? いいの?」
「これからもっときつくなるからな」
「うっへぇ……はい、今日はゆっくり休みます」
普段は決して見せない爽やかな笑みを浮かべた小太郎に、ゆきかぜはげんなりとした表情で頷いた。
彼がこうした笑みを浮かべる時は、大抵敵に対してロクでもないことをしでかす前か、味方に対してとんでもない訓練メニューを課す前である。人はこれを暗黒微笑と呼びます。
ゆきかぜも、独立遊撃部隊に入ってからの訓練で嫌というほど学んでいる。そして、どれだけ抗議しようが泣き喚こうが一切耳を貸さない。此処で無駄な労力を使うよりも、明日以降の日々に備えて休息を取る方が賢い、という事だ。
それでもゆきかぜが現状、逃げ出す事も投げ出す事もしていないのは、小太郎の側に少しでも長く居たいという乙女らしい理由以上に、確かな成長の実感があったからだ。
体力の向上。雷遁の術の出力、使用幅、持続時間の向上。何よりも、周囲の殺意や敵意、悪意への反応速度。以前までの己と比較しても文句なしに強くなったと胸を張れる。
加えて、単独、集団を問わない模擬戦における戦績も上がっていた。
以前は才能と実力に任せた戦い方しかしてこなかった上に、それ以外の必要性すら感じなかったが、小太郎の指導の下、思考に瞬発力が、戦闘における考察力が加わる結果をまざまざと感じている。
単独であれば、彼我の実力差を正確でないにせよ、正当に近い形で看破し、自身にとって理想的な戦い方を組み上げる。
集団であれば、部隊内部における立ち位置と役割を認識し、自身の性能を最大限維持した上で、相手の出方を探る。
言葉にすればたったそれだけ。当たり前と言えば当たり前すぎる行為であるが、結果は劇的に変わっていた。
それもこれも、小太郎から渡された過去の失敗集を読み解いてきたからだろう。
過去の報告書や事例に目を通し、当時の状況を理解した上で何が悪かったのかを探る。更には自身を当事者に見立て、最良の選択肢は何なのかを考える。
繰り返し繰り返し。飽きようが、嫌になろうが、その思考が常態となるまで徹底して続ける。
その結果が、今のゆきかぜであり、また彼女の生み出す成果でもある。
今のゆきかぜならば、多少の実力差ならば覆し得る。敵の下手な搦め手に嵌りもしまい。
過去の事例が元になっている故にやや型に嵌った思考しかできないが、続けていけば、より柔軟に、より最良の選択を出来るようになるだろう。
(次は忍法の応用範囲を更に広げる。いささか以上に性急だが、そうも言っていられねぇ)
小太郎は今現状の訓練・鍛錬を続けつつ、新たなる訓練メニューの追加を検討していた。
紅の風遁、ゆきかぜの雷遁、凜子の空遁それぞれの特性を伸ばし、欠点を克服する。そのためには、個々で訓練の内容が変わってくる。
効率的な訓練内容を考えるのも一苦労であるが、嘆いても面倒がっても始まらない。此処を超えてしまえば、部隊運用は比較的楽になり、使用できる選択肢が飛躍的に増すのだから。
「んー…………ねぇ、小太兄。今日、そっちに泊まってもいい?」
「はー……元気いいねぇ、お前。いや、オレは嬉しいけど」
「ちーがーいーまーすー! いや、違わないけど、そういうのも嬉しいけど。今回は、ちょっと助けて欲しくて」
我が家に泊めて欲しいと頼まれた小太郎はからかうように笑っていたが、ゆきかぜの反応に首を傾げた。
何でも母親の不知火が任務で家にいないらしい。
ゆきかぜも最低限の家事は出来るものの、決して褒められたものではなく、失敗も多い。
それを見越して、不知火は出立前に水城の分家に世話を頼んでいたらしいのではあるが――――
「別に相手だって納得してやってるんだ、問題ないと思うが」
「流石に毎回毎回頼るのもねぇ。女の子として不甲斐ないし、申し訳ないし。相手の生活だってある上に、お給金払ってるわけでもないから」
「ま、成長しようって心意気は認めてやる。今日はちょうど災禍も来てる筈だ。色々と教えて貰えよ」
――――流石に気が引けるようだ。
近代に入った水城の宗家と分家は、形式的に中世以前からの風習を守っているものの、実態は殆ど親戚付き合いのそれに近い。
元々、優秀な雷遁使いを排出してきた水城家であるが、家としての規模は大きくない。これまでの当主に野心少なく、家の拡大を重視してこなかった故だろう。
宗家と分家の力関係は代々の傾向でほぼ均衡した状態であり、関係も良好。水城家の方針は、当主による決定ではなく、分家の意見を十二分に加味し、摺り合わせを行った上で決定されるほどだ。
これまで対魔忍内部の権力争いにも一切参加しておらず、当主不在という理由もあるが、それ以前から興味を見せた様子もない。
対魔忍の生まれた意味。闇から現れた魔を討つ、闇に魅入られた外道を討つ使命を第一とし、片時も忘れてこなかった家系故に。
「そういや不知火さんは最近見てないな。何時からなんだ?」
「二車の反乱がある少し前だから、一月くらい前かな?」
「………………へぇ~。ちなみに、期間はどれくらい?」
「分からない。殆ど何も聞けずに行っちゃったから。でも、難しい任務かも。結構、難しい顔してたし」
「………………へぇ~~~~~~~~~~~~~~~~」
ゆきかぜの母親、水城 不知火はアサギに並び称されるほど勇名を馳せた対魔忍である。
単純な強さは勿論の事、彼女の水遁の術は敵を惑わせる幻惑の極地。更には知略戦略に精通し、アサギの側近として数々の任務を成功に導いてきた。
人呼んで“幻影の対魔忍”。対魔忍内部での立ち位置は各任務の作戦に対する最適な人員の選定や作戦内容の提示。世界中を駆けずり回って情報収集や各国の動向を探る九郎とはまた別の意味で重要な裏方である。
「悪い、ゆきかぜ。先にオレの家に行ってくれ。ちょっと用を思い出した」
「えー? 一緒に下校するのも楽しみにしてたんだけどなぁ~。稲毛屋で買ったソフトクリームを食べながら、ゆっくりイチャイチャしながら帰りたかったんだけどなぁ~」
「許せ、ゆきかぜ。また今度だ」
「ま、しょうがないよね。私達の隊長さんだもん。やること一杯あるだろうし。じゃあ先に行ってるから、早く帰ってきてね」
わざとらしく不満げな表情を作るゆきかぜであったが、小太郎から投げ寄越された鍵を問題なく受け取るとにっこり笑うと教室を後にする。
小太郎に与えられた任務の重さ、ふうま再興という道程が決して楽な道ではないと理解しているからこそ、邪魔は自分の我儘と断じ、ごねることなく受け入れていた。
何より、この埋め合わせを怠るほど気の利かない男ではなく、寧ろそういった事柄には殊更気を遣うタイプだ。小太郎を知っているからこそ、ゆきかぜは素直に従うのだ。
一人教室に残された小太郎は、暫く経ってから校庭を一望できる窓の前へと移動する。
眩いばかりの夕日に目を細め、校舎と校門を繋ぐ道に目を向ける。其処には、小太郎宅へと駆けていくゆきかぜの背中があった。
あの様子では夕食を作る災禍の手伝いをしながら、料理の一つでも教えて貰うつもりなのだろう。少女にとって手料理を振る舞う事は特別な意味を持ち、またとない楽しみでもある。
ゆきかぜの姿が完全に消えてなくなり、自分の用に一切気がついていない事を確認すると、小太郎はほうと息を吐くと同時に、さーっと音が聞こえそうなほど血の気を引かせて顔面蒼白となった。
「ああああアアアああぁぁああぁぁあアアアぁあああぁあぁっ!!!!↑」
次の瞬間に、彼は地を蹴った。
凄まじい速さであった。教室にあった机と椅子を吹き飛ばし、中の教科書やその他諸々が撒き散らされる。
そのままに肩から扉に飛び込んでブチ破り廊下に躍り出たが、勢いを殺しきれず側頭部が廊下の窓をブチ破ったが一切気にした様子はなく、暴走機関車の勢いで走り始めた。
「さぁあああアアアああァぁああああァァあああァアアアあっ!!!!→」
放課後、教室に残って自主勉強をしていた生徒は、余りの速さに彼の姿を捕らえられず、目を白黒とさせるばかり。
廊下を擦れ違った生徒や教師は、小太郎を高速で動く影としか認識できず、悲鳴を上げて避けるばかり。
その様は、紛うことなき妖怪。
名付けるならばそう、妖怪・重力破り。極大過ぎる嫌な予感から高速移動の果てに重力の縛りから解き放たれた妖怪だ。
何せ、高速過ぎて廊下を螺旋状に走っているのだ。床、右壁、天井、左壁とぐるぐるぐるぐる回りながら走っている。万有引力の法則の敗北、アイザック・ニュートン涙目であった。
「ぎぃいィぃぃいいいイイいいぃィィぃいいいイいいいぃっ!!!!!↓」
終着は、言うまでもなく名前を叫んでいたアサギの執務場所。即ち校長室である。
廊下をぐるぐるぐるぐるしていた小太郎は、勢い余って校舎の隅から隅まで無駄に走り回ると、校長室の前で直角に曲がり、ライダーキックと共にダイナミックエントリー。
粉々に砕け散った扉の叫び声に続き、着地に失敗した小太郎は来客用のソファとテーブルに頭から突っ込んで粉々に粉砕した。
「あのねぇ。何をやってるのよ、貴方は」
アサギに驚いた様子はなく、呆れ顔で執務机に座ったままだ。
あれだけ大声で名前を叫ばれていたのだ、当然だろう。もっとも高音域すぎて、他の者にはアサギの名前を呼んでいるのではなく、チンパンジーの鳴き声にしか聞こえなかっただろうが。
日常茶飯事と言わないまでも、こうした小太郎の奇行は何度か経験していると伺える。
はぁ、溜息を付くとアサギは目を通していた始末書を机の上に置き、何事かと校長室を覗き込みに来た教師や生徒を片手で制して追い返す。
しかし、その態度も其処まで。小太郎がこうした奇行を取るのは、厄介事を嗅ぎ取った時だ。アサギのところに飛び込んできたと言う事は、間違いなくアサギにも類が及び、関わっているからだろう。
人払いが済むと彼女の表情もさーっと蒼褪めていき、顔面蒼白の状態で涙目になってカタカタしている。いくら最強の対魔忍でも、過労死が間近に迫っている段階で小太郎の持ち込む厄介事はリアルに死ねる。この反応もやむを得ない。
「アサギ、お前アサギぃ! 不知火さん、どの任務についてるのっ?!」
「不知火? 不知火は纏の任務中だけど…………え? 何? 嘘でしょう?」
「うーそじゃないよ、事実だよっ♪ いーやな予感がひっしひしっ♪ 終わりの時が見えてくるぅ~♪」
「「……………………あはははははははははははははははっ!!」」
アサギは一瞬、怪訝な表情をしたが、次第に目を見開きながら震え声で問い返すも、小太郎はほぼほぼ錯乱状態で歌いながら踊り出す。
もう小太郎にしても歌って踊るしかないくらいの状況の可能性があるのだ。
一瞬、二人の間で沈黙が降り、死んだ魚の眼で見つめ合うと笑い出した。
互いに状況を完全に把握していた訳ではなかったのだが、小太郎の嫌な予感が外れた事はない。
ましてや、任務の人員選定と作戦案提示を担う不知火に火の粉が降り掛かっているかもしれないのだ。もう笑うしかない。
一頻り笑い終えるとアサギは何やらパソコンを操作し始め、小太郎は校長室の本棚を押して扉が壊れて開きっぱなしになった入り口を塞ぐ。
「不知火が潜入しているのはヨミハラ。現状、定期連絡が入っているわ。連絡役は別件で捉えた奴隷商人のゾクトよ」
「うわっ、うわわぁぁあああぁぁっ!! 終わったぁあああぁあぁあぁああぁっっ!!」
「お、おおおお、落ち着きなさい小太郎っ! 諦めたら其処で任務終了よっ! そして私達の過労死も確定よっ!」
纏の任務とは、対魔忍の間でのみ伝わる俗語、或いは隠喩。身分を偽り、情報を探る潜入任務の事だ。
短くとも一ヶ月。長ければ十年単位で任務に当たり続けなければならず、本来の身分がバレたのならば即座に殺されるか捕らえられる、非常に過酷で危険度が高い任務だ。
そして、不知火の潜入先がまた厄介極まる場所だった。
地下都市ヨミハラ。
この日本にはいくつかの魔界都市が存在する。その内の一つであり、位置がまた特殊だ。
ヨミハラは東京の地下300mに位置した地下都市であり、政府の力も対魔忍の目も届かない闇の勢力圏。
闇の勢力以外は規模、全容を把握できておらず、存在は認識されてこそいるものの、確認はされていない。
曰く、ヨミハラの女は奴隷か娼婦しかいない。
曰く、ヨミハラの最下層には魔界へ通ずる穴が空いている。
そんな噂が枚挙暇がない都市。
そして、対魔忍の最大の敵、アサギ個人の宿敵であるエドウィン・ブラックが率いる組織、闇の勢力の最大閥であるノマドもまたヨミハラを拠点としている。
錯乱状態の小太郎とアサギであったが、今やれることはやっていた。
アサギは任務の内容や政府から齎された情報をプリントアウトすると震える手でバサバサと音を鳴らしながら差し出し、小太郎ははわ、はわわと漏らしながらも書類に目を通す。
「よし、よしよし、よぉし。不知火さんの任務内容は把握した」
「それで、どうなの?」
「…………オワタ\(^o^)/」
バサァ、と短時間で読み終わった書類を放り投げ、校長室で紙吹雪が舞い散った。
「根拠は?」
「あー、それな。お前、覚えてるか? 4年前、ゆきかぜの親父さんが任務で死亡する少し前に、不知火さんが当たる筈だった任務が中止になったの」
「覚えてるわよ。中止になったも何も、貴方が中止させたんじゃない」
4年前、不知火は潜入任務へと赴く筈であった。
ヨミハラのような危険な場所ではなく、魔界技術を使用している恐れのある風俗店に潜入して証拠を入手、更には顧客の可能性のある政府関係者を検挙するための情報を手に入れる任務。
不知火ほどの腕前であれば、何の問題もなく達成できるであろう任務であったが、これに待ったを掛けたのが小太郎であった。
当時の時点でアサギの懐刀として暗躍していた小太郎は、たまたま耳に入った任務の内容と情報から中止すべきと判断した。
理由は単純。風俗店のある一帯はノマドが支配しているにも拘わらず、疑惑の向けられている風俗店だけはどの組織が経営しているのかだけは判然としなかったからだ。
使用している魔界技術、利用している顧客の存在は政府の調査で明らかになっていたのに、経営側の情報だけが欠落している奇妙さ不自然さ。
通常であれば、まず真っ先に誰が経営しているかを調べるだろう。でもなければ、蜥蜴の尻尾切りをされて大本を断てないのだから。
これは政府内部に存在している親魔族派の売国奴共の罠と断じ、アサギもまた小太郎の言ならばと中止を宣言したのである。
その後、風俗店は時間を置かずに閉店し、真相は闇へと葬られた。
「それ自体は良い。そんな罠みたいな任務、
「別の任務……?」
「ゆきかぜの親父さん―――
「………………っ」
ゆきかぜの父親――水城 稲火は、ゆきかぜ同様に優れた雷遁使いであった。
任務の内容は、ある組織が輸送する魔界技術を奪取ないし破壊というありふれたものであったが、組織の規模から対魔忍側も百名前後の部隊を編成。それを率いたのがゆきかぜの父親であった。
任務開始当初は順調であったが、抵抗の激しさと政府から齎された情報以上の兵器と人数に苦戦を強いられ、更には魔界技術を狙った米連の部隊によって背後から強襲を受け、部隊は四分五裂。
稲火は最後まで奮戦し、可能な限りの味方を逃した上で自身は逃げ時を失ったと悟るや、複数人の雷遁使いと協力して命を犠牲にするほどの大火力を発揮し、魔界技術を敵諸共に焼き払った。
払った犠牲は大きかったが、彼の判断は正しかった。輸送されようとしていた魔界技術はエネルギー関係の技術であり、生み出されるエネルギーの量、更には危険性に関しても原子力に勝るもの。これが米連、中華連邦、ロシアに流れれば、世界のパワーバランスは一変していただろう。
日本は東京の片隅に存在する風俗店への潜入調査と三つ巴にまで発展した世界を揺るがしかねない魔界技術争奪戦。
一件、繋がりなどなさそうに見える二つの任務。其処に、一体どんな共通点があると言うのか。
小太郎が発見したのは、情報の共通点。
「対魔忍が自ら情報を掴んで決定する任務もあるが、この二つに関してはどっちも政府が情報を入手して対魔忍を動かした任務だ」
「でも、そんな事は珍しくもないわ。これは正式に
「ああ。ただ、この二つの任務の情報は、調査第三部が直接掴んだ情報じゃなかった。まあ、そういう任務ばっかりじゃない。あそこはこっちと政府の橋渡し。色んな所から色んな情報が流れ込んでくる」
「それで、共通点は?」
「情報の資料内容を見てて思ったんだが、これな、同一人物が書いたみたいなんだよ。その上、同じルートを通って調査第三部に持ち込まれてる」
内務省公共安全庁・調査第三部はアサギを対魔忍のトップとして擁立した山本 信繁が部長を務める組織。
日本中の様々な政府組織から齎される情報が事実であるか調査・精査し、対魔忍へと受け渡し、必要に応じて支援を行う。
その際、元の情報を改竄・訂正を行わず、調査第三部が直々に情報を洗い、作成した報告書を添付する。
理由は単純。元の情報と報告書に齟齬があった場合、情報源が売国奴である可能性が高いからだ。
以後、その情報源は調査第三部、対魔忍の両組織から疑惑の目を向けられる事となり、偽の情報を掴まされたと確定するまで監視対象となる。
とは言え、元の情報に関してもパソコンを使って作成された資料であり、筆跡鑑定などは通用しない。が、人の癖というものはどうしようもなく現れる。
漢字、ひらがな、カタカナの使用率とどの文字にどれを使うのか。多用する文法の種類。文の書き出し、区切り、締め括り。数字も英数字を使うのか、漢数字を使うのか。英数字であれば半角、全角のどちらか、或いは頓着しないのか。
直筆でなくとも読み取れる事柄などいくらでもある。小太郎であれば、文章から人間性すらも読み取ってしまいかねない。疑う余地はないだろう。
更に風俗店への潜入調査と魔界技術争奪戦という毛色が全く異なる情報が、全く同一のルートを通って調査第三部に入るとは考えづらい。
「それに、稲火さんや一緒に死んだ連中の死体を見たか? あの時、稲火さんを含めて五名の雷遁使いが術を発動、互いに共鳴させて自爆した。皆して黒焦げになって帰ってきたよな?」
「えぇ、五人とも一目見ただけでは誰かも分からないほどだった」
「でもな、それでもおかしいところはあった。他の四人は全身傷だらけだったのに、稲火さんだけは雷遁による自傷以外の傷がなかった。一つもだぞ。あれだけの乱戦でそんな事ってありえねぇだろ」
「なら、稲火はあの最中で捕らえられようとしていたってことね。この二つの任務は……」
「ああ。毛色も違う、内容も違うが、確実に裏で仕組んだ奴がいる。そいつの目的は水城夫妻の確保だった可能性が高い」
小太郎が重苦しい溜息と共に告げた内容に、アサギは息を呑んだ。
敵の目的は分からない。分からないにせよ、驚嘆に値すると同時に腹立たしくも悍ましい。
小太郎に気取られたものの、調査第三部にすら自身の正体を悟らせぬ手練手管は厄介と言わざるを得ない。
しかも、目論見は稲火の奮闘によって無に帰したとは言え、敵は健在なのだ。
「どうして、私にも不知火にも話さなかったの」
「これを聞けばお前が独自に動くのは目に見えてたからだよ。山本長官に打ち上げて動いてもらうか、別の誰かを使うかは分からんがな。そうなりゃ、不知火さんの目も耳も欺けねぇよ。あの人はお前よりも二枚、三枚は上手だ」
「だからと言って、黙っているのは……」
「オレだってただ黙ってた訳じゃない。この4年、不知火さんやゆきかぜだけじゃなく、水城の人間が関わろうとした任務は決行前に全て目を通してた」
その全てに、同様の作為や悪意は感じられなかった。
諦めたか、とも考えたが、周到に水城夫妻を捕らえようとした相手。一度の失敗程度で諦めるとは考え難い。
事実、今回のヨミハラ潜入に関する資料には、風俗店潜入調査、魔界技術争奪戦と同様の存在を小太郎は感じ取っていた。
しかし、此処で一つの疑問が残る。
4年もの間、誰にも告げずに一人黙々と水城家の関わる任務全てを監視してきた小太郎が、よりにもよって敵の本命とも言える今回のヨミハラ潜入を見過ごしてしまったのか。
「あー……今回の潜入任務、不知火さんが自分から志願したのか?」
「ええ、そうよ。実力的にも能力的にも最適だったというのもあるけれど、不知火からの強い志願があったのよ」
「なら、不知火さんも敵の存在に気付いてる。復讐――――いや、違うな。そんな性分の人じゃない。単純に真実を知りたかったのかねぇ」
小太郎が見過ごしたのは、不知火がヨミハラ潜入の任務を握り潰したからだろう。
不知火もまた4年前の出来事に些細な違和感を覚えていたに違いない。そして、真実を探る過程で小太郎もまた探りを入れている事を悟ったのだろう。
彼女にしてみれば、4年越しに降って湧いたチャンス。もしかしたら一生、何一つ分からないかもしれなかったのだ、これを逃す訳にはいかない。
どれだけ同じ敵の影や匂いを感じ取ろうとも、小太郎にせよ、自身にせよ、確信は得ていても確証はない。
復讐に捕らわれる性分ではないが、せめて夫の死の真相を知りたい。知らずにいればそれまでであったかもしれないが、知った以上は止められまい。
「アサギ、許可を。不知火さんは、まだ必要な人材だ」
「当然ね。こんな勝手をされたら、こっちも堪らないわ。不知火も、貴方と一緒で逃がすつもりなんてないわよ、私は。必ず連れ戻しなさい。私とゆきかぜが一緒にお説教して上げなくちゃね」
「水城 不知火救出の任、確かに拝命した」
「それで、いつ動くの?」
「――――――すぐにさ」
―――――
――――
―――
――
―
「以上が水城 不知火の置かれた状況であり、これを救出するのが今回の任務だ」
「…………っ」
任務拝命から一時間。
独立遊撃部隊のメンバーは全員が小太郎宅に集い、今回の任務の説明を受けていた。
ゆきかぜは蒼褪めた表情で唇を噛み締めて、叫びだしたくなる衝動に耐えていた。
当然だ。何者かの目論見は破綻したものの、結果として父親は死んでしまった。母親は何一つ告げる事なく、一人で全てを背負い込んで渦中へと飛び込んでいった。自分は一人で残された上に安穏と日々を過ごすばかり。
腹立たしい。反吐が出るような何者かも、父の死は当に乗り越えたという思い込みも、自分を頼らなかった母も、何一つ知りもしなかった自分自身も。
耐えるゆきかぜに掛ける言葉が見当たらず、凜子と紅は俯くばかり。
対照的に、災禍と天音に変化は見られず、普段通りの自然体だ。他人事でしかないという冷徹さ故、と言うよりも、こうした事態は何度となく経験してきたからこそだろう。
「それから、これは隊長としてだが、今回の任務に際して紅、ゆきかぜ、凜子の三名は待機を検討している」
「ふ、ふざけないでっ! そんなの納得できないよっ!!」
「ふざけてなんかいない。お前の納得も関係ない。任務の性質上、お前達の能力に向いた任務じゃないってだけだ。何よりも、感情的に過ぎる。暴走されたら敵わん」
小太郎の言葉に、ゆきかぜは食って掛かろうとしたが返ってきたのは、ガラス玉のように無機質な光を宿した瞳と無感情で抑揚の少ない冷徹な言葉だった。
実際の所、小太郎としても余裕がない。
ヨミハラの情報はいくつか手にしてはいるが、それが事実なのかを確認できていない。
これから潜る場所は、文字通りの暗黒なのだ。何もかもが手探りの状態の中で、新米同然の隊員を気にしながら達成できる任務ではないだろう。
それでもなおヨミハラに向かわねばならないのは、不知火がそれほどの人材だからだ。
対魔忍が単純な強さに傾倒し、結果にしか目を向けない思考であるのはこれまでに語った内容から疑う余地はない。
しかし、逆に言えば、適切な人材を適切な任務に振り分け、実行可能な作戦を示してやれば、十分過ぎる成果を上げられると言う事でもある。
今まで、それを熟してきたのが不知火であり、彼女ほどの勇名を馳せた女傑であれば如何なる任務や作戦であれ、誰も不満は上げられない。
彼女がいなくなれば、どれだけアサギや山本長官が努力しようとも、現状はゆっくりと、だが確実に瓦解していく。
結果は言うまでもない。対魔忍は衰退し、魔族と米連が横行する。これだけは避けねばならない。
「これはオレの優しさだと思え。オレ達三人でさえ、返って来れる保証はないんだからな」
「そ、そんな…………そんなの、そんなの嫌だよっ! お父さんやお母さんだけじゃないっ! 小太兄も、災禍さんも、天音さんだっていなくなっちゃうの!? 私はそれを待ってるだけっ?!」
「……ゆきかぜ」
「やだ、やだよ……やだやだやだっ! お願い、小太兄っ! 私も連れて行って、ちゃんと命令も聞くから……お願い、お願いしますっ」
小太郎の決定に納得できず、ゆきかぜは幼子が駄々を捏ねるかのようだ。
勝ち気な彼女が見る影もなく打ち拉がれ、それでもなお小太郎に縋る様は、直視に耐えないほど痛々しい。
小太郎を絶対視している天音でさえ、叱責で遮ろうとしない。それは、ゆきかぜの気持ちが痛いほどよく分かるからだろう。
もし、これが不知火ではなく小太郎であれば、天音もただ待つだけの選択など決してしない。例え、実現できるだけの能力がなかろうとも、力及ばないと分かっていても、必ず動く。
「若様、よろしいでしょうか?」
「何だ、災禍。何かあるのか?」
小太郎は既に全員に対して背を向けていた。
居間の壁の一部を押し込むと壁自体が上下にスライドし、隠された武器や装備が顕になり、必要な道具の選定を行っている。
そんな状況を変えたのは、災禍の凛とした声だった。
「私は三人を連れて行くべきかと。戦闘特化ではありますが、最近の成長ぶりは目覚ましい。今回の任務、戦闘自体が下策ではありますが、水城 不知火救出後、撤退時には激しい戦闘も予測されます。手足はあって損はないでしょう」
「――――天音は?」
「私も災禍と同意見です。紅の風遁、ゆきかぜの雷遁、凜子の空遁。いずれも戦闘以外での応用も可能と判断します」
背を向けたままであったが、二人の意見に思案をするように腕を止めた。
その隙を伺い、災禍は三人に目配らせを行い、天音は三人に手を降って、早く言えとジェスチャーをしていた。
一瞬、何を言えばいいのか分からなかった三人であったが、二人の意図を理解すると間髪入れずに口を開く。
「わ、私の雷遁、攻撃ばっかりじゃなくなったからっ! 磁力を帯びさせたり、電磁波を出せたり、出来るようになってるからっ!」
「私は、そうだな。撤退時には空遁があれば便利だろう。もしかしたら、余計な戦闘は避けられるかもしれない。他にも、遠見も出来るからな。損は無い筈だ」
「私も最近は細かい操作が出来るようになってきた。離れた場所の音を風で運ぶ事も不可能じゃない」
要は、二人とも見本を見せたのだ。
小太郎に対して感情論は通用しない。感情に流された末に待っているのは、大抵が無残な末路だと知っているから。
故に、嘘も誇張もない自らの有用性、自らが生み出せる利益を語る方が余程効果的。その方が、作戦の内容や人員の選定を見直す切欠となる。
「いいだろう。お前達の言葉を前提にして作戦を組み直した。だがな、ゆきかぜ。お前はオレの優しさを無下にした。覚悟しておけ」
「……な、何を?」
「あらゆる残酷を、だ。はっきり言うが、闇の連中はお前の想像を絶する。不知火さんがヨミハラに潜って既に一ヶ月。もう、元の不知火さんであるとは限らない。精神的な意味は勿論のこと、肉体的な意味でもだ。人の形をしているかさえ保証はない」
「…………っ」
「場合によっては、オレはお前に不知火さんを殺せと命じる」
振り返ってゆきかぜに向けた視線は、ぞっとするほど冷え切っていた。
開かない右目はそのままに、開いた左目は虚のようだ。あらゆる深淵を覗き込んできたようで、とても人のしていい目ではない。
短い人生であるが、小太郎はこうした任務を一度や二度ではなく経験している。
敵に捕らえられた対魔忍が、魔界技術による改造と洗脳の果てに、かつての人格が見る影もないほどに変質してしまったのを目にした事もある。
苦痛から逃れるために、或いは快楽に魅入られて敵に寝返る者。耐え続けた結果として廃人となった者。それらはまだ可愛い方だ。もっと酷い現実なぞ、それこそごまんと存在する。
貴重な能力を持つが故に、肉体を解体され、脳髄だけの状態で生かされた例も目にした。
肉体の頑強さに目を付けられ、元が人間だったとは信じられないほどの改造を施された例も目にした。
腐臭を放つプールいっぱいの内蔵の匂いを嗅いだ。千もの眼球が涙を流す巨大な肉の塊を目にした。常人が見れば発狂してしまいそうな異形に、殺してくれと懇願された。
何よりも悍ましいのは、そういった例に特に理由がない事か。
やってみたかったから。面白そうだったから。そんな程度の理由で、まるで子供が虫の羽や手足をもぐように、闇の住人は手を下すのだ。
「それでも。それでも、行くから」
「いいだろう。お前の覚悟は見させてもらった、十分だ。今回の任務、全員で当たる」
ゆきかぜの静かな返答に、小太郎は頷いた。
彼女の姿は、泣き腫らす幼女のそれではなく、小太郎も納得するほどの覚悟を秘めた対魔忍のそれだったからだ。
「ヨミハラ潜入前に、まずは部隊を二つに分ける。天音、お前は三人を率いて奴隷商人ゾクトを確保。但し、誰にも見られるな。今回の敵が何者かは不明だ。対魔忍、魔族、米連全てを警戒しろ」
「承知致しました。次の定期連絡は明日。幸い、人気のない場所の上に屋内での接触です。そこで確実に捕らえます」
「災禍はオレと来い。今回の件に関わりのありそうな政治家が浮かび上がってる。こっちはそいつを確保して、情報を吐かせる」
「はっ、お任せ下さい」
「現刻をもって状況を開始する。これは独立遊撃部隊の試金石となる任務だ。油断はするな、慢心もするな。各員、各々の役割を確実に遂行しろ」
『――――了解っ!』
こうして、水城 不知火救出作戦が始まった。
ヨミハラの状況も分からず、敵の正体すら見えていない。不知火の状態も不明であり、余りにも過酷で危険な任務である事は間違いない。
しかし、言える事が一つだけ。
(オレの前では神様だろうが全席指定だ。真正面から正々堂々、不意を打ってやろうじゃないか)
ほい、というわけで、不知火ママンヨミハラでピンチ&若様とアサギ思わず錯乱&独立遊撃部隊、真始動! の回でした。
苦労さん「リトルボォォォォォイッ!!」
若様「ぎゃああああああああああ!!!」
アサギ「いやぁぁああぁぁぁああ!!!」
こんな感じですわ。