またランキング乗ってるぅ!? よーし、新しい作品がどしどし出てくるから負けないように頑張るよ! 皆、ありがとナス!
泣きの11連で鶴ちゃんktkr
いや、エロシーンも味わい深くてイイネ! ちょっと壊れちゃってるけど、そういう子を甘く蕩けさせるのは好きです! 月姫の琥珀さんとか、Fateの桜とか。
なお、こっちの鶴ちゃんは同じ目に逢わない模様。でも酷い目には逢う! 悲しいね……
文庫「は????????(圧」
若様「お、オレに言われても……」
文庫「はぁ????????????(圧」
鶴「安心して下さい、御父様。鶴は卑劣な外道には負けません」
文庫「つ、鶴! しかし……」
鶴「それに若様が居ます(期待の眼差し」
文庫「おっ、そうだな(確信」
若様「ちょっと君達?????」
というわけで、若様には苦労して貰いましょうねぇ~~~~~~~~。
では、RPG本編よりも面倒になってる事件を、百倍のスピードで解決する鶴の恩返し編、どぞー!
蛙の子は蛙。鳶が鷹を生む。正しいのはどっちなんだろうね?
佐郷親子を保護してから二週間。
文庫が五車の外で九郎隊と共に迫りくる任務の数々によって悲鳴珍道中を送っている頃、生き地獄へと叩き落した張本人は窶れ果てた表情で歩いていた。
時間は放課後。陽光が傾く中、覚束無い足取りで帰路についていた。
既に無形を使って幽玄と極秘裏に書状でやり取りを行っており、直人閥が佐郷親子に対して力業に訴えれば即座に解体まで持っていけるように蜘蛛の巣の如く策を張り巡らせてある。
しかし、直人も其処まで馬鹿ではないのか、或いは様子見に徹しているのか、今のところ動きはない。小太郎としてはこのまま有耶無耶になってくれても構わなかったが、そうもいかないだろう。
人は一度手に入れたと思ったものを失うことを、尤も惜しく感じる。これは心理実験で証明された歴然とした事実である。直人にとっては当主の座と鶴がそれに当たる。簡単に諦めはしないのは目に見えていた。
ただ、小太郎が窶れている理由は其処ではない。
それはこの二週間で立て続けに入った独立遊撃部隊の任務が原因であった。
任務内容自体はそう難しいものではなかった。ノマドの末端組織の壊滅が五件。囚われた仲間の救出が三件。海外に流出すると情報の入った魔界技術の奪取ないし破壊。
ヨミハラでの大立ち回り、エウリュアレーとの死闘、腐れ害獣どもの尻拭いに比べれば、可愛いものであった。問題があるとするのなら、熟さなければならない数が多い上に、いつものメンバー以外の助っ人が強制参加してきたことだ。
小太郎が望んでもいないのに急遽助っ人参戦する流れとなったのは、やはり面接の影響が大きい。
小太郎自身や面接官を務めたメンバーのところに文句を言いにやってくる、殴り込みに来る程度であれば逃げるなり、部下に任せればよかったが、賢しい者はよりにもよってアサギのところへと直談判に行く者が現れるばかりではなく、各家から圧力をかけてくる始末。
一人動けば三人動く、三人動けば十人が動く、十人動けば――――と、集団心理と民意とは恐ろしいもので、こうなってしまえばアサギも対処のしようがない。
結局、騒ぎ立てる不埒者を納得させるために開かれたのが体験入隊。
独立遊撃部隊の比較的簡単な任務に同行させ、レベルの差を理解させて落選を納得させる。或いは何らかの条件を設け、これを満たせた者を入隊、再面接させるつもりであった。
助っ人達には小太郎の命令は絶対と条件をつけた上でミーティングにも参加させ、あくまで作戦の主体は独立遊撃部隊の面々と説明した上で、いざ実戦――――
『いやぁー、あっはっは! 参ったねこれは!』
『ちょ、ちょっと、誰もアンタの作戦も命令も聞いてないじゃないのよぉ!!』
『小太郎、笑いごとじゃないわよ……!』
『こ、これは流石に……!』
『ははは。いやぁ、もうこれ笑うしかねぇわ。見ろ、これがエウリュアレーん時のお前等の姿だ! 爆笑もんだろ???』
『『『………………い、今は違うから。心入れ替えたから』』』
『あっはっはっはっは! …………はー、おい、獅子神、ちょっと忌神解放しろよ』
『そ、それは流石に……だ、駄目だと。そもそも、何で私が……』
『え? 何となく。駄目? ほら、いいじゃん。はよ。はよ!』
『か、顔が怖――――あ、ちょっと待って! た、たいちょ、ふうま! だめぇ! バイザーが外れちゃうぅ! 本気じゃないのっ!!』
『小太兄、自斎に新しいトラウマ出来ちゃうから止めて』
エウリュアレー襲来の際、矢車という爆弾さえ爆発しなければ、きらら、凜花、自斎の手綱を多少は握れていたにも関わらず、助っ人の面々は作戦も命令も条件もなーんも守っちゃいないのである。
作戦開始と同時に助っ人達は突撃。
小太郎はだろうね、と腹の底から笑い、隊員達は唖然とするばかり。
そればかりか説明されていた作戦を無視して自分が勝手に立てた作戦を進め始めた上に、逆に包囲されて危機に陥るまで至った。
予想はしていたとは言え、余りにも予想通りの悲しい展開に虚無を見た小太郎は、自斎に憑りついた制御できない神様を解放させるべく、力任せにバイザーを外そうとする。
もう自斎の神遁を使おうとしたところに命令無視した助っ人が割って入ってきた、という方向で不快な連中を皆殺しにした上で我々は悪くありませんと言う気満々だった。
これなら、入隊前の独立遊撃部隊の面々の方がまだマシである。
ゆきかぜ達は根本的に突撃志向、力で訴えられたのなら力でやり返せばいいという強者の思考を持っているだけで、相応の説明をすれば話も聞くし、命令にも命懸けで従った。
暴発したきらら達にしたところで、説き伏せた状態までならば命令を無視しなかった。あくまでもタイミングと相手が悪かっただけだ。
それに対してこの惨状よ。
小太郎も良い所を見せようとする気持ちは理解できた。より良い作戦があるのなら其方を実行したくなる気持ちも理解できる。
隊長である己を舐め腐っているからこそ、結果さえ出せばどうとでもなる、という体験入隊の意図を全く意図していない破綻した理屈の下に行動しているのも理解できた。
だが、踏むべき手順、熟さなければならない過程をすっ飛ばすのはどういう理屈なのか。
過程と結果はワンセット。小太郎は過程がお粗末であれば、どれだけ結果が良くとも酷評する。逆に過程が良ければ、どんな結果であっても一定の評価はする。
しかし、過程も結果も暗澹たるものならば、どうすればいいのか分からない。きらら達のように言葉で諭す真似すら出来なかった。
まあ、それでも耐えた。不満の殺到具合はアサギでも処理しきれない状態であったのは分かっていたし、アサギの立場が悪くなれば小太郎も引き摺られて酷い目に逢うのが分かっていたから。
一件目から既に面倒になっていたが、二件目三件目も同じ結果になってもまだ耐えた。四件目五件目でもビキビキしながらもまだ耐えた。
期待していたわけではない。諦めていたからだ。対魔忍は脳筋などではない。もっと悍ましい何かだ、と。しかし、迎えた七件目の任務で爆発。
ついに作戦の内容すら聞かなくなっていた助っ人どもの不意をついて忍法を使わせる暇もなくボコボコに殴り倒したのである。
これには任務に同行していた凜子と紅も頭を抱えたものの、助っ人達の余りの酷さと小太郎が半泣きになっていたので止めることさえ出来なかった。任務は三人だけできっちりと始末をつけた。
その件以後、助っ人参戦はなくなった。
小太郎がアサギに泣きついたのではなく、次に同じ事が起これば今度は助っ人達を皆殺しにしかねなかったからだ。
そんなこんなで今にまで至るのだが、アサギから完全NGが出されたにも拘わらず、ワンチャンすらない奴等がしつこく付き纏ってくるわ、独立遊撃部隊の内情を知りたい老害どもはチクチクと突いてくるわ。
小太郎のメンタル的な疲労と苛立ち、殺意は全く衰えることを知らない。
加えて言えば、今回振られた任務は妙な点が多かった。
小太郎は作戦の内容を事前に外へと漏らさない。元々持ち前の猜疑心から作戦内容が外に漏られた際の危険性を考慮し、アサギにさえ人員は兎も角として作戦の内容は明かさない。アサギもまた水城夫妻、親子を狙った淫魔王の策謀と魔の手は政府内部にまで伸びているのを考慮及び小太郎への全幅の信頼しているから納得していた。
しかし、どうにも今回の任務、作戦へと参加する人員が漏れていた節がある。
それは襲撃する敵が、独立遊撃部隊の隊員に対する対抗策をそれぞれ用意していたからだ。
無論、とても万全とは言い難い。
凜子の空遁、紅の人魔合一は米連の科学力や魔界技術でも対抗することすら困難である。
しかし、比較的対抗し易いゆきかぜの雷遁への対電及び対電磁波装備、自斎の神遁が視界が発動のキーを知っているかのような光学迷彩装備、きららの冷気に対応する強化外骨格と凍結予防処置、凜花の煙遁の弱点である氷結を可能とする場所と兵器、紫の不死身の肉体を無力化する毒物。
無論、小太郎が情け容赦なく鍛え、魔改造を繰り返している面々だ。その場凌ぎのような
ただ、いずれもが作戦投入人員を知っていなければ、此処まで多彩な対抗措置を用意しておける筈がないのも事実。
作戦投入される人員を知った政府関係者か、或いは対魔忍内部に情報を漏らしている輩が居ると見て間違いない。
或る意味において助っ人などよりも遥かに不愉快な連中が蠢いている、その事実に――――
「許さねぇ、絶対に許さねぇ……殺してやる……殺してやるぞ、桐生 佐馬人……!」
『オレっ!?』
ヘイトを溜めているのは政府関係者や対魔忍の一部の筈なのに、殺意を向けられているのは全く関係のない桐生ちゃん。空の彼方で驚いている彼が見えるかのようだ。
対魔忍は仮にも仲間。命令違反程度で粛清する訳にもいかない。と言うよりも命令違反で粛清していたらあっと言う間に組織としての体を保てなくなる。
その点、桐生は捕虜という扱いなのでその限りではない。技術面で有用かつ持ち前の不死性で殺すのが手間だから放置されているに過ぎない。小太郎が勢い余って殺してもテヘペロで許されるラインなので選ばれた。
殺せなかったとしても、如何せん不死である。ストレス解消をする相手には丁度いいとも言える。最悪、代わりとして姉の方を引き摺ってくる手もある。桐生の命は何処までも軽く、サンドバッグよりも扱いが悪かった。
これは小太郎の高度なヘイト管理。
手を出したくても出せない相手に向けるのではなく、手を出しても構わない相手に存在しない記憶を作り出して、頭の中で経緯を捏造した挙句にヘイトの向ける方向を操作する。別名を八つ当たりとも言う。
「ねぇ、君がふうまくん?」
「………………」
その時、桐生へと並々ならぬ殺意を向けて道を行く小太郎の前に、一人の学生が現れた。
紅いネクタイに、紺のスカートと黒いタイツ。御洒落のつもりだろうか、シャツの右胸には肉球のアップリケが縫い付けられている。間違いなく、五車学園に通う生徒の一人だろう。
ショートボブの金髪に透き通るような碧眼。すっと伸びる鼻梁に柳眉。百人が見れば百人とも美人と答えるであろう上級生。
しかし、小太郎の表情は険しい。
美人など見慣れている。タイプも性格も選り取り見取りなほど周囲に揃っている。美人に話し掛けられたからと上機嫌になることも赤面することもない。
寧ろ、警戒心が高まっていくタイプ。眉間に何重にも皺が寄るのも仕方あるまい。
「僕は穂稀 なお。僕は君を殺したいと思っているんだ」
「ああそうかよ勝手にしろ馬鹿がッ!!!!」
「えっ」
初対面の人間から向けられるにしては余りにも剣呑な科白であったが、小太郎は一歩も止まることなくなおの隣を通り過ぎていく。
普通の人間であれば殺したいと言われれば、動揺するだろう。
荒事に慣れ切った対魔忍であれば眉を顰めて理由を問うか、やってみろと逆に挑発するだろう。
だが小太郎は違った。
元々機嫌が悪かったことに加え、彼にしてみれば言動から何から相手にするどころか会話をするのも馬鹿馬鹿しい。
何を理由に殺したいのかは全く分からないが、心当たりは無数にある。
弾正や骸佐の反乱の責を現当主である小太郎に求めているかもしれない。或いは何らかの任務で恥でも掻かせたか。それとも人には明かせないあれやこれやで被害を及ぼしたのやもしれぬ。
命を狙われる理由があり過ぎて、相手側を調査するか説明されなければ逆に特定が出来ないほど。
だが、小太郎にはどうでもいいことだ。何時、何処で、誰に、どんな理由で殺されようが何の文句もなく、全ての覚悟を済ませている。寧ろ、その程度の覚悟なく手を汚すのも、誰か殺すのも、小太郎にしてみれば狂気の沙汰である。
だからなおの殺したい対象の目の前で殺意を宣誓するような馬鹿な真似は不愉快極まる行為であった。
殺したいのなら、すぐにでも殺せばいいだけ。殺す根拠と許される理由があるのならば、迷わず実行した方が効率的。なのにどうして、対象の警戒心を上げるのか。
舐めやがって。やりたきゃやりゃあいいだろうが。そもそも本気で殺す気あんのか。馬鹿かよ。死ねよ。
そんな事を考えながら、あらゆる許容範囲を超えていた小太郎はそれ以上相手にすることなく足早に去っていこうとする。
その様になおは唖然とした表情をしていたが、去っていく背中に慌てて追い掛ける。
「ちょ、ちょっと待ちなよ。ねぇ、普通は其処で何かを察するとか、そうでなくても聞き返すだろうに、君はなに――――――あっ、ちょ、逃げた! 足早っ! ちょ、待てーーーー!!!」
想定していなかった自体に狼狽するなおであったが、小太郎は全く取り合わない。
初手から“君を殺したい”などと宣う者とはまともな会話になりもしない。何らかの別の目的があったとしても、脅迫紛い、力に物を言わせぬやり方しか知らない輩など相手にするだけ時間の無駄。
そう割り切った小太郎は宣言した通りに好きにしろと駆け出した。なおも食い下がる先輩を完全に無視し、完全無欠の全力疾走に移行する。
逃げると決めた小太郎の逃げ足は対魔忍において最速。
足に自信があるわけでもなく、アサギのような加速できる異能を持っていないなおに追いつける筈もないのであった。
―――――
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―――
――
―
厄介者以外の何者でもない先輩にウザ絡みされた翌日。二度と顔を合わせたくもない小太郎は帰宅の時間をズラすことにした。
放課後、教室で時間を潰していては穂稀と名乗った先輩が殴り込みをかけてきかねない。かと言って、独立遊撃部隊の本部にいてもあの勢いだ、同じ結果にしかならない。
よって久方ぶりに図書館で本を読んでいた。五車学園に蔵書されているものは全て読破済み。読書というよりも頭の中の記憶と本の上に書かれた事実の整合性を取る作業に近かった。
それでも単なる時間潰しにならず、有意義な時間に出来たのは、やり始めたら手を抜きたくても手を抜けない性分のお陰だろう。
遠く山の間に消えていく太陽は地平線付近を赤く染め上げ、空の頂点には暗い青の中で星が瞬いて薄暗い。
ボンヤリと廊下を歩いていた小太郎はやがて下駄箱へと辿り着き、上履きを脱ぐよりも早く足を止めた。
玄関口から差し込む西日で表情までは分からなかったが、誰かが立っていたからだ。
影のシルエットは直立不動のスカート姿。余りの不動振りに一般人なら何らかの怪異か幽霊と思ったかもしれない。
しかし、影は小太郎の姿を確認すると動き出して人であることを示し、小太郎もまた影の正体を察して動き出す。
「ご無沙汰しております、若様」
「オレをまだ若と呼ぶかね」
絵になるほどの御辞儀をして見せたのは夕陽に染められる長い銀髪を手の込んだシニヨンにして纏めた制服姿の少女。
最早、若様などと呼ぶほどの縁など何処にもなく、敬意など払う必要性がないにも関わらず礼儀を忘れない彼女に、小太郎は靴を履き替えながら苦笑した。
彼女の名は佐郷 鶴。佐郷 文庫の愛娘だ。
これまで顔を合わせたのは片手で数えられる程度でしかなく、それもふうま弾正の起こした反乱以前の話。
それがわざわざ顔を出すなど、理由は一つしかない。
先日、九郎隊にドナドナ、もとい出荷、ではなく文庫を推薦した件と父娘を永久に保護させた件についてだ。
その場に居なかった鶴ではあるが、父である文庫から事のあらましは聞いていたのだろう。
流石の文庫も経緯を口にしないまま、今日から見ず知らずの女性の家に住むからと言って娘の納得を得られよう筈もない。全てを包み隠さず、とはいかずとも最低限の説明は必要だ。
とは言え、鶴はそれ以上の言葉を口にはせず、頭を深々と下げたまま微動だにしない。
鶴も自らの立場を弁えており、噂や文庫による親の贔屓目を差し引いても聡明であった。
これまで不干渉であったのは互いの身を守るため。今回の件に関しても“九郎隊への推薦”を、“九郎隊からの指名”という形にわざわざ変えたのも、周囲からの視線を考慮して、と察するのは難しくあるまい。
故に、礼の言葉は口にせず、挨拶だけに留めていた。
どれだけ感謝や恩を感じていようとも、何処に目があり耳があるのか分からない状態では小太郎の回した気遣いが全て台無しになりかねない。
だからせめて、久方振りに顔を合わせたかつての主君筋への挨拶に感謝の思いを込めて頭を下げるだけしか出来ない。
5分10分も過ぎた頃、鶴はようやく頭を上げる。
顔に刻まれたやや寂しげな笑みは母の遺した信念であり、今や佐郷家の家訓となった“仇は倍返し、恩は百倍返し”を実行できぬ不甲斐なさ故だろう。
「独立遊撃部隊や若様御自身の噂は兼ねがね。御健勝なようで何よりです」
「そりゃどうも。そっちの方も元気そうだ」
「ええ、二週間前まではその日の食事にも困る有様でしたが、父が入隊してからは何の問題もなく」
「ふーん、良かったじゃん。で、それだけ?」
「いえ、少しお話を。申し訳ありませんが、お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
「まあ、別にいいけど……」
「ありがとうございます!」
小太郎の考えていた通り、鶴が伝えてきた近況は分かり易かったが重要な部分を口にしてはいない。
傍目から見れば久し振りにあった親戚の挨拶。鶴や小太郎の動向を探ろうとする者も、不審は覚えても確証までは得られまい。
一人の人間としては言うに及ばず、対魔忍としても両親の教育が行き届いている様に小太郎は満足気に頷いた。
学生対魔忍は教育と経験の浅さ故に婉曲に物を伝え、察する術を知らない。敵に此方の意図を隠しながら味方に意思を伝える、或いは察することがまるで出来ていない。お陰で馬鹿正直に意見を伝えて手の内をバラす結果に繋がり、露骨な耳打ちで不審を買って危機に陥るなど日常茶飯事である。
その点、鶴との会話に不安はない。自身と味方の立場や状況を俯瞰的に把握した上で、共有する情報からでのみ辿り着ける範囲に言葉を絞っている。これならば、戦闘任務ばかりではなく潜入でも問題なくやっていけるだろう。
しかし、小太郎の顔は不意に歪む。急激に会話の雲行きが怪しくなってきたからだ。
事実はどうあれ、表向きには永久が佐郷親子の境遇を哀れんで小太郎の与り知らぬところで勝手に助けた体を取っている。
挨拶程度であれば周囲も珍しいと考えるか、疑惑を抱える程度で済むものの、距離が近くなればなるほどに小太郎の関与を疑う確率は高くなる。
他家から余計な詮索をされては面倒である以上、現状互いの距離は離れていた方が良いのは疑う余地はない。
にも拘らず、鶴の方から積極的に近づくような真似をしている。
小太郎としてはバレたところで問題がないわけではないが、それほど痛手ではない。万が一に備え、身を守る術も周囲を納得させるだけの言い訳も既に用意してある。
寧ろ、困るのは佐郷親子の方だ。たった二人しかいない佐郷家では身を守るのも精一杯。元ふうまから何故お前達だけと嫉妬を向けられれば、今以上に余計な孤立が生まれかねない。
目まぐるしい変化を見せた生活の中では何の備えも出来ていないだろうに、リスクを侵してまで近付いてくる理由は何なのか。
自身を陥れようとする悪意は感じない。在るのは敬意と感謝だけ。
このまま蹴ってもよかったが、これ以上付き纏われても面倒と考えた小太郎は嫌々ながらも鶴の願いを聞き届けることにした。
やや不安げだった鶴は了承の返事を聞くと、明るい笑みを浮かべた。
礼を述べると昇降口の扉を開き、小太郎が先に出るように促す。目上の人間に対する行いのつもりなのか、男に対する行いのつもりなのか。
両親の教育が非常に厳格であったのが伺えると同時に、教育の内容そのものが現代からやや遡行しているのは否めなかった。
小太郎は気を良くするでも悪くするでもなく呆れ気味。
秘書の災禍、執事の天音、侍女の永久もよくやる行為ではあるが、基本的に自分の事は自分でやるべきと感じている小太郎にとっては日常で行うには過剰にしか映らない。
それでも当人がやりたいのならお好きなように、と何も言わずに校舎から一歩外に出た瞬間――――
(視線が四つ……いや、五つか。しかし何だ、この妙な気配……)
肌に突き刺さる幾つかの視線を感じ取った。
五つの内二つは肌を焼くようなジリジリとしたもの。内一つは粘ついた情念を感じさせるもの。最後の二つは――――
いずれに関しても歓迎すべきものではない。
視線を感じる理由は無数にあり、特定は出来ない。即座に危険に繋がるような殺意はどの視線にも込められてはいないが、見られている事実自体が小太郎にとっては不利益に繋がり、不快極まりない。
とは言え、視線の大部分は小太郎自身に何か目的があるのではなく、鶴へだろう。百田家直人閥からも目を付けられ、当人の見目も器量も良い以上は付き纏う輩が一人や二人いてもおかしくはない。
鶴は視線には気付いていない様子。
一先ずは完全に無視しておく。視線の主を探るなら、鶴の話を聞いた後。油断しきったところを捕まえるなり逆に後を追うなりすればいい。
「失礼致します」
「それで、話って?」
「実は、
男の隣を歩くことすら非礼と考えているのか、鶴は一言断ってから隣に並ぶ。
校門へと続く道をゆるゆるとした速度で歩きながら、切り出したのは友人の話。
大抵、相談として振られる友人の話は実は当人の話、というパターンが多いが、どうやら鶴のそれは本当に友人の話であった。
小太郎が真実友人の話だと断定できたのは、鶴は何処か特定の部隊に属していないのを知っていたからだ。
鶴の友人は五車風紀隊の隊長であるようだ。
五車風紀隊は風紀の名が示す通り、主要な任務は五車の治安を維持すること。軍隊では憲兵に当たり、五車内での犯罪者に対して逮捕権を有している。
五車風紀隊はいくつかの部隊に分かれており、それぞれが独自に事件を調査しており、鶴の友人はそうした小部隊の隊長らしい。
「それで?」
「友人には父が五車にいない間、厄介になっておりまして。今回はその御恩返しを、と」
「ほーん」
「その折、友人が何やら悩んでいる様子。聞いてみれば、五車で起こった事件解決に行き詰っているようで……」
「ふ、ふーん」
「私も話を聞いてみましたが、生憎と力にはなれそうになく、そこで……」
「オレも力になれそうにないから帰るね――!」
「あぁっ、若様お待ちになってください――!」
この話の流れ。どう考えても己も巻き込まれる、と判断した小太郎は即座に逃走へと舵を切る。
冗談ではなかった。
小太郎と独立遊撃部隊は名を上げ、注目されてはいるが新参も新参。他部隊にしてみれば目障りな後追いに過ぎない。そんな中で他部隊の仕事に首を突っ込めばどうなるか。
ただでさえ対魔忍は無駄にプライドが高く、部隊長や隊員となれば実績も重ねて更にプライドは高く積まれる。そんな人物達の領分に我が物顔で足を踏み入れれば、どう考えても無駄な小言とやっかみが待っているではないか。
堪らずに地を蹴った小太郎に対し、鶴もある程度を予想していたのか、すぐさま後を追い掛けてくる。
一度逃走を選択した小太郎に迷いはない。
後で、どうして娘から逃げたのですか? 若様、聞いておられますか? 若様? と面倒な親御さんに絡まれるのは目に見えていたが、それでも精々二、三時間我慢をすればいいだけ。
此処で頼みを聞き入れてしまった場合、風紀隊が解決できない事件を解決するため、確実は数日は時間を取られる。
ただでさえ、仕事が多過ぎて面接で選んだ独立遊撃部隊の新人達と顔合わせすら済んでいないと言うのに、どちらを選んでもこれ以上の時間を取られるならば、前者の方が比較的ダメージは少なくて済む。
コタローは激怒した。
必ず、かの千辛万苦の苦労から逃げねばならぬと決意した。
コタローには“苦労は買ってでもしろ”などという言葉は分からぬ。コタローは対魔忍の苦労人である。無辜の民を喰い物とする屑を陥れ、無関心に殺してきた。故に自身に襲い掛かる苦労には、人一倍に敏感であった。
「――――やあ、また会ったね、ふうまくん」
しかし、その逃避行を邪魔する者が校門の影から現れた。
現れたのは昨日、小太郎を殺したいとウザ絡みしてきた挙句、歯牙にもかけられることなく逃げられた穂稀 なおともう一人。
誰の目も引く美人であるなおとは対照的に、もう一人は右目を髪で隠した何処か影の薄い美少女であった。
よくよく見ればハッとするような美少女ではあるのだが、不思議と目を引かない。存在感がそもそも視界に入らないのだろう。一緒にファミレスへ入っても、何故か彼女にだけ水を配膳されないタイプと言えば分かり易いか。
もう一人の少女は兎も角として、青筋を立てたなおを前にすれば流石に小太郎も足を止めざるを得ない。
先日、余りにも無体な袖のされ方をされれば、誰とて怒り狂おう。例えそれが、自身の発言によって招いた事態だとしても。何せなおもまた対魔忍。感情に任せて逃げて見せた背中から撃たれかねない。
前門のなおと謎の影薄美少女、後門の鶴に挟まれ、ようやく小太郎は自身が
神通力染みた人物評価、先読みが出来る小太郎とて、何も思考が透けて見えているわけでも読めている訳ではない。それらはあくまでも所作や言動からその人物の生活や好み、人生を想定まで想定し尽くす人間観察という技能から齎されるものであり、決して読心術の類ではない以上、読み切れない思考というものがある。
(つ、つまり……!)
追い詰められた小太郎は、にこにことした笑顔で背後に立つ鶴へと鋭い視線を飛ばす。
鶴の狙いはこうだろう。
現状のまま家訓である恩返しを小太郎に決行してしまえば周囲に対する説明が付かず、不審不興を買ってしまい、折角の気遣いと恩情を無下にしかねない。
ならば、全くの別件――――それこそ鶴自身の身から出た錆でなく、あくまでも仲介しただけの問題を解決して貰うのはどうか。
佐郷家と関係ない第三者の問題を持ち込む程度であれば、周囲も不審に思われども、不興には至らない。
最近名を上げてきた小太郎に、かつての縁がある故に頼っても不思議ではない、と思われるだけだ。
これが文庫であれば反乱だ何だと余計な介入を招いたかもしれないが、小太郎も鶴も一代下った世代。また親子揃って骸佐の反乱に一切加担していないと証明されている以上、文句は出ようとも無視しても構わないレベルに留まるだろう。
後は小太郎に問題を解決して貰うだけ。
そうなれば、恩を返すという大義名分が出来上がる。その時に、今回の件と親子共々救って貰った件をまとめて恩を返せばいい。
なおは難事件を解決できる。鶴は恩返しが出来る。小太郎は恩を百倍で返されてウハウハ。正に一石三鳥、win-win-winの関係となるだろう。
(なるほど完璧な作戦っスねーーーっ! オレが苦労するという点に目をつぶればよぉ~!!(涙目)
そう、鶴の作戦はその過程で小太郎が背負わなければならない苦労を何一つ考慮していないのである!
御父様に聞き、鶴も見た若様の聡明さ、知的さならばこの程度の事件、苦労には成り得ません! と思っているのか。
苦労をさせてしまうかもしれないのは百も承知。しかし……しかし! 鶴が必ずや百倍返し、いえ、御父様の件も含めて二百倍に! いえいえ、百×百で万倍返ししてみせましょう! と意気込んでいるのか。
いずれにせよ鶴は頭は良いのだろうが、彼女もまた立派な対魔忍だ。
根拠のない自信に満ち溢れている。ただ、恩を返すという覚悟がガン決まっているだけまだマシか。土壇場になっても泣き言など漏らさないであろうし、裏切る心配だけはない。
そしてこの絶対御恩奉公モンスター振りよ。また幼年期を文庫の背中を見て育った事を鑑みても、天音・文庫に並ぶファミキチであろう。
ただでさえ、絶対に対魔忍の頭領させるからなと張り切っている最強無敵対小太郎でだけ知略が冴え渡るアサギだの、ハーレムを広げようとする会長を嬉々としてやってるエンジョイ勢のゆきかぜだの、弾正の名前を聞いただけで弾正絶対殺すウーマンと化す災禍だの、自分を罵られても平気な顔してる癖に家族認定した者を罵ろうものならば狂犬と化すファミキチ天音だの、存在そのものがヤベー奴すぎる永久だの、キャラが余りにも濃すぎる集団に囲まれている。勘弁して貰いたい。
(だが甘い。甘いぞ鶴! 我に秘策在り。そちらの穂稀という変態を先に差し向けたのは失敗だったようだなぁ――――!)
しかし、小太郎はまだ諦めない。
もう、喋る羆(何故喋れるのか桐生ですら分からない)という唯一無二の存在である筈の球磨ですら霞むほど、ふうま宗家及び独立遊撃部隊の一部は濃縮還元されたみたいなキャラの濃さをしているのに、これ以上濃くしてどうすると言うのか。
必死極まる小太郎は、内心で邪笑を浮かべた。
彼の考えた秘策。人として最低極まる作戦、その名は――――
「あ、オレの事、殺したいとか言ってた人だー」
「は????????」
「ちょっ!??」
「はぁ?????????????????」
「誰、この人っ……誰っ……ねぇっ! 誰なの……!? 怖いよぉ……!!」
「なおくん? どういうことですか?」
「い、いや、あの、それはね鶴ちゃん、言葉の綾と言うか、彼を引き込むための方便というか、ね……? き、君もやめなよ! ちゃんと名前は言ったじゃないか!」
「 ど う い う こ と で す か ? ? ? ? ? ? ? 」
「ヒェッ」
(ぶへへへへへ、ざまねぇなぁ風紀隊の変態隊長さんよぉ! 勝った! 鶴の恩返し編完ッ!)
友情破壊作戦!
古くはドカポンなどの友情破壊ゲームに端を発し、ゲーム内での一方的な蹂躙、エゲつない妨害、強力無比なコンボ連発から負けず嫌いもあってリアルファイトに発展する様に見立てた由緒正しい外道作戦である!(大嘘)
今回は鶴となおの人柄を利用した。
鶴が恩人の身を害するような真似を示唆する言葉でさえ許す筈はなく、なおもなおで鶴の恩人に向かって殺したいなどと宣ったなどわざわざ言う筈もない。
何も知らなかった鶴がキレ散らかし、鶴の性質を友人としてよく知っているなおは顔を引き攣らせながら諫めようと必死であった。
リアルファイト一歩手前。
恐らくは、もう数十秒も立てば、鶴がなおを一方的に蹂躙する悲惨な展開となるが、知ったこっちゃねー小太郎はほくそ笑みながらなおの脇をそそくさと抜けていく。
「(逃げちゃだめ)」
「なん……だと……!?」
しかし、友人同士のリアルファイトに発展しかねない状況を前にして、なおと共に現れた美少女は冷静だった。
鶴となおと共に現れたということは、この美少女もまた二人にとって共通の友人だろう。此処まで冷静であれば、よく暴走する二人のブレーキ役と言った所か。
やたらとか細い、蚊が鳴くような声で言うと、小太郎の服の裾を掴んで離さない。流石は対魔忍、どう見ても女の細腕でしかないのに万力のような握力で掴んできていた。まるで運命が小太郎を逃さぬように――――
ほーお、それで次回からは誰がふうま 小太郎の代わりを務めるというのかね? まさか、穂稀 なおのわけではあるまいな? 彼では不可能だ! さあ、もっと苦労を! もっと悲鳴を! もっと絶叫を! 目も眩むような人間賛歌を見せてくれ!
――――とでも言っているかのようだった。
最早、逃げ道はない。
全てを悟った小太郎はガックリと項垂れ、滂沱の涙を流す。
鼻水も涎も出し放題の流し放題。まるっきり小学生低学年の泣き方に、思わず服の裾を掴んでいた美少女も心配するほどであった。
「(そ、そんなに、嫌、だった、の?)」
「鶴の恩返し編、始まりまぁぁぁぁああああぁぁぁすっっっっっ!!!!!!!」
「(ビクッ)」
ふうま 小太郎の嘆き、そして一連の事件開始を告げる咆哮が、夕暮れの五車へと響き渡る。
風紀隊と鶴、小太郎が挑むは五車内部で起きる連続殺人事件。
闇に紛れ、身勝手な理屈を並べ立て、身勝手な欲望に浸る殺人鬼を中心に数多の思惑が交錯する綾模様の果てに、何が待ち受けるのか。
ただ一つ、確実に言えることは、ふうま 小太郎は苦労する。それだけであった。
という訳で、鶴の恩返し編スタートです。
殺人鬼編と銘打たなかったのは、そっち主体にするほどでもないので。劣化吉良吉影になんぞスポット当てないんじゃ。
問題なのは中の人と内調関係だけど、さてRPG本編の方で変な設定生えないように祈る日々が始まるお!
何とかなりそうだったら設定を落とし込む! 無理だったら放置、独自設定を貫くのであしからず。