対魔忍RPG 苦労人爆裂記   作:HK416

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無事に覚醒紅と若不知火さんを引いて終了。
性能良し! エロも良し! しかし、不知火さんのイチャラブはいつ見れるの……?


ゆきかぜ「じゃけん、こっちで純愛しましょうねぇ~~~~~~」
若様(未亡人とは言えこれはNTRと変わらない感じになるのでは……?)


というわけで鶴の恩返し編、第三話。自分を賢いと思い込んでいる殺人鬼を追い詰めていくRTAスタートォ!!




殺人鬼が捕まらなかった理由? 殺人鬼が頭が良かったわけではない。捕まえられる奴がその気になっていなかっただけ

 

 

 

 

「本当に来てくれたね」

「そりゃやると言った以上は来ますよ」

「(ありがとう、助かる……でも……)」

「あら、龍造寺先輩」

「あれ、佐郷じゃん。お前、風紀隊、じゃなかったよな?」

 

 

 五車で起きる連続殺人鬼を風紀隊のなお率いる一隊と独立遊撃部隊の合同捜査が決まった翌日。

 全ての授業が終わった放課後。予定通りに一同は校門の前へと集まっていた。

 

 しかし、昨日は居なかった面子がいた。

 なおはムっとした表情で、孤路は首を傾げながら小太郎の連れてきた少年を目にし、鶴と少年はお互いに笑みを浮かべて言葉を交わしている。

 

 

「あ? お前等、知り合いだったか?」

「何だ、ふう、じゃなかった、若の事だから知ってるかと思った。ほらオレ、去年美化委員だったじゃん。佐郷はそん時の委員会とか清掃活動で一緒になってさ」

「その節は、大変にお世話になりまして」

「お世話かぁ。オレはどっちかって言うとされてた方だと思うけど。ほら、細かいところに気が回らないし」

「いえいえ、龍造寺先輩の気配りは大変素晴らしいかと。清掃活動も皆がやる気のない中積極的に参加し、声を掛けておられましたし」

「どうしよう若、この子オレのこと褒めることしかしない!」

「大体誰にでもこんなもんだよ、コイツは。それにお前も基本褒めるとこしかない」

 

 

 小太郎が連れてきたのは、龍造寺 雅臣だった。

 捜査、という点に関して言えば、無数の精霊や妖怪の力を借りられる日影がベストであったが、生憎と別任務で五車を離れており不在。

 他の女性陣はとある理由で今回の捜査に呼ぶ訳にはいかなかった故に不参加。最後に残ったのは雅臣と球磨であったが、球磨は目立ち過ぎるが故に雅臣に白羽の矢が立った次第である。

 

 雅臣と鶴が顔見知りであるとは小太郎も知らなかったらしく、親し気な様子に目を丸くしていた。

 

 二人が知り合ったのは去年、クラスの美化委員を引き受けた折。互いにふうまの関係者だとは知らずに居たようだ。

 温和で人当たりの良い鶴と生粋の根明で善人の雅臣のこと、相性が悪い筈もない。と言うよりも雅臣と鶴自身の性格が良過ぎて、相性の悪い人間の方が少なかろう。

 

 五車学園の学生は、基本的に通常の学生と変わらない生活を送る。無論、委員会活動に関しても同様。生徒会委員もいれば、クラス委員長に風紀委員もいる、他にも保健委員や図書委員もいる。

 そして、委員会への取り組み方も全く同じ。やる気のある者はやる気があるが、ない者には全くない。委員になっているだけで、活動に参加しない者もいるところまで同じ。そういった所は対魔忍も変わらない。

 二人は性格上、自ら進んで委員になるであろうし、活動にも積極的に参加する。委員会が同じであれば、先輩後輩として良好な関係を築いていたとしても何ら不思議はなかった。

 

 

「ちょっとふうまくん、ボクは何も聞いてないんだけど?」

「そりゃまあ。昼休みも顔合わせてないし、資料も手渡しされただけ。言いたくても言えないでしょ」

「むぐっ。そ、それはそうかもしれないけど、君ねぇ」

 

 

 何も聞いていなかったなおは何処までも不満気だ。

 協力を要請したのは事実ではあるが、認めていない人間が増えるのを好ましく思うタイプでもない。寧ろ、邪魔だと思うタイプだ。

 積み上げてきたプライド故に高飛車で居丈高。其処にさえ目を瞑れば間違いなく優秀かつ善良な部類に入るのだろうが、大抵の人間は嫌な性格にしか見えないだろう。

 

 

「コイツを呼んだのはオレの護衛ですよ。万が一の護衛」

「それはボク達だけじゃ万が一、殺人鬼に襲われたら勝てないという意味かい? 大体、彼は一般上がりだろう? 役に立つとは思えないね」

 

 

 あくまでも小太郎は、風紀隊の実力に不安があるのではなく、自分の力量不足で危険に晒されるのを避けるため。

 ふうまの当主として家と関係のないところで勝手に死ぬ訳にはいかないと伝えていたが、それが更になおの不満を加速させた。

 

 小太郎は本気で風紀隊を頼りないとは思っていない。殺人鬼の使う能力は未だ不明であるが、自分と風紀隊で勝てない可能性は捨てきれずとも、最低限逃げ切れるだけの余裕はあると踏んでいる。

 そもそも正体が判明しそうになって焦った殺人鬼が襲ってきたとしても、正体が掴めた時点で自陣営一人でも逃げきれれば勝ちは確定。正体が知れ渡れば五車から逃げねばならず、それ以上の犠牲は増えなくなる。後は追い忍部隊なりに追わせればいいだけ。

 雅臣を呼んだのは、要らぬ犠牲を増やさぬために過ぎない。小太郎の見立てでは、殺人鬼に上位魔族クラスの実力はない。それだけの実力があれば、もっと派手にやらかしているだろう。

 自身の実力を客観視しながら影に潜む手法は厄介ではあるが、それも自らの欲求との折り合いが付かなくなってきているからこその浅井の一件。その程度の輩であれば、雅臣が居れば殺人鬼が如何なる能力を行使しようとも、誰の犠牲も無しに収めることも視野に入れられるだけだ。

 

 しかし、人間関係は錯誤と誤解に満ちている。

 聞いていない人員の投入を、なおは侮られていると受け取っていた。

 

 どうやら声を掛ける以前に小太郎や独立遊撃部隊、ふうま宗家に関しては一通り調べがついているらしい。

 鶴からの提案を受け入れこそしたが納得をしていなかった以上、人柄や実績、能力については調べるのは寧ろ当然。

 その過程で小太郎の近しい人物の能力に関しても目を通し、雅臣が忍法を使えぬ身であり、対魔忍の家系ではない一般上がりだと知ったのだろう。

 これがルーキーとして名高いゆきかぜや凜花、凜子、様々な意味で有名人の紅を連れてきたのならまだマシであったろうが、よりにもよって無名かつ無能力の人間を連れてきてはなおとしても面白くはない。

 殺人鬼の起こした事件を軽く見ているとも取れるし、同時に無能力の人間を頼りにするなどなお達風紀隊を馬鹿にしているようにも受け取れてしまう。

 

 こればかりはなおの性格や考え方にだけ問題があるわけではない。

 雅臣に実力を隠すように指示したのは他ならぬ小太郎自身であり、昨日の犠牲者側にも問題があると極論を展開したことが悪い方向に働いていた。

 面倒臭さに嘆息しそうな小太郎であった、より事態が面倒な方向に転がり出すのを避けるために何とか堪え、どう説明したものか、と思案し始めたが、先に口を開いたのは孤路と鶴であった。

 

 

「(なおちゃん、先輩とふうまくんに凄く失礼)」

「そうですよ。若様も龍造寺先輩も好意で来てくださっているというのに。それに昨日、先輩への口の利き方を説いたのにその態度は何ですか。舌の根も乾かぬ内に自分がそれでは敬われるはずありません」

「うぐぐっ。ふうまくんはきちんとボクの言う事を聞いてるじゃないか!」

「まー、使いたくて使ってる訳じゃないし、正直そこまで敬ってない。これ以上絡まれるのが面倒なだけなんで」

「ふうまくん、君って奴はー!」

 

 

 なおの上から目線の言動と態度に、孤路と鶴は白い目を向けて小太郎と雅臣の肩を持つ。

 親友二人の言葉は全き正論。小太郎にせよ、雅臣にせよ、本来は事件に関係のない部外者。そもそも捜査に参加する責任は何処にもない。正式にアサギから合同捜査をするように命は下ったものの、それさえも小太郎が互いの立場を守るために御膳立てしたに過ぎない。

 

 口撃と正論の集中砲火を浴びせられるなおは苦し紛れに、表向きは従順な態度を取っていた小太郎を引き合いに出すものの、後ろから思い切り刺されていた。

 

 

「(そういうところは直した方がいい)」

「そうですよ、なおくん」

「うぶぶ、頬を(つつ)かないでよ! 可愛くなくなっちゃうじゃないか!」

「ハハ、仲良いなぁ。ま、捜査に関しちゃマジで素人以前だからさ。邪魔しないように気を付けるよ」

「あんだけ言われてそう返せる辺り、マジで善人だよ、お前」

「いや事実だし。これくらい普通じゃない?」

 

 

 左頬を孤路が、右頬を鶴が。

 それぞれ人差し指で突かれたなおは必死の抵抗を見せるものの、払い除ける度に二人の指が伸びて何の意味も為していない。

 突かれて頬の潰れたなおの顔は“ぶちゃいく”と言った感じで、最近流行りのブサ可愛いと言えて愛らしい。まるっきり揶揄われる女子学生にしか見えない。だが男だ。

 

 

「と、兎に角、邪魔だけはし……ないで下さいよね!」

「分かってる分かってる。オレがしゃしゃるよりもそっちと若に任した方が絶対いいし。それに……」

「(それに?)」

「……殺人鬼に殺されたのはオレが顔も知らない人だけどさ。オレにとっては同じ重さの死なんだ。やってることの趣味が悪過ぎんだよ」

 

 

 ピリ、と尋常ではない怒気が雅臣から漏れ出し、風紀隊と鶴は息を呑んだ。

 

 彼が対魔忍となったのは、己の全てを奪われた後。

 死霊騎士が屍の王に捧げるためだけに彼の生まれ育った街一つ、数にして千人以上もの命を奪ったことも、殺人鬼が身勝手な理由で殺人を犯すのも同じこと。

 残された者の痛み、被害者の苦しみと悲しみを知るからこその言葉と怒り。尤も、彼はそれを知らなかったとしても、同じ言葉を口にしたかもしれないが。

 

 

(この人は誰かのために本気で怒れるのか)

「故人を悼むのは縁のある奴だけの特権だ。オレ達が立ち入るのは御門違いも甚だしい。余計な気負いは邪魔なだけだ」

「あたっ。若のそういうとこ、オレどうかと思うよぉ?」

「そういう形に生まれ落ちたんだから仕方がない。そういうのは外付けのお前等に適度に任せると決めてんだよ。そら、行くぞ」

 

 

 自分以外の他人を思い、正しい怒りを抱く姿は尊さすらある。

 全ては雅臣の優しさから生まれるもの。なおと孤路は素直に驚きと感心で迎え入れ、少なからず彼を知る鶴は称賛するように微笑んでいた。

 

 その中で小太郎だけは怒りを解放するのも滲ませることすらまだ早い、と雅臣の後頭部を(はた)く。それだけで雅臣は平時の態度を取り戻していた。

 小太郎が望んで引き入れただけあって、両者の関係も相性も良好であった。小太郎の目も覆いたくなるような冷酷さ、雅臣の抑えきれぬ激情のブレーキ役として、互いに機能し合っている。

 元々の女好きも相俟って、彼の周囲は女性ばかり。数が少ない男性同士だからか、日影と啓治も含めた男衆は極めて仲がいい。互いに足りぬ部分を補い合うだけでなく、女性の前では出せないような話題も、出来ないような馬鹿な真似もしてきたからだろう。

 

 

「では、予定通り浅井家に?」

「そうだ。浅井以前の事件は一番新しいものでも半年前。記憶から何から完全に風化しちまってるだろうしな」

「現場検証の資料は渡しただろう? 風紀隊(ボク達)も信用がないね。まあ、話を聞いて貰えなかった君からしてみれば当然か」

「勘違いしないで下さいよ。オレは誰も信用しちゃいない。それに資料に目を通したけど、科学捜査がされてない。精々やっていて指紋の採取ぐらいじゃないですか」

「捜査に向いてる忍法を使える人が揃ってるからね。科学捜査の必要がないよ。コロちゃんだってその一人さ」

「(私の忍法は魂遁。死体とか強い残留思念を読み取れる。他にも色々いるよ?)」

 

 

 今日の予定は浅井家で起きた殺人事件の再検証。

 それ以前の事件は時間が経過していて、新しい証言も証拠も得られない。

 加えて言えば、小太郎が目に通した資料は風紀隊に所属する捜査に適した忍法持ちが得た情報を基に作成されており、科学捜査の類が為されていなかった。

 

 確かに、忍法は現実に起こり得ない事態、知り得ない情報を得られる。

 孤路の生まれ持った魂遁などが最たるものだろう。応用範囲が広く、死体から霊魂、死した後もその場に留まる強い残留思念を読み取る事が可能。彼女一人が居れば、大抵の事件は時間をかけずに解決できてしまう。

 だが、決して万能でもなければ、穴がないわけではなく、一概に科学捜査が劣るとも言い難い。

 

 

「へー、そりゃ凄い。だが忍法から得た情報なんて所詮は主観に添って再構築された情報であって事実じゃない。ようは科学捜査と違って毎回毎回精度に差が生まれて予断や誤認に繋がる」

「疑い過ぎじゃないのかな? いくらなんでも風紀隊を馬鹿にし過ぎだよ。これまでだってそれで犯人を捕らえてきた」

「これまでそうだったと、これからどうなるか、は全く別の話ッスよ」

「(うーん…………私の魂遁も、死んだ人が勘違いしていたら、そのまま私も勘違いするしかないかも)」 

「確かにそうですね……」

「うっ……そう言われると弱いな」

 

 

 忍法は本来は受け取れない情報、或いは読み取れない情報を得られる利点がある。しかし、一度術者の頭を通す故に出力の仕方が術者頼りとなり、また解釈も術者に委ねられてしまう欠点がある。

 

 この辺りは、災禍の持つ邪眼の欠点に似る。

 災禍の邪眼は対象の脳と視界をジャックし、あくまでも災禍自身の見せたい光景を見せるのみ。それは災禍の見ている世界や光景しか見せられないのと同義。

 視覚に何らかの障害を抱えた人間の世界の見え方など同じ障害を抱えた人間にしか分からず、精神異常や麻薬で壊れた人間が同じような世界を見ているとは限らない。邪眼が通用しない可能性は非常に高い。

 

 今まで何の疑問も抱かずに頼ってきた忍法であるが、小太郎が与えた些細な切欠で孤路もなおも同じ結論に至ったらしく、忍法による捜査の脆弱さに気付いたようだ。

 流石に優秀ではあった。これが他の対魔忍であれば、自身の才能を過信しすぎて聞く耳など持たないだろう。

 

 

「科学捜査も忍法も利点と欠点が違う。それぞれ補い合えるなら両方使った方が良い。事象は多角的な視点で初めて正確な形を捉えられる。今後、科学捜査方面を強化することをお勧めしますよ。誤認逮捕しました、ごめんなさいじゃ許されんでしょ」

「そ、そうは言ってもだよ? ボクも孤路ちゃんだってそういうのは疎いわけだし……」

「手間だがそっちの総隊長か校長に相談した方がいい。政府と繋がりがあるんだ、知識に関しては警察の定年退職者やら現役に時間を作って貰えばいい。道具に関しちゃ装備課に掛け合えばいいだけッスよ。そもそもどいつもこいつも忍法が便利だからって頼り過ぎだ」

「忍法の使えない君らしい発想だね」

 

(ねぇ、この子さぁ、全方位に喧嘩売ってんの???)

(驚いたことにそんなつもりは毛頭ないみたいね。でも言葉の選び方が悪過ぎてもうお笑い種だろ?)

(うへぇ……流石のオレでもどうかと思うわ……佐郷の顔も怖くなってるしさぁ……)

(もうオレは昨日からコイツの言動が面白過ぎて内心ずっと爆笑してるわ)

 

 

 小太郎の言葉が尤もだと認めつつ、締めの言葉がそれでは馬鹿にしているのも同義だった。

 ただ一言、分かった、或いは検討するよ、とでも言っておけばいいものの、無意識に軋轢を生むような発言を呼吸をするようにする。

 受け取りようによっては、忍法を使えない小太郎や雅臣を馬鹿にするばかりではなく、科学捜査まで軽視しているようにさえ聞こえる。頭への入力は正しく行われているのに、口から出力される言葉が本人も気づかぬ内に可笑しな変換が為されていた。

 

 その様に孤路は呆れ顔、鶴などなおの見えないところで般若の形相である。

 雅臣も小太郎も気にしてはいない。忍法を使えないと馬鹿にされることなど慣れっこ。その一点に劣っているのは事実は事実。

 されども、それを無意識にやっているなど他者に気を遣う雅臣にしてみれば信じられず、相手が相手なら言葉を選ぶ小太郎にしてみれば呆れを通り越して面白くなっていた。

 

 

「なおくん? お説教です……」

「え? なんで!?」

「(鶴ちゃん、やっちゃって)」

「孤路ちゃんも?! どうして?!」

「若さぁ……こんな大事件の捜査の割に、やたらと人数少ないのってさぁ……」

「まず間違いなく穂稀パイセンのせいでしょうねぇ。こんなのに付いてける奴、この二人以外にいんの?」

「鬼崎とかみたいにプライド高いのも、井川みたいに敢えてキツいこと言ってるのもいいけどさぁ、これはちょっと、純粋に穂稀の将来が心配……」

「ぶへへへへへへへへへへ!」

「なに笑ってるのさふうまくん! 助けてよっ!」

 

 

 学園から浅井家までも決して短くない道中。

 なおはひたすら鶴から説教を受け、それを横目で見ていた孤路と雅臣はずっと呆れ顔。

 小太郎は小太郎でなおの無様な姿に爆笑し続けた。もう、このやらねばならない厄介事をヤケクソ気味に楽しむと決めた様子であった。

 

 しかし――――

 

 

(視線の数は相変わらずだが、イキリ金髪野郎の視線が減って、別の誰かの視線が増えたな。百田の監視か、さて……)

 

 

 ――――その異常な猜疑心に些かの陰りもなかった。 

 

 

 

 

 

―――――

――――

―――

――

 

 

 

 

 

 五車の町外れ。五車学園から歩いて三十分ほどの位置。住宅がひしめき合う地区に目的の浅井家はあった。

 辿り着いた浅井家は、井河の上忍に位置するだけあって立派な家構え。

 家の周囲を囲む白い塀に、正面の門は見上げるほどに大きい。門を超えると石畳が家の玄関まで続いており、塀と家屋の間には庭が広がっている。

 誰もが考える裕福な旧家を絵に描いたようであったが、生活する家族(もの)がいなくなった以上、ハリボテと何ら大差はない。

 

 

「此処が事件現場だよ」

「見た感じ。広いけど普通な感じだなぁ……いや、静か過ぎ……っ」

「兎に角、中に入って調べ――――」

「(待って)」

「なおくん、構えて」

「どうしたん……これはっ!」

 

 

 小太郎を先頭に切妻屋根の棟門を抜ける。

 その瞬間に小太郎と雅臣は足を止め、孤路が静止の声を上げた。いずれの行動も同じ理由。

 

 小太郎は既に感づいていながら無視している気配の主が悪意を以て行動を開始したのを感じ取り、雅臣は敵が現れたのを察知していた。鍛え抜いた鋭敏な五感によるものだ。

 対し、孤路も己の忍法で敵の存在を感知した。死者の魂であろうと生者の魂であろうと痕跡は残る。彼女が捉えたのはそれだった。

 

 僅かに遅れて鶴が気付き、なおが気付いたのは変化が訪れてからだった。

 

 

(泥遁、か。今まで静観、今も監視はしているが、このタイミングで、か。なら増えた視線が殺人鬼――と判断するのは早計だな。それにこの忍法じゃ、色々と()()()()()()()

(分身を作る感じ、だよな? 数は多いけど、動きが鈍い。なら……)

 

 

 処理限界を超えた雨水が道路に溢れ出すように、目の前に広がる芝や石畳の下から泥が溢れ出す。

 物理法則に従って周囲に広がらず、あらゆる法則から外れて周囲ではなく上へと伸びていく。

 

 やがて泥は人間のような形を取っていた。

 目もなければ耳もなく、鼻もなければ口もない。短い手足に突き出た下腹。あまりにも不出来な人の似姿。その数およそ三十数体。

 なおを筆頭とした三名はその数を前にして恐れはない。このタイミングで仕掛けてくるなど殺人鬼を置いて他にはいまい。己と仲間の危機ではあるが、同時に殺人鬼の正体に迫る好機。否応なしに戦意は上がっていく。

 

 小太郎と雅臣は既に戦力と戦況を分析していた。

 

 戦いを仕掛けようとしている相手が泥の分身体を複数操る忍法を持っていることは間違いない。其処で重要となってくるのは射程距離。

 分身相手にいくら戦った所で意味がない。相手が忍法を行使できなくなるまで粘る方法もあるが効率は悪い。最も単純な攻略法は分身を操っている術者を叩く事。雅臣は日影との戦闘訓練によって、それを学んでいた。

 泥分身の動きはぎこちなく精彩さに欠けてる。其処からの推測ではあるが、日影の式神のように各自の思考を持っているようなタイプではなく、術者が操り人形のように操作し続ける完全手動型。

 術者は確実に近場の何処かに隠れ潜んでいる。分身から術者に向けて何らかの形で情報を送る、或いは感覚を共有する忍法もあるにはあるが、それにしては動きがぎこちなさ過ぎた。

 

 ならば――――小太郎は知識から、雅臣は経験から似たような思考を経て、出した結論は同じ。 

 

 

分身(コイツら)はオレが()る。本体(そっち)は頼む」

「オレ達で本体を捕らえる。何か異論は?」

「(龍造寺先輩は大丈夫?)」

「この程度なら問題ない。雅臣、本気でやらなくていい。術者らしい気配は近くにある。流すつもりで時間を稼げ」

「応っ!」

「はぁ!? どう考えても、忍法を使えない先輩だけじゃ無理だよ!」

「――――ふっ!」

(((は、速い……っ!)))

 

 

 然したる意思疎通を見せず雅臣は自らの役割を理解し、小太郎もまた他に指示を出す。

 今回は風紀隊が主体の任務。しかし、雅臣は小太郎の護衛として来ている以上、小太郎以外の命令を聞く必要はなく、小太郎は主体でこそなかったが五車外での任務が多い独立遊撃部隊の方が戦闘経験、指揮経験は勝ると判断して臨時で指揮権を握るだけの理由はあると判断。

 

 そんな中、なおだけが反発を見せた。

 ただなおも意味もなく反発しているわけではなく、純粋に雅臣の身を案じたが故。

 高貴なる者の使命(ノブリスオブリージュ)とでも言うべきか。穂稀家の家訓か、両親の教育か、個人的に至った思想なのかは別として、なおの心に根付いているのは、強者は弱者を守るべきという傲慢でこそあるが、だからと言って責められるでもない理屈。

 残る二人も身を案じていないわけではない。反発こそしないものの、不安げである。忍法を使えないというハンデは、使える者からしてみれば埋めようのない差。三者の反応は至極当然のものであった。

 

 しかし、小太郎も雅臣もそれ以上言葉を重ねない。説得力とは言葉から生じるものではなく、確たる事実と行動によって生み出されるものと知っていたからだ。

 

 雅臣は途轍もなく力強くありながら、同時に余りにも静謐な踏み込みで分身の群がる庭の中央へと飛び込んだ。

 目で追えぬほどの速さと空気に揺らぎすら生まない卓越した歩法。それは同じく小太郎の家臣である無形から言葉によって、任務を共にした際、視界の隅に捉えた影を真似てのもの。

 雅臣自身からしても無形と比すれば子供騙し、猿真似と大差のない児戯。されど、彼の生まれ持った天性の肉体と格闘センスによって繰り出されれば、縮地にも似た結果を生む。

 

 一瞬、姿を見失った三人が次の瞬間に見たのは、雅臣が踏み込みの速度と体重を乗せた右ストレートを分身の顔面目掛けて直撃(クリティカルヒット)させている光景。

 

 成す術なく右の孤拳を喰らった分身の頭部が、何の比喩もなくこの世から消滅していた。

 一撃の余りの重さと速度に泥は後方へと吹き飛ばされ、返り血ならぬ返り泥すら雅臣の身体どころか拳一つ汚せない。

 

 だが、所詮は分身。術者が無事な限り、どれだけ倒しても意味がない。

 

 

(やっぱ再生するよな。なら、狙いは顔じゃなくて胴体(ボディ)。一撃でなるべく大きくの部分を吹っ飛ばして再生時間をちっとでも伸ばす――!)

 

 

 目の前で再生を始めるている一体と四方八方から殺到する残りの人形を前にして、雅臣は己の役割を熟す上で必要な行動を見据えていた。

 分身を完全に破壊する必要はない。どの道、どれだけ破壊しようとも次々に新しい分身が生み出されるだけ。ならば、破壊しないギリギリのラインに留めておいた方が足止めの効果は大きい。

 新たな分身を作り出されてしまっては小太郎達に狙いを返る恐れがある。再生に留めさせることで的を己に絞らせた方がいい。

 雅臣はお世辞にも成績が良いとは言い難いが、馬鹿でも間抜けでもない。知識そのものを詰め込むのが苦手なだけで頭の回転は速く、戦闘用の思考は小太郎を筆頭としたふうま宗家の面々に叩き込まれている。敵の足止め、囮役としての最適解を選択していた。

 

 雅臣の身体能力と格闘能力に唖然とする三人を余所に、小太郎は浅井家を取り囲む塀の上に飛び乗り、泥遁使いと思しき気配へと塀伝いに向かう。

 呆気に取られていながら逸早く己を取り戻した孤路が僅かに遅れて、そして鶴、なおの順で後に続いていた。

 

 

「ちょっと、一番弱い君が先行しないでよ!」

「(本当にこっち?)」

「直に分かるでしょ。それよか気配が逃げ始めた」

「来ました、確定です」

 

 

 後に続いてはいるものの、孤路もなおも半信半疑。

 小太郎の言葉を本気で信じているのは鶴だけであったが、彼女にもまた信じるだけの論拠がない。ただ、小太郎に対する感謝から成る盲目の信頼があるだけであった。

 

 しかし、塀の上に新たな泥分身が二体現れたことで、全ての疑問に対する回答が示された。

 此処で泥分身を立ち塞がらせるのは他でもない、逃走の時間を稼ぐため。少なくとも小太郎の察知した気配が泥遁使いのものであると確定したも同然だ。

 

 足止めの分身などと戦って時間を無駄にするつもりのない小太郎は後ろを走っていた孤路の襟首を掴み、そのまま塀から浅井家脇の道へと飛び降りた。

 

 

「(きゃっ)」

「大丈夫?」

「(ド、ドキドキ)」

「ドキドキすんのは勝手だけどさ、さっさと自分の足で走ってくんねぇかなぁ」

「(むぅっ)」

 

 

 小太郎の突然の行動に対応しきれずにバランスを崩した孤路は、小さい悲鳴を上げて塀から落下する。

 ある程度は予測していた小太郎は空中で孤路を抱きかかえると、音もなくアスファルトの地面へ着地し、そのまま走り出す。

 孤路の抱え方は右手で背中を、左手を膝に手を回したお姫様抱っこ。当初から小太郎に好意的に接していた孤路は、付き合いは短くとも恥じらいと照れから赤面してしまっていた。

 それほど親しくない女性にするのは勿論の事、返した言葉も不躾そのもの。ロマンスもなければ面白みのない小太郎に頬を膨らませた。

 

 余裕のある態度であるが、それを見逃すほど分身は甘くない。

 術師本体に近付けば近付くほどに分身を操る精度も上がるのか、塀の上で立ち塞がった二体の分身は、小太郎と孤路の後を追うように即座に跳躍していた。

 

 

「バルドル、行っけぇ!」

「――――機遁・最期巖」

 

 

 だが、その好機を逃すなおと鶴ではなく、小太郎と孤路は襲い来る分身に視線を向けてさえいない。

 

 なおは制服の下に纏っていた赤と白を基調とし、猫を思わせる耳のヘッドセットと尻尾の付いた対魔忍装束を露わにしており、片手には大型の銃器を構えていた。

 彼の忍法は光遁。端的にその忍法を説明するのならば、光を集束させて放つ忍法である。手にしたバトルライフル“バルドル”は夜間や光の届かない場でも問題なく忍法を使用するため光を貯めておく専用装備。

 

 対する鶴は制服姿のままであったが、鞄の中から何らかの金属の塊を取り出していた。

 彼女の忍法は機遁。無機物から何らかの機巧を生成して使用する忍法。金属は硬度など忘れたかのように彼女の腕に巻き付いて肘まで覆い、銃へと変化する。内部に生成されたのはなおの“バルドル”を模した集光と射出を成す機構。

 

 両者が引き金を引くと同時に、眩い二条の光が分身を貫く。

 射程5m圏内であれば、鋼鉄ですら容易く溶かす光線(レーザー)は、文字通りに分身を一片残らず蒸発させてのける。

 

 

「ふうまくん、見ていたかい? これがボクの実力だよ」

「みてたみてた」

「若様、ご覧頂けましたか?」

「すごいすごい。で、どう?」

「(うん、確かに浅井の御屋敷で感じたのと一緒。すぐ其処の家を左に曲がったらいる)」

 

 

 なおの向けてくるドヤ顔も鶴の向けてくる期待の眼差しも軽く受け流し、小太郎は走りながら地面に下ろした孤路に問う。

 指示されるまでもなく孤路は自らの魂遁を使い、魂そのものが移動した痕跡を辿っていた。返ってきたのは想定していた通りの言葉。

 誰も住んでいない家に立ち入る者など居る筈もなく、攻撃が開始された場所で確認された魂の気配と同一ならば、逃げる気配の正体が泥遁の使い手であると確定したも同然。孤路の言葉でようやく納得したのか、なおはドヤ顔を消して表情を引き締めた。

 

 見えてきた家の角を曲がる直前、小太郎は五車学園に通う生徒に教えられているハンドサインで指示を出す。

 

 刀を背負った孤路が先陣を切り、小太郎がそれに続く。

 二人の援護をなおが担当し、分身による強襲に備えて鶴が三人の背中を守る布陣。

 

 なおは勝手に指示を出すな、とでも言いたげな顔であったが、親友二人は黙って頷き、自身も小太郎以上の指示を出せなかった故に不承不承ながらも頷いた。

 

 孤路が指示に従い、背中の刀に手を掛けたまま身を低く、泥遁の使い手が待ち構えているか逃げている最中であろう道へと曲がり――――

 

 

「(あ、あれ?)」

「逃げられた? いくらなんでも早過ぎるよ!」

 

 

 ――――その先には、人の影一つない。

 

 道の先には家と家が数百m先まで連なっており、全てが塀で囲われている。塀と塀の隙間には人が入り込む余地はなく、精々通れるのは猫くらいだろう。

 そのまま走って逃げたにしては驚異的な速度、塀を飛び越えて逃げたにしては家の中から声は上がっていない。まるで煙のように忽然と消えてしまった。

 

 戦いを予感していた孤路は肩透かしを喰らい、なおはまんまと逃げられたと悲鳴にも似た声を上げる。

 念の為まだ後方を警戒していた鶴を余所に小太郎は周囲を見回して、ある一点に目を引かれた。

 

 

「いや、走って逃げた訳じゃないみたいだ」

「側溝の蓋が、それに泥も…………まさか、自らの身を泥に変えて?」

「泥遁の“泥太夫”だな。泥の人形を操って、自分の身体を泥に出来る忍法は他にない。射程は精々30mくらいかな。なら、雅臣の方も人形は崩れてるか。うーん、なかなか良い忍法を持ってるじゃないか」

 

 

 小太郎が見咎めたのは塀の直ぐ下にあった側溝。

 側溝の前にしゃがみ込んだ彼の視線の先には、一ヵ所だけ蓋が取り外されており、その周辺は泥で汚れている。 

 

 泥遁“泥太夫”は泥を操るのみならず、煙遁のように自らの一部、或いは全身を泥へと変化させて攻撃を無効化する無敵の忍法。

 しかし、煙遁と比べて肉体の泥化の難易度が低い。その理由は心臓だけは泥化できず、核として残るからだ。明確な核を必要としないままの肉体の転化は元に戻れなくなる危険性がどうしようもなく付いて回るものなのだ。

 

 

「舐めてくれるじゃないか……!」

「(どうかしたの、ふうまくん? もしかして、名探偵としての直感で何か……?)」

「どうしてオレを名探偵にさせたがるかなぁ。探偵物、好きなの?」

「(大好き。凄く面白い)」

「孤路ちゃん、面白がっている場合じゃないんですよ?」

「(大丈夫。それはそれ、これはこれ。殺人鬼のやってることは許せない)」

 

 

 なおの憤りを余所に側溝の前にしゃがみ込んだまま動かない小太郎へ、孤路は子供が憧れに向けるようなキラキラとした視線を送っていたが、当人はうんざりとした表情のまま。

 名探偵になど興味関心もなければ、面倒事に巻き込まれるような職業や役割になりたくもない小太郎にしてみれば当然であった。

 

 完全に危険は退けたと判断した鶴は右手の銃を元の金属塊に戻すと、はしゃいでいるようにしか見えない孤路に呆れ気味に諫めていた。

 だが、孤路ははしゃいでこそいるものの、瞳に灯る義憤の炎は失われていない。彼女とて、自ら望んで風紀隊に属している。正義感も使命感もなおに劣るものではなかった。

 

 

(今の泥遁使い、殺人鬼じゃねぇな。てことは協力者の方か。今まであった視線も全部消えちまったし、見るべきものは見たってことか)

 

 

 なおは勿論の事、孤路や鶴でさえも、今の襲撃してきた泥遁使いが殺人鬼と断定しているようであったが、小太郎の見解は違っていた。

 

 そもそも小太郎は殺人鬼が単独犯とは思っていない。

 その理由はこれまで23人、浅井家の一件を含めれば26人もの対魔忍が殺されながら、何の証拠も証言も見つかっていない事。

 いくら何でも、五車という狭い地域でこれだけ人を殺しておいて、風紀隊による調査が杜撰だったからと言って、何一つ不審な証言や証拠が見つからないのは殺人鬼にとって余りにも都合が良過ぎる話。

 殺人鬼がどれほど優れた能力と頭脳、忍法を持っていたとしても、風紀隊が無能の集まりだと仮定しても、まず在り得ない。何らかの行動を起こせば何某かの証拠は必ず残り、完全に人目を避けるのは不可能。

 となれば、複数の殺人鬼が協力して殺人を犯しているでないにせよ、殺人に協力している何者かが居ると考えた方が自然だ。

 

 何よりも、風紀隊と鶴と合流した時から感じていた三つの視線は泥遁使いが逃走したと同時に消失した点は大きい。

 そもそも泥遁使いが殺人鬼であるならば、攻撃を仕掛けてきたのは何故か。新たな証拠を発見されたくなかったからか、ならば中途半端に逃げるのは何故か。不利な状況に陥ったからにしても、戦力的に不利だったにしても必死さが足りなすぎる。殺人鬼は正体が露見した時点で負けが確定する。ならば一度攻撃を仕掛けた以上は皆殺しにするまで戦うべき。状況的に逃走した泥遁使いが殺人鬼である可能性は低い。

 そして、三つあった視線の一つが泥遁使いの視線とするのなら、残る二つが同時に消えた理由は何か。どう考えても、事件を追っていた風紀隊以外の面々の戦力を測っていたからだ。

 泥遁使いの逃げの姿勢は不本意な戦闘を殺人鬼に迫られたか脅されたか故。当て馬にされていると理解しているに違いない。

 視線が消えたのは戦力の測定が終わったからだろう。ならば、本命は二つの視線の方。

 

 

(馬鹿だな。やること成すこと半端過ぎる。正体を隠して巧くやってるつもりなんだろうが、お蔭さんでこっちは正体を絞る情報がわんさか手に入る。楽ができていいね。その調子でどんどん墓穴掘りまくってくれ)

 

 

 まだハッキリとした姿形を捉えられていない小太郎ではあったが、殺人鬼自身の行いによって正体は輪郭を帯び始めている。そして、殺人鬼の性格も。

 

 声もなく誰にも見られる事もなく笑みを浮かべた小太郎は名探偵と言うよりも、寧ろ――――

 

 

「鴨だな」

「(何か言った?)」

「いや別に。仕掛けてきた相手が逃げてくれたなら、さっさと調べに戻ろう。雅臣も待ってるし。邪魔しにきたつもりにしろ、挑発しにきたつもりにしろ、動きがあった以上は浅井家に何かあるのは確かだ」

「そう、ですね。よくよく考えれば、今の相手も殺人鬼とは限らないわけですし」

「事件の関係者に留めておくべきだろうな」

「それよりもふうまくん。君ね、勝手に指示するのは辞めて貰えないかな。ボクはまだ君を認めたわけじゃないんだ」

「な・お・く・ん?」

「(なおちゃんは意地っ張り)」

「い、いひゃい、いひゃいらないかぁ~~~~~~~~」

 

 

 小太郎の呟きは、先程の笑みと同じく誰に届くこともなく消え去った。

 

 相変わらず自身に突っかかってくるなおには呆れ気味であったが、見るに見かねて鶴と孤路が両サイドから頬を引っ張っていた。

 なおも二人の制裁に抵抗をしない辺り、小太郎の働きを認めてはいるのだろう。しかし、一度意固地な態度を取ってしまった故に引っ込みが付かなくなっているようだ。

 

 小太郎は思わず破顔していた。

 頬を引っ張られて端正な顔立ちが面白可笑しいことになっているからなのか。はたまた幼馴染トリオの仲の良さ故だったのか。それは彼にしか分からないことだった。

 

 

 

 

 

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