『俺の妹ときたら....』のスピンオフ? 作品です。
少々粗っぽい展開で公式の設定と異なる処があるかと思います。御了承下さい。

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『妹きた』外伝・まきスズ番外地! あの方ときたら....

「・・・・それでですわよ!? お兄様、聞いて下さいまし!?」

 

「はぁ....」

 

 

もう30分は聞かされていますけど、愚痴話....て何でここにいるのこの御嬢様? ここは俺ん家、しかも岐阜だよ?

鎌倉と京都、或いは全国を飛び回るほど忙しいはずのこの御方がなんでこんな田舎にまで来て、しかもほとんど無関係のこのオレにグチをカマしにくるわけ?

いや、全く無関係というわけでは無い。この御方、可奈美の先輩に当たるわけでもあるのだし、学校は違うけど。いや上司か? 十代なのに。

 

 

 

「・・・・まったくあの方ときたら・・・・!」

 

 

 

ああさっきからこればっか・・・・聞かされるコッチの身にもなってケレ。しかもこの方も、『あの方』としか言ってない様な....まあだいたい判るけど。

 

 

 

「・・・・そしたらあの方、何て仰言ったと思います?

『ボクとキミはもう対等のパートナーじゃないか。なにをそんなに勝ち負けに拘るんだい? ボクはキミを高く買っているんだ』

ですって! あの勝ち逃げオンナ....未だに公式戦であの方から一本も取れずにいる私シの気持ちなど知る由もなくヌケヌケと....ク〜ッ!!

どう思われますっ!? お兄様!」

 

「ハア、何なら個人で試合したらどうです....兎に角一回でも勝ちたいのでしょう? ヒマな時に二人きりでもどうです....?」

 

「ハア!? 二人きりですって!? イヤよそんな....お兄様のハレンチ!!」

 

「おおオレじゃなくて! 『あの方』と....!」

 

「!....わわわかっておりますわ!! 『あの方』とですよね! と、当然ぢゃありませんの!!」

 

この動揺は....俺とのではなく、『あの方』と二人きり、てのが原因なの? はぁ、なんでこんな話に付き合わされてんだろ。

 

 

 

 

 

『お久し振りです。お兄様。京都から鎌倉へ戻る途中でふと可奈美さんの近況でもお知らせしようと思いまして。これ、どうぞ! 地元の銘菓店の新作ですの』

 

 

 

 

こうして渡されたのは『新食感! ミントエキスを練り込んだ生八つ橋チョコクリームサンド!クラッカー入り!!』・・・・つい興味を持って目の前で摘まんでしまったのが運の尽き....こうして延々と『あの方』についての愚痴を聞かされるハメになり今に至る....いや、最初は可奈美と『愉快な妹達』についての他愛のない近況報告だったのだが....

 

 

 

 

「いくら紫様がカップ焼そばが好物といっても! 執務室で紫様と一緒に召し上がることはないじゃ無いですか! 食堂では体裁が悪いからといって....しかも生姜やニンニクの練りチューブを持ち込んでカップ焼そばに混ぜ込んでですわよ! もう匂いが部屋中に....ここは政府高官も出入する重要な部屋なのですのに! もう信じられませんわ!!」

 

いやオレに言われても....ほう、あの紫様がねえ。重症を負って局長を退任、今は長期療養中とのことだけど、

 

「じゃあ今は病室でカップ麺こしらえて食べてるかもですね」

 

「そう! そうなのです!! 入院中はあれ程自重する様に、とお医者様からもクギを刺されておりますのに! 『あの方』ときたら....コッソリ病室に持ち込んで....いくら紫様の密命だからといって....!

どう思われますっ!? お兄様!!」

 

冗談で言ったのに....ドンピシャだった。お陰で益々この御嬢様のおネツがヒートアップ....

 

 

 

 

 

 

 

 

この話題の二人、かつては刀剣類管理局局長『折神紫』の警護を司る親衛隊の第一席・二席という、組織の中でもトップクラスの重要人物であり、今では荒魂討伐の前衛を担当する特別遊撃隊というこれまたトップクラスのポストを歴任するというエリート中のエリートなのだ。

俺の前に居られますのがそのNO.2。本来ならオレの様な一般市民には縁もゆかりもない存在なのだが、可奈美のあの一件で交友を持つようになり....つまりは、この御嬢様、これまでに二度も美濃関の俺の家に上がり込み愚痴を零しにくるという....ナンデ? 俺に気でもあるの? なんて冗談口に出すと又面倒な事になりそうなのでこのままなのだが....

 

 

「それなら、三人で仲良くカップ麺食べたらいいんじゃないの? 可奈美も俺と食べてると楽しそうだけど」

 

「わたくしが!? ....ま、そう、そうですわね....『あの方』が誠心誠意、その無茶な御願いを私シにして下さるのなら、考えない事もありませんわ....フン!」

 

 

ああ、ツンデレラさん、素直だねえ。一緒に食べたいんじゃないの。もっとも、『あの方』を前にしてもこうなんだろうけど。『あの方』、気付いてないのかな?

 

 

 

「それにしましても、あの方とはつくづく腐れ縁で御座いますわ....」

 

ああこれ、長くなるヤツですわ。

 

「あの頃のあの方は、今のあの方とは似ても似つかぬヤサグレ女でしたわ....!」

 

おお! 『あの方』の意外な過去か? これには興味がそそられる。手短にどうぞ....!

 

 

 

 

 

 

「そう、あの方との出逢いは・・・・「ウンウン!」・・・・最悪でしたわ」

 

声が急に沈む....コワイデスワ。

 

 

 

 

 

 

 

「私シの母校、京都の綾小路武芸学舎はお隣の県にある平城学館との間に武芸の交流が在りまして、私シは中等部二年の時、綾小路の代表として平城側との交流試合に臨みましたの。場所は平城の格技場、試合の開始時間、平城側の対戦相手は誰も居ませんでしたわ....」

 

 

いきなりボイコット? その時の『あの方』は?

 

 

「平城学館の学長さんがわざわざ謝りに来て下さって、今日の試合は明日へ持ち越し、という事で手を打ちましたわ。(御嬢様、手打ちと云うのはヤーサン用語では....)

この後私達は校内の宿泊施設へ案内され、明日に備えて休憩を取ることにしたのです。そうしてたら外の方から騒ぎ声が....」

 

 

ナニゴトデスノ?

 

 

「この校内に巣組む不良達が木刀で喧嘩をしておりましたの」

 

 

木刀で!? てこの学校、女子校だったんじゃ無いのっ!?

 

 

「流石腐っても剣客の卵達、荒削りでも手を抜いて撃ち合って居る様ではありませんでしたわ」

 

 

それって○○未遂になるんじゃないの....? なんちゅう女子校だ....

 

 

「その中に....一際目立つ女子生徒がおりましたの。背も高く、大柄で、長い腕をブンブンと振り回し乍ら木刀を振い....品性疑われる事この上なしでしたわ」

 

 

はあ・・・・

 

 

「その大柄女が一方に加勢してから数分で勝敗が付きましたの。教師達が集まり出してくる前に大柄女のグループはトンズラを決め込んで一目散に散り去ってしまいましたわ。手慣れたものですわね」

 

 

いつの時代の不良だよ....

 

 

「次の日、試合の為格技場へと赴いたら、何と云う事....あの大柄女が平城代表の一人として目の前にいるじゃないですか! 我が目を疑いましたわ!!」

 

 

なるほど、ドラマの様な展開、オイラの好物です。

 

 

「人員は五対五....平城の他の四人はあの不良女子とは違って真面目で精悍でしたわ。ただ、面白味もない....模範的な剣を振るう優等生でしたわね」

 

 

「ほう、なぜその中にあの不良が?」

 

 

「学長命令でしたの。実は昨日のあの喧嘩、不良と優等生との決闘騒ぎでしたのね。

試合時間のまえ、些細な事から口論になって、最初は校外の空き地での決闘でしたのが、校内の不良達にも波及してあの様な事に。

で校外での決闘を終らせたあの大柄女が校内での喧嘩に加勢して、あの様なザマに....バツとして平城の代表として出場セヨ、との事でしたわ」

 

 

罰なら停学か放校でしょう....確かそこの学長さん、お袋の....可奈美の事で三度ほど美濃関の学長さんと一緒にウチに来て経過を報告してくれたっけ。二十年前の、お袋との事も....とてもヤンワリオットリとした学長さんの様だったのに....この分野の方々はよく分からん。

 

 

「試合は一対一、多く勝った学校が勝ち。で、籤引き。私シ、籤運は良い方でしたのに....」

 

 

成る程ナルホド、よくある展開ですな。

 

 

「そう、私シ達は最終組、そして、これ迄の勝敗は二対二....」

 

 

おお、いやが上にも盛り上がるこの大舞台!学校の格技場だけど....

 

 

「....あの大柄女が上がって来た....横柄に....小柄な私シを見下す様に....このオンナ....まあ、見ていらして....! この鞍馬流九字兼定!! この御刀に選ばれし私シの技と実力....得と御覧に為されるがいいですわっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「チョチョチョッ一寸!! ここで刀を振るわないで! アブナイ!!」

「・・・・あら・・・・っ! 私シとした事が?! ....御免遊ばせ!!」

 

 

立ち上がって刀を抜こうと....思った以上に激情家か? 怒らす事言うのやめとこ....

 

 

「コホ....まあ、この試合、私シの一振りで決着が着きましたの」

 

「はあ、一振りで、ですか?」

 

「相手の手首を斬り落としてハイお仕舞い。呆気なかったですわね」

 

 

斬り落として....『写シ』という技は可奈美ので見た事はあるが斬り合いまでは....ホントに大丈夫なの?

 

 

「....あの時のあの大柄女の悔しそうな事....『今度こそアンタの胴体をブッタ斬ってやる! 覚えておけ!!』ですって。

溜飲が降りましたわ」

 

 

物騒だね....『写シ』を使えばブッタ斬られても死にはしないというが、ナマで観たくない....

 

 

「それから半年、私シは中等部の三年に、そして綾小路の代表として鎌倉の全国大会に出向く事になりましたの!

努力の甲斐がありましたわ....

で、鎌倉の会場に着いたとき、何やら一人の女性を囲んで大勢が、遠巻きに....何事かと私シも覗いて観たところ、何と云う....至る所煤けて裾が解けている平城の制服を着た女子学生が居りましたの。あの大柄女ですわ! もう一人の生徒....同じ学校の代表の女子学生は至って普通の身嗜みですが、あのオンナ....鎌倉を、この大会を何だと思ってらっしゃるの....!」

 

 

「ええと....平城ってあの十条姫依さん....と同じ学校ですよね。んー?

今の『あの方』と、平城の制服って、余り似合う様には....」

 

 

ウン、どっちかってと観た目はカワイくなる....でもナカミが....んーんチグハグだ。

 

 

「わ、私シ! まだ『あの方』とは....! まあ、いいでしょう....確かに、今のあの方から想像しても、私シにも混乱が生じますわ。

でも、あの頃のあの大柄女は、髪を腰の辺りまでだらしなく伸ばして無造作に束ねて前へ垂らし、スカートの丈は....くるぶし位の長さでしたわ」

 

 

くるぶしって....へっ!? 脚が完全に隠れるじゃん! 学生服で? それって、昭和の末期に棲息してたと云う....

 

 

「ええ、かつて、『スケバン』と呼ばれた種族を彷彿とさせてましたわね。映像で観た事がありますの」

 

 

ああアレ....確かに、竹刀だか木刀だか持たせると....ピッタリ....まるで違和感が無い。もう平成も終わろうというのに....

 

 

「この鎌倉での大会はトーナメントでして、私シは順調に決勝へと駒を進めておりましたの。ところが....」

 

 

ハイ、わかります。

 

 

「あの大柄女も勝ち抜いて来たのですわ。試合の様子も観ておりましたし。しかし....」

 

「なにか?」

 

「....かなり、変わって仕舞われたのですの。あのオンナ....観た目は初めて会った時より更にバンカラに(晩から? て何です??)凄味が増して居りましたけど....そして決勝戦....半年振りにあのオンナとここ鎌倉で対決する事になろうとは想いもよりませんでしたわ」

 

 

『両者、前へ!』

 

「あのオンナと対峙した時、ハッキリと判りましたの....身のこなし、振舞い、構え、そしてあの眼....あの時の、勝ち負けに拘る様なあのギラギラした眼では無く、もっと落着いた、沈み込むとでも申しましょうか....

これは....」

 

 

 

 

『始め!』

 

 

 

 

「私シが上段から振り被りながら正中線に沿って剣を走らせ中段に降り掛った頃....!」

 

《ガシャッ!!》

 

「私シの御刀は下段から振り上げられたあのオンナの刀に喰い突かれ、宙を舞いましたの....」

 

 

 

 

「・・・・手首、ですか?」

 

「いえ、御刀同士の接触で、でしたわ....」

 

 

一応真剣同士の試合....剣先だけで決着、てのは時代劇でもそうお目に掛かれない。凄い....

 

 

『勝者、平成学館・・・・』

 

 

 

 

「....想わぬ事に床に手を着いて項垂れていた私シに、あのオンナはこう言い放ったのです」

 

 

 

 

『・・・・アタイ、アンタのお蔭でアンタに勝てた。じゃあな』

 

 

 

 

「....ハッとしてあのオンナを目で追ったら、後姿が会場の外へと....あの大柄女....この私シに何を伝えんとしたのか....あ〜!! 解りませんわ!!この私シが弱くなったとでも!?」

 

 

....『あの方』の言葉足らずはこの頃からか....この御嬢様も、気付いて居られないんで?

 

 

「それからというもの....私シは昼夜寝食を惜しんで稽古に邁進しましたの。勉学が疎かになるぐらい。目標は一年後、鎌倉のあの大会にですわ。あのオンナは必ず来る....やって来なければなりませぬ! あのまま勝ち逃げさせてなるものですか! その様になるというのなら、平城へ出向いてあのオンナの首根っこを引き摺っててでも....!」

 

 

執念だ....ウチの可奈美とはエライ違いだ。でも、このお嬢の『あの方』への執着ってホントそれだけなのか? ウム、我がオタセンサーがナニカに過敏に反応しているゾ。こいつはひょっとして....

 

 

「一年たって、待ちに待ったこの時! 高等部に上がった私シは再びこの鎌倉の地に綾小路の代表として参りましたの!

さあ、今度こそあのオンナの鼻っ柱を! と思いましたが....あのオンナ、去年に比べても、更に落着きをみせ、貫禄たるや無言で座しても誰もが振り向かずには居られない、といった有様でしたわ。

しかしながら、妙な居心地の悪さも感じておりましたの。なんと云うか....チグハグというか....アンバランスといいますか....兎に角ヘンなのです!」

 

「ひょっとして、それは....制服ですか?」

 

「そう! そうなのです!! お兄様! 」

 

「制服を普通に着ていると....」

 

「それですそれです!! 違和感の理由がそれです! お兄様! よくお気付きになりましたね!」

 

 

成る程....やっぱりそうか....さっきの妄想の違和感もあながち独り善がりでは無かった、てことだね。

 

 

「制服は平城の中等部のとはさして違いは見当たらない様ですが、新品の卸したてで、髪も小ざっぱり。胸の辺りまでの長さに後ろにキチンと纏めてそのままストレートに。スカート丈も、校則通りの膝上まで....」

 

 

ングっ! 一気に清楚系か!? でも貫禄を醸し出す体格、て事だよね?

んーむ、想像が追いつかない....

 

 

「そして! 案の定....私シとあのオンナは決勝で立ち合う事になりましたの。この一年、どれだけ長く感じられたことか....! 握る柄にも思わず力が入ろうものです! ところがあのオンナときたら!」

 

 

....握りこぶしにチカラが漲ってますよ....!

 

 

「眼がアサッテの方向を向いておりますの! 心そこにあらずと云いますか....どう云うつもりですこと? 今まさに剣を交えようとする時に!!

....そう、アナタがその積りなら、此方は此方で遣らせて頂きますわっ!」

 

 

 

 

『始め!』

 

 

 

 

「私シは敢えて上段がら振りかざしましたわ....! あの時の様に! そしたらあのオンナはその上から剣を降り重ねて来ましたの....! そう、この時を待っていたのです! どうせ前回とは逆に上から私シの剣を振り落とそうと画策するのでしょうと! そこで私シは剣が重なった瞬間を捉え、剣先を左に捻じり乍ら潜り込ませて相手の剣を反らせ、そのまま刺す様に全身で剣を伸ばしましたわ。これで相手に一太刀浴びせられるはず! ところが....!」

 

 

 

「・・・・どうしました? あの・・・・」

 

 

 

「....はっ! いえ、....私シの剣はあのオンナの右の脇に逸れ、そして私シの右の頸筋には剣先が....

もう少しで首が胴から離れるところでしたわ....」

 

 

 

 

『一本! それまで!』

 

 

 

「負けた....負けましたわ。二度も、あのオンナに、しかも公式戦で....

それでも私シは機然として誇らしく、堂々と最後の礼に臨みましたの。ところがあのオンナ....二度の優勝を手にしながら、何処かうわの空....なのです! 一体どう云うつもり?! はなから私シなど眼中に無かったかの様な....どう思われますっ! お兄様!!」

 

 

 

 

 

 

「はっ? へっ!? いや....なんともその....近いです....」

「はあっ!? あっ!! ....失礼遊ばせっ!お兄様!! 私シとしたことが!!」

 

 

 

 

 

 

テーブルの向こうから身を乗り出して....もう少しで◎ューでしたよ....御嬢様....

 

 

 

 

 

「・・・・それから私シ、達は....鎌倉に詰める事と相成りましたの....其々二年連続の優勝、準優勝....という実積を購われ、特別祭祀機動隊からの要請で荒魂鎮圧の最前列! という栄誉あるポジションを与えられたのです」

 

「それがあの、親衛隊、ですか?」

 

「いえ、この時はまだ....ただ、機動隊の実戦部隊では最重要ポストであった事は確かですわ。ただ....」

 

「『あの方』、ですか....」

 

「そうです! あのか....オンナはこの期に及んでまだボーとしてらっしゃるのです! それでいて、実戦に配備されてから....それ迄の一人当たりの荒魂鎮圧数をたった一月で更新して仕舞われたのですわ! こちらの懸念もよそに....あのオンナときたら....!」

 

 

はあ、凄いひとだったんだな....あのカタ。それにしても、このお嬢のヤキモキとした感じ....『あの方』って余程ナニか相手をモヤモヤさせる体質を持ってるのかね?

 

 

「そして....機動隊に配備されて一月、私シの非番の日、私シは鎌倉の寮の自室で一日中布団に包まる事と致しましたの。もう毎日が激務で....労働基準もあったものではありませんわ。しかしながら朝七時....

 

 

 

 

《コンコン》

 

 

 

 

・・・・はあ、何ですの....こんな朝早くから....折角のお休みの日に....居留守を決め込みましょ....

 

 

『此花さん、アタイだ! 開けてくれ! 話がある!』

 

 

もう....何ですの....こんな日ぐらい....アナタの顔など拝み等御座いませんわ....

 

 

『頼む! 開けてくれ! 話を聞いてくれ! 貴女にしか頼めないんだ!』

 

 

んもう....仕方が無いですわね....ほんの五分ですよ、それ以上は....

 

 

《ガチャ!》『なんですの....』

 

 

『此花さん....! ....その....その格好は....!!』

『はっ? ....あら....』

 

 

ピンクのネグリジェでしたわね、て・・・・

 

 

『キャアッ!!なっ! なんですのっ!?!』

『いやっ、ゴメン! つい観なれない物で!!』

 

 

寝ボケてそのままで・・・・!! イヤ〜っ!!」

 

 

・・・・ここで顔を覆われても....もう遅い....

 

 

「・・・・急いで奥からちゃんちゃんこを....何か....?(イエ何も....)羽織ってドアに向かい、あのオンナの前へ....

 

 

 

 

『な....なんの用ですの? この朝早くか....』

『たのむっ!! 此花さん! ....このアタイを・・・・

・・・・《オンナ》! にしてくれっ!!』

 

 

 

 

・・・・『「はあっ?!?』」(....お、オラもついつられて....)

 

 

 

 

『頼む!! こんな事誰にも頼めないんだ! だから此花さん! アタイをオンナに....!!』

 

ちょちょちょおまちっ! こんな廊下沿いに! 取り合えず部屋に入りなさいまし....! ハァ....いきなりナンて事仰るのアナタってヒトは! 信じられませんわ....いったい何をフザケて....

 

『アタイは本気だ! ふざけてなんていない! だから頼む! アタイを....!』

 

解りましたわ....!....少し落ち着きましょう....つまり、」

 

 

 

 

「貴女から女性らしさのアドバイスを、という事で?」

「その通りですの....ったく、あのヒトときたら言葉が....ですわ....」

 

 

 

....よくその手の漫画や映画では『オトコにしてくれ!』て科白を聞くが、オンナに! って....ナンか違う妄想を掻き立てられるんですケド。

 

 

「ほんっとに誤解を招く言い回しですわよね! その後も....

 

『此花さんは....アタイから観るに....オンナヂカラが強い! ....と思ったんだ....だから!』

 

はあ、貴女の仰りたいのは、『女子力』、て事で....?

 

『そう! それだ! アンタの言うとうりだ! アタイの言いたい事が分かるとは流石だ! 流石アタイの....』

 

....もう解りましたの。話しを詳しく説明して下さらない?

 

 

・・・・そこで伺った話しを纏めますと・・・・

 

 

....二度目の鎌倉での大会中、彼女自身も何かしらの違和感をお持ちのようでしたのね。

実は、前回の大会で優勝したあと、あのオンナは表彰式にも出ずそのまま平城に帰られてしまったのです....たく....(ホウ....)そのことで副学長にこっ酷く叱られ、学長にはヤンワリと窘められ、次回の大会ではキチンと身嗜みを整えるという厳命を下された、との事だったのですって。(次回出場も決まってた様なものなのね....)

それで高等部に上がってから校則の規定通りに着用し始めたものの....」

 

「やはり....ですか....」

 

「端から観ても....でしたからね....当人はもっと居心地の悪い思いをしていたのでしょう。そうして観れば、中等部のアノ出立ちの方が余程マッチしていた様でしたわ....」

 

 

ンーム、想像を逞しくすると確かに....でも、そんな見た目のこと気にする様なひとに観えなかったんだけどなー

 

 

「で、鎌倉にてこのような命を受け、寮で暮し始めたのはいいものの....

周りの刀使達の華やかさに随分気後れしていた、との事ですの」

 

 

ああ分かる....鎌倉に出向いた時、皆んな戦闘服を兼ねている学校指定の制服を着用して御刀も装備....命掛けの仕事の割にナゼか妙に華やいでいると云うか....キャッキャウフフ! なノリというか....俺の高校に比べても....女子校なら当たり前なのかも知れんが....

 

 

「私シが平城へ赴いた話はしましたよね? その平城学館というのは....人里離れた盆地の丘の中腹を切り拓いて設置された全寮制の学校で、周りは田圃と畑と灌木、農家も疎らでお店も食料品店か雑貨屋....つまり若い中高生の気晴らしになる様な場所は何一つ無い所でしたの。

結果として、そこで暮らす生徒達は、学業剣術に真剣に打ち込む優等生に成るか、有り余ったエネルギーを校内外に噴き出す不良になるか、何にしても、振り別けが極端でしたわね」

 

 

つまり....オレのような無気力な中間層が無いと....『あの方』にも通じる姫依さんの気質の激しさもソノ環境に基づくものだったわけだ。コワイ....

 

 

「そのような所からいきなり鎌倉でしたので....誰にも相談できず、同じ平城から出向している生徒達とも....彼女達は優等生組でしたわね....そこで、ローテーションでタッグを組まされている回数の多いこの私シに白羽の矢を立てた、という事ですのよ。ハァ」

 

 

こらまた災難で....それでこのオレもココでこのお嬢の愚痴に延々と付き合わされてるわけだ。災難だ....

 

 

「お話は理解いたしましたわ。つまりは....いえ、本題に入りましょう。私シが観るに....先ず髪型ですわね。アナタ、行き付けの御店は?

 

『御店とは....床屋の事か? まさかあの....ビヨウインという所か!? イヤイヤイヤ行った事など無い! あんなオソロシイ所....』

 

....単に行った事が無いだけですわね。まあお店に通う事なんて慣れですから、鎌倉で見つけた私シの行き付けの御店を紹介しますからそこへ....

 

『あああアンタも一緒にだな! よし! 行ってみよう! アン....此花さんが一緒なら心強い!』

 

 

 

場所を教えて御一人で、て言うつもりでしたのに....これで一日のユッタリタイムが台無しになりましたわ....

結局私シも同伴して御店へ。非番ですから外出は私服にでも....面倒だから制服にしましたわ。(投げやりな....)で、あのヒトは学校指定のジャージ....中にはパーカーを着てフードを被って....もう、お仕事中は烈しくも凛々しく御刀を奮う鬼神の様なヒトなのに....この自信の無さは何ですの! フードを取りなさい....! これでは不審者ですわよ!

 

『そう言われも....こういう街を私服で歩くのは慣れないんだ』

 

ジャージは学校指定のでは?

 

『はぁ....此花さん....勘弁してくれよ....』

 

 

 

ホントにこのヒトは....ところで、今までどのようにして髪を整えていらしたの?

 

『高校に上がってからは寮の同室の先輩に後ろに纏めて切ってもらってたんだ。その前は風呂に入りながら髪を掴んで自分でバッサリと切って....』

 

それで腰まで在ったというのですね....いいですか!? これからは月一回はこれから行く御店で髪を整えて貰う事! いいですわね!

 

『せめて半年に一度.....』ダメです!!

 

 

 

 

さっ、入りますわよ。

 

『ほんとにココ、入るのか....?』

 

この期に及んで....いいから行きますわよ!『ハイ....』

 

『いらっしゃいませ! ご予約の此花様ですね。この方が、ですね?』

 

ええ、お願い致しますわ。『おい・・・・』

何を後ろでコソコソと....!

『コースは、いつも通りで?』あ、はい、それでお願い致しますわ。

『では、此方へ』....サア、行って来なさい!

『はあ・・・・』・・・・たく、アナタってヒトは....

 

 

『あのう....』ハッ、何ですの?

『あのお客様の髪型はお任せとのことですが....』ええ、そうですわ。

『かなり....カットしてしまいますけど....宜しいでしょうか?』

はい、構いません。バッサリとやって下さいまし! アナタもよろしいですわね!『ハイ....』

『わかりました。では少々お待ちを』

 

 

とにかく、一番のネックが髪型、ということは明白でしたから、デザインはプロの方にお任せして私シは待合室で雑誌でも読んで時間を潰しておりましたの。

 

 

 

 

暫くして....

 

『あのう....お客様....少し宜しいでしょうか....』

 

店員さんが私シの所へ....終わったのかしら?

 

『実は....観ていただきたいんです....御連れの方を....』

 

 

ハア、あのヒト、また何かヤラカシなさったのですの....? でもこの方、メイク担当のひとでは? ....ハッ! 私シのいつものコース! あのヒトにお化粧までして仕舞ったのね....なんというムダ遣い....! でもメイクさん、何か落ち着かない....顔も若干赤らめている様な....あのオンナ....何か恥かしいマネでも....! ここは私シのお気に入りの御店ですのよ! 出入り禁止にでもなったら....! 『どうぞ....』

 

 

他の店員も、他の御客も....このオンナに釘付けになっている....何もヤラカしているわけでも無し....いったい....

 

『....此花さん! なんか周りのひとが....! アタイ、そんなにオカシイのか!?』

 

はあ、背後から観ても....本当にバッサリサッパリしましたわね....正面は....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・息を呑みましたわ・・・・

 

・・・・絶句、と云うのは、本当にあるものですのね・・・・

 

 

『....おい! 此花さんまで! そんなにヘンなのか!? 鏡を観せてくれ!

アタイも....!!』

『「ダメですダメですダメです!!!アナタは!(お客様は!)素顔が一番ですっ!!!』」

 

 

メイクさんと息がピッタリ合って仕舞いましたわ....

 

 

そ、そうですわね....このオ....ヒトにはまだお化粧は....ですわよね!

『あ? ハイ! そうですそうです!! まだ十代ですし!!』

....では、落として下さりませ....?

『はい?! かしこまりました!!』

『おい! 何で!? 少しぐらい....』ダメですっ!!『....ハイ』」

 

 

 

「....一体何がそんなにソウ何ですか....?」

 

 

質問してるオレまで動揺している....だってサ、目の前のお嬢、顔を覆って身悶えしてるんだよ....「イヤ〜!!」なんてココで言われても....

 

 

「....と....とてもあの様な姿....本人には観せられませんわ....」

 

「....そんなに、アレ? なんですか?」

 

「アレはダメですっ!! あの様な姿....周りにも御観せするわけには....

それにもし、あの方に....ソノ自覚を持って仕舞われたら....!」

 

「....しまわれたら??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「刀剣類管理局がヴェルサイユ宮殿に成って仕舞いますわっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

・・・・あああ・・・・このヒトも・・・・大概だ・・・・

 

 

・・・・少しは落ち着いたかな? 御自分の回想で居た堪れなくなるとは余程のショックが....しかし喩えが....古風だね。納得してしまう俺もアレだが。

 

 

「・・・・化粧を落として頂いてから改めてあのヒトの顔を拝みまして、『ホッ・・・・』としたのはいいのですが・・・・」

 

 

・・・・なんかまた・・・・ポー・・・・としてますヨ、お嬢様。

 

 

「・・・・ハッ! ....そうですわね、だいぶ容姿も落ち着いて、これなら公衆の面前に出しても混乱し無い程度に(ヒドイ....)なりましたわね。

とは云えかなり、ボーイッシュな印象を与えることに成りましたが....さあ、帰りますわよ。と、御店を出たのです。ところが....」

 

「その口ぶりでは、道ゆく人が、ですか?」

 

「そうなのです....すれ違う方々皆このヒトに視線を注いでまた振り返るひとも....その殆どが若い女性達....私シは心中....複雑でしたわ」

 

 

なんかまた....沸騰開始かな....

 

 

「寮に帰ってからまた、騒動が....私シは周りから質問攻めに合い....

『アノ方は何方の!?』

『何故殿方が女子寮に!?』

『まさか....此花さんの逢引でコッソリと!!』

 

....コッソリなら堂々と正面玄関から入りはしません....! そしてこの事態に困惑しているあのオンナの周りにも人集りが....

『何処から来たんです!?』

『職業・年齢・生年月日は!?』

『まさか....ここに誰かをスカウトしに来たプロデューサーさんでは! キャーッ!!』

 

・・・・昨日まで貴女方が遠巻きに観ていたアノ大柄女ですわよ....何気無くそう口にした瞬間・・・・寮全館が!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・阿鼻叫喚の渦に呑み込まれましたわ・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・フゥ・・・・」

 

 

 

 

・・・・凄い事になったんだな。しかし何だかんだ云っても『あの方』の存在感が増してしまったとは。違う意味で....でも確か、オンナにしてくれ! て話だったよね?

 

 

「はあ・・・・そのはずが・・・・後で知った事ですが、その日の内にファンクラブも設立されたそうです....各校一つづつ、計五つも・・・・」

 

 

はあ、成る程....ここだけの話、まだ中一の舞衣さんが可奈美と一緒にウチに帰省してた時確かそんな話題があって、舞衣さんが恥ずかしそうに誰某のファンクラブの会員カードを見せてくれてたな....『あの方』のだったとは。案外舞衣さんもミーハーだったようで....

 

 

「ところがまだ混乱が収まりません。今度は任務地のシフト、緊急時の前衛部隊の人選、平時に置ける非番の日時....あのオンナのファンの刀使の子達は我先にとあのオンナと重なるようにシフト表を提出するように

なって現場に支障が生じるまでになりましたの。

そして荒魂鎮圧の際にも....あのオンナとローテーションを組む子達が只あのオンナと一処に居るというだけで浮き足立ち、現場の統率が乱れて結局あのオンナ独りのラフプレーで何とか難をしのぐと云った事も....

要は最早一人の女性を取巻く痴情....では収まらないほどの事態に....です」

 

 

うむ・・・・アノ宮殿という程では無いが、少なくとも☆塚級の伏魔殿にもオンナを廻る女同士の愛憎劇が....オラはゆる〜い百合なら多少也とも興味が唆られるが(秘密じゃ....)でもリアルでのガチの世界には....恐ろしそうだ....手を触れてはならない・・・・

 

 

 

「そう....もはや事態は私シ達刀使の手に終える状態では無く....そこで、あの御方が直接事態の収集に乗り出されたのです」

 

 

おお、『あの方』を超える『あの御方』の登場ですな! しかしてその実態は....!

 

 

「騒動が始まってから一週間後、私シとあのヒト二人が揃って局長執務室に呼び出されましたの。そう、特別刀剣類管理局局長、折神 紫様の御部屋に....!」

 

 

真打登場!! さて、この『あの御方』、どの様な名采配を御披露為さるのか....!?

 

 

「あの御方の尊顔を拝するのは全国大会の決勝戦とその後の表彰式以来の事で、普段私シ達一般の刀使には直接目に触れる事も無く、まさに、雲の上の存在でしたわ。その『あの御方』が名指しで私シ達二人を

呼び出されたのです! 何事かと身構え、そして身を引き締めながら執務室のドアを叩きましたの。....私シが!」

 

 

何故ソコを強調する....? まあ話を聞いてるだけでも緊張感は伝わってくるかな....

 

 

「『お入りを』

 

声をかけてきたのは秘書の女性でしたわ....そして執務室内に入り、礼をしてから正面を向きました。其処には数人の事務員と教員に囲まれた机で執務を行う紫様の姿が....

 

『....両名、参りました』

 

秘書の方が紫様に声を掛けて下さってようやく私シ達を....

 

一瞥して....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『....フッ、下がれ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

....この一言で紫様との面会はお終いになりましたの」

 

 

 

んん・・・・何か呆気ないようで・・・・凄味がある・・・・

 

 

 

....そして一時間後、私シ達二人は....

あの御方の警護係を任じられました....」

 

 

 

「それが....あの....『親衛隊』ですか?」

 

「その通りです....」

 

「じゃあ、あの組織というのは....」

 

「ええ、紫様の采配で新たに創設された組織でしたの」

 

 

おお・・・・なんちゅうコト・・・・

見方を変えれば『あの御方』の単なる気まぐれとも取れるが・・・・

 

 

「そう、親衛隊。平時は紫様の御側近くで警護を司り、荒魂発生の折は指令室にて紫様と供に鎮圧の作戦指揮を摂る....時には陣頭指揮も。

必然的に私シ達二人は他の刀使達とも交わる事は少なくなり、自室も一般寮から刀剣類管理局の客室として使われていた部屋を貸与され、まさに四六時中あの御方の御側に、そういう生活が始まりましたの」

 

 

大出世や....こんなのって有るんだな。実力あっての事だけど....

 

 

「表向きは全国大会二年連続優勝・準優勝の経緯の元での抜擢、でしたわ....この騒動の収集の為、と云うのは後で知った事です。でも....」

 

「それだけでは無いと?」

 

 

「御側近くでのあの御方は、いつも御独り....という印象でしたの。いつも大勢の関係者に取り囲まれていても....紫様はあのヒトにも同じものを感じ取っていたのかも知れませんわね....」

 

「地方のスケバンというのも....ですか」

 

「フフッ、そうかも知れませんわ。あの御方にも同じ気質が御有りの様ですもの」

 

 

うむ、ウケを狙おうと思ったんだが....そうか、『あの方』も、世が世なら一地方を取り仕切る大番長に....て事もあったかもな....

 

 

「そして半年....あのヒトの姿勢、態度、身嗜み、言葉遣い....真に高貴なる御方の側に仕える....只それだけの事で今観られる様な『あの方』に....」

 

 

.... それじゃ少々間の抜けた処は....まあ、それだけ『あの御方』の影響力は強大で、側に居るだけで周りの人々を感化させる....それが今の『あの方』を....と云う事か。強烈な環境だな....

 

 

「....そして、私シ達には新たに二人の仲間が....ひとりは物静かで伏し目がち、しかしその奥には燃え滾る忠誠心。お茶や紅茶を淹れるのが得意で、茶道も....あの子のお茶の御手前は、京育ちの私シでさえ自ずと背筋を伸ばしめる程のものでしたわ。訛をとても気にして居ましたが....私シにとってはとても心地良く響きましたわね。

もうひとり....私シの後輩で幼い頃に大病に罹り両親からも....奇跡的に回復し紫様に見出されて十一歳で親衛隊に....『あの方』でさえ後姿を追わせる程の天才で、ヤンチャが過ぎて私シ達や紫様にまで手を焼かせて仕舞う事も....でも憎め無い、私シ達の大切な妹でしたの....」

 

 

「今でも『伝説の四人組』ですよね。今も皆んなで遊撃隊に?」

 

 

「今は....もう....でも、私シ達四人の結束はこれからも変らず、ですわ。

ただ、あの頃の、最後の半年は....紫様も含めて家族の様な....とても仲睦まじいものであったと私シは確信して居りますの」

 

 

なんか視線が遠くだな....あの一年間、この二人にもいろいろと....

 

 

 

 

 

「・・・・はっ! もうこんな時間! とんだ長居をして仕舞いましたわ!

....どうでしょう! 私シが今日の夕餉を拵えますわ! 如何です?

お兄様!」

 

 

「はあ....そんな....それにウチにはそんなに材料の揃えが有るわけでは....

調味料も....」

 

「かまいませんわ! 私シのお話を聞いて下さった御礼です! お兄様はそこで御寛ぎ為さって....」

 

 

はあ・・・・過去二回の経験上、こうなったらもう聞かない・・・・

ここは大人しくお任せ致しましょうかね・・・・

 

 

 

 

夕食を二人分拵えてくれた後、お嬢様は我が家を立たれた....暫くして親父が帰宅。揃ってお嬢様お手製の夕食を所望....

 

 

 

 

「....なあ、醤油をかけていいか....」

「せっかく作ってくれたんだから....今日はこれで....」

 

 

 

 

俺たち美濃の民には京の都の味付けは高尚過ぎた・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・さて、今日は休みだー!! 日曜以外の平日休暇(有給付き)の一日を思う存分怠けるぞー! おー・・・・

 

 

《ピンポーン!》

 

 

・・・・まて、まさか・・・・

まああれから三ヶ月位だしそろそろ・・・・

いや、今日休暇を取ったのはオレ以外誰も・・・・ハア・・・・

ハイハイ・・・・出ますよちょっとマチ・・・・

 

 

ガチャ! ・・・・

 

「お兄様! お早う御座います! あっ! これ、近所の御店の試供品ですわ!

『爽やかな香りと供に.... ミントの葉を漬け込んだ千枚漬け! 今なら特別御奉仕価格!』

どうぞ!!

それはそうと! 聞いて下さいまし!!またあの方ときたらっ!!・・・・」

 

 

 

 

 

ハア・・・・これでオレのグータラタイムデーはお預け・・・・

まあ・・・・また妹が増えたと思えば・・・・トホ・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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