初めてのド恋愛ものです(汗)

しかも、暗部期のカカシ×夕顔というレアCPです。勿論公式CPではありませんので、苦手な方にはお勧め出来ません。

また、R-18まではいきませんがきわどい表現もありますのでご注意ください。一応、R-15とさせていただきました。

pixivにも掲載しています。

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初恋

「じゃ、今日はこれで任務終了」

 

彼はそう言いながら未だ仮面を被ったままの私と一瞬視線を絡めた。

 

彼と私…、二人だけの密やかな合図…

 

私は皆に気取られぬ様にわずかに首を縦に動かし承知を告げる…。すると、それに気付いたであろう彼がマスクの下の口端を微かに上げた。それだけで私の胸は高鳴り耳たぶまで熱くなるのが分かった…、きっと私の顔は目に見えて紅潮していることだろう…。こういう時、暗部の仮面に助けられる。

 

木ノ葉隠れの里 暗殺戦術特殊部隊 通称”暗部” ろ班

それが私の今の所属。そして彼はその小隊を指揮する隊長。

 

公には出来ない彼と私の関係…、と言っても決して恋人と呼べるようなものじゃない。彼と私がそういう関係になってからもう随分時が経ったけど、彼も私も「愛してる」の一言は一度も口にしていない。

かつて、「冷血」と揶揄されていた彼…、だけど彼と一緒に組んだ事のある忍に今もそう思っている者は一人もいないはず。冷血や冷酷ではなく、あくまで冷徹。余り人を寄せ付けない、それこそ彼の纏った冷ややかな空気に逆に惹かれるくノ一は少なくなかった…。私もその一人、アカデミーの頃から既に暗部として活躍していた5つ年上の彼に憧れていた。それが私の”初恋”。

 

”初恋は実らない”なんて言葉をよく聞くけど、忍としても異性としても心底憧れた彼とそういう関係になれて…私は…とても嬉しかった。

 

普通の…、里の一般市民の女の子なら、きっと好きな人と結婚しその人の子供を産み共に育てる事を夢に見るのだろう…。だけど私は違う。

彼の才能を目の当たりにする度に、この人はきっと将来火影になる…そう感じた。そして、彼が火影になった時に、変わらず自分は暗部に所属し彼を守る盾となりたいと思っている…それが私の夢。

暗部とは火影の命にのみ従う忍…、忍として生きる以上はいつか里の為に命を落とす覚悟も出来ている。それが愛する人の為であるのなら忍冥利に尽きるというもの…。

 

 

「お疲れ様」彼のその言葉で皆がそれぞれ帰途に就く。

 

私も夕飯の買い物を済ませてからアパートに帰り着き、鍵を開け玄関に入ると背後に人の気配を感じた。咄嗟に買い物袋をその場に落として振り向きざま裏拳で殴り掛かる… が、いとも簡単にその手は捕らえられ抱きすくめられてしまった…。

 

「…カカシ先輩」

 

私のその言葉には答えず彼は私の横髪をかきあげ耳に唇を触れさせる…、そのまま首筋をなぞるように這うマスクの布越しに伝わる柔らかさに思わず吐息を漏らして流されてしまいそうになった…。

 

……ダメ

 

掴まれたままの片方の拳をぎゅっと握りしめ、もう片手で彼の胴当ての背を引っ張り尋ねる。

「…もぉ、先輩…報告は終わったんですか?」

「ああ、済ませた。問題ない」

短い言葉で答えると、彼はマスクを引き下ろしながら、もう片手の親指で私の顎をクイッと押し下げ半開きになった私の唇に乱暴に唇を重ねた。両手で頬を挟む様に支えられ、開いた唇の隙間から彼の舌が滑り込むと、自由になった筈の右手も彼の背中に回し両手で彼の背をぎゅっと握りしめ思わず応えてしまう…。

 

「…先輩…、ダメ…です…。買い物したものしまわなきゃいけないし…それに…せめて……」

 

…シャワーをと言いたかったけど、そこは口ごもってしまう。

 

しばらく私を抱き締めたまま無言で考えている様子だったけど、彼はポンと私の背を叩くと一つ提案をした。

 

「りょーかい、コレはオレが片付けておくからお前はシャワー済ませておいで」

 

自分が言葉に出来なかったその先の期待も全てお見通しの提案に、耳まで赤くなった私は背を屈めて買い物袋を拾い上げる彼から顔を逸らし「…お願いします」それだけをポツリと呟くのが精いっぱいでそのままバスルームへと歩を進めた。

 

数えきれないほど肌を重ねても彼に抱き締められただけで苦しいほど胸が締め付けられ、バスルームの鏡に映る自分の顔が恥ずかしいほど”女”の顔をしている事に改めて気づいて…熱いシャワーに頭から身を投じた。

 

ようやく鼓動も落ち着きを取り戻した頃、キーっとバスルームの扉が開く…

 

目を見開いて振り返ると、そこには引き締まった身体を惜しげもなくさらした彼の姿…。私は一瞬にしてカァッと頭まで血が上りくらくらと眩暈にも似た感覚に襲われる。そんな私とは裏腹に彼は涼しい顔で言う

 

「馬鹿だな、髪濡らしたら乾かすのに時間かかるだろ。ま、こうしたら関係ないか…」

 

言いながら後ろから私を抱きすくめ、片手で濡れた髪を退けると首筋に唇を這わせながら胸の膨らみを力強く揉みしだいた…。

 

シャワーの熱い湯気と内からこみ上げる火照りに私は何も考えられなくなり…、ただ彼に応え…、ただ彼を求めた…

 

 

………私は身も心も彼に溺れ切っていた。

 

 

 

*

*

*

 

 

 

ある日、ろ班の招集があり集合場所へと赴くとそこに彼の姿は無かった…。

 

代わりに見慣れぬ仮面の忍が一人班に加わっていた。

「今日から僕がろ班を指揮することになったから、宜しく」

そう言ったテンゾウさんを問い詰めたい衝動をなんとか抑え、任務をようやく終わらせるとそのまま私は彼の部屋へと向かう。

 

 

彼の部屋の扉をノックすると直ぐに返事があった。

扉を開けたそこに立つ彼はいつもの暗部の装備ではなく、木ノ葉の忍装束を身に着けている

 

「…先輩、暗部から異動ですか?」

 

彼は私を部屋の中に招き入れながら自嘲気味に答えた。

「ああ、三代目に言われてな。このオレが上忍師だと…、オレが下忍を育てるなんてなぁ」

 

「先輩なら出来ますよ。暗部で私や後輩たちを育ててくれたじゃないですか」

 

「ハハ、暗部に配属される様な忍と、忍のいろはも知らない子供たちを導くのとは訳が違うよ…」

 

「…でも、異動ならそう言ってくれれば…」

 

少し不満げにそう告げた私をじっと見つめながら、彼は何処か苦しそうに眉を顰める。

 

…それだけで私は悟ってしまった。

 

言葉もなく始まった私たち…、終わりも言葉なんて必要ない。

飄々とした冷めた体を取りながら、失うことに人一倍臆病な彼…

それが分かっていたから、恋人とは言えないこの関係を続けた。何よりも彼を護りたい、これ以上彼が傷付く事の無いように…そう思えばこそ…

 

「そうですね…、同じ班じゃなくなると今まで通りにはいかないですよね」

 

私も暗部の忍、仮面がなくとも感情を押し殺すことなど容易く出来る。やわらかく微笑みながらそう告げた私に、彼は唐突に質問を投げかけた。

 

「お前、中忍の月光ハヤテを知ってるか?」

 

私と同じ剣術使いであり一つ年上のその忍を私はよく知っている。

 

「ええ…」

「アイツ、特別上忍に推薦されている」

「…そうなんですか」

「アイツお前に惚れてるそうだ。特別上忍に任命されたらお前をメシに誘うと言ってたぞ」

「…………」

「いい奴だよ、誘われたら行ってやると良い」

 

恋人とは言えないような関係ではあったけど、別れたばかりの相手に他の男の誘いに応じろとは…

 

「先輩に言われなくても…、誘われたらご飯くらい行きます」

「ああ…」

 

分かってる…、異動のタイミングでハヤテの話を聞いたから…、きっとハヤテとの方が私が幸せになれると思ったからだろう…。そんなことない!私は…と言いたい気持ちもあったけど、彼自身から自分とは未来が無いと改めて突き付けられた事が悲しくて…、いたたまれなくなった私は一言だけ告げて部屋を出ようとした。

 

「…それじゃ」

 

「…夕顔」

 

不意に名前を呼ばれ振り返ると、眉を顰めたまま言うべきか悩んでいるような彼

 

「…これからはオレはお前を護ってやれない……、…………死ぬなよ」

 

自分を責め続け、自分は幸せになってはいけないと頑なに考えている彼の、最上級の愛情表現だ…。そう思うと私は目の奥が熱くなり…、そのまま抱き着いて縋ってしまいたくなる衝動と闘っていた。

 

きっと…私が泣いて縋れば彼は迷うだろう、…そういう人だ。

 

だから私は満面の笑顔で彼に答える。

 

「当り前じゃないですか、散々先輩に鍛えられてますから、簡単には死にませんよ」

 

…アナタが火影になるまでは…。その言葉を飲み込んで告げると、安心したように、でも何処か寂し気に笑みを浮かべる彼にもう一度微笑みかけ部屋を後にした。

 

いつもと変わらず夕飯の買い物をして、街で偶然会った同僚とくだらない話をして笑い合い、いつもと何も変わらない自分の部屋に帰り、後ろ手に扉を閉めた瞬間…涙が溢れ、その場に崩れるようにしゃがみこんでしまった…。

 

…わかってた、私では彼を過去の呪縛から解き放ってあげる事は出来ない事を…。

 

それでも…、彼の傍に居たかった。

 

それが自分の我儘である事は分かっていても…

 

 

******

 

 

それからしばらくして、私は特別上忍に昇級した月光ハヤテの誘いを受け、何度か食事を共にすることになった。

 

カカシ先輩に焦がれた様な痛いほどの狂おしさは無かったけど、何もかも包み込む様なハヤテの優しさにいつしか惹かれていった。

 

私にとってのハヤテのような存在が、彼にも現れてくれる事だけを願っていた。

 

私はハヤテと穏やかな日々を送り、カカシ先輩もいつしか受け持つ下忍の子達の前ではかつて見せなかった表情を見せるようになり…

 

その穏やかな顔を見る度に、これで良かったんだと思っていた…。

 

 

だけど…、そんな日は長く続かなかった…。

 

 

彼は英雄碑に名を刻むただ一人の親友へ、私は英雄碑に名を刻んだ最愛の人に…、同じように花を手向ける日が来るなんて…

 

 

*

*

*

 

 

あれから随分と時が経った気がする…。

本当に久しぶりに暗部の装備を身に着けた私の復帰後初任務は、もちろん火影様の護衛…

 

コンコンと火影室の扉をノックし、「火影様、お時間です」と声をかける。

 

 

今日の就任式に間に合わず、即席の「六」の字の接ぎのあてられたマントをなびかせ「りょーかい」と微笑みながら出てきたのは新しい里長

 

初恋は叶わなかったけど、当時の私の願いは叶った…

 

「だけど、良かったのか…」

「何がですか?」

「暗部復帰…、お前ももういいト…」

 

流石火影様、背中越しでも前を歩く私の不穏な空気を察知したようで言葉を詰まらせた。

 

「い…いや、ホラ…オレはお前みたいな熟練…いやおかしくないよね…ベテランが暗部に居てくれるのは安心だけど…」

 

それには答えずジトっと視線だけ送っておくと、六代目は言葉を続けた。

 

「ホラ…オレはこのマントと同じイマイチ締りがない感じじゃなーい?頼りにならない里長でしょ…もう写輪眼でもないしな…」

 

あれからこの人も随分と変わったように思ったけど、自己評価が低いのは相変わらずだな…なんて考えながら後ろも振り向かず私は答える。

 

「忍の神と言われた初代様でも柱間様の助力無く里を治めるのは出来なかったと思います。誰も一人だけで里を守り治める事なんて出来ません。でも…、そのマントは確かに先ぱ…六代目らしいと思います。代々の火影様達、亡くなっていった全ての忍、共に戦った忍、里に住まうすべての人々に支えられ共に里を守る火影…貴方らしいじゃないですか」

 

「ハハ、先輩でいーよ。…そうだねぇ。ま、ナルトにしっかりバトンを渡すまでは皆に助けられてのんびりオレらしくやってくよ」

 

就任式のお披露目が行われるバルコニーの扉に手を掛けると、すでに集まっている人々の歓声が聞こえた。一斉に扉を開けるとその歓声はさらに高まり、私は扉を押さえて頭を垂れ新しい里長を見送る

 

 

「お前も助けてちょーだい。よろしく頼んだよ…夕顔」

 

眩しい光の中へ進み、前を真っ直ぐ向いてそう言った彼に、私も頭を下げたまま答えた。

 

 

 

「もちろんです。仰せのままに…六代目」

 

 


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