那須隊の番犬   作:遠野雪人

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 最後まで悩みましたけど、今回の話は分割じゃなくて繋げてにすることにしました。
 代わりに一話辺りの文字数が過去作品の中でも最多になってます。この辺の意見ももしあれば是非。


第11話 小南桐絵⑤

 

 

 

 今日も今日とて、小南に稽古をつけてもらっている。

 

「ふ――っ」

 

 戦闘体に換装した小南が鋭い呼気とともに袈裟懸けに手斧を振り下ろす。

 

 ――どうでもいいことだが、この先輩は戦闘体に換装した時、いつもの長い髪を2つにくくったヘアスタイルではなく、ばっさりと2つの房を落としたショートカットになる。

 どうして普段からそうしないのか聞いてみたところ、戦闘の邪魔だから、と如何にも男らしい答えが返ってきた。……一応この先輩もオシャレに気を遣うんだ、なんて喉元まで出かけた感想は固く胸の内にしまっておいた。

 

 突撃&斬撃。小南との師弟関係、その最初のきっかけとなったあの賭けでも散々にいいようにやられ、そして訓練を始めた今でも何十、何百と繰り返されている必勝の型。

 速く、力強い。実にシンプルだ。単調な軌道であり、すでに何百と振るわれ、受け続けてきた斬撃である。読まれたところで問題はない、むしろかわせるものならかわしてみせろ、という強い意思が滲み出ている。

 

 まずこの斬撃を前にした犬彦が決まって思うことがある。

 

 ――どう考えても素人相手に振るう斬撃じゃねえよな!

 

 さて、ここで問題だ。ボーダーに入隊したばかりの新人に、果たして戦闘経験があるのか否か。

 勿論否だ。そんなものあるはずない。武術の経験くらいは大なり小なりあるかもしれないが、殺気マシマシの斬撃を慣れ親しんだ術理の埒外から放たれて避けられるかと言われれば答えは間違いなく否だろう。

 勿論、犬彦に武術の経験などない。答えは推して知るべし、というやつだ。

 

 加えて、小南の斬撃には手加減がない。

 どうせ小南に聞けば間違いなく手加減していると答えが返ってくると思うのだが、受け手の印象で言えば「もしやコイツ手加減の意味を知らないのでは?」という判断をせざるをえなかった。

 一度そこまで言うなら、と小南と玉狛支部の別の先輩とのランク戦を見せてもらったことがあったが、何もわからないことがわかっただけだった。戦闘経験がそもそもないのに手加減がどうとかわかるわけない。やる前から気付け、という話だ。

 

 閑話休題。

 つまり犬彦が今音を裂いて襲いかかってくるこの一撃を避けるためには、類い稀なる戦闘センスか豪運か、あるいはそれに並ぶ何かを手にしている必要があるということだ。

 そして、犬彦はそれを手にするために一週間もの時を費やした。

 

「う、お……っ!」

 

 同じ軌道。同じ威力の一撃。

 けれどその一撃が同じであるかどうかは、“見なければ”わかるはずもない。

 

 迫る一撃から目を逸らさず、見ること。

 人間の反射行動を制御するために何百回と斬り刻まれたが、その甲斐あり、犬彦は最初の一撃はほぼ避けられるようになっていた。

 犬彦にとって幸いだったのは、自身の反射神経がそう悪いものではなかったということだ。神経が千切れているようなレベルだと、見えたところで身体がついてこず話にならない。

 小柄で身軽なことも手伝い、反射的な動きについては犬彦は一定の成果を出しつつあった。

 

「気を、抜くなっ!」

 

 小南の一喝。振るった勢いのままに身体を深く落とし、そのまま蹴りを見舞う。

 一撃目ですでに無理な動きをしていた犬彦はそれを避けることができなかった。

 

「ぐ、っ」

 

 痛みは薄いとはいえ、腹部を圧迫される不快感に声を漏らす。

 

 ――マズ、体勢を……!

 

 師匠の教えに従い、顔を上げて体勢を戻そうとした犬彦の目が捉えたのは、駒のように回転する師匠の姿。

 次の瞬間閃いた斬撃を回避する術を、犬彦は持ち合わせていなかった。

 

 

 

 

 

「だーかーら、何度言わせるのよあんたは! もっとグッと捻ってバッと動けっていつも言ってるでしょ!」

「その説明で何人が理解できると思ってんだお前は! 日本語で話せ日本語で!」

「日本語以外の何だってのよ!」

「少なくとも効果音は言葉じゃねーよ説明しろ!」

 

 ぎゃあぎゃあ、と声高に罵り合う小南と犬彦。至近距離で顔を近づけ、今にも取っ組み合いを始めかねない雰囲気だが、オペレーターを務めていた宇佐見は見慣れた光景であるかのように平然と今の模擬戦をデータにまとめている。止めようとするどころか、仲良いねえホント、なんて笑みを浮かべているくらいだ。

 事実、この光景を小夜子が見ていたのであれば驚いた後に笑みを作り、那須隊の面々が見たのであれば目を丸くしたことだろう。

 犬彦が女性の前で緊張せずに物を言えていることも意外なら、吐息さえ感じ取れるだろう距離で声を上げているのも驚愕に値する光景だ。

 犬彦も最初こそ抵抗を覚えていたものの、何度も続けてきた今となっては小夜子に怒鳴るのと変わらない感覚でいる。それだけで本来なら驚くべきことのはずなのだが、犬彦にとっては喧嘩仲間が増えただけという認識なのでイマイチありがたみが薄いというのが正直なところなのだった。

 

「何で終わるなり毎回喧嘩を始めるんだ、お前らは」

 

 呆れたように話しかけながら男性が入ってきた。

 木崎レイジ。薄いインナー越しにも見て取れる鍛え上げられた肉体は、ここにもし小夜子がいたのであれば卒倒することを確信させるほど。初対面の時には犬彦でさえ言葉をなくしたものだが、何度も小南との仲介をしてくれ、おまけに小南の日本語を翻訳してくれるうちにいつしか最も尊敬する先輩のうちの1人になった。

 

「あ、レイジさん! お疲れ様です」

 

 傍目にも見てわかるほどに顔を輝かせて犬彦がレイジの下へ寄っていく。その姿はまさにご主人の姿を見つけた犬の如しである。

 

「ちょっと! 何で私の時より嬉しそうなのよ、あんた!」

「何でも何も、お世話になってる先輩が来たなら普通こうなるだろ」

「私! 私は!?」

「え? あー……そういえばそうだったな、悪い」

「何その今気付いたみたいな反応! はっ倒すわよこのチビ助!」

「誰がチビだそれ言ったら戦争だろうがこの野郎ァ――!」

 

 喧嘩、リスタート。犬歯を剥き出しにして顔を付き合わせ合う犬2匹を前に、やれやれ、とうなじを掻きながらため息一つ。それぞれの額に手をやってぐいと引き剥がした。

 

「その辺にしろ。仲良いのは結構だがお前らの喧嘩に付き合ってたらいつまで経っても終わらん」

「ぐ……すみません」

「レイジ! だけどコイツ」

「お前も落ち着け。苛立つ気持ちもわかるが、お前の方が年上なんだからな」

「ぐぬ……わかってるわよ」

 

 未だに飛びかからんと構えていた手を解き、腕を組む。もっとも、眦は不機嫌さを隠そうともせずに釣り上がったままであったが。

 こつん、と犬彦の額を小突きながらレイジが言った。

 

「お前もお前だぞ。まともな説明がなくて苦労するのは理解するが、小南を師匠に選んだのはお前なんだからな。一から十まで汲み取れとは言わんが、汲み取る努力くらいはしてやれ」

「……はい、わかってます」

 

 悄然と肩を落として犬彦が頭を下げる。

 確かに、レイジの言うこともわかる。

 賭けがあったとはいえ、小南の都合などお構いなしに師事を求めたのは犬彦だ。小南が誰かの師匠になったことがないことを犬彦は後から知ったし、あれだけの腕があるのだから教えるのも上手いのだろう、と根拠もなしに思っていた。

 ただ――流石に『グッと動いてバッとかわせ』なんて独特のセンスが要求される説明しかされないとは思わなかった。それくらいは言わせてほしいのだ、声を大にして。

 

「……気持ちはわかるんだがな。だからそんな顔をするな。たまに顔は見せてやる」

「ああ……その言葉だけで救われます、本当に」

「な、何よ二人してその反応は――!」

 

 二人揃ってのため息に小南が噴火しているが、知ったことではない、と犬彦は鼻を鳴らした。

 努力すべきなのは弟子だけではなく、師匠もだろう。

 

 

 

 

 

『志岐、ダウン』

 

 アナウンスが響く。同時に戦闘体のダメージが復元されて元通りになった。

 

「くそっ、またかよ……っ」

 

 床の上で大の字に寝転がりながら、思わず毒吐く。

 今日も何十回と稽古を繰り返したが、結局、1分と小南の攻撃を避け続けることはできなかった。

 一撃目を避けることはできるようになった。しかし続く攻撃を避けることはできず、フェイクで、あるいは体術で体勢を崩されたところへ一撃をもらってしまう。

 

 ――シールドが使えるならこうは……いや、駄目か。今それを使うことができたなら、それに頼り切りになる。同じことだ。一撃を防いだところへ別の攻撃を食らって終わりだ。

 

 同じ理由で、バイパーなどの攻撃トリガーを使わせてもらっても変わらないだろう。避けることに専念しても避けきれないのに、生半可な攻撃を叩き込んだところで牽制にさえなりはしない。

 根本的に見直す必要がある、と感じた。

 妨害手段に頼ることなく、純粋に体術のみで回避しきる必要がある。

 

「じゃ、今日の訓練これで終わりね。また進歩なかったんだから、ちゃんと反省しときなさいよ」

 

 換装体を解き、いつもの2つ縛りに戻った小南が涼やかな顔でそう言った。

 進歩がない。悔しいが確かにその通りだ。一撃目を避けられるようになってから、それ以上避けることができずに無駄に日数ばかりを重ねている。

 あれほど無理ゲーだと嘆いていた一撃目も避けられるようになったのだから、そのうち避けられるようになるんじゃないか、という思いがないと言えば嘘になる。が、それは流石に楽観視に過ぎるし、その前に我慢の限界が来るだろう。犬彦然り、小南然り、だ。

 

 必死でやらない訓練に意味なんてない。やると決めたらやるのだ。一撃目を避けるという課題にただでさえ時間をかけてしまったのだから、これ以上時間をかけられはしない。

 だからこそ、頼みの綱の師匠がそんな投げっぱなしな姿勢ではいけないと思うのだ。

 

「なあ。お前から見て何が悪いと思う?」

 

 師匠の意図を汲み取る努力が必要。

 なるほど、確かにその通りだ。だがそれを訓練の中で読み取れというのは初心者相手に酷すぎるだろうし、もっと言うならアドバイスするのが師匠の務めだろう。

 

「……私に聞かれても、あんたの満足いく答えなんて出ないと思うけど」

 

 つん、とそっけない態度で小南が言った。

 小南は小南なりに、言われたことを少しは気にしているらしい。

 

「いいよそれでも。レイジさんも言ってただろ。汲み取る努力はこっちでする。だから、お前なりに悪いと思ったところを言ってみてくれないか」

「何よその言い方……」

 

 頬を膨らませてそっぽを向く。

 機嫌を損ねたようだが、出て行こうとした足を止めて振り返り、腕を組んだ。眉をひそめて思考を巡らせている様子。

 無言で見守っていると、何度か唸り声を上げて首を傾げた末にこう言った。

 

「……慌ただしいのよね、何か」

「慌ただしい?」

「落ち着きがない、っていうか。フラッフラしててとても危なっかしい感じ。こっちを見る余裕もなくなってるし……ううん」

 

 そこでまた、小南は言葉に詰まったかのように押し黙る。

 

「落ち着きがない……危なっかしい」

 

 何となく、言いたいことはわかる。

 現状、犬彦は小南の一撃を避けるために一杯一杯で、一撃目を避けた後の体勢がだいぶ不安定だ。そこへ更に体勢を崩す一撃を加えられ、続く一撃で止めを刺されてしまうのがパターンになってしまっている。

 そこまでは理解している。問題は、それをどうすれば改善できるのかということだ。

 

「それがわかったら苦労しないわよ」

「……おう。まあ、その通りなんだけどさ」

 

 お前が言っちゃ駄目な奴なんじゃないの? それ。

 そう思いつつ半目を向けるも、小南は腕を組んで何故か胸まで張っている。理解できないお前が悪い、と言わんばかりだ。

 

「汲み取る努力、ね」

 

 がしがしと頭を掻きながら、聞こえない声で呟いた。

 アドバイスらしきものは聞いたのだし、役に立つか否かはともかくとしても――否、最大限に役立てるよう努力しよう。

 

「了解。ちょっと1人で考えてみるわ」

「え? あ、うん。――あ! あと」

「ペナルティだろ? やっとくやっとく。やりながら考えるわ」

 

 ペナルティとは、1日ずっと、何の進展もなかった日に苛立ちを覚えた2人が衝動的に思いついたものだ。

 

 ――あたしが教えているのに何の進歩もないなんて許さない。

 

 侮辱にとられかねない言葉ではあったが、犬彦もまたそれを良しとした。

 焦れていたのは犬彦とて同じだったのだ。

 

 それまでの一日は、簡単に言うと筋トレからの訓練、という流れだった。多少の差異はあるにせよ、基本的にはトリオン体への理解を深め、戦闘行動に慣れるための訓練だった。

 そのうち、戦闘行動の訓練において進歩が見られないというのであれば、話は簡単だ。進歩が見られる方の訓練を更に重ねて帳消しにすればいい。2人はそう考えた。

 脳筋極まりない考えだったが、2人も、レイジでさえ――あるいは、このメンツで決を採った時点で必然だったのかもしれない――ゴーサインを出したことで決定となった。

 メニューはレイジ監修の下定められており、破れば掛け値無しのペナルティが待っている。

 自己満足かもしれない。が、何かしなければ落ち着かなかったのだ。

 

 ――こんなところで足踏みなんてしてられない。早く、先輩に追いつかないと。

 

 別に、達成できなければペナルティが待っている、なんて話はない。小南はA級でも上位の攻撃手(アタッカー)であり、その攻撃を避けるのが容易ではないことくらいは理解している。

 けれど――胸の内から湧き出す焦燥感。

 突きつけられた最初の課題。それを妥協したら、きっと自分は延々と妥協を繰り返す怠惰な人間に堕ちることを確信していた。

 だからこそ、犬彦は今日もまた抗うように床に腕を立てる。

 

 ペナルティを始めた犬彦を、小南は無言でしばらく見つめていたが、やがて視線を外して部屋を辞した。

 最後まで、物言いたげな空気が尾を引いていた。

 

 

 

 

 

 リビングに辿り着いた小南は、脱力してもたれかかるようにソファに座り込んだ。あまり行儀の良い行為ではなかったが、訓練を終えた後の倦怠感は如何ともし難かった。

 

「お疲れ様です。はいこれ」

「ああ、ありがと」

 

 差し出されたマグカップを何の気なしに受け取り、口をつけたところで変な声を上げて咽せた。

 

「大丈夫ですか?」

「っあ、あんた、とりまる! いつの間に!?」

 

 ごしごしと口元を袖で拭いながら小南が叫んだ。

 整った顔立ちに、すらりとした細身の体格。玉狛支部に在籍する、犬彦にとってのもう1人の先輩、烏丸である。

 面食いが見れば胸をときめかすだろう容姿を前にして色気もへったくれもない声を上げる先輩に対し、鳥丸は平然とした様子でこう答えた。

 

「知らなかったんですか? 飛べるんですよ、俺」

 

 ワープで、ぎゅんと。幼稚園に通う幼子でさえ懐疑心の眼差しで見ること不可避な雑な説明に、

 

「えっ、そうなの!?」

 

『何それ何、サイドエフェクト!?』と小南は1人全力で盛り上がっていた。

 1ミリたりとも疑っている様子のない先輩が騒いでいる様子を、鳥丸は冷静に見守っていた。

 

「もう、そんなのあるなら最初から言いなさいよ!」

「ええ、だから言わなかったんですよ。最初からないんですから」

「えっ?」

 

 一瞬きょとんとした顔をした小南が、ようやくからかわれたことに思い至ったらしい。

 

「だ、騙したわねあんた!?」

「ところでどうしたんですか先輩、こんな場所で1人で。何かやらかしましたか?」

「ぐ! ぬぬ……!」

 

 話を逸らすな! とでも言いたかったのだろうが、続く言葉がクリティカルした衝撃で言葉を継げなかったらしい。唸り声を上げて振り上げた拳を下ろした。

 

「また犬彦のことで悩んでるんすか?」

「……悩んでないし。そもそもまたって何よ、またって」

「気付いてないんすか? 小南先輩、ここのところ難しい顔ばっかりしてますよ」

 

 意外そうに烏丸が言った。マグカップを口にしながらの言葉は、むしろ意外そうに告げられた。

 してないし、と目を逸らしながら小南は言った。自分でも説得力のない言葉だと思った。

 

 差し出されたマグカップに口をつけながら、相談すべきだろうか、と考える。

 烏丸は対面のソファに座りながらコーヒーを飲んでおり、完全に居座る構えだ。元々それが目的だったのかもしれない。けれど小南の性格上、素直に吐露するのもまた抵抗があった。

 

「俺はよくやってると思いますけどね」

 

 不意に烏丸が言った。疑わしそうな目を向けた小南に、意外にも誠実な色の目で烏丸は続ける。

 

「犬彦はトリオン能力こそ高いですけど、それ以外は武道の経験もない素人ですからね。目はいいし器用ですが、それはまた別の才能です。小南先輩は教えるのも初めてなわけですし、手探りになってしまうのは仕方ないと思いますけど」

「わかったような口を利くじゃない」

「そもそも攻撃手(アタッカー)射手(シューター)に戦い方を教えるって、そこからしておかしな話ですしね。経緯は聞いたんで何も言いませんが」

 

 とん、と人差し指でテーブルを突きながら烏丸が言う。絵になる仕草だ。

 

「仮に俺が教えることになったとしても、恐らくはその辺りのことしか教えられないと思います。流石にあんな極端な指導ではないと思いますが、指導方針は間違ってないと思いますよ」

「褒めてるのか貶してるのかわかりづらいわ、あんた」

 

 小南は唇をへの字に曲げて腕を組んだ。

 

 ――間違ってはない、ね。

 

 烏丸の言葉を口の中で転がす。そのくせ一向に胸のもやもやは晴れる気配がなかった。

 

 才能の塊だな、と褒め称える嵐山の声がリフレインする。

 小南とて、犬彦に光るものを感じていないわけではない。コミュ障なことは大きなマイナスポイントだろうが、類い稀なトリオン能力に意外なほどの負けん気はそれを打ち消してあまりあるプラスポイントだ。賭けのことがあったとはいえ、その才能を実感できていなければここまで真面目に取り組むことはなかったに違いない。

 

 小南の顔色が優れないのは、まさにそれが理由だった。

 いつまで経っても結果を出せない犬彦に不満を抱いているわけではなく。

 いつまで経っても結果を出させてあげられない自分自身への不甲斐なさが故だった。

 勿論、そんな自身のもどかしい心情を、喧嘩をしてばかりのあの小生意気な弟子に口にするはずもないのだけれど。

 

「犬彦のどこが悪いのかはわかってるんです?」

 

 黙々と思考を巡らせる小南に烏丸が尋ねた。

 目を逸らしながら口を開く。小声になることは流石に隠せなかった。

 

「多分……わかっては、いるんだけど」

「じゃあ、後はそれを伝えるだけじゃないすか」

「それができたら苦労しないわよ」

 

 半目を向ける小南に、まあそうすね、と悪びれた様子もなく烏丸が言った。

 それから、まるで今さも思いついた、みたいな風情で手のひらに握り拳を打ち付ける。

 

「こうしましょう。口で伝えようとするから駄目になるんです。なら、文字ならいけるってことじゃないすか?」

「ええ……? そう、かしら」

「そうですよ。ささ、試しに騙されたと思って」

 

 どこから用意したのか、紙とペンを握らせて小南に手のひらを広げてみせる。

 眉をひそめながらも、物は試しに、と小南は姿勢を正して紙に向き直った。

 脳裏に犬彦の訓練の様子を思い浮かべながら、まずあの時に話していた言葉を真っ先に書く。「落ち着きがない」。「危なっかしい」。

 そこで小南の手は止まった。しばらく経っても、ペンを動かそうとしているのではなく、脳裏の映像を紙面に投影しようとしているかのように睨みつけたまま動かない。

 

「理解してなかったみたいすね。いや……そもそも、小南先輩は本当に犬彦のことを理解しようとしていたんすか?」

 

 ため息を吐きながら烏丸が言った。

 

「あいつのことを……?」

 

 紙面から顔を上げた小南は、俄に色彩の失せた目でオウム返しに繰り返した。思ってもみなかったことを突かれたかのように虚ろな顔で烏丸を見た。

 

「的確なアドバイスができないのは、口下手だとかそれ以前に、理解が足りていないからです。一つ聞きたいんですが、先輩はこの訓練を始めてから、一度でも犬彦と話しましたか?」

「話したわよ!」

「それは、どのような?」

「どんな、って。どこが悪いのか、とか」

「それが具体的に話せているのなら、こうはなってないと思いますけど。じゃあたとえば、この訓練の意図について犬彦に伝えていますか? そして犬彦は、この訓練内容に納得しているんですか?」

「それ、は」

 

 唇を震わせて、小南は押し黙った。

 居心地悪そうに肩をすくめる姿は、さながら親に叱られる子供のようだ。

 

「小南先輩が悪いと言ってるわけじゃないんですよ。さっきも言いましたけど、悪いのは互いにコミュニケーションが満足にとれていないことです。小南先輩が犬彦を理解していないように、犬彦もまた小南先輩を理解していない。一度納得いくまで話し合ってみてはどうです? 一方が塞ぎ込んでいるだけじゃどうにもならないと思いますよ」

「……それだけで上手くいくのかしら?」

「わかりません。何せ俺、弟子なんてとったことないですし」

「そう、そのはずよね。……なのにどうしてあたしが怒られてるみたいになってるのかしら」

「知らなかったんですか? 皆の怒りを買いやすい空気が垂れ流しになってますよ、小南先輩」

「えっ、嘘!?」

「ええ、嘘です」

「ちょっとは悪びれなさいよあんた!」

 

 牙を剥いて声を上げるも、まあそれはともかく、と飄々とした烏丸が逃げるように席を立つ。

 

「まだいるんでしょ? あいつ。それなら今からでも声かけてきてやったらどうすか。上手くいくかは正直なところわかりませんけど、そもそもいつまでも1人悶々と考え込んでいるなんて性に合わないんじゃないすか」

「む……まあ、それはそうね」

 

 確かに、どちらかと言えば直感的に動く方が小南の性分には合っている。烏丸の言い分にも納得はしたのだし、ならすぐにでも行動を起こすべきだろう。

 席を立つと、空になったマグカップ2つを手にして烏丸がキッチンへと引っ込んだ。こういうところがあるからこの後輩は憎めない。礼を言って訓練室に向かった。

 

 ――そもそも、どうしてあたしがこんなにやきもきしなきゃならないのかしら。

 

 歩きながら、理不尽な思いに駆られて小南は肩を怒らせた。

 なるほど、確かに小南は不出来な師匠だったのだろう。だがこうして師匠が悩んでいる間もあいつはきっと師匠が悪いとグチグチ言っているに違いないのだ。自分のことを棚に上げて、不満を垂らしているに違いないのだ。

 顔を見たら頬をつねってやりましょ、と剣呑な光を目に宿していると訓練室が見えてきた。

 

「俺が師匠になってやろうか?」

 

 ――それはまさしく、小南にとっての痛烈なカウンターパンチに他ならなかった。

 

 訓練室の扉を開け、一歩を踏み出した矢先のこと。

 耳に届いた言葉にぎょっと目を見開く小南の正面には、こちらに足を向けて腕立て伏せをしている犬彦と、それを見守るレイジの姿がある。

 ここに来るまでの間に、ずっとペナルティという名の筋トレを続けていたのだろう。明らかに疲弊した様子の犬彦はこちらを見る余裕もないのか、カウントを呟きながら腕立てを続けている。

 

 レイジは扉の開く音に気付き、視線だけを向けて小南の姿を認めた。

 しかし発言を取り消す様子も、取り繕う様子もない。どころか、唇に指を当ててアイコンタクトを図ってきた。黙っていろ、というサインだ。

 

 これには、流石に小南も割って入ろうとした。

 確かに自分は優れた師匠とは言い難い。だが、目の前で自分の初めての弟子が勧誘されているのを黙って見ているわけにもいかない。理性的な判断より、衝動的な感情に衝き動かされて口を開こうとした。

 

「どういう、ことですか?」

 

 先回りをされて、思わず言葉を呑み込んだ。

 疲れた声の犬彦が乗ってきた。そうなると、一度タイミングを外された会話の流れというものは乗りにくいもので、もはや小南には話の流れをただ黙って盗み聞きしている他なかった。

 それに――犬彦がどういう返答をするのか。それが気にならないわけではなかった。

 

「何、ただのお節介だ。小南は教えるのが下手だし、口下手だ。言葉より先に手が出るような奴だ。毎度喧嘩しているのを仲裁させられている側としては、流石に口も出したくなる」

「それは、返す言葉もないですね」

「それにあいつは攻撃手(アタッカー)だからな。お前が理想としているスタイルについて教えられることはそう多くはないだろう。その点で言うなら俺は射手(シューター)の戦い方も心得ている。少なくとも小南よりはより多くのことを教えてやれるだろう」

「それは、確かに」

「あとは、そうだな。お前の考え方は俺に似ているところがある」

「どういうことですか?」

「嫌な顔一つせずこうして筋トレを続けているところとか、な。普通は結構嫌がられるもんだ。トリオン体になれば疲れ知らずで、その筋力は生身の肉体ではなくトリオン性能によるところが大きい。それなら生身で筋トレすることに意味なんてないじゃないか、ってな」

「そうなんですか? 結構好きなんですけどね。レイジさんが言うところの、自分の限界を広げる感覚」

 

 相変わらず腕立て伏せをしながらだから、犬彦の顔は窺い知れない。けれどその声色は喜色に滲んでいて、とても楽しそうだ。それがどことなく小南には面白くなかった。

 レイジはおもむろに犬彦の下にしゃがみ込み、言葉を続けた。

 

「実際どうだ? お前が小南を師匠に選んだ経緯は知ってる。自分から頼み込んだ手前、師匠を変えるのは抵抗があるかもしれんが、必要なら口利きしてやってもいい」

「それは、師匠を小南からレイジさんにする、ってことですか?」

「そうしてもいい、って話だ。小南に断りの話をするのが難しいってことなら、新しい師匠になってやってもいい。最近射手(シューター)の師匠を見つけたんだろう? なら今更1人や2人増えたところで変わらないだろう」

 

 どうだ、とレイジが首を傾げてみせる。

 あまりにも居心地の悪い空気に、小南は思わず目を伏せた。

 レイジの提案はまっとうなものであり、善意からくるものだろう。才能ある人材の将来を思うのであれば、どちらを選ぶべきかは明らかなのだから。

 

 何故だろう。あれほど煩わしいと考えていたことなのに、あれほど喧嘩していたのに。

 目の前に選択肢を突きつけられる弟子を見ている今、胸に湧いてくるのは不安、苛立ち、後悔、怒り――喜びの感情は欠片もなかった。

 

 レイジの提案に、犬彦はまず苦笑いを浮かべた。

 

「レイジさんの提案は、正直すっごくありがたいですし、実際教えてもらいたいこともあります」

 

 でも、と、疲労を滲ませる声のまま、はっきりと犬彦は言った。

 

「すみません。それはやめておきます」

 

 小南は思わず目を見張った。あまりにもきっぱりとした断言は、小南にとって予想外の返答だったから。

 

「意外だな。あれだけ喧嘩しているんだ、すぐ乗ってくるものと思っていたが」

「口下手だし頑固だし、足りないところばかりの師匠ですけど……ここに来てから最初に憧れた師匠なのは間違いないんで。あいつから見捨てられるならともかく、俺が鞍替えするのはないです」

「現状は理解しているんだろう? とてもお前の望むような成長ができているとは思えないが、それでも小南のままがいいのか?」

「不満に思っているのは事実ですけど。それは俺のせいでもありますし、今の状況であいつにばかり責任を求めて逃げ出すなんて、そんなのあまりにも情けないじゃないですか」

 

 ぐさり、ときた。

 小生意気で、喧嘩してばかりの弟子ではある。だが今の言葉は、小南の胸の奥の深いところを貫いた。

 弟子を教え、導くこと。師匠を名乗るだけでは師匠たり得ない、そんな当たり前のことを小南は今更ながらに痛感した。

 

「なるほど、小南を師匠にしておきたいお前の気持ちはわかった。だが、その話だと新しく師匠をつけるのは問題ないんじゃないか? 勿論、嫌だというのを無理にとは言わんが」

「いえ、レイジさんが師匠ってのが嫌なわけじゃないですよ! むしろ小南より教えるの上手いし師匠らしいしで、ホントならいくらでも教えてもらいたいところなんですけど!」

 

 小南のこめかみに青筋が浮いた。

 当たり前であるが、納得と苛立ちは別物である。

 

 慣例として、師匠が複数人の弟子を持つことはそう珍しくはないが、弟子が複数人の師匠を持つことは珍しい。

 禁止されているわけでもないし問題はないが、どうしたって教え方や考え方に違いが出る。一方の師匠が良しとすることをもう一方の師匠が不可とするなんて事例はザラだ。それならば効率の面から見ても師匠は1人でいい、とする人の方が圧倒的に多い、という話。

 どころか、そもそも師匠を必要とせず、独学で研鑽を積む人もいる。

 そこへいくと何人もの師匠に教えを乞おうとする犬彦の姿勢は良く言えば勤勉、悪く言えば見境なしで節操なしの考えなしだ。

 

 レイジの言い分は、師匠を2人とっているのなら3人も4人も変わらないのではないか、という問いかけだ。

 小南自身もっともな言い分だと思うのだが、犬彦は否、と首を振った。

 

「多分今レイジさんが師匠になったら、俺、小南じゃなくレイジさんに頼りきりになります。それは違うと思うんです。俺は小南とはウマが合わないけど、嫌いなわけじゃないんで」

 

 考えながら、時折唸りながら口にする。それは紛れもなく犬彦の本音だ。

 

「何より、俺はまだ少しも小南から技を盗めてない。なのに自分から降りるなんて、冗談ですよ。俺はまだ、小南の背中を追っていたい」

 

 ――きっかけは成り行きにすぎなかった。

 賭けに負け、従うしかなかったために渋々と教えていただけのこと。

 自分に師匠は向いていない。そんな拭いきれない思いからどこか乗り切れていなかったもの。

 けれど今、胸の奥で燻るものは――。

 

「成程な。あれだけ喧嘩しながら決定的に亀裂が入らない理由はそれか」

 

 感心したようにレイジが言った。日々喧嘩の仲裁ばかりさせられている身として、思うところがあったのだろう。

 それを悟ったのか、すみません、と気まずそうに犬彦が言った。

 

「だからその、レイジさんの提案は本当に、ほんっとうにありがたいんですけども、まだ一ヶ月も教えてもらってないうちから鞍替えするのはできませんというか」

 

 しどろもどろになりながら犬彦が謝罪を始めた。レイジの厚意を無碍にしたという罪悪感を隠しもしておらず、レイジも苦笑を浮かべている。

 ――たまに男らしさがどうのこうのと言い出す割に、こういうところはらしくないんだよなあ、とは、流石にそろそろ玉狛支部の誰もが理解し始めていた。

 

「気にするな。お前がそういうのならこれ以上俺が言うことは何もない」

「ま、まあ。ここであれこれ言ったところで結局小南に見捨てられちゃったら意味ないんですけどね。レイジさんもさっき言ってたとおり喧嘩ばかりしてるんで、自分で言うのもなんですけど本当にいつ見捨てられてもおかしくないなと思ってますし」

「そうだな。それこそ本人に直接聞いてみたらどうだ? なあ」

 

 ここでようやくレイジが小南に水を向けた。

 ということはもう口を開いてもいいということだ。――もう、我慢しなくてもいいということだ。

 

 えっ、と声を漏らし、ぎくりと身を強張らせた犬彦の顔目掛け、小南は用意していたタオルを思い切り投げつけた。

 

「ぶっ、こ、小南!? え、いつからそこに?」

「ずっといたわよさっきから! 黙って聞いてれば好き勝手言ってくれて……あんたが心の中であたしのことどう思ってるのかよくわかったわよこのチビ助め!」

「チビ!? チビって言ったなこのダメ師匠が! 文句言うなら少しはまともに説明できるようになってから言いやがれこの野郎!」

 

 犬歯を剥いて吠える犬彦。

 またか、と呆れたようにレイジが吐息を吐いた。

 こうなってしまえば、後は誰かの仲裁が入るか、お互いのボギャブラリーが尽きるまで止まることはない。少なくともこれまではそうだった。

 

「わかったわよ! だから行くわよ、今から」

「は?」

 

 それはきっと、犬彦にとっても予想外の返しだったのだろう。

 拍子抜け、と顔に書いてあるような間の抜けた表情を晒す犬彦に小南は鼻を鳴らして言った。

 

「ファミレスでもどこでもいいわ。徹底的に話せるところならね」

「いやいや、何だよそれ。どういう意味だ」

「あんたが説明しろって言ったんでしょうが。だから納得いくまで説明してあげるって言ってんの。徹底的に、一から十まで。言っておくけど、拒否権なんてないからね。まともに説明しろって言ったのはあんたで、あんたの言うとおりあたしにはそんなスキルなんてないんだから。なら、あんたが納得いくまで話し合うしかないじゃない。違う?」

「いや、それはいいんだけどさ」

 

 犬彦はもうすっかり毒気を抜かれた様子で、小南の据わった目から逃れようとするように目を逸らして頬を掻いた。

 気まずそうに小南と虚空を行ったり来たりする視線。上目遣いなその表情にははっきりと小南を案じる色が浮かんでいる。

 もう夜も遅い。今から始めれば確実に深夜、最悪日付さえも越えてしまうことだろう。自分のためにそこまでするのか、小南はいいのか。そんな思いが透けて見えるようだ。

 確かにそれは大変だ。けれど今はこちらの方が大事だ。

 

「確かにあたし、今まで本気じゃなかったわ」

「本気? 何が」

「あんたを鍛えること。最初に言ったわよね。あたし、弱い奴に興味なんてないもの。だからあんたが結果を出せなくても、それは、ほとんどあんたのせいだってくらいにしか思ってなかった」

「おう……まあ、そうだな」

 

 言いたいことが喉元まで迫り上がってきたところを、ぐっと堪えて犬彦が言った。話を聞くことを優先したのだろう。

 

「……だけど、今の話を聞いてて思った。別の師匠をとるのはいい。けどそのおかげで強くなったって思われるのは、それはそれで腹が立つのよ」

 

 ごくり、と犬彦が喉を鳴らした。マジかよコイツ、と目が語っていた。

 

「あたしはあんたに強くなってほしい。それは間違いないわ。だけどそれは誰かに教えられたからじゃなくて、あたしに教えられたからだって言いなさい。たとえ成り行きがどうであろうと、元々別の師匠をとるつもりだったのだとしても、あたしは、あんたの最初の師匠よ。切り捨てるなんて絶対に許さないから覚えておきなさい。代わりに、あたしはあんたを絶対に強くしてみせる」

 

 言い切った。胸の内の思いを晒け出した小南は、心地よい開放感に笑みさえ浮かべた。

 

 ――互いに理解する必要がある、と烏丸は言った。

 なるほど、と小南は理解した。

 思っていることを素直に晒け出すことには抵抗がある。だが自分の気持ちを吐露することは、相手に伝えるのもそうだが、それ以上の効果があることを理解した。自分への理解を深めること、だ。

 

 今までどこか胸の内で燻っていた思いが言葉となって形になる。曇天が晴れ渡るような開放感と心地よさ。

 どこかおざなりになっていた関係が、双方に本音をぶつけることで確かな形となったことに弟子もさぞや喜んでいるだろう。そう晴れやかな気持ちで見やると、どこか様子がおかしい。

 犬彦は助けを求めるように口元を引き攣らせて、傍らで様子を眺めていたレイジを見た。

 レイジもまた、心なしか視線を逸らして口を開いた。

 

「まあ、良かったんじゃないか。雨降って地固まる、というやつだ」

「いや、確かにそうなんですけど……本音は?」

「……正直なところ、思い描いていたのとはちょっと違った。すまん」

「ちょっとどころじゃないんですけど! 何すかアレ、愛が重いんですけど!? 師匠愛が! いや確かに嬉しいんですけどね!?」

 

 後半は部屋の隅、男2人で顔を付き合わせての会話である。聞こえないように声を抑えての叫びは絞め殺される鳥のそれだった。

 当然、そんな風に目の前で内緒話のような格好をされて気分が良いはずもない。

 

「ちょっと、いつまでやってんのよ。そんなの後でいいから行くわよ。時間ないんだから」

「ひぃっ!? わ、わかったから手に触れるのはやめろ!」

「あんた本当にコレ駄目ね。だいぶ慣れたと思ったけど、ちょうどいいからその辺の話もしましょ」

「行く! 行くっての! すみませんレイジさん、残りは今度で! 失礼します!」

 

 言い争いのような応酬は終わらない。

 嵐のような喧噪を連れた2人が出て行くと、後にはやれやれと吐息をつくレイジのみが残された。

 

「なるほど、いいコンビだ」

 

 

 

 

 




 原作と違ってすでに完成されていた素材を鍛えるわけじゃないのでそら悩むよね、という話。
 師匠レベルが上がったので、こちらの小南が遊真を鍛えることになったらもう少しわかりやすくなってる気はする。

 複数師匠がアリかなしか、という話については賛否あると思いますが、実際やるとしたらだいぶ難しいでしょうね。
 師匠同士で理解があって、人格ができていて、弟子との仲が良好でないと……それなんて無理ゲ(震え

 次回はその後の話。
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